ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第八十一話 「ガープとレイン」

 

ガープの嫌な笑みを見た瞬間、レインは確信した。

 

この人は面倒臭い。

 

間違いなく面倒臭い。

 

前世で読んでいた漫画の中では豪快で頼もしい人物だった。

 

だが、実際に目の前へ現れると話は別だった。

 

何より、この男は強すぎる。

 

ガープは島へ上陸した後、防壁や見張り台を見て回っていた。

 

海兵達も興味深そうに周囲を見渡している。

 

その中で、ガープだけは時折レインへ視線を向けていた。

 

まるで何かを探しているようだった。

 

しばらく歩いた後、ガープがふと足を止める。

 

そこは島の外れにある廃船置き場だった。

 

「ん?」

 

ガープが一隻の廃船へ近付く。

 

船体には無数の凹みが刻まれていた。

 

割れた船板。

 

拳の形にへこんだ木材。

 

何度も殴られた痕跡。

 

レインの背中を冷や汗が流れた。

 

(やばい)

 

ガープは船体を撫でる。

 

そして静かに振り返った。

 

「レイン」

 

「はい?」

 

「誰に教わった?」

 

港が静まり返る。

 

父が首を傾げる。

 

ルークは嫌な予感がしたらしく、そっと目を逸らした。

 

レインは必死に平静を装う。

 

「何のことです?」

 

「これじゃ」

 

ガープが廃船を指差す。

 

「誰に教わった?」

 

レインの心臓が嫌な音を立てる。

 

当然だ。

 

軍艦バッグを考えた張本人が目の前にいる。

 

気付かない方がおかしい。

 

「いやぁ」

 

レインは頭を掻いた。

 

「たまたまです」

 

「たまたま?」

 

「はい」

 

「たまたま殴ってたらこうなりました」

 

沈黙。

 

父が固まる。

 

長老も固まる。

 

海兵達も固まる。

 

ルークは顔を覆った。

 

ガープも無言だった。

 

数秒後。

 

「ぶわっはっはっはっ!!」

 

突然の大爆笑。

 

海兵達が頭を抱える。

 

「絶対嘘ですよね?」

 

「どう考えても嘘ですよね?」

 

「ガープ中将、信じないでくださいよ?」

 

海兵達が口々に言う。

 

しかしガープは笑い続けていた。

 

「面白いガキじゃ!」

 

どうやら深く追及するつもりは無いらしい。

 

レインは内心で安堵した。

 

その時だった。

 

ガープがニヤリと笑う。

 

「レイン」

 

「何ですか?」

 

「ちょっと戦ってみんか?」

 

空気が止まった。

 

「は?」

 

レインが固まる。

 

父が固まる。

 

ルークが固まる。

 

長老が固まる。

 

海兵達だけが慣れた様子でため息を吐いた。

 

「始まった……」

 

「またですか……」

 

「中将、相手は十歳です」

 

ガープは気にしない。

 

「大丈夫じゃ」

 

「いや、大丈夫じゃないですよ!?」

 

レインが即座に反論した。

 

「相手ガープ中将ですよね?」

 

「そうじゃな」

 

「海軍の英雄ですよね?」

 

「そうじゃな」

 

「ロジャーと戦ってる人ですよね?」

 

「そうじゃな」

 

「何で俺が戦うんですか!?」

 

港に笑いが広がる。

 

ガープは腕を組む。

 

「お前が面白そうだからじゃ」

 

最低な理由だった。

 

「嫌です」

 

レインは即答した。

 

「即答じゃな」

 

「当たり前です」

 

「大丈夫じゃ」

 

ガープは笑う。

 

「死なん」

 

「死ぬかもしれませんよ!?」

 

再び港に笑いが起こる。

 

だが、ガープは真剣な目でレインを見る。

 

その視線を受けて、レインも少しだけ表情を引き締めた。

 

この人は本気だ。

 

遊び半分ではない。

 

何かを確かめようとしている。

 

レインにはそれが分かった。

 

ガープは拳を握る。

 

「安心せい」

 

「本気ではやらん」

 

「本当ですか?」

 

「多分」

 

「絶対嘘じゃないですか!」

 

海兵達が一斉に頷いた。

 

どうやら全員同意見らしい。

 

ガープは豪快に笑う。

 

そして港の空き地を指差した。

 

「ほれ」

 

「来い」

 

レインは盛大にため息を吐く。

 

逃げたい。

 

もの凄く逃げたい。

 

だが、ガープが相手だ。

 

逃げられる気もしなかった。

 

「レインさん」

 

ルークが肩を叩く。

 

「頑張ってください」

 

「他人事だな……」

 

レインは空を見上げた。

 

どうしてこうなった。

 

そう思いながらも、レインはゆっくりとガープの後を追い始めるのだった。

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