ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第四十四話「海の向こうの出来事」

 

鍛冶屋での修行を終えてから一か月ほどが過ぎた。

 

レインの日常は相変わらず忙しい。

 

朝から工房へ向かい、注文の確認を行う。

 

ルークと共に製作を進め、空いた時間には新しい設計図を書く。

 

気が付けば夕方になっていることも珍しくなかった。

 

おかげでレイン工房の評判はますます広がっていた。

 

鍛冶技術を身につけたことで製作できる物の種類も増えた。

 

包丁や鉈、斧といった刃物類。

 

滑車用の金具。

 

歯車。

 

農具。

 

以前よりも注文は明らかに増えている。

 

「レイン、この前の包丁すごく良かったぞ!」

 

「ありがとうございます!」

 

「今度は家族の分も頼みたいんだが」

 

「大丈夫ですよ!」

 

島の人々との会話も増えていた。

 

工房は順調だった。

 

少なくとも今のところは。

 

そんなある日の昼過ぎだった。

 

工房の扉が開く。

 

「おーい、レイン」

 

父だった。

 

片手には紙束を抱えている。

 

「父さん?」

 

「港に商船が来てたから買ってきたぞ」

 

そう言って机の上へ置かれたのは新聞だった。

 

レインは思わず顔を上げる。

 

「新聞か」

 

「珍しいだろ?」

 

「うん」

 

この島では新聞はそう簡単に手に入らない。

 

ニュース・クーが飛んでくる地域ではないからだ。

 

そのため外の情報は、港へ立ち寄った商船や旅人から聞くしかなかった。

 

新聞も商船が持ち込んだ物を買うしかない。

 

だから島の人々にとって外の世界は遠い存在だった。

 

レインも最近は工房の仕事ばかりで、世界情勢を調べる余裕などなかった。

 

「少し休憩しろ」

 

「そうするよ」

 

レインは椅子へ腰掛ける。

 

そして新聞を開いた。

 

最初に目に入ったのは海賊の記事だった。

 

『北の海にて商船襲撃』

 

『海軍、討伐部隊を派遣』

 

『被害者多数』

 

レインは静かに読み進める。

 

別のページには王国同士の争い。

 

さらに別の記事には飢饉や疫病。

 

決して明るい話題ばかりではなかった。

 

前世の日本では考えられない内容が並んでいる。

 

だが、この世界ではそれが日常なのだろう。

 

島で暮らしていると忘れそうになる。

 

しかしここは平和な日本ではない。

 

海賊がいて、

 

戦争があって、

 

理不尽に命が失われる世界だ。

 

「外は物騒だな」

 

父が呟く。

 

「そうだね……」

 

レインも同意した。

 

そして次のページをめくった時だった。

 

ある小さな記事が目に留まる。

 

『元天竜人一家、各地を転々』

 

レインの手が止まった。

 

一瞬、呼吸を忘れる。

 

記事へ目を落とす。

 

天竜人の地位を捨てた一家。

 

一般人として暮らそうとしたものの、各地で迫害を受けている。

 

石を投げられた。

 

住む場所を追われた。

 

民衆から憎しみを向けられている。

 

そんな内容だった。

 

(まさか……)

 

いや、間違いない。

 

レインはこの話を知っている。

 

ドンキホーテ・ホーミング。

 

そして、その息子達。

 

ドフラミンゴとロシナンテ。

 

前世では漫画の中の出来事だった。

 

しかし今は違う。

 

現実だ。

 

同じ世界のどこかで今まさに起きている。

 

(もうそんな時期か……)

 

レインは記事を見つめたまま考える。

 

ドフラミンゴの末路も知っている。

 

ロシナンテの人生も知っている。

 

そして、この先に待つ悲劇も。

 

「気になる記事でもあったか?」

 

父が尋ねる。

 

「ちょっとね」

 

レインは曖昧に答えた。

 

未来を知っているなど言えるはずもない。

 

だが心の中は穏やかではなかった。

 

(助けられないかな……)

 

そんな考えが浮かぶ。

 

ロシナンテは好きなキャラクターだった。

 

できることなら救いたい。

 

だが現実は厳しい。

 

場所が分からない。

 

今どこにいるのかも知らない。

 

そもそも自分はまだ七歳にもなっていない。

 

島の外へすら出たことがないのだ。

 

何もできない。

 

悔しいほどに...何も...

 

レインは新聞を閉じた。

 

窓の外へ視線を向ける。

 

工房。

 

港。

 

楽しそうに走り回る子供達。

 

平和な景色だった。

 

しかし世界は違う。

 

この海のどこかでは海賊が暴れ。

 

誰かが苦しみ。

 

誰かが泣いている。

 

自分の知らない場所で、原作の物語も少しずつ動き始めている。

 

今の自分にできることは少ない。

 

それでも、レインは静かに拳を握った。

 

もっと力が必要だ。

 

工房を発展させる力。

 

技術を生み出す力。

 

そして、誰かを守れるだけの力。

 

島の発展だけを見ていた視線は、少しずつ海の向こうへ向き始めていた。

 

まだ見ぬ広い世界へ。

 

そして、その先に待つ未来へ。

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