ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
十二月二十二日。
その日は朝から妙だった。
レインはいつものように目を覚ました。
顔を洗い、朝食を食べ、工房へ向かおうとする。
すると母が笑顔で言った。
「お誕生日おめでとう」
「あ、そうだった」
レインは思い出した。
今日で七歳になる。
前世なら家族に祝われる程度だった。
だから特別な日という感覚はあまりない。
しかし母は嬉しそうだった。
「今年は大変な一年だったわね」
「そうかな?」
「そうよ」
横で父が笑う。
「工房作って、弟子取って、鉱山見つけて、鍛冶屋に弟子入りして、特許制度まで作ったからな」
「言われてみれば色々やったな」
レインは苦笑した。
普通の七歳ではないことは自覚している。
だが、自分では日々目の前のことをこなしていただけだった。
「今日は少しゆっくりしたらどうだ?」
父が言う。
「無理だよ」
「だろうな」
父も諦めたように笑った。
⸻
工房へ向かう。
すると途中で異変に気付いた。
人が多い。
やたらと多い。
しかも皆こちらを見ている。
「?」
首を傾げていると、
「レイン!」
漁師のおじさんが手を振った。
「誕生日おめでとう!」
「ありがとうございます?」
なぜ疑問形なのか自分でも分からない。
さらに、
「レイン坊主!」
「七歳おめでとう!」
「これ持っていけ!」
魚を渡される。
「え?」
さらに、
「うちの畑で採れた野菜だ!」
「ありがとうございます」
さらに、
「レインさん!」
「おめでとうございます!」
ルークまで現れた。
その手には大きな包みがある。
「何それ」
「秘密です」
「怖いな」
「酷いです」
そんなやり取りをしているうちに、気付けば両手が荷物でいっぱいになっていた。
⸻
ようやく工房へ辿り着く。
だが問題は終わらなかった。
工房の前に人だかりができていたのである。
「何これ」
思わず呟く。
父も同じ表情だった。
すると人混みの奥から長老が現れる。
「おお、来たか」
「長老?」
「主役が来ないと始まらんからの」
嫌な予感がした。
非常に嫌な予感が。
「始まらないって何がですか?」
長老は満面の笑みを浮かべた。
「祭りじゃ」
「……はい?」
「誕生日祭りじゃ」
レインは固まった。
周囲の島民達は大盛り上がりである。
「おおー!」
「待ってました!」
「始めるぞ!」
「七歳おめでとう!」
レインは父を見る。
父は目を逸らした。
「父さん」
「俺も昨日知った」
裏切られた。
⸻
長老が咳払いをする。
「皆も知っての通り、レインはこの一年で島へ大きく貢献してくれた」
住民達が頷く。
「滑車を作った」
「鉱山を見つけた」
「工房を作った」
「鍛冶技術を広めた」
「特許制度も作った」
長老は笑った。
「じゃから今日は感謝も込めて祝う」
大歓声が上がる。
レインは頭を抱えた。
前世でもここまで盛大に祝われたことはない。
「いやいやいや」
「大袈裟じゃない?」
すると鍛冶屋の親方が笑う。
「大袈裟じゃねぇ」
漁師も言う。
「お前のおかげで仕事が楽になった」
農家も続く。
「収穫量も増えたぞ」
港で働く男達も笑う。
「滑車は最高だ!」
あちこちから感謝の声が飛ぶ。
レインは少し言葉に詰まった。
自分は前世の知識を使っているだけだ。
だが、皆は本当に喜んでくれている。
それだけは伝わってきた。
⸻
やがて宴が始まる。
肉が焼かれる。
魚が並ぶ。
酒も出てくる。
音楽まで始まった。
完全に祭りだった。
レインは呆れながらも笑っていた。
すると長老が隣へ座る。
「どうじゃ?」
「やりすぎです」
即答だった。
長老は豪快に笑う。
「そう言うな」
「島の英雄の誕生日じゃぞ」
「英雄じゃないですよ」
「皆はそう思っとる」
レインは言葉に詰まる。
長老は少しだけ真面目な顔になった。
「レイン」
「はい」
「生まれてきてくれてありがとう」
レインは目を見開いた。
その言葉は予想していなかった。
長老は続ける。
「お前が生まれてから島は変わった」
「前より豊かになった」
「前より明るくなった」
「皆がお前に感謝しとる」
レインは静かに周囲を見渡した。
笑顔。
笑顔。
笑顔。
どこを見ても楽しそうだった。
前世では会社を大きくした。
利益も出した。
だが、こんな風に感謝されたことはなかったかもしれない。
レインは少しだけ空を見上げる。
七歳になった。
まだ七歳。
だが、やりたいことは沢山ある。
島を発展させる。
工房を大きくする。
世界を知る。
そしていつか、この島を守れる力を持つ。
「よし」
レインは立ち上がった。
「来年も頑張るか」
その言葉に島民達が笑う。
祭りは夜遅くまで続いた。
レインがガロアークに選ばれてから迎える初めての誕生日。
それは間違いなく、人生で一番賑やかな誕生日になったのだった。