ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌朝。
まだ太陽が昇り切る前だというのに、鉱山には既に多くの人が集まっていた。
普段なら作業員達しかいない時間だ。
だが今日は違う。
噂が広がっていたのだ。
レイン工房が作った新しい設備。
鉱石を楽に運べる仕組み。
六歳の天才が考えた発明。
話を聞いた者達が興味本位で集まってきていた。
漁師もいる。
船大工もいる。
暇を見つけた村人達もいる。
皆、少し離れた場所から鉱山を見上げていた。
「思ったより集まったな」
責任者が頭を掻く。
予想以上だった。
レインは周囲を見渡す。
確かに多い。
だが嫌な気分ではなかった。
むしろ、少し嬉しかった。
前世でもそうだった。
新しい技術。
新しい仕組み。
それが人々に認められる瞬間は何度経験しても嬉しい。
「緊張する?」
ルークが聞く。
レインは少し考えた。
そして首を横に振る。
「楽しみ」
「やっぱりですか」
予想通りの返答だった。
ルークは苦笑する。
横では父親が腕を組んで設備を眺めていた。
巨大な支柱。
複数の滑車。
張り巡らされたロープ。
せり止め機構。
初めて見た時は何を作るのか分からなかった。
だが今なら分かる。
確かに理屈は通っている。
問題は、
本当に実用になるかだった。
責任者が前へ出る。
「始めるぞ」
その声で周囲が静かになった。
作業員達も持ち場へ移動する。
レインは設備を最後に確認する。
支柱、異常なし。
ロープ、問題なし。
滑車、問題なし。
せり止め、問題なし。
全て予定通りだった。
「いける」
小さく呟く。
責任者が聞いた。
「自信あるか?」
レインは笑う。
「もちろん」
その迷いのない返答に責任者も笑った。
もう今さらだ。
この少年はいつもこうだった。
まず成功する未来を見る。
そこから逆算して動く。
だから迷わない。
試験開始。
鉱石を籠へ積み込む。
いつもなら数人がかりで運ぶ量だ。
かなり重い。
作業員達も少し緊張していた。
失敗すれば設備が壊れる。
怪我人が出る可能性もある。
責任者も真剣な表情だった。
「準備完了」
声が響く。
レインが頷く。
「始めよう」
ロープが動く。
滑車が回る。
ギギギッ。
木が軋む音。
だが、設備は安定していた。
籠が持ち上がる。
少人数で、驚くほど軽く。
鉱石が上へ運ばれていく。
周囲からざわめきが起きた。
「おぉ……」
「本当に上がってる」
「人数少なくないか?」
驚きの声が広がる。
責任者も目を見開いていた。
想像以上だった。
そして、次は下りだ。
本番はこちらだった。
レインはせり止めを確認する。
問題なし。
「下ろして」
作業員が頷く。
籠が動き出した。
重力によって下へ進む。
人は押していない。
誰も支えていない。
それでも進む。
そして、"カチン"
最初のせり止めが作動した。
籠が停止する。
静寂。
全員が見つめる。
解除。
再び動く。
また停止。
また動く。
その繰り返し。
安全に、確実に、鉱石は下へ運ばれていく。
そして、最後。
保管場所へ到着した。
完全成功だった。
数秒。
誰も声を出さなかった。
理解が追いついていない。
そして、次の瞬間。
歓声が上がった。
「すげぇ!」
「本当に出来た!」
「楽になるぞ!」
作業員達が興奮している。
責任者も笑っていた。
今まで見たことのない笑顔だった。
レインを見る。
そして肩を叩いた。
「成功だな」
レインも笑う。
「成功だね」
ルークはその様子を見ていた。
正直。
途中までは半信半疑だった。
だが、今は違う。
本当に成功してしまった。
まただ...この人はまたやった。
父親も設備を見上げる。
そして小さく笑った。
「やっぱりな」
「驚かないんですか?」
ルークが聞く。
父親は首を傾げる。
「驚いてるぞ」
「そう見えません」
「だって成功すると思ってたし」
ルークは頭を抱えた。
この親子は本当におかしい。
だが、嫌いではなかった。
責任者は設備を見上げながら呟く。
「運搬人数が半分以下になるな」
レインは首を横に振った。
「もっと減ると思う」
責任者が固まる。
そして、笑った。
「恐ろしいこと言うな」
だが、その言葉には期待が混じっていた。
人手が浮く。
採掘へ回せる。
生産量が増える。
鉱山が発展する。
島が発展する。
その未来が見えていた。
夕方、人々が帰り始める。
だが、誰もが設備を振り返っていた。
それほど衝撃的だったのだ。
レインは少し離れた場所からその光景を見ていた。
嬉しかった。
技術は人を楽にするためにある。
前世でもそう考えていた。
そして今も変わらない。
少年は夕日に照らされた設備を見上げる。
その目は既に次を見ていた。
鉄。
石油。
工房。
そして未来。
まだ始まったばかりだった。