ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
長老から祖先の話を聞いた後、部屋の中には静かな空気が流れていた。
ヴェルク・D・ルーメン。
船大工の文明を築いた人物。
そして、この島を発見した人物。
さらに、本来の島の長はヴェルク家であること。
あまりにも話が大きすぎた。
父親も黙っている。
レインも考えていた。
だが一つだけ、前から気になっていたことがある。
レインは長老を見る。
「長老」
「なんじゃ」
「一つ聞いていい?」
長老は頷いた。
レインは少し考えてから口を開く。
「この島って何なんだろう」
長老が首を傾げる。
「何とは?」
「船大工の島なのは分かる」
「でも変なんだ」
父親も顔を上げた。
実は父親も同じことを考えていた。
レインは続ける。
「海軍が少なすぎる」
「海賊も少なすぎる」
「正直おかしいと思う」
部屋が静かになる。
長老は数秒黙った。
そして、吹き出した。
「そらそうじゃろ」
あまりにも当然のような返事だった。
レインが目を瞬かせる。
長老は笑いながら椅子へ深く腰掛けた。
「だって」
「そうなるようにしとるからの」
父親とレインが顔を見合わせる。
長老は続けた。
「この島は外との接触を制限しとる」
「制限?」
「うむ」
長老は指を折りながら説明する。
「食料を運ぶ商船」
「資料を運ぶ商船」
「船の修理」
「船の売買」
「木材の取引」
「基本はそれだけじゃ」
レインは納得した。
確かにそうだった。
子供の頃から見てきた。
来る船はほぼ決まっている。
大規模な交易港でもない。
海軍基地もない。
王国の港でもない。
だから人の出入りが少ない。
長老はさらに続けた。
「海軍も昔調査しとる」
レインの目が細くなる。
そこは重要だった。
長老は頷く。
「何十年も前じゃ」
「政府の調査船が来た」
「島全体を調べた」
「結果は?」
レインが聞く。
長老は肩を竦めた。
「ただの木材の島」
レインは苦笑した。
確かに、表向きはそう見える。
巨大な森林。
船大工達。
木材の輸出。
それだけだ。
長老は続けた。
「そして海賊にとっても旨味が少ない」
「木材は欲しい奴は欲しい」
「だが命を懸けて奪うほどではない」
「鉄にしてもそうじゃ」
父親が頷く。
長老はさらに説明した。
「鉱山はある」
「だが表向きは小規模」
「海賊からすれば」
「ここで掘るより他の島で掘った方が楽じゃろう」
それも事実だった。
少なくとも今までは、そう見えていた。
長老は笑う。
「つまりの」
「政府から見ても」
「海賊から見ても」
「魅力の少ない島なんじゃ」
レインは腕を組む。
確かに理屈は通る。
だが、それだけではない。
何か違和感がある。
長老は窓の外を見た。
夕日が海を照らしている。
穏やかな景色だった。
「世界政府非加盟の島」
「だが政府との取引はある」
「だから見逃される」
「海賊からも狙われにくい」
「結果として平和になる」
レインは頷いた。
理屈としては納得できる。
だが、本当は違う。
レインは知っている。
父親も知っている。
この島には、石油がある。
鉄がある。
そして、ヴェルク家の秘密がある。
もしそれが外へ知られたら…
政府も、
海賊も、
放っておかないだろう。
長老は知らない。
本当に知らない。
だから今も平和だ。
父親とレインは目を合わせる。
お互い何も言わない。
だが考えていることは同じだった。
この島の秘密は、まだ外へ出してはいけない。
長老は静かに笑う。
「この島はの」
「昔から目立たぬよう生きてきた」
「目立たぬよう?」
レインが聞き返す。
長老は頷く。
「うむ」
「生き残るためじゃ」
その言葉には重みがあった。
何代にも渡って受け継がれてきた知恵。
島を守るための選択。
だからこそ、今も平和なのだろう。
レインは窓の外を見る。
港。
工房。
市場。
遊ぶ子供達。
笑う島民達。
守る価値のある景色だった。
そして、レインは静かに思う。
「守らないとな」
その言葉は誰にも聞こえなかった。
だが、少年の決意は確かだった。
与えられた土地。
ガロアークの称号。
ヴェルク家の血。
全てが少しずつ繋がり始めていた。
そして、まだ誰も知らない。
この島が、世界政府にとっても、世界そのものにとっても、とてつもなく重要な島であることを...