ONE PIECE 〜船大工レイン〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第五章
第九十七話「見えた道」


 

ガレスが島を訪れてから数日後。

 

今回の取引も無事に終わっていた。

 

鉄製品や工具類を船へ積み込み、代金を受け取る。

 

今ではすっかり慣れた光景だ。

 

工房も順調に成長している。

 

採掘事業は安定し、作業員達も経験を積み、ルークも責任者として十分な働きを見せていた。

 

「今回も助かったぞ」

 

荷物の確認を終えたガレスが満足そうに頷く。

 

「こちらこそ、ありがとうございます」

 

レインも笑顔で頭を下げた。

 

ガレスは工房を見回す。

 

以前来た時よりも活気がある。

 

作業員の数も増えた。

 

扱う仕事の規模も大きくなっている。

 

「工房、本当に大きくなったな」

 

しみじみとした口調だった。

 

「まだまだですよ」

 

レインは苦笑する。

 

工房は成長した。

 

だが、自分が目指している場所はもっと先にある。

 

船を造りたい。

 

空を飛ぶ船を。

 

そして世界中を自由に渡れる技術を作りたい。

 

今はまだ、その入口にも立てていないと思っていた。

 

「お前は本当に欲張りだな」

 

「褒め言葉として受け取っておきます」

 

「そうしておけ」

 

ガレスは豪快に笑った。

 

やがて積み込みが終わる。

 

船員達が出港準備を始めた。

 

ガレスは船へ乗り込む前に振り返る。

 

「じゃあな、レイン」

 

「お気を付けて」

 

「次に来る時までには、また何かやらかしてそうだな」

 

「失礼ですね」

 

レインが苦笑すると、ガレスは声を上げて笑った。

 

そのまま船はゆっくり港を離れていく。

 

レインは船が見えなくなるまで見送った。

 

港に残されたレインは、そのまま海岸へ向かう。

 

夕日が海を赤く染めていた。

 

穏やかな波が砂浜を撫でる。

 

潮風が心地良い。

 

レインは適当な岩へ腰を下ろした。

 

そして自然と、あの日のことを思い出していた。

 

虎との戦いだ。

 

巨大な体。

 

鋭い牙。

 

自分を獲物として見つめていた黄金の瞳。

 

今思い返しても恐ろしい。

 

普通なら死んでいてもおかしくなかった。

 

実際、あの時の自分は死を覚悟していた。

 

だが、それ以上に気になることがある。

 

レインは自分の拳を見る。

 

あの日、確かに見た。

 

自分の腕が黒く染まっていた。

 

手首から先が漆黒に変わっていたのだ。

 

最初は見間違いかと思った。

 

だが違う。

 

何度思い返しても、あれは現実だった。

 

「あれって……」

 

レインは小さく呟く。

 

答えはほぼ分かっている。

 

前世の知識があるからだ。

 

武装色の覇気。

 

ワンピースの世界で強者達が使う力。

 

体を硬化させ、攻撃力と防御力を大きく向上させる技術。

 

もしあの黒い腕が武装色だとしたら。

 

虎を一撃で倒した説明もつく。

 

レインは深く息を吐いた。

 

「多分、武装色だよな」

 

口に出してみる。

 

やはり違和感はない。

 

むしろ一番納得できる答えだった。

 

だが不思議なのは、それだけではない。

 

虎が襲い掛かってきた時の感覚。

 

あれも異常だった。

 

時間が遅くなったように感じた。

 

もちろん本当に時間が止まったわけではない。

 

だが周囲の景色が異様なほど鮮明に見えた。

 

虎の筋肉の動き。

 

重心の移動。

 

視線。

 

呼吸。

 

全てが理解できた。

 

そして何より、次にどこから攻撃が来るのかが分かった。

 

見えていたわけではない。

 

感じていたのだ。

 

自然と。

 

当たり前のように。

 

レインは眉をひそめた。

 

「見聞色か……」

 

こちらも思い当たるものは一つしかない。

 

未来予知ほどではない。

 

だが相手の動きを先読みする。

 

気配を察知する。

 

それは間違いなく見聞色の特徴だった。

 

つまり、あの日の自分は武装色と見聞色を同時に発現させた可能性が高い。

 

そこまで考えたところで、レインは苦笑した。

 

「いや、問題はそこじゃないんだよな」

 

武装色だった。

 

見聞色だった。

 

それは良い。

 

問題はその先だった。

 

再現できないのだ。

 

何度試しても黒くならない。

 

集中しても見えるようにならない。

 

修行中に何度も試した。

 

だが結果は同じだった。

 

何も起きない。

 

あの日だけ。

 

あの瞬間だけ。

 

まるで奇跡のように使えただけだった。

 

レインは砂浜から海へ小石を投げる。

 

小石は海面を数回跳ねて沈んだ。

 

「極限状態だったからか?」

 

最も可能性が高い。

 

本気で死を覚悟した。

 

虎に襲われた。

 

だから眠っていた力が目覚めた。

 

そう考えれば辻褄は合う。

 

だが、

 

「それじゃ駄目だ」

 

レインは首を振った。

 

極限状態でしか使えない力に意味はない。

 

毎回死にかけるわけにはいかないのだ。

 

本当に必要なのは、いつでも使えること。

 

戦いたい時に使えること。

 

守りたい時に使えること。

 

それができて初めて力になる。

 

レインはゆっくり立ち上がった。

 

海の向こうを見る。

 

この先、自分は島を出る。

 

世界へ出る。

 

海賊もいる。

 

海軍もいる。

 

強者もいる。

 

森の主など比較にならない怪物達もいるだろう。

 

そんな世界で生きるなら、覇気は必須だ。

 

幸い希望はある。

 

一度できた。

 

それだけで十分だった。

 

一度できたということは、才能がないわけではない。

 

方法さえ見付ければ、もう一度できる。

 

二度目ができれば三度目もある。

 

やがて自由に使えるようになるはずだ。

 

レインは拳を握る。

 

「まずは再現だな」

 

やるべきことは決まった。

 

技術も磨く。

 

工房も発展させる。

 

修行も続ける。

 

そして覇気を使いこなせるようになる。

 

やることは増えた。

 

だが嫌ではない。

 

むしろ楽しかった。

 

新しい目標ができたのだから。

 

レインは小さく笑う。

 

そして工房へ向かって歩き始めた。

 

夕日に照らされたその背中には、確かな決意が宿っていた。

 

いつか自由自在に覇気を扱うために...

 

そして、この世界で生き抜くために...

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