ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
「鉄斧のバルドを追い返したって話は本当なのか?」
ガレスの言葉に港が静まり返った。
レイン達は顔を見合わせる。
そして父が苦笑した。
「追い返したというか……」
「皆で何とか戦って追い返した」
ガレスは額を押さえた。
「本当だったのか……」
その反応にレインは首を傾げる。
「そんなに驚くことですか?」
その瞬間、ガレスが信じられないものを見るような目でレインを見た。
「そんなに驚くことだと?」
思わず声が大きくなる。
「お前、本気で言ってるのか?」
レインはますます分からない。
海賊が来た。
戦った。
追い返した。
それだけの話だと思っていた。
しかし、ガレスは深くため息を吐く。
「お前達は自分達が何をしたか分かっていない」
「島を守った」
レインは答える。
「違う」
ガレスは首を振った。
「それだけじゃない」
港を見渡す。
壊れた倉庫。
傷だらけの島民達。
そして包帯だらけのレインとルーク。
全てが戦いの激しさを物語っていた。
「鉄斧のバルドは東の海じゃ有名人だ」
ガレスが言う。
「商人はもちろん知っている」
「海賊も知っている」
「賞金稼ぎも知っている」
「海軍だって知っている」
誰も口を挟まない。
「その海賊を追い返した島がある」
ガレスはレインを見る。
「噂にならないと思うか?」
レインは少し考えた。
そして、
「ああ……」
ようやく理解した。
ガレスは続ける。
「しかもだ」
「ただの島じゃない」
指差した先には見張り台。
警報鐘。
港の防壁。
巨大な滑車。
荷揚げ設備。
レインが作ってきた物ばかりだった。
ガレスはゆっくり歩きながら設備を見て回る。
「前に来た時より増えてるな」
「少しずつですが」
「少し?」
ガレスは笑った。
「これを少しと言うのはレイン、お前だけだ」
港の防壁へ近付く。
太い鉄鎖。
頑丈な支柱。
海賊船の侵入を防ぐ仕組み。
「そりゃ勝つわけだ」
ガレスは呟いた。
「普通の島じゃない」
「普通の海賊なら諦める」
そしてレインを見る。
「だが問題もある」
その言葉に長老が頷いた。
「じゃろうな」
ガレスは真剣な顔になる。
「これから人が来るぞ」
「人?」
「商人」
レインは頷く。
それは良いことだ。
だが、ガレスは続けた。
「海賊」
港が静まる。
「賞金稼ぎ」
さらに空気が重くなる。
「そして海軍だ」
レインの表情が変わった。
海軍。
そこまでは考えていなかった。
「何も悪いことはしてないですよ?」
「関係ない」
ガレスは即答した。
「海軍は強い奴が現れれば調べる」
「変わった島があれば調べる」
「有名になれば調べる」
レインは腕を組んだ。
確かにその通りだった。
ガープだってそうだ。
強い人材を見つければ放っておかない。
「もう無名の島じゃない」
ガレスの言葉は重かった。
レインは港を見渡す。
ガロアークの島。
自分が生まれ育った島。
平和で静かな島だった。
だが、見張り台を作った。
防壁を作った。
工房を大きくした。
特許制度まで作った。
そして海賊を撃退した。
気付けば、島は変わっていた。
長老が静かに笑う。
「今さらじゃな」
父も頷く。
「確かにな」
レインも苦笑した。
もう後戻りはできない。
ならば、前へ進むしかない。
その日の夜。
東の海のとある港町。
酒場では海賊達が酒を飲んでいた。
「おい」
一人の男が言う。
「聞いたか?」
「何をだ?」
「鉄斧のバルドだよ」
その名に周囲が反応する。
「何だ?」
「また商船でも襲ったのか?」
男は首を振った。
そして笑う。
「返り討ちだとよ」
酒場が静まり返った。
「は?」
「誰にだ?」
男は肩をすくめる。
「知らねぇ」
「ガロアークとかいう造船の島らしい」
その名前はまだ誰も知らない。
だがその日を境に、ガロアークの島、そしてレイン工房の名は、少しずつ東の海へ広がり始めるのだった。