ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第四十一話 「化け物か」

 

黎明との出会いから二か月が経った。

 

あの日からレインの生活はさらに忙しくなった。

 

朝は鍛冶屋の仕事。

 

昼も鍛冶。

 

夜は鍛冶の知識整理。

 

そして空いた時間は体を鍛える。

 

最初は腕立て伏せすらまともに出来なかった。

 

だが毎日続けるうちに少しずつ回数が増えていく。

 

まだ六歳の身体だ。

 

無理は出来ない。

 

だからこそ地道に積み重ねていた。

 

そして、親方は気付いていた。

 

何かがおかしい。

 

最初は気のせいだと思った。

 

だが違う。

 

確実におかしい。

 

レインは覚える速度が異常だった。

 

一度教えれば覚える。

 

二度目には出来る。

 

三度目には改善している。

 

そして一週間後には自分なりの工夫まで加えている。

 

普通なら何年もかかることを平然とやってのける。

 

その日の朝もそうだった。

 

親方は新しい鍛造技術を教えていた。

 

鉄を叩く角度。

 

力の加減。

 

熱の見極め方。

 

本来なら習得に何か月もかかる内容だ。

 

だから親方も軽い気持ちで教えた。

 

「まあ、まずは見て覚えろ」

 

そう言って実演する。

 

レインは真剣な表情で見ていた。

 

そして翌日。

 

普通に出来ていた。

 

親方は固まった。

 

「……おい」

 

「なんだ?」

 

「何で出来る」

 

「見たから」

 

「そういうことじゃねぇ」

 

レインは首を傾げた。

 

意味が分からない。

 

親方の方が意味が分からなかった。

 

それからさらに数週間。

 

状況は悪化した。

 

いや...

 

成長したと言うべきだろう。

 

鍛冶の技術。

 

鉄の見極め。

 

工具の扱い。

 

刃物の作成。

 

親方が教えた技術を次々と吸収していく。

 

そして、ついにその日が来た。

 

鍛冶屋の裏庭。

 

親方は腕を組みながら一本の金物を見ていた。

 

レインが作った物だ。

 

出来は良い。

 

かなり良い。

 

正直に言うなら。

 

悔しいほど良い。

 

親方は深いため息を吐いた。

 

「どうした?」

 

レインが聞く。

 

親方は無言で金物を差し出した。

 

レインが受け取る。

 

「上手く出来てるな」

 

「自分で言うな」

 

親方が頭を抱える。

 

レインは本当に意味が分からなかった。

 

親方は空を見上げる。

 

そして、ぽつりと呟いた。

 

「化け物かお前」

 

レインが固まる。

 

「は?」

 

「化け物だろ」

 

親方は真顔だった。

 

「お前の頭どうなってんだ」

 

「器用さどうなってんだ」

 

「何で二か月でここまで出来る」

 

レインは呆れた。

 

そして反論する。

 

「いや、あんたが本気でマスターしろって言ったんだろう!」

 

「言った!」

 

親方も認める。

 

「言ったけど!」

 

そして続けた。

 

「まさか二か月でここまで来ると思わんじゃろ!」

 

親方は頭を抱える。

 

本当に泣きそうだった。

 

レインは呆れた顔になる。

 

「何で俺が怒られてるんだ」

 

「怒ってねぇ!」

 

「じゃあ何だよ」

 

「困ってる!」

 

親方は叫んだ。

 

レインは思わず笑った。

 

親方も笑う。

 

しばらく二人で笑っていた。

 

そして、親方は改めてレインを見る。

 

最初に会った頃、確かに頭の良い子供だと思った。

 

発想も面白い。

 

知識もある。

 

だが、ここまでとは思わなかった。

 

鍛冶は知識だけではない。

 

経験が物を言う世界だ。

 

だからこそ半年という期間を提示した。

 

最低でも半年。

 

下手をすれば一年。

 

そう考えていた。

 

それが、まだ二ヶ月も残っている。

 

親方はため息を吐く。

 

「参ったな」

 

「何が?」

 

「教えることがなくなりそうだ」

 

レインは少しだけ笑った。

 

それは褒め言葉として受け取っておく。

 

だが、親方は真面目な顔になる。

 

「勘違いするな」

 

「ん?」

 

「鍛冶はまだ終わってねぇ」

 

レインも表情を引き締める。

 

親方は続けた。

 

「技術は覚えた」

 

「だが職人は技術だけじゃねぇ」

 

レインは黙って聞く。

 

「良い鉄を見る目」

 

「道具を作る理由」

 

「依頼主が何を求めてるか」

 

「そういうもんも必要だ」

 

レインは頷いた。

 

確かにその通りだった。

 

前世でも同じだ。

 

技術だけで成功する人間はいない。

 

相手が何を求めているか。

 

それを理解出来る人間が強い。

 

親方は笑った。

 

「だからまだ弟子だ」

 

「分かってる」

 

「よし」

 

親方は頷く。

 

そして、鍛冶場の奥を見る。

 

そこには黎明が飾られていた。

 

静かに。

 

何も語らず。

 

ただそこにある。

 

親方は思う。

 

もしかすると。

 

本当にこの刀を託す日が来るかもしれない。

 

そんなことを考えながら。

 

親方は小さく笑った。

 

一方のレインは気付いていなかった。

 

親方が少しずつ。

 

本当に少しずつ。

 

黎明を渡す覚悟を始めていることに。

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