ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第六十四話 「見張り台」

 

海賊対策会議から三日後。

 

島の港は朝から騒がしかった。

 

港の一角には木材が積み上げられ、多くの島民達が集まっている。

 

その中心には一枚の設計図を持ったレインの姿があった。

 

「本当に作るんだな」

 

父が苦笑しながら言う。

 

「せっかく決まったんだから作らないと意味がないだろ」

 

レインは設計図を広げながら答えた。

 

会議の結果、まず最初に作ることになったのは見張り台だった。

 

防壁や警報設備も重要だが、それらは敵を発見できて初めて意味を持つ。

 

だから最優先は監視能力の向上だった。

 

「思ったより大きいな」

 

港の責任者が設計図を見ながら呟く。

 

今回作る見張り台は単なる物見櫓ではない。

 

島で最も高い建築物になる予定だった。

 

強風にも耐えられる構造。

 

複数人が同時に上がれる広さ。

 

雨風をしのげる簡易屋根。

 

さらに望遠鏡を設置する場所まで確保してある。

 

「望遠鏡はまだ無いんだろ?」

 

父が尋ねる。

 

「今は無い」

 

レインは頷く。

 

「でも将来的には作る予定だからな」

 

その言葉に周囲の大人達が笑った。

 

レインの場合、冗談に聞こえない。

 

本当に作りそうだからだ。

 

工事はすぐに始まった。

 

工房の従業員達。

 

港の作業員達。

 

島民達。

 

思った以上に多くの人が手伝いへ来ていた。

 

それだけ島の人々も会議の内容を真剣に受け止めていたのだろう。

 

「こっち持ってください!」

 

「ロープ張るぞ!」

 

「杭を打つぞ!」

 

港には次々と声が響く。

 

レインも例外ではない。

 

設計者だからといって指示だけ出しているわけではなかった。

 

材料運び。

 

寸法確認。

 

接合部分の検査。

 

あちこち走り回っている。

 

「レインさん!」

 

ルークが呼ぶ。

 

「この角度で合ってますか?」

 

レインは組み上がり始めた骨組みを見上げた。

 

少し考える。

 

「三度右だな」

 

「三度?」

 

「そう」

 

「本当に分かるんですか?」

 

「だいたい」

 

ルークは苦笑した。

 

相変わらずである。

 

だが確認してみると本当に三度ほどずれていた。

 

もはや驚かない。

 

昼休み。

 

港の木箱へ腰掛けながら島民達が休憩していた。

 

話題は当然見張り台のことになる。

 

「しかし本当に海賊なんて来るのかねぇ」

 

年配の漁師が呟いた。

 

「俺は見たことないぞ」

 

「俺もだ」

 

周囲から同意の声が上がる。

 

この島は平和だった。

 

少なくとも今までは。

 

その時だった。

 

「来ないならそれが一番ですよ」

 

レインがそう言った。

 

全員の視線が集まる。

 

レインは海を見ながら続けた。

 

「でも来てから準備を始めても遅いです」

 

「火事もそうでしょう?」

 

「燃えてから井戸を掘る人はいません」

 

島民達は静かになった。

 

確かにその通りだった。

 

誰も海賊が来て欲しいわけではない。

 

だが来た時に守れる保証も無い。

 

午後になると工事はさらに進んだ。

 

夕方には骨組みの大半が完成する。

 

高い。

 

想像以上に高い。

 

島の建物を見下ろせるほどだった。

 

「おぉ……」

 

見上げた島民達から感嘆の声が漏れる。

 

港の責任者も驚いていた。

 

「こんな高さになるとはな」

 

「これならかなり遠くまで見えそうだ」

 

そして数日後。

 

見張り台は完成した。

 

港の入り口を見下ろす場所に堂々と立っている。

 

レイン達は早速最上階へ登った。

 

階段を上り切ると視界が一気に開ける。

 

「すごい……」

 

ルークが思わず声を漏らした。

 

今まで見えていなかった海が見える。

 

水平線の向こうまで見渡せる。

 

港の見張り台とは比べ物にならない。

 

「確かにこれは凄いな」

 

父も感心していた。

 

長老も頷く。

 

「これなら船を早く見つけられそうじゃ」

 

皆が満足そうに海を眺める。

 

その時だった。

 

見張り役の男が遠くを指差した。

 

「あれ?」

 

全員がそちらを見る。

 

水平線の向こう。

 

小さな点のような影が見えた。

 

船だった。

 

「商船か?」

 

父が呟く。

 

「多分な」

 

レインもそう答えた。

 

距離が遠すぎる。

 

旗も見えない。

 

おそらく普通の商船だろう。

 

今のところ特に問題は無い。

 

だが、見張り台が無ければ、あの船に気付くのはもっと後だったはずだ。

 

レインは静かに頷いた。

 

まずは一つ目。

 

準備は確実に進んでいる。

 

海賊が来ないなら、それで良い。

 

だが来たとしても、以前よりは確実に対応できる。

 

十歳の船大工は、少しずつ島の未来を変え始めていたのだった。

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