ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第四十九話 「特許第一号」

 

特許制度が正式に認められてから数日後、レインは工房の机に向かい、一枚の書類を書いていた。

 

向かい側ではルークが興味深そうに覗き込んでいる。

 

「何を書いているんですか?」

 

「特許申請書」

 

「もう始めるんですね」

 

レインは頷いた。

 

制度を作った以上、まずは自分が利用しなければ意味がない。

 

形だけ作って終わりでは誰も使わなくなる。

 

だからこそ最初の登録者になるつもりだった。

 

「何を登録するんですか?」

 

ルークが尋ねる。

 

レインは迷わず答えた。

 

「変形滑車と計算機」

 

「そろばんですね」

 

「うん」

 

どちらも島には存在しない技術だった。

 

特に変形滑車はガレスが高く評価した発明であり、今後の運搬や採掘にも大きな影響を与える。

 

そろばんも同じだ。

 

商人や工房が増えれば必ず必要になる。

 

「普通の滑車は登録しないんですか?」

 

ルークの質問にレインは首を振った。

 

「しない」

 

「どうしてですか?」

 

「もう広まってるから」

 

レインはペンを置いた。

 

そして工房の窓から外を見る。

 

港。

 

採掘場。

 

荷物を運ぶ人々。

 

そこには既に滑車が当たり前のように使われていた。

 

「普通の滑車は島の発展に必要なんだ」

 

「だから誰でも自由に作れる方が良い」

 

ルークは納得したように頷く。

 

確かに今さら独占してしまえば不便になる。

 

「それに」

 

レインは続ける。

 

「滑車が無くなったら困るだろ?」

 

「かなり困ります」

 

ルークは即答した。

 

採掘場でも使っている。

 

港でも使っている。

 

工房でも使っている。

 

今では島の至る所で活躍していた。

 

「だから普通の滑車は皆のものだ」

 

「変形滑車だけ守る」

 

レインの中では明確に線引きができていた。

 

技術を守ることと。

 

技術を広めること。

 

その両方が大切だった。

 

 

その日の午後、レインは父と共に長老の家を訪れていた。

 

長老の机の上には新しく作られた帳簿が置かれている。

 

その表紙には大きく書かれていた。

 

『特許登録帳』

 

島で初めて作られた帳簿だった。

 

「ついに来たか」

 

長老が笑う。

 

「第一号の申請じゃな」

 

「はい」

 

レインは書類を差し出した。

 

長老は内容を確認する。

 

発明名。

 

用途。

 

仕組み。

 

申請者。

 

全て丁寧に書かれていた。

 

「ふむ」

 

長老は頷く。

 

「問題ないな」

 

そして帳簿を開いた。

 

新しいページ。

 

まだ何も書かれていない真っ白な紙。

 

そこへゆっくりと文字を書き込む。

 

『第一号特許』

 

『変形滑車』

 

『発明者 レイン』

 

レインはその文字を静かに見つめていた。

 

前世では当たり前だった制度。

 

しかしこの島では初めての記録だった。

 

続いてもう一行。

 

『第二号特許』

 

『計算機(そろばん)』

 

『発明者 レイン』

 

長老はペンを置く。

 

「これで正式に登録完了じゃ」

 

父が感心したように帳簿を見る。

 

「本当に制度になったんだな」

 

「そうですね」

 

レインも少し感慨深かった。

 

ただの思いつきでは終わらなかった。

 

実際に形になったのだ。

 

「期間は二年じゃったな」

 

長老が確認する。

 

「はい」

 

「二年間は発明者以外の製造を禁止」

 

「購入と使用は自由」

 

「期間終了後は誰でも製造可能」

 

レインは頷いた。

 

永久独占にするつもりはない。

 

発明した人が報われる期間を作り、その後は島全体へ技術を広げる。

 

それが理想だった。

 

「良い制度じゃと思う」

 

長老が言う。

 

「技術も守れる」

 

「発展も止まらん」

 

「ありがとうございます」

 

レインは頭を下げた。

 

 

帰り道。

 

父が隣を歩きながら笑う。

 

「七歳で特許第一号か」

 

「言わないでよ」

 

「普通じゃないぞ」

 

「知ってる」

 

二人は笑った。

 

港では今日も滑車が動いている。

 

採掘場でも滑車が使われている。

 

工房でも同じだ。

 

その光景を見ながらレインは思った。

 

守るべき技術もある。

 

広めるべき技術もある。

 

その判断を間違えなければ、島はもっと発展できる。

 

そしていつか、この小さな制度が島だけではなく、もっと大きな場所で役立つ日が来るかもしれない。

 

レインは青空を見上げた。

 

特許第一号。

 

それは小さな一歩だった。

 

だが未来へ続く確かな一歩でもあった。

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