ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
東の海とある海域...
一隻の海賊船が海を進んでいた。
船首には巨大な鉄斧の紋章。
黒い海賊旗が風を受けてはためいている。
周囲の船乗り達がその旗を見れば、すぐに進路を変えるだろう。
それほどまでに恐れられている海賊団だった。
船の中央。
酒樽の上へ腰掛けている大男がいた。
身長は二メートルを優に超える。
鍛え上げられた肉体。
右肩には大きな傷跡。
そして背中には巨大な戦斧を背負っている。
鉄斧のバルド。
懸賞金八百万ベリー。
東の海では名の知れた海賊だった。
「船長!」
見張り役が叫ぶ。
「島が見えてきやした!」
バルドはゆっくり顔を上げる。
前方には小さな島影が見えた。
今回の獲物である。
「ただの田舎島ですぜ」
部下の一人が笑う。
「商船から聞いた話じゃ、最近景気が良いらしいです」
「へぇ」
バルドは興味無さそうに返事をする。
重要なのはそこではない。
金があるか。
奪えるか。
それだけだった。
「鉱山もあるとか」
「ほう」
「船大工の島らしいです」
「そりゃ運がいいな」
バルドが笑う。
船大工の島なら工具も金属も手に入る。
海賊にとっては上等な獲物だった。
「船長」
別の部下が口を開く。
「抵抗してきますかね?」
その言葉に船上が笑いに包まれた。
「こんな田舎島がか?」
「無理だろ」
「俺達は鉄斧海賊団だぞ」
「泣きながら金を差し出すのが関の山だ」
誰も本気で抵抗されるとは思っていなかった。
今までもそうだった。
旗を見せれば終わる。
それが海賊団の日常だった。
だが、島へ近付くにつれて、部下達の表情が少しずつ変わり始める。
「……あれ?」
見張り役が首を傾げた。
「どうした?」
「船長」
男は目を細める。
「何かあります」
バルドも前方を見る。
最初は分からなかった。
だが距離が縮まるにつれて見えてくる。
高い建造物。
「見張り台か?」
部下の一人が呟く。
普通の島なら珍しくない。
だが、それにしては妙に立派だった。
さらに近付く。
すると今度は鐘の音が聞こえてきた。
ゴォォォォォン……
重い音が海の上まで響いてくる。
一度。
二度。
三度。
四度。
五度。
「何だ?」
海賊達の笑顔が消える。
ゴォォォォォン……
鐘は止まらない。
六度。
七度。
八度。
九度。
十度。
島全体へ警報を発しているようだった。
「船長」
部下が言う。
「俺達、見つかってます」
バルドは黙った。
普通の島ではない。
そのことだけは理解できた。
さらに船が近付く。
港の様子が見えてきた。
そこで海賊達は完全に言葉を失う。
「おい……」
誰かが呟く。
「港が閉まってるぞ」
そこには巨大な鉄鎖が張られていた。
港の入口を完全に塞いでいる。
しかも即席ではない。
明らかに事前に準備されていた設備だった。
「何だあれは」
部下達がざわつく。
「海軍か?」
「いや違うだろ」
「海軍の旗は無い」
「じゃあ何だ?」
誰も答えられなかった。
バルドは静かに港を観察する。
人影も見えた。
逃げ惑っている様子はない。
むしろ集まっている。
何かがおかしい。
「船長」
副船長格の男が近付いてくる。
「どうします?」
バルドはしばらく考えた。
そして口元を歪める。
「面白ぇ」
久しぶりだった。
ただ怯えて金を差し出すだけの相手ではない。
少なくとも何かを準備している。
それだけで少し興味が湧いた。
「近付けろ」
「いいんですか?」
「構わねぇ」
バルドは笑う。
「まずは話を聞いてやる」
海賊船がゆっくりと港へ近付く。
島側もその動きを見守っていた。
港では長老が立っている。
父がいる。
ルークがいる。
工房の職人達もいる。
そして、最前列にはレインがいた。
海賊船との距離が縮まる。
互いの顔が見える距離になった。
バルドは港を見渡す。
そこで一瞬だけ違和感を覚えた。
最前列にいるのが子供だったからだ。
だが今は気にしない。
まずは要求だ。
バルドは船首へ立つ。
巨大な斧を肩へ担ぐ。
そして大声で叫んだ。
「この島の責任者を出せ!!」
その声は港中へ響き渡った。
島の運命を左右する最初の交渉が、今まさに始まろうとしていた。