ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第六十九話 「迎撃準備」

 

海賊旗が確認された。

 

その事実は瞬く間に島中へ広がった。

 

見張り台の上には重苦しい空気が流れている。

 

先日の誤報騒ぎとは違う。

 

今度は本物だった。

 

水平線の向こうには確かに海賊船が存在している。

 

そして、その船は真っ直ぐこちらへ向かっていた。

 

長老は海を見つめたまま静かに口を開く。

 

「レイン」

 

「何だ?」

 

「お前の備えが役立つ時が来たようじゃな」

 

レインは頷いた。

 

嬉しくはない。

 

だが、想定していた事態だった。

 

むしろ来ない方がおかしいと思っていた。

 

問題はどう動くかである。

 

「まずは十回です」

 

レインは即座に答えた。

 

長老も頷く。

 

迷いは無かった。

 

数分後、島中へ重い鐘の音が響き渡る。

 

ゴォォォォォン

 

一回。

 

ゴォォォォォン

 

二回。

 

ゴォォォォォン

 

三回。

 

島の人々が動きを止める。

 

ゴォォォォォン

 

四回。

 

五回。

 

六回。

 

七回。

 

八回。

 

九回。

 

そして。

 

ゴォォォォォン

 

十回目。

 

海賊襲来を意味する警報だった。

 

島中が騒然となる。

 

子供達は不安そうな顔をする。

 

母親達は急いで家へ戻る。

 

漁師達は港へ向かう。

 

工房の職人達も作業を止めて集まり始めた。

 

しかし、混乱は起きていなかった。

 

それがレインの作った仕組みの成果だった。

 

鐘の意味を決めていた。

 

避難場所も決めていた。

 

何をするべきかも共有していた。

 

だから皆が動ける。

 

港へ戻ると父が男達を集めていた。

 

漁師。

 

職人。

 

採掘場の作業員。

 

島の男達が次々に集まる。

 

武器と呼べる物は少ない。

 

斧。

 

槍。

 

つるはし。

 

鍛冶用のハンマー。

 

それでも何も持たないよりは良かった。

 

ルークもやって来る。

 

その手には工具袋が握られていた。

 

「レインさん」

 

「どうした?」

 

「工房の連中も集まってます」

 

振り返ると従業員達が立っている。

 

皆緊張した顔をしていた。

 

それでも逃げようとはしない。

 

「ありがとう」

 

レインは短く答えた。

 

その一言だけで十分だった。

 

長老が全員を見渡す。

 

年寄りとは思えない力強い目だった。

 

「落ち着け」

 

その一言で周囲が静かになる。

 

長年島をまとめてきた人物の重みがあった。

 

「まずは情報じゃ」

 

「相手の人数も分からん」

 

「慌てる必要は無い」

 

誰もが頷いた。

 

恐怖はある。

 

だが、パニックになってはいない。

 

その時だった。

 

見張り役が叫ぶ。

 

「船が近付いてきました!」

 

全員が海を見る。

 

まだ距離はある。

 

だが確実に近付いている。

 

先程より船影が大きい。

 

レインは見張り台へ登った。

 

もっと詳しく確認したかった。

 

父も長老も後に続く。

 

高所から海を見渡す。

 

風が強い。

 

海賊船はゆっくりと進んでいた。

 

焦る様子は無い。

 

獲物を見つけた捕食者のようだった。

 

「人数は?」

 

レインが尋ねる。

 

見張り役は目を細める。

 

「二十……いや三十くらいです!」

 

三十。

 

島の人口から考えれば十分な脅威だった。

 

「武器は?」

 

「剣や斧が見えます!」

 

レインは静かに頷く。

 

予想通りだ。

 

「大砲は?」

 

見張り役はしばらく観察する。

 

やがて首を振った。

 

「見えません!」

 

その言葉にレインは少しだけ安心した。

 

もし大砲があれば厄介だった。

 

防壁も見張り台も意味が薄くなる。

 

長老が尋ねる。

 

「どうじゃ?」

 

レインは少し考える。

 

そして答えた。

 

「防壁は閉じましょう」

 

「避難も開始です」

 

「男達は港へ残る」

 

長老は頷いた。

 

「よし」

 

命令が飛ぶ。

 

島民達が動き始める。

 

港の入口では巨大な鉄鎖が引き上げられる。

 

ガチャガチャと金属音が響く。

 

レインが考案した防壁だった。

 

普段は海中へ沈めてある。

 

だが緊急時には引き上げられる。

 

港の入口を塞ぐためだ。

 

「上がったぞ!」

 

誰かが叫ぶ。

 

防壁が完成する。

 

島民達から安堵の声が漏れた。

 

レインは静かに海を見つめた。

 

心臓は早くなっている。

 

怖くないわけではない。

 

前世を含めても初めての海賊である。

 

だが、不思議と頭は冷静だった。

 

(まずは相手を知る)

 

それが最優先だった。

 

戦うか。

 

逃げるか。

 

交渉するか。

 

その判断は情報が無ければできない。

 

その時だった。

 

見張り役が再び叫ぶ。

 

今度は声が震えていた。

 

「確認!」

 

全員の視線が集まる。

 

「鉄斧の紋章です!」

 

空気が凍り付く。

 

レインの脳裏に新聞記事が浮かぶ。

 

東の海で暴れる海賊。

 

懸賞金八百万ベリー。

 

商船襲撃。

 

略奪。

 

死傷者多数。

 

鉄斧のバルド。

 

ついに、その名の海賊が目の前へ現れようとしていた。

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