ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第九十一話「一か月の成果」

 

森の主と遭遇してから一か月が経った。

 

あの日の恐怖は今でも忘れていない。

 

目を閉じれば、あの金色の瞳を思い出せる。

 

森を震わせた咆哮も...

 

家ほどもある巨体も...

 

だが、だからこそレインは修行を続けていた。

 

いや、以前よりも遥かに真剣に取り組むようになっていた。

 

「はぁっ!」

 

拳を振るう。

 

乾いた音が響く。

 

目の前にある木へ何度も打ち込む。

 

最初の頃は数回殴るだけで痛みに顔を歪めていた。

 

しかし今は違う。

 

拳の皮は厚くなり、以前より強く打ち込めるようになっていた。

 

走り込みも続けている。

 

毎朝の日課だ。

 

距離も速度も一か月前とは比べ物にならない。

 

もちろん、まだまだ足りない。

 

それでも成長している実感はあった。

 

大きな変化は工房だった。

 

ルークへ任せる仕事が増えたのである。

 

技術部門責任者としての仕事だけではない。

 

作業員達への指示。

 

進捗確認。

 

材料管理。

 

品質確認。

 

今では多くの業務をルークが中心となって回していた。

 

おかげでレイン自身の時間が増えた。

 

その時間を全て修行へ注ぎ込んでいる。

 

工房を出たレインは森へ向かった。

 

腰にはナイフ。

 

背中にはロープ。

 

一か月前とは違う。

 

今では狩りも修行の一部になっていた。

 

獣の気配を探す。

 

風向きを読む。

 

足跡を見つける。

 

全てが実戦経験になる。

 

しばらく歩くと足跡を発見した。

 

大きい。

 

ウサギではない。

 

鹿ほどではないが、それなりの大きさがある。

 

レインはしゃがみ込んだ。

 

地面の状態を確認する。

 

新しい。

 

それほど時間は経っていない。

 

周囲を見渡す。

 

折れた枝。

 

踏み荒らされた草。

 

進行方向。

 

少しずつ分かるようになってきた。

 

一か月前の自分なら見逃していただろう。

 

レインは足跡を追った。

 

十分ほど進んだ頃。

 

草むらの向こうに動く影を見つける。

 

イノシシだった。

 

前世の世界にも存在した動物だが、この世界のものは少し大きい。

 

体長は一メートルを超えている。

 

十分危険な相手だ。

 

だが、一か月前ほどの恐怖はなかった。

 

レインはゆっくり距離を詰める。

 

風下へ回る。

 

音を立てない。

 

慎重に。

 

確実に。

 

イノシシはまだ気付いていない。

 

そして距離が十分に縮まった瞬間。

 

レインは飛び出した。

 

イノシシが驚いて走り出す。

 

だがレインも追う。

 

以前なら追いつくことすらできなかった。

 

しかし今は違う。

 

足が速くなっている。

 

体力も増えている。

 

森の中を駆け抜けながら距離を縮める。

 

イノシシが方向を変える。

 

レインも追従する。

 

木々を避けながら走る。

 

息は乱れない。

 

やがてイノシシの動きが鈍る。

 

そこでレインは飛び掛かった。

 

二人分ほど転がりながら地面へ倒れる。

 

イノシシが暴れる。

 

レインは必死に押さえ込む。

 

腕が痛い。

 

力も強い。

 

それでも離さない。

 

数分後。

 

ようやく動きが止まった。

 

レインはその場へ座り込む。

 

汗が止まらない。

 

だが顔には笑みが浮かんでいた。

 

「勝った……」

 

一か月前の自分には無理だった。

 

間違いなく成長している。

 

まだ森の主には遠く及ばない。

 

それでも確実に前へ進んでいる。

 

その事実が嬉しかった。

 

夕方。

 

レインは獲物を担いで工房へ戻った。

 

作業員達が驚いた顔をする。

 

「おお!」

 

「坊主、やったな!」

 

「結構大きいじゃねぇか!」

 

次々と声が飛ぶ。

 

レインは少し照れ臭くなった。

 

その時だった。

 

奥からルークがやってくる。

 

獲物を見るなり目を丸くした。

 

「レインさん、とうとうイノシシまで狩ってきたんですか」

 

「その反応は酷くないか?」

 

「いえ、いずれ成功するとは思っていましたが……」

 

ルークはイノシシを見て苦笑した。

 

「思ったより大物だったので」

 

その言葉にレインは胸を張る。

 

「少しは成長しただろ?」

 

「はい」

 

ルークは素直に頷いた。

 

「かなり成長されたと思います」

 

その一言が嬉しかった。

 

最近は修行ばかりしている。

 

工房の仕事も減らしている。

 

正しい選択だったのか迷うこともあった。

 

だが今日だけは違う。

 

成長している。

 

確実に、それを実感できた。

 

夜。

 

家へ帰ったレインは一人で空を見上げていた。

 

満天の星空。

 

静かな海。

 

穏やかな夜だ。

 

レインは森の方角を見る。

 

あの奥には森の主がいる。

 

今でも勝てる気はしない。

 

だが、一か月前のような絶望感もなかった。

 

届かない壁ではない。

 

まだ遠いだけだ。

 

レインは拳を握る。

 

「もっと強くなる」

 

その声は静かだった。

 

だが決意は揺るがない。

 

森の主へ辿り着くまで。

 

そして、その先へ進むために、レインの修行は、まだ始まったばかりだった。

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