ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
海賊船と港を隔てるのは一本の鉄鎖だけだった。
波が静かに揺れている。
だが、その場にいる誰もが緊張していた。
港には島の男達が集まっている。
海賊船には鉄斧海賊団。
どちらも武器を手にしていた。
戦いが始まるのは時間の問題に思えた。
そんな中、レインだけは冷静だった。
もちろん怖くないわけではない。
前世を含めても、本物の海賊を相手にするのは初めてだ。
だが、恐怖で頭が真っ白になることはなかった。
むしろ逆だった。
頭は異様なほど冴えている。
(まずは情報だ)
レインは目の前の海賊達を観察する。
人数は約三十。
大砲は確認できない。
武器は剣や斧が中心。
船の状態は悪くない。
つまり、最近大きな戦闘はしていない可能性が高い。
そして、船首に立つ男。
鉄斧のバルド。
体格は圧倒的だった。
父よりも大きい。
鍛えられた肉体。
戦い慣れた雰囲気。
少なくとも今の自分一人では勝てない。
それだけは分かった。
「この島の責任者を出せ!!」
再びバルドの声が響く。
レインは一歩前へ出た。
「話なら俺が聞く」
海賊達が笑う。
予想通りの反応だった。
だが、レインは気にしない。
「坊主」
バルドが笑う。
「お前、この状況分かってんのか?」
「分かってる」
レインは答えた。
「鉄斧のバルド」
「懸賞金八百万ベリー」
「東の海で商船を襲っている海賊」
バルドの目が少し細くなる。
新聞を読んでいることに驚いたのだろう。
「だったら話は早ぇ」
バルドは斧を肩へ担ぐ。
「金を出せ」
「食料もだ」
「金属も寄越せ」
「そうすりゃ見逃してやる」
島民達の顔が曇る。
だがレインは即答しなかった。
代わりに、一つ質問をした。
「聞きたいことがある」
バルドが眉をひそめる。
「何だ?」
「何のために海賊をしてる?」
海賊達が一瞬固まった。
そして次の瞬間、大笑いした。
「何だその質問!」
「決まってるだろ!」
「金だ!」
誰かが叫ぶ。
周囲から笑い声が上がる。
レインは内心で頷いた。
予想通りだった。
思想家ではない。
革命家でもない。
快楽殺人者でもない。
金目的。
それなら話は単純だった。
「なら計算してみろ」
レインが言う。
今度は海賊達が首を傾げる。
「計算だと?」
「そうだ」
レインは続ける。
「この島を襲う」
「怪我人が出る」
「船も損傷する」
「補給も必要になる」
「海軍に見つかる可能性も上がる」
バルドは黙って聞いている。
「その結果、手に入る利益はいくらだ?」
港が静かになる。
島民達も驚いていた。
まさかこんな話になるとは思わなかったのだ。
レインはさらに続ける。
「俺は商人だ」
「だから分かる」
そして海賊船を見る。
「本当に欲しいのは略奪か?」
一拍置く。
「それとも金か?」
バルドが少しだけ笑う。
面白い質問だと思ったらしい。
「違いがあるのか?」
「ある」
レインは即答した。
「略奪は一回で終わる」
「取引は何度でもできる」
島民達がレインを見る。
ルークも苦笑した。
こんな状況でも商談を始めるのか。
この人は本当に変わっている。
「補給物資なら売れる」
「船の修理もできる」
「滑車もある」
「鉄製品もある」
レインは続けた。
「一度奪って終わるより」
「生かしておいた方が得じゃないか?」
バルドは腕を組む。
その表情からは何を考えているのか分からない。
だが、レインには一つだけ分かったことがあった。
この男は話を聞く。
少なくとも問答無用で襲ってくるタイプではない。
そこは収穫だった。
しかし、船の後方から笑い声が聞こえた。
「船長!」
若い海賊が叫ぶ。
「面倒ですよ!」
別の海賊も笑う。
「奪えばタダでしょう!」
船上が笑いに包まれる。
バルドは数秒黙った。
そして、大声で笑い始める。
「がはははは!!」
海面に響く豪快な笑い声。
「確かにな!」
レインは小さく息を吐いた。
予想していた。
交渉は失敗だ。
だが、目的は達成していた。
相手は金目的。
話は聞く。
だが最終的には力を選ぶ。
つまり、戦いは避けられない。
バルドが巨大な斧を持ち上げる。
「坊主」
低い声が響く。
「お前は面白い」
その言葉に周囲が静まる。
「だがな」
斧の切っ先が港へ向けられる。
「海は力が全てだ」
海賊達が歓声を上げる。
「最後に聞いてやる」
バルドが叫ぶ。
「差し出すか!」
「それとも戦うか!」
レインは迷わなかった。
「戦う」
その瞬間、海賊達が武器を抜く。
島民達も構える。
交渉は終わった。
情報収集も終わった。
残された選択肢は一つ。
戦いだった。
海風が吹き抜ける。
そして鉄斧海賊団と島の戦いが、ついに始まろうとしていた。