ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
見張り台が完成してから一週間後。
島の人々は、その効果を早くも実感していた。
今までなら港へ入ってくる船が見える頃には、既に接岸の準備を始めなければならなかった。
しかし今は違う。
見張り台から船影を発見できるため、かなり余裕を持って準備ができるようになっていた。
港の責任者などは毎日のように見張り台へ登っている。
「便利だな、これ」
その言葉を聞くたびにレインは少し嬉しくなった。
発明家として、自分の考えたものが役に立つ瞬間は何度見ても気分が良い。
そんなある日、レインは再び長老の家へ呼ばれていた。
集まっている顔ぶれは先日の会議とほぼ同じだった。
長老。
父。
港の責任者。
採掘場の責任者。
そしてルーク。
長老は上機嫌だった。
「見張り台は大成功じゃな」
「そうですね」
レインも頷く。
予想以上の成果だった。
「そこでじゃ」
長老が続ける。
「次は何を作るんじゃ?」
その言葉に全員の視線がレインへ向く。
会議の時に話した海賊対策はまだ終わっていない。
見張り台は第一段階。
次がある。
レインは用意していた紙を机へ広げた。
「警報鐘です」
島民達は顔を見合わせる。
鐘。
それ自体は珍しくない。
寺や教会がある島なら普通に存在する。
だが、この島には無かった。
必要が無かったからだ。
「鐘を鳴らすだけでそんなに変わるか?」
港の責任者が尋ねる。
レインは頷いた。
「変わります」
「例えば見張り台から海賊船を発見したとします」
レインは地図を指差す。
「今だとどうなりますか?」
「誰かが走って伝えるな」
父が答える。
「そうです」
レインは頷いた。
「港から村まで走る」
「工房へ知らせる」
「採掘場へ知らせる」
「漁師へ知らせる」
「その間に海賊船は近付いてきます」
部屋が静かになる。
確かにその通りだった。
「だから鐘を鳴らします」
レインは続ける。
「島の中央に一つ」
「港に一つ」
「採掘場の近くに一つ」
「合計三つ」
長老達が驚く。
予想より大掛かりだったからだ。
「しかも鳴らし方を決めます」
「鳴らし方?」
ルークが首を傾げる。
レインは紙へ簡単な図を書く。
「三回なら商船」
「五回なら緊急招集」
「十回なら海賊襲来」
「みたいに意味を決めるんです」
父が目を見開いた。
「なるほど」
「音だけで分かるのか」
「そうです」
レインは笑う。
その場にいた全員が感心していた。
単純な仕組みだ。
だが効果は大きい。
島中へ情報を一瞬で伝えられる。
今まで誰も考えなかっただけだった。
会議の結果。
満場一致で可決された。
早速工房が製作を担当することになる。
問題は鐘そのものだった。
この島には鐘を作った経験のある者がいない。
そこで全員の視線が自然とレインへ向く。
「作れるか?」
父が聞く。
「多分」
レインは即答した。
数日後。
工房では巨大な鐘の製作が始まった。
従業員達も興味津々だった。
「鐘ってどうやって作るんですか?」
「俺も知らん」
「俺もだ」
職人達がざわついている。
レインは図面を描きながら説明した。
前世の知識と、この世界の技術を組み合わせた設計だった。
ルークは図面を見て感心する。
「こんなのまで知ってるんですね」
「前から興味があったんだ」
半分嘘で半分本当だった。
前世で動画を見たことがある。
それが役立っている。
それから約二週間。
島初の警報鐘が完成した。
巨大だった。
大人三人分ほどの高さがある。
磨き上げられた金属が太陽の光を反射していた。
設置の日。
島中の人々が集まった。
子供達も興味津々で見上げている。
長老が嬉しそうに言った。
「鳴らしてみるかの」
レインは頷く。
そして鐘撞き棒を持ち上げる。
ゴォォォォォン……
重厚な音が島中へ響いた。
港を越え。
村を越え。
森へ届く。
採掘場へ届く。
誰もが思わず空を見上げた。
「すげぇ……」
誰かが呟く。
その言葉に全員が頷いた。
今まで聞いたことのない音だった。
島全体を包み込むような音。
これならどこにいても聞こえる。
レインは満足そうに鐘を見上げた。
見張り台。
警報鐘。
少しずつだが準備は進んでいる。
海賊が来ないならそれで良い。
だが来た時は違う。
以前よりずっと早く動ける。
以前よりずっと守れる。
夕暮れ。
鐘が夕日に照らされる。
その姿を見ながらレインは次の計画を考えていた。
防壁。
避難経路。
備蓄。
まだやることは沢山ある。
十歳の船大工は、今日も未来のために頭を回し続けるのだった。