ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第七十七話 「戦いの後」

 

海賊との戦いから一夜が明けた。

 

島には久しぶりに静かな朝が訪れていた。

 

もっとも、平和とは程遠い状態だったが...

 

レインは自宅のベッドで目を覚ました。

 

全身が痛い。

 

右腕は包帯でぐるぐる巻きになっている。

 

肋骨も痛む。

 

顔にも傷が増えていた。

 

「痛っ……」

 

身体を起こした瞬間、思わず顔をしかめる。

 

昨日は興奮で気付かなかったが、改めて考えるとよく生きていたものだと思った。

 

部屋の扉が開く。

 

母だった。

 

「起きたの?」

 

「うん」

 

「無茶し過ぎよ」

 

母の目は少し赤かった。

 

昨日は相当心配したのだろう。

 

レインは苦笑する。

 

「ごめん」

 

「本当にそう思ってる?」

 

「少しは」

 

「少しなのね……」

 

母は呆れたようにため息を吐いた。

 

朝食を済ませると、レインは港へ向かった。

 

もちろん母には反対された。

 

しかし家で寝ている気にはなれなかった。

 

港へ到着すると、被害の大きさがよく分かった。

 

壊れた倉庫。

 

砕けた木箱。

 

折れた柵。

 

散乱する木材。

 

戦いの爪痕が至る所に残っている。

 

それでも島民達は既に復旧作業を始めていた。

 

「おっ、レイン坊!」

 

「無理するなよ!」

 

「昨日はありがとうな!」

 

次々と声を掛けられる。

 

レインは少しだけ困った顔をした。

 

助けたのは自分だけではない。

 

皆で守ったのだ。

 

港の中央では父と長老が話していた。

 

父の胸にも包帯が巻かれている。

 

レインを見ると苦笑した。

 

「お前も来たのか」

 

「父さんこそ」

 

「じっとしてられん」

 

それはお互い様だった。

 

しばらく三人で港を見回る。

 

幸い死者はいなかった。

 

重傷者はいる。

 

だが全員生きている。

 

それだけで十分奇跡だった。

 

その時、父がふとレインを見る。

 

「なあ」

 

「何?」

 

「お前ら、いつの間にそんなに強くなったんだ?」

 

レインは首を傾げた。

 

「お前ら?」

 

「ルークもだ」

 

ちょうどそこへルークがやって来た。

 

全身包帯だらけだった。

 

どう見ても重傷者である。

 

「ルーク、お前本当に安静にしてろよ」

 

「レインさんにだけは言われたくありません」

 

長老が吹き出した。

 

「確かにその通りじゃな」

 

父は苦笑しながら続ける。

 

「レインが体を鍛えているのは知っていた」

 

「だが、まさか海賊と殴り合うとは思わなかった」

 

そしてルークを見る。

 

「お前もだ」

 

「毎日何してたんだ?」

 

ルークはレインを見た。

 

レインもルークを見た。

 

何となく嫌な予感がする。

 

「言うか?」

 

「言います?」

 

父が眉をひそめる。

 

「何の話だ?」

 

レインは頭を掻いた。

 

「廃船を殴ってた」

 

沈黙。

 

父が固まる。

 

長老も固まる。

 

周囲で作業していた島民達まで固まった。

 

「……は?」

 

父が聞き返す。

 

「廃船を殴ってた」

 

レインは繰り返した。

 

「何で?」

 

「強くなるため」

 

「何で?」

 

「海を渡るため」

 

再び沈黙。

 

長老が頭を抱えた。

 

「お前さん達は何をやっとるんじゃ……」

 

ルークが申し訳なさそうに手を挙げる。

 

「ちなみに俺は一か月くらい前からです」

 

「は?」

 

父の声が裏返った。

 

「一か月!?」

 

「はい」

 

「レインは?」

 

「四か月くらい前から」

 

今度は父が頭を抱えた。

 

「四か月であそこまで強くなったのか……」

 

常識が崩れる音がした。

 

島民達も同じ顔をしている。

 

むしろ海賊より、そちらの方が驚きだった。

 

「まあ」

 

レインが言う。

 

「すごく痛かった」

 

「そういう問題じゃない」

 

父と長老の声が重なった。

 

港に笑い声が広がる。

 

昨日まで命懸けの戦いをしていたとは思えない光景だった。

 

その時だった。

 

港の見張り台から声が響く。

 

「船だー!」

 

全員が反射的に海を見る。

 

空気が一瞬で緊張した。

 

だが、見張り役が続ける。

 

「商船です!」

 

誰もが安堵の息を吐いた。

 

船はゆっくり港へ近付いてくる。

 

そして、その船を見たレインは目を見開いた。

 

「ガレスさんだ」

 

島へ到着した商船。

 

その船首には見覚えのある人物が立っていた。

 

ガレスである。

 

だが、彼は港の様子を見た瞬間、顔色を変えた。

 

壊れた倉庫。

 

傷だらけの島民達。

 

そして全身包帯だらけのレインとルーク。

 

嫌な予感しかしなかった。

 

船が接岸する。

 

ガレスは桟橋へ飛び降りた。

 

そして開口一番。

 

「おい」

 

レインを見ながら言う。

 

「鉄斧のバルドを追い返したって話は本当なのか?」

 

港が静まり返る。

 

どうやら、噂は既に広がり始めているらしかった。

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