ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第八十四話 「新しい修行」

 

ガープが島を去った翌日。

 

まだ太陽も昇り切っていない早朝だった。

 

ガロアークの島は静寂に包まれている。

 

港にも人影はなく、波の音だけが静かに響いていた。

 

そんな中、一人の少年が家の扉を開く。

 

レインだった。

 

背中には水筒。

 

腰には小さなナイフ。

 

そして肩には簡単な荷物袋を背負っている。

 

軍艦バッグを始めた時以来の早起きだった。

 

「よし」

 

小さく呟き、歩き出す。

 

向かう先は島の中央にある山だった。

 

昨日の夜、レインは新しい修行計画を立てていた。

 

長距離走。

 

山登り。

 

水泳。

 

そして軍艦バッグの継続。

 

ガープとの手合わせで思い知らされたのだ。

 

今の自分はまだ弱い。

 

鉄斧のバルドにはルークと島のみんなでギリギリ勝てた。

 

しかし、それは東の海の中の話だ。

 

ガープには全く届かなかった。

 

あれほど全力で殴ったのに、一歩も動かせなかった。

 

思い出すだけで悔しい。

 

だから変わらなければならない。

 

もっと強く。

 

もっと速く。

 

もっと遠くへ行けるように。

 

レインは港を抜け、そのまま山道へ入っていく。

 

最初は軽快だった。

 

六歳の頃から筋トレと走り込みは続けている。

 

島でも体力だけなら上位に入る自信はあった。

 

しかし、山道は甘くなかった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

三十分も走る頃には息が上がり始める。

 

足場は悪い。

 

傾斜も急だ。

 

普段の平地を走るのとは全く違う。

 

額から汗が流れる。

 

足も重い。

 

それでも止まらない。

 

ガープの言葉が頭の中で何度も響いていた。

 

海は広い。

 

東の海で満足するな。

 

その言葉が妙に胸に残っていた。

 

やがて二時間ほど経った頃、レインは山頂へ辿り着いた。

 

「つ、着いた……」

 

その場へ座り込む。

 

息が苦しい。

 

足も震えている。

 

軍艦バッグとは違う辛さだった。

 

拳は痛くない。

 

だが全身が悲鳴を上げている。

 

少し休みながら顔を上げる。

 

そして、レインは思わず息を呑んだ。

 

「綺麗だな……」

 

山頂から見える景色は圧巻だった。

 

ガロアークの島全体が見渡せる。

 

港。

 

レイン工房。

 

採掘場。

 

森。

 

畑。

 

そして果てしなく広がる海。

 

自分が生まれ育った島。

 

毎日見ているはずなのに、こんな景色は初めてだった。

 

風が吹く。

 

心地良い潮風だった。

 

レインは静かに島を見下ろす。

 

ここが自分の故郷。

 

父がいる。

 

母がいる。

 

ルークがいる。

 

工房の仲間達がいる。

 

守りたいものがある。

 

だから強くなりたい。

 

ただそれだけだった。

 

しばらく景色を眺めた後、レインは立ち上がる。

 

「さて、帰るか」

 

その時だった。

 

ふと視界の端に違和感を覚えた。

 

「ん?」

 

山頂から少し奥。

 

木々に隠れた場所に何かが見える。

 

レインは首を傾げながら近付いた。

 

最初は岩だと思った。

 

しかし違った。

 

人の手が入った痕跡がある。

 

苔に覆われている。

 

長い年月を感じさせる。

 

レインは草をかき分けた。

 

すると、そこには古い石碑が立っていた。

 

「石碑……?」

 

表面は風化している。

 

文字らしきものも見える。

 

しかし読めない。

 

いや、正確には見たことがない文字だった。

 

レインの表情が変わる。

 

心臓が少し速くなる。

 

この世界で見たことのない文字。

 

そんなものは限られている。

 

「まさかな……」

 

嫌な予感と期待が混ざる。

 

レインは石碑へ手を触れた。

 

冷たい感触。

 

その瞬間だった。

 

石碑の根元に何かが埋まっていることに気付く。

 

土が少し盛り上がっている。

 

最近ではない。

 

かなり昔からそのままだ。

 

レインは周囲を見渡した。

 

誰もいない。

 

風の音だけが聞こえる。

 

そこに何が眠っているのか。

 

まだレインは知らない。

 

それが、自身の祖先と空白の百年へ繋がる最初の手掛かりになることを。

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