ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第五十話「七歳の誕生日」

 

十二月二十二日。

 

その日は朝から妙だった。

 

レインはいつものように目を覚ました。

 

顔を洗い、朝食を食べ、工房へ向かおうとする。

 

すると母が笑顔で言った。

 

「お誕生日おめでとう」

 

「あ、そうだった」

 

レインは思い出した。

 

今日で七歳になる。

 

前世なら家族に祝われる程度だった。

 

だから特別な日という感覚はあまりない。

 

しかし母は嬉しそうだった。

 

「今年は大変な一年だったわね」

 

「そうかな?」

 

「そうよ」

 

横で父が笑う。

 

「工房作って、弟子取って、鉱山見つけて、鍛冶屋に弟子入りして、特許制度まで作ったからな」

 

「言われてみれば色々やったな」

 

レインは苦笑した。

 

普通の七歳ではないことは自覚している。

 

だが、自分では日々目の前のことをこなしていただけだった。

 

「今日は少しゆっくりしたらどうだ?」

 

父が言う。

 

「無理だよ」

 

「だろうな」

 

父も諦めたように笑った。

 

 

工房へ向かう。

 

すると途中で異変に気付いた。

 

人が多い。

 

やたらと多い。

 

しかも皆こちらを見ている。

 

「?」

 

首を傾げていると、

 

「レイン!」

 

漁師のおじさんが手を振った。

 

「誕生日おめでとう!」

 

「ありがとうございます?」

 

なぜ疑問形なのか自分でも分からない。

 

さらに、

 

「レイン坊主!」

 

「七歳おめでとう!」

 

「これ持っていけ!」

 

魚を渡される。

 

「え?」

 

さらに、

 

「うちの畑で採れた野菜だ!」

 

「ありがとうございます」

 

さらに、

 

「レインさん!」

 

「おめでとうございます!」

 

ルークまで現れた。

 

その手には大きな包みがある。

 

「何それ」

 

「秘密です」

 

「怖いな」

 

「酷いです」

 

そんなやり取りをしているうちに、気付けば両手が荷物でいっぱいになっていた。

 

 

ようやく工房へ辿り着く。

 

だが問題は終わらなかった。

 

工房の前に人だかりができていたのである。

 

「何これ」

 

思わず呟く。

 

父も同じ表情だった。

 

すると人混みの奥から長老が現れる。

 

「おお、来たか」

 

「長老?」

 

「主役が来ないと始まらんからの」

 

嫌な予感がした。

 

非常に嫌な予感が。

 

「始まらないって何がですか?」

 

長老は満面の笑みを浮かべた。

 

「祭りじゃ」

 

「……はい?」

 

「誕生日祭りじゃ」

 

レインは固まった。

 

周囲の島民達は大盛り上がりである。

 

「おおー!」

 

「待ってました!」

 

「始めるぞ!」

 

「七歳おめでとう!」

 

レインは父を見る。

 

父は目を逸らした。

 

「父さん」

 

「俺も昨日知った」

 

裏切られた。

 

 

長老が咳払いをする。

 

「皆も知っての通り、レインはこの一年で島へ大きく貢献してくれた」

 

住民達が頷く。

 

「滑車を作った」

 

「鉱山を見つけた」

 

「工房を作った」

 

「鍛冶技術を広めた」

 

「特許制度も作った」

 

長老は笑った。

 

「じゃから今日は感謝も込めて祝う」

 

大歓声が上がる。

 

レインは頭を抱えた。

 

前世でもここまで盛大に祝われたことはない。

 

「いやいやいや」

 

「大袈裟じゃない?」

 

すると鍛冶屋の親方が笑う。

 

「大袈裟じゃねぇ」

 

漁師も言う。

 

「お前のおかげで仕事が楽になった」

 

農家も続く。

 

「収穫量も増えたぞ」

 

港で働く男達も笑う。

 

「滑車は最高だ!」

 

あちこちから感謝の声が飛ぶ。

 

レインは少し言葉に詰まった。

 

自分は前世の知識を使っているだけだ。

 

だが、皆は本当に喜んでくれている。

 

それだけは伝わってきた。

 

 

やがて宴が始まる。

 

肉が焼かれる。

 

魚が並ぶ。

 

酒も出てくる。

 

音楽まで始まった。

 

完全に祭りだった。

 

レインは呆れながらも笑っていた。

 

すると長老が隣へ座る。

 

「どうじゃ?」

 

「やりすぎです」

 

即答だった。

 

長老は豪快に笑う。

 

「そう言うな」

 

「島の英雄の誕生日じゃぞ」

 

「英雄じゃないですよ」

 

「皆はそう思っとる」

 

レインは言葉に詰まる。

 

長老は少しだけ真面目な顔になった。

 

「レイン」

 

「はい」

 

「生まれてきてくれてありがとう」

 

レインは目を見開いた。

 

その言葉は予想していなかった。

 

長老は続ける。

 

「お前が生まれてから島は変わった」

 

「前より豊かになった」

 

「前より明るくなった」

 

「皆がお前に感謝しとる」

 

レインは静かに周囲を見渡した。

 

笑顔。

 

笑顔。

 

笑顔。

 

どこを見ても楽しそうだった。

 

前世では会社を大きくした。

 

利益も出した。

 

だが、こんな風に感謝されたことはなかったかもしれない。

 

レインは少しだけ空を見上げる。

 

七歳になった。

 

まだ七歳。

 

だが、やりたいことは沢山ある。

 

島を発展させる。

 

工房を大きくする。

 

世界を知る。

 

そしていつか、この島を守れる力を持つ。

 

「よし」

 

レインは立ち上がった。

 

「来年も頑張るか」

 

その言葉に島民達が笑う。

 

祭りは夜遅くまで続いた。

 

レインがガロアークに選ばれてから迎える初めての誕生日。

 

それは間違いなく、人生で一番賑やかな誕生日になったのだった。

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