ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
第三十五話 「ガロアーク」
鉱山改革が成功してから数日後。
島の空気は確実に変わっていた。
レイン自身はあまり実感していなかった。
毎日忙しいからだ。
工房へ行き。
図面を書き。
鍛冶場について考え。
鉄の使い道を考える。
いつも通りの日常だった。
だが、島の人々にとっては違った。
港。
鉱山。
市場。
どこへ行っても話題は同じだった。
「レイン」
六歳の少年。
船大工。
発明家。
そして鉱山を変えた男。
島中でその名前が広まっていた。
「聞いたか?」
「採掘量が一・八倍らしいぞ」
「本当かよ」
「責任者が言ってた」
「六歳なんだよな?」
「もう年齢考えるのやめた」
そんな会話が日常になっていた。
そして、少しずつおかしな方向へ進む者も現れ始める。
その日、
レインは港へ向かっていた。
木材の確認である。
すると、一人の漁師が歩いてくる。
そして、深々と頭を下げた。
「レイン様!」
レインが固まる。
「やめて」
即答だった。
だが、漁師は感動したような顔をする。
「なんと謙虚なお方だ……」
「違う」
「やはり只者ではない」
「話を聞いて」
全く聞いていなかった。
レインは逃げた。
だが、翌日...
市場。
野菜を買おうとした。
すると、店主が深々と頭を下げる。
「レイン様!」
「やめて」
「お代はいりません!」
「払う」
「なんと誠実な……」
「違う」
全く通じなかった。
数日後。
島の一部では、
「レイン様は神の使い」
などという話まで出始めていた。
当然、レイン本人は否定する。
全力で否定する。
だが、
「自らを神と言わない」
「なんと謙虚なのだ」
となる。
完全に悪循環だった。
その頃、父親は笑っていた。
「人気者だな」
「助けて」
珍しく本気で困っている。
ルークも苦笑していた。
「諦めてください」
「嫌だ」
「でももう無理ですよ」
実際、無理だった。
島中に広まっている。
責任者ですら。
「レイン様」
と呼び始めていた。
「責任者まで!?」
「いや、面白いから」
最低だった。
そんなある日。
島中へ知らせが出された。
長老からの召集だった。
島の広場。
島民達が集まる。
漁師。
船大工。
商人。
鉱山作業員。
子供達。
全員がいる。
レインも呼ばれていた。
父親。
ルーク。
責任者もいる。
広場の中央。
長老がゆっくりと前へ出た。
年老いたその姿には、
長い年月を生きた者だけが持つ威厳があった。
長老は杖を地面へ突く。
静寂。
広場が静まり返る。
そして、ゆっくり口を開いた。
「本日」
「島の歴史に残る決定を行う」
ざわめきが起きる。
長老は続けた。
「レイン」
名前が呼ばれる。
レインは前へ出る。
「港の発展」
「工房の発展」
「鉱山改革」
「そして島への貢献」
一つ一つ読み上げられる。
島民達も頷いていた。
誰も反対しない。
当然だった。
長老は杖を掲げる。
そして宣言した。
「レインへ」
「ガロアークの称号を授与する」
広場がどよめいた。
ルークが目を見開く。
「ガロアーク!?」
父親も驚いていた。
「まじか……」
長老が説明を始める。
ガロアーク。
島最高の名誉。
島の発展へ大きく貢献した者だけが与えられる称号。
土地。
一年分の食料。
そして、島人として最高の栄誉。
長老は続ける。
「前回授与されたのは二十年前」
島民達が頷く。
皆知っていた。
伝説の船大工。
島の発展に大きく貢献した人物。
だが、既に亡くなっている。
長老は静かに言った。
「よって」
「現存するガロアークはレイン一人である」
その瞬間、大きな拍手が起きた。
歓声も上がる。
レインは少し困った顔をしていた。
正直、名誉にはあまり興味がない。
そして、
土地。
一年分の食料。
どちらも今は必要ない気がした。
「長老」
レインが口を開く。
「土地はいらない」
広場が静まり返る。
長老が固まる。
父親も固まる。
ルークも固まる。
責任者まで固まった。
「駄目じゃ」
長老が即答した。
「え?」
「決まりなんじゃ」
「いやでも」
「駄目じゃ」
全く譲らない。
長老は真面目な顔だった。
「ガロアークには土地と食料を与える」
「それが昔からの決まりじゃ」
「受け取ってくれ」
レインは少し考える。
土地。
使い道はある。
工房の拡張。
倉庫。
研究施設。
鉄の保管場所。
考えれば色々出てくる。
そして、少し笑った。
「分かった」
長老も安心したように頷く。
「有効活用してくれ」
「する」
その返事に島民達から再び拍手が起こった。
こうして、六歳の少年は島最高の栄誉を手に入れた。
最年少。
そして唯一のガロアーク。
だが、レインの頭の中では既に次のことが始まっていた。
鉄。
鍛冶場。
新しい設備。
新しい発明。
与えられた土地を見ながら。
少年は静かに笑った。
「ちょうど良かった」
「ここに作ろう」
その呟きを聞いた父親とルークは顔を見合わせる。
そして同時に思った。
また何か始まる。
間違いなく、島を巻き込む何かが...