ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
ガレスの商船が島を離れてから数日後。
レインは工房の机に向かいながら、一枚の紙を見つめていた。
そこにはいくつもの文字が並んでいる。
『特許制度案』
そう書かれていた。
「やっぱり必要だよな……」
小さく呟く。
変形滑車。
計算機。
歯車。
今後も新しい物を作る予定は沢山ある。
だが、それらを誰かが勝手に真似して売り始めたらどうなるのか。
発明した人間だけが損をする。
それは健全ではない。
前世でも発明家を守る仕組みは存在した。
だからこそ技術は発展した。
この島にも必要になるはずだった。
「父さん、少し相談がある」
その日の夕方、レインは父へ声を掛けた。
「珍しいな」
父は作業の手を止める。
「どうした?」
レインは紙を差し出した。
「制度を作りたい」
「制度?」
父の顔が引きつる。
嫌な予感がしたのだろう。
最近のレインは発明だけではなく、島の仕組みまで変え始めている。
「今度は何を考えたんだ?」
「特許制度」
「……何だそれは」
予想通りの反応だった。
レインは説明を始める。
「新しい物を作った人を守る制度だよ」
「守る?」
「例えば俺が新しい道具を作る」
父は頷く。
「誰かがそれを真似して勝手に売る」
「まあ、あり得るな」
「そうすると発明した人だけ損をする」
父は少し考え込んだ。
確かにその通りだった。
作る苦労も研究も全て無視される。
「なるほど」
「だから一定期間は発明した人だけが作れるようにする」
父は腕を組む。
「悪くないな」
意外にも反応は良かった。
しかし問題もある。
「俺だけで決められる話じゃないぞ」
「分かってる」
レインも頷く。
「だから長老に相談したい」
⸻
翌日。
レインと父は長老の家を訪れていた。
長老はいつものようにお茶を飲みながら二人を迎える。
「珍しい組み合わせじゃな」
「レインがまた何か思いつきまして」
父が苦笑する。
長老も苦笑した。
「今度は何じゃ?」
レインは特許制度について説明した。
長老は最初こそ首を傾げていたが、徐々に真剣な顔になる。
全て聞き終えた後、長老は静かに口を開いた。
「面白い考えじゃな」
レインは少し驚いた。
もっと反対されると思っていた。
「良いんですか?」
「発明した者が報われる仕組みは必要じゃろう」
長老は頷く。
「今まではそんな心配は無かった」
「だが」
長老はレインを見る。
「お前さんがいる」
父が吹き出した。
レインは少し複雑な顔になる。
「褒めてるんですよね?」
「もちろんじゃ」
長老は笑った。
「正直、島の発展速度が異常じゃ」
「十年前なら考えられん」
レインは何とも言えない顔になる。
前世の知識を使っているので否定できない。
「ただし」
長老は表情を引き締めた。
「制度を作るなら条件がある」
「条件?」
「誰でも利用できることじゃ」
レインは頷く。
それは当然だった。
自分だけを守る制度にするつもりはない。
「新しい発明をした者」
「新しい技術を考えた者」
「そういった者達を守る仕組みにしたいです」
長老は満足そうに頷いた。
「なら問題ない」
そして少し笑う。
「もっとも」
「今のところ登録第一号はレインになりそうじゃがな」
父が再び吹き出した。
レインは苦笑するしかなかった。
⸻
帰り道…
父が空を見上げながら言う。
「まさか制度まで作るとはな」
「必要だから」
「七歳の言葉じゃないな」
レインは笑った。
確かにそうかもしれない。
だが必要なものは必要だ。
工房を作った。
採掘を始めた。
契約も結んだ。
そして今度は制度だ。
島は少しずつ変わっている。
いや、変わり始めている。
レインは青い空を見上げた。
まだ小さな一歩だ。
しかしいつか、この制度が島の未来を支えるかもしれない。
そんな予感がしていた。