ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
海風が吹いていた。
夕暮れの港町。
赤く染まる海を横目に、
レインは父親の後を歩いていた。
島自体は小さい。
だが不思議な島だった。
世界政府加盟国ではないにも関わらず、
海賊がほとんど来ない。
海軍も滅多に現れない。
まるで、
世界から忘れられた島。
(……隠れてるんだろうな)
レインは静かに考える。
前世知識があるから分かる。
この世界では、
“隠れる”こと自体が重要だ。
特に。
Dの一族なら。
「親父」
レインが口を開く。
「俺達、
何者なんだ?」
父親は少しだけ歩みを止めた。
だが振り返らない。
「……まだ全部は話せん」
「だが、
お前には知る義務がある」
静かな声だった。
いつもの父親とは違う。
職人ではない。
もっと古い、
何かを背負った人間の声。
やがて二人は、
家の裏にある崖へ辿り着いた。
草木に隠された洞窟。
外からは絶対に見えない。
父親は洞窟奥へ進む。
レインも後を追った。
薄暗い通路。
湿った空気。
そして。
突き当たり。
巨大な鉄扉。
レインは目を細める。
(……何だこれ)
普通の鉄ではない。
錆びていない。
しかも。
表面には、
奇妙な紋様が刻まれていた。
まるで回路のような線。
機械的な模様。
ONE PIECE世界では異質すぎる。
父親が扉へ触れる。
すると。
――ブゥゥゥン……
低い振動音。
空気が震える。
レインの目が見開く。
(電気……!?)
次の瞬間。
巨大な扉が、
ゆっくり横へ開き始めた。
ギギギギ……
重い音が洞窟へ響く。
そして。
その先に広がっていたものを見て、
レインは言葉を失った。
巨大な地下空間。
そこはまるで、
失われた文明の遺跡だった。
古びた機械。
見たこともない金属。
崩れた配線。
巨大な歯車。
そして空間中央。
圧倒的存在感を放つ、
黒い石。
レインは息を呑む。
(……ポーネグリフ)
間違いない。
漫画で何度も見た。
だが実物は、
比べ物にならないほど異様だった。
ただそこにあるだけなのに、
空気そのものが違う。
父親は静かに石を見つめる。
「これは、
800年前から我らが守り続けてきたものだ」
レインは黙って聞く。
父親は続けた。
「俺達ヴェルク家は、
かつて巨大な王国で技術を担っていた」
「世界政府が最も消したかった一族の一つだ」
レインの鼓動が大きくなる。
巨大な王国。
空白の100年。
全部、
原作の核心だ。
父親は低い声で言う。
「“ヴェルク”を名乗るな」
「“D”を名乗るな」
「それは、
世界に見つかってはいけない名だ」
静寂。
レインはポーネグリフを見る。
読めない。
だが。
そこに“歴史”が刻まれていることだけは分かった。
父親が小さく笑う。
「安心しろ」
「俺も読めん」
レインは少し驚いた。
「……読めないのに、
守ってるのか?」
「ああ」
父親は頷く。
「それでも、
守らなければならない」
「いつか、
これを読める者が現れる」
その声は、
まるで祈りのようだった。
レインはゆっくり歩き出す。
ポーネグリフの前へ。
そして、
そっと石へ触れた。
その瞬間。
――ブゥン……
空間奥の機械が、
微かに光った。
レインの動きが止まる。
父親も目を見開いた。
空気が変わる。
何かが動いた。
800年間、
沈黙していた“何か”が。
父親が震える声で呟く。
「……まさか」
レインは石から手を離す。
だが光は消えない。
地下空間の奥。
暗闇の中で。
古代装置が、
静かに目を覚まし始めていた。