ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
数日後。
長老の呼びかけによって、島の住民達が広場へ集まっていた。
漁師。
農家。
船大工。
鍛冶屋。
工房で働く職人達。
普段ならそれぞれ仕事をしている時間だが、長老が招集したとなれば話は別だった。
レインも父とルークと共に広場へ来ている。
「結構集まりましたね」
ルークが周囲を見回した。
「長老が呼んだからな」
父が答える。
やがて長老が前へ出た。
軽く咳払いをする。
「今日は島の新しい制度について話がある」
ざわつく住民達。
制度という言葉自体に馴染みがない。
当然の反応だった。
長老はレインへ視線を向ける。
「提案者本人から説明してもらおうかの」
一斉に視線が集まる。
レインは小さく息を吐いた。
そして一歩前へ出る。
「皆さんに聞きたいことがあります」
広場が静かになる。
「もし何年も掛けて新しい道具を作ったとします」
住民達は真剣に話を聞いていた。
「そして完成した翌日」
「誰かが真似して売り始めたらどう思いますか?」
数人が顔をしかめる。
「そりゃ嫌だな」
「苦労したのは作った奴だろ」
「割に合わねぇ」
あちこちから声が上がった。
レインは頷く。
「俺もそう思います」
そして続ける。
「だから発明した人を守る制度を作りたいんです」
漁師の一人が手を挙げる。
「どうやって守るんだ?」
「発明した人に一定期間の製造権を与えます」
住民達が首を傾げる。
レインは説明を続けた。
「例えば新しい道具を発明した人がいたら、その人だけが一定期間その道具を作って売ることができます」
「他の人は勝手に作ってはいけません」
「ただし」
レインはそこで言葉を区切った。
「買って使うのは自由です」
住民達の表情が少し和らぐ。
「使えるのか?」
「もちろんです」
「買った人が使うのを禁止するつもりはありません」
漁師達も納得したように頷いた。
すると今度は鍛冶屋の親方が口を開く。
「その期間が終わったら?」
「誰でも作れるようになります」
広場が少しざわつく。
「独占じゃないのか?」
「違います」
レインは首を振った。
「発明者を守るための制度です」
「技術を隠すための制度じゃありません」
前世でも特許には期限があった。
技術発展のためだ。
永久独占は社会の発展を妨げる。
レインはそれを理解していた。
親方は腕を組む。
「なるほどな」
「悪くねぇ」
今度は農家の一人が手を挙げた。
「つまり最初は発明した奴が得をする」
「そうです」
「その後は皆も作れる」
「そうです」
農家は笑った。
「それなら文句ねぇな」
周囲からも同意の声が上がる。
すると父が前へ出た。
「俺も賛成だ」
住民達が父を見る。
「レインを見てれば分かる」
父は真面目な顔で言った。
「新しい物を作るのは簡単じゃない」
「失敗する」
「作り直す」
「何度も試す」
それは事実だった。
計算機もそう。
変形滑車もそう。
歯車もそう。
完成した物だけ見れば簡単そうに見える。
しかしそこへ辿り着くまでには膨大な試行錯誤がある。
「だったら」
父は続ける。
「最初に考えた奴が報われるべきだろ」
その言葉に多くの住民が頷いた。
レインの努力は皆知っている。
だからこそ説得力があった。
しばらく議論が続いた後。
長老が立ち上がる。
「では採決じゃ」
広場が静まり返る。
「この制度に賛成の者」
次々と手が上がった。
漁師。
農家。
鍛冶屋。
船大工。
大半の住民が賛成している。
反対はごく少数だった。
長老は満足そうに頷く。
「決まりじゃな」
こうして島で初めての特許制度が誕生した。
発明者を守りながら。
技術も広げる。
島の未来のための新しい仕組みだった。
⸻
帰り道。
ルークが嬉しそうに言う。
「レインさん、成功しましたね」
「ああ」
「これで新しい物を作る人も増えるかもしれませんね」
レインは空を見上げた。
その通りだった。
この制度は自分のためだけではない。
これから先、新しい発明をする誰かのためでもある。
島は少しずつ変わっている。
そしてその変化は、まだ始まったばかりだった。