ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第八十話 「海軍の英雄」

 

港へ集まった島民達は、ゆっくりと接近してくる海軍の軍艦を見つめていた。

 

海賊ではない。

 

それは分かっている。

 

だが安心できるわけでもなかった。

 

海軍がこんな小さな島へ来ることなど滅多にない。

 

ましてや、このタイミングである。

 

鉄斧海賊団を撃退してから一か月。

 

ガレスからも「海軍が来るかもしれない」と言われていた。

 

だからこそ、レインは嫌な予感しかしなかった。

 

軍艦がゆっくりと港へ接岸する。

 

島民達が固唾を飲んで見守る中、一人の男が船首から飛び降りた。

 

ドスンッ。

 

大きな音と共に着地する。

 

普通なら飛び降りない高さだったが、男は何事もなかったように立ち上がった。

 

大きい。

 

ただひたすら大きい。

 

二メートルを優に超える体格。

 

鍛え上げられた肉体。

 

そして犬を模した被り物。

 

レインは思わず呟く。

 

「本物だ……」

 

前世で漫画を読んでいた頃なら喜んでいたかもしれない。

 

だが今は違う。

 

目の前にいるのは憧れのキャラクターではない。

 

海軍本部中将。

 

海賊達が震え上がる怪物である。

 

ガープは島民達を見渡す。

 

そして一直線にレインの前まで歩いてきた。

 

「お前か」

 

低くもよく通る声だった。

 

「え?」

 

レインが返事をする。

 

するとガープは満面の笑みを浮かべた。

 

「海軍に入らんか?」

 

港が静まり返った。

 

レインも固まる。

 

父も固まる。

 

ルークも固まる。

 

長老も固まる。

 

数秒後、

 

「違うでしょガープ中将!!」

 

背後から海兵が叫んだ。

 

「何のために来たんですか!!」

 

ガープは目を丸くする。

 

「あー」

 

頭を掻きながら笑った。

 

「そうじゃったそうじゃった」

 

周囲の海兵達が頭を抱える。

 

どうやらいつものことらしい。

 

レインも思わず呆然としていた。

 

(本当にこの人ガープだ……)

 

漫画で見たままだった。

 

ガープは改めて咳払いをする。

 

「ゴホン」

 

そしてレインを見る。

 

「お前がレインか?」

 

「はい」

 

「十歳じゃったな?」

 

「そうです」

 

ガープは腕を組む。

 

しばらく無言でレインを見つめた。

 

その視線は鋭い。

 

まるで値踏みするような目だった。

 

レインは少し緊張する。

 

すると、ガープが突然笑った。

 

「なるほど」

 

「なるほど?」

 

「噂通り変なガキじゃな」

 

「失礼じゃないですか?」

 

「はっはっはっ!」

 

ガープは豪快に笑った。

 

周囲の海兵達も苦笑している。

 

父が前へ出た。

 

「海軍の方が何の用でしょうか?」

 

ガープは父を見る。

 

そして港を見回した。

 

修復された倉庫。

 

防壁。

 

見張り台。

 

警報鐘。

 

荷揚げ設備。

 

一つ一つを確認していく。

 

「なるほどな」

 

ガープは頷いた。

 

「確かによく考えられておる」

 

その言葉にレインは少し驚いた。

 

ガープは豪快な印象が強い。

 

だが本当は頭も切れる。

 

海軍本部中将なのだから当然だ。

 

「鉄斧海賊団との戦いについて聞きたい」

 

ガープが言う。

 

「本当にお前達だけで追い返したのか?」

 

父と長老が顔を見合わせる。

 

そして事情を説明し始めた。

 

防壁のこと。

 

見張り台のこと。

 

島民総出で戦ったこと。

 

そして最後に。

 

レインとルークが前線で戦ったこと。

 

ガープは黙って聞いていた。

 

途中で何度かレインを見る。

 

その度にレインは嫌な予感が増していった。

 

説明が終わる。

 

しばらく沈黙が流れた。

 

やがてガープが口を開く。

 

「やっぱり海軍に来んか?」

 

「またそれですか!?」

 

今度はレインが叫んだ。

 

海兵達からもツッコミが飛ぶ。

 

「ガープ中将!」

 

「話を戻してください!」

 

「む?」

 

ガープは不思議そうな顔をした。

 

「だって欲しいじゃろ」

 

その言葉に海兵達が一斉に頭を抱える。

 

レインも思わず額を押さえた。

 

(ルフィのおじいちゃんだなぁ……)

 

妙に納得してしまう。

 

ガープはレインへ近付く。

 

そして肩へ大きな手を置いた。

 

「レイン」

 

先ほどまでの軽い雰囲気が消える。

 

その場の空気が少し変わった。

 

「お前には才能がある」

 

ガープの目は真剣だった。

 

「技術者としても」

 

「人を動かす者としても」

 

「そして戦士としてもな」

 

レインは黙って聞く。

 

ガープほどの人物に言われると重みが違った。

 

「だが覚えておけ」

 

ガープはゆっくり続ける。

 

「有名になるということは狙われるということじゃ」

 

港が静まり返る。

 

「海賊も来る」

 

「賞金稼ぎも来る」

 

「もっと強い奴も来る」

 

その言葉は現実だった。

 

鉄斧海賊団は始まりに過ぎない。

 

この先、もっと強い敵が現れる。

 

それがワンピースの世界だ。

 

レインも理解していた。

 

だからこそ鍛えている。

 

だからこそ強くなろうとしている。

 

ガープはニヤリと笑った。

 

「まあ」

 

「お前なら何とかしそうじゃがな」

 

そう言うと豪快に笑い出した。

 

周囲の緊張も少し和らぐ。

 

しかしレインには分かっていた。

 

ガープはただ様子を見に来たわけではない。

 

何かを確かめに来たのだ。

 

そして、ガープ自身も気付いていた。

 

目の前の少年が、ただの天才発明家ではないことに。

 

東の海の片隅。

 

小さな島で起きた出来事。

 

だがその波紋は少しずつ広がり始めていた。

 

そしてその中心には、レインという少年がいた。

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