ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第二十八話 「もったいない」

 

鉄鉱石鉱山を訪れてから数時間。

 

レイン達は責任者の案内で鉱山の中を見て回っていた。

 

カンッ!

 

カンッ!

 

ツルハシが岩を叩く音が響く。

 

男達が汗を流しながら岩盤を砕いている。

 

砕かれた鉱石は籠へ入れられる。

 

そして別の作業員がそれを担ぐ。

 

運ぶ。

 

降ろす。

 

また戻る。

 

同じ作業の繰り返しだった。

 

レインは黙ってそれを見ていた。

 

責任者が笑う。

 

「どうだ?」

 

「大変そうですね」

 

「まぁな」

 

責任者は額の汗を拭った。

 

「鉄は勝手には出てこねぇ」

 

「掘って」

 

「運んで」

 

「砕いて」

 

「また運ぶ」

 

「昔からこうやってる」

 

レインは周囲を見回す。

 

そして、

 

「もったいない」

 

責任者が首を傾げた。

 

「何がだ?」

 

「全部」

 

沈黙。

 

ルークが顔を覆う。

 

始まった。

 

父親も察した。

 

また何か考え始めている。

 

責任者だけが意味が分からない。

 

「全部って何だ?」

 

レインは作業員達を見る。

 

何人いる。

 

どれくらい往復している。

 

どれくらいの時間を使っている。

 

自然と頭の中で計算が始まる。

 

前世で会社を経営していた頃の癖だった。

 

「この人達」

 

「運んでる時間の方が長い」

 

責任者が眉をひそめる。

 

「そうか?」

 

「うん」

 

レインは指を差した。

 

「掘る人」

 

「砕く人」

 

「運ぶ人」

 

「待つ人」

 

「かなり無駄がある」

 

責任者は黙った。

 

言われてみればそうだった。

 

だが、それが当たり前だった。

 

「じゃあどうする?」

 

責任者が聞く。

 

少し挑戦的な口調だった。

 

六歳の子供が何を言うのか興味があった。

 

レインは即答した。

 

「滑車」

 

父親が苦笑する。

 

「やっぱりな」

 

ルークも頷く。

 

「そうなると思いました」

 

責任者だけが困惑していた。

 

「滑車?」

 

「うん」

 

レインは鉱山の斜面を見上げる。

 

高低差がある。

 

荷車がある。

 

人力で持ち上げている。

 

頭の中で形が出来上がっていく。

 

「大きい滑車を作る」

 

「鉱石専用」

 

責任者は首を傾げる。

 

レインは続けた。

 

「今は人が運んでる」

 

「でも滑車なら引き上げられる」

 

「しかも何倍も重い物を」

 

責任者の表情が少し変わった。

 

それは確かにそうだった。

 

だが、レインはまだ終わらない。

 

「それと、もう一つ」

 

父親が嫌な予感を覚える。

 

ルークも同じだった。

 

「まだあるのか?」

 

責任者が聞く。

 

レインは頷いた。

 

そして山の上と下を指差す。

 

「ロープを張る」

 

「ロープ?」

 

「うん」

 

レインは地面へ図を描き始めた。

 

山の上。

 

採掘場。

 

山の下。

 

保管場所。

 

その間を一本の線で繋ぐ。

 

「ここに籠を吊るす」

 

「滑車で動かす」

 

責任者は図を見る。

 

父親も覗き込む。

 

ルークも見た。

 

「つまり?」

 

責任者が聞く。

 

レインは当然のように答えた。

 

「空を運ぶ」

 

沈黙...

 

誰も理解できなかった。

 

レインは説明を続ける。

 

「人が持つ必要がない」

 

「掘る」

 

「砕く」

 

「載せる」

 

「後は勝手に下へ運ばれる」

 

責任者が固まった。

 

父親も固まった。

 

ルークも固まった。

 

「待て待て待て」

 

責任者が慌てる。

 

「そんなこと出来るのか?」

 

レインは少し考える。

 

そして、

 

「できる」

 

即答だった。

 

責任者は目を瞬いた。

 

あまりにも迷いがない。

 

だが、隣では父親が苦笑していた。

 

「できるんだろうな……」

 

半ば諦めたような声だった。

 

ルークも深く頷く。

 

「できるんでしょうね……」

 

こちらも同じだった。

 

責任者が首を傾げる。

 

「お前ら随分信用してるんだな」

 

父親は肩を竦めた。

 

「信用というか」

 

「諦めだな」

 

「親方、それ絶対違います」

 

ルークが苦笑する。

 

「でも実際、今まで全部やってきましたからね」

 

滑車。

 

荷揚げ設備。

 

レイン工房。

 

責任者も噂は聞いている。

 

そして目の前の二人の反応を見る。

 

どうやら冗談ではないらしい。

 

責任者はレインを見る。

 

「本当にできるのか」

 

レインは鉱山を見上げた。

 

高低差。

 

運搬距離。

 

必要な材料。

 

頭の中では既に設計図が描かれていた。

 

そして、少し笑う。

 

「やってみる?」

 

その笑顔を見て、父親とルークは同時に思った。

 

また始まった。

 

見学を終えた帰り道。

 

夕日が山を赤く染めていた。

 

レインはふと足を止める。

 

視線の先、あの古い坑道だった。

 

崩れかけた入口。

 

誰も近付かない場所。

 

だが、なぜか気になる。

 

その時だった。

 

夕日が坑道の奥へ差し込む。

 

一瞬だけ、何かが光ったように見えた。

 

「……?」

 

レインは目を細める。

 

気のせいか。

 

分からない。

 

だが、気になった...とても。

 

「どうした?」

 

父親が聞く。

 

レインは首を振った。

 

「いや、何でもない」

 

そう答えながらも、視線は坑道から離れなかった。

 

そしてその夜、レインは地下施設の資料を広げることになる。

 

あの坑道...本当にただの廃坑なのだろうか。

 

そんな疑問が、少年の頭から離れなくなっていた。

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