ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第三十一話 「現場監督レイン」

 

契約成立の翌日。

 

鉱山は朝から普段とは違う熱気に包まれていた。

 

いつもなら鉄鉱石を掘るための準備が進められる時間だ。

 

ツルハシを担ぎ、荷車を確認し、それぞれの持ち場へ向かう。

 

だが今日は違う。

 

作業員達の視線は、鉱山の入り口から現れた三人組へ集まっていた。

 

レイン。

 

父親。

 

ルーク。

 

そしてレインの腕には大量の設計図が抱えられている。

 

「本当に始めるんだな……」

 

誰かが呟いた。

 

昨日の打ち合わせでは勢いで納得してしまった者も多かった。

 

だが一晩経って冷静になる。

 

すると当然疑問が湧く。

 

本当に出来るのか?

 

そもそも設計者は六歳だ。

 

普通なら冗談で終わる話だった。

 

だが、

 

港の滑車。

 

荷揚げ設備。

 

レイン工房。

 

これまでの実績がその疑問を打ち消していた。

 

「まぁ見れば分かるよ」

 

レインはそう言って図面を広げた。

 

責任者も近付いてくる。

 

「今日から建設開始だな」

 

「うん」

 

「まずは支柱から」

 

レインは図面を指差した。

 

高さ。

 

角度。

 

必要本数。

 

細かく書き込まれている。

 

責任者は改めて感心した。

 

本当に六歳なのか...

 

何度目か分からない疑問だった。

 

作業が始まる。

 

木材を運ぶ者。

 

加工する者。

 

穴を掘る者。

 

それぞれが動き出す。

 

レインは現場を歩き回っていた。

 

あっちへ行く。

 

こっちへ行く。

 

図面を確認する。

 

寸法を確認する。

 

誰よりも忙しそうだった。

 

その様子を見ていたルークが父親へ近付く。

 

「親方」

 

「なんだ」

 

「もうレインさん完全に現場監督ですよね」

 

父親はその言葉にレインを見る。

 

作業員へ指示を出している。

 

責任者と相談している。

 

寸法を確認している。

 

どう見ても現場監督だった。

 

父親は頷く。

 

「そうだな」

 

「止めないんですか?」

 

父親は首を傾げる。

 

「何を?」

 

ルークは思わず叫んだ。

 

「全部です!」

 

父親は少し考えた。

 

本当に少しだけ考えた。

 

そして、

 

「見ろ」

 

レインを指差す。

 

「はい」

 

「もう俺の仕事無いぞ」

 

ルークが固まった。

 

「いやありますよね!?」

 

「あるか?」

 

「あります!」

 

即答だった。

 

周囲の作業員達が吹き出した。

 

責任者まで笑っている。

 

父親は苦笑した。

 

「現場管理」

 

「設計」

 

「計算」

 

「交渉」

 

「全部あいつがやってる」

 

「だから俺は見守る担当だ」

 

「そんな担当聞いたことないです!」

 

現場に笑い声が響いた。

 

その頃、レインは真面目だった。

 

支柱を組み立てる場所へ向かう。

 

作業員達が木材を固定していた。

 

レインは足を止める。

 

図面を見る。

 

支柱を見る。

 

図面を見る。

 

支柱を見る。

 

そして、

 

「止めて」

 

作業員達の動きが止まった。

 

「どうした?」

 

責任者が聞く。

 

レインは支柱を指差した。

 

「少し傾いてる」

 

作業員達が顔を見合わせる。

 

確認する。

 

一見分からない。

 

だが、糸を垂らして測る。

 

確かに傾いていた。

 

「本当だ……」

 

作業員達が驚く。

 

レインは平然としている。

 

「このままだと後でずれる」

 

責任者は思わず笑った。

 

「お前目どうなってるんだ」

 

「普通」

 

「絶対違う」

 

誰もがそう思った。

 

作業は順調に進む。

 

昼になる頃には支柱の大部分が完成していた。

 

想像以上の速度だった。

 

理由は簡単だった。

 

作業員達の腕が良い。

 

そして、レインの指示が正確だった。

 

無駄なやり直しがほとんど無い。

 

だから早い。

 

昼休憩、木陰へ集まる。

 

責任者がレインの隣へ座った。

 

「楽しいか?」

 

突然だった。

 

レインは少し考える。

 

そして笑った。

 

「楽しい」

 

即答だった。

 

「疲れないのか?」

 

「疲れるよ」

 

「そう見えねぇな」

 

責任者が笑う。

 

レインも笑った。

 

好きなことをしている時はそんなものだ。

 

前世も同じだった。

 

会社を作った時も、新しい事業を始めた時も、疲れていた。

 

だが楽しかった。

 

午後、いよいよ試作品の組み立てが始まる。

 

循環式リフト。

 

せり止め機構。

 

全ての始まりだ。

 

まずは小規模。

 

動くかどうかの確認。

 

失敗しても被害が少ない規模で行う。

 

これは前世から変わらない。

 

最初から完璧を目指さない。

 

まず試す。

 

改善する。

 

その繰り返しだ。

 

完成した試作品の前へ全員が集まる。

 

責任者。

 

作業員達。

 

父親。

 

ルーク。

 

そして、レイン。

 

レインは鉱石を籠へ入れた。

 

「いくよ」

 

ロープを引く。

 

滑車が回る。

 

ギギギッ。

 

木と木が擦れる音が響く。

 

そして、鉱石が持ち上がった。

 

作業員達が目を見開く。

 

少人数だ。

 

今までなら何人も必要だった。

 

それが数人で済んでいる。

 

「おぉ……」

 

誰かが声を漏らした。

 

だが、本番はここからだった。

 

「下ろそう」

 

レインが言う。

 

籠がゆっくり動き出す。

 

重力を利用して下へ進む。

 

そして、”カチン”

 

せり止めが作動する。

 

籠が止まった。

 

静寂。

 

全員が見つめる。

 

解除。

 

再び動く。

 

また止まる。

 

また進む。

 

その光景を見ながら誰も言葉を発しなかった。

 

理解が追いつかない。

 

そして最後、籠は無事に下へ到着した。

 

完全な成功だった。

 

責任者が呟く。

 

「動いた……」

 

レインは当然のように頷く。

 

「動いたね」

 

「いや、お前が作ったんだろ!」

 

責任者が叫ぶ。

 

現場に大きな笑い声が響いた。

 

夕日に照らされた鉱山。

 

完成にはまだ時間が掛かる。

 

だが、誰もが確信していた。

 

この設備は完成する。

 

そして、この鉱山を変える。

 

そんな予感が確かにそこにあった。

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