ONE PIECE 〜船大工レイン〜 作:ペンギンって可愛いですよね
第九十八話「造船技術会社レイン商会」
虎を倒してから二年...
レインは十二歳になっていた。
あの日から、彼は工房の仕事だけでなく修行にも本気で取り組んでいた。
朝は走り込みから始まり、仕事の合間には筋力鍛錬、夜には見聞色の訓練を続ける。
父やルークが寝静まった後も、一人で森へ入り、気配を探る訓練を繰り返した。
その努力は確実に実を結んでいた。
武装色の覇気は既に実戦で使えるレベルに到達している。
まだ達人には程遠いものの、普通の海賊程度なら十分対抗できる。
そして見聞色はさらに異常な成長を見せていた。
工房の屋根に座り、静かに意識を集中させる。
すると島中の気配が伝わってくる。
港で魚を運ぶ漁師。
森の中を駆ける獣。
採掘場で働く作業員。
鍛冶場で金属を打つ職人。
島のどこで誰が何をしているのか、おおよその位置なら把握できるようになっていた。
「我ながら化け物じみてきたな……」
レインは苦笑する。
前世の知識。
船大工としての技術。
そして覇気。
少しずつではあるが、この世界で生き抜く力が揃い始めていた。
そんなある日のことだった。
島の広場に大勢の人々が集まっていた。
工房が設立されてから二年。
採掘事業、鍛冶事業、木工事業、造船事業。
島の産業は大きく発展し、レイン工房はもはや一つの工房と呼べる規模ではなくなっていた。
従業員は百人を超えている。
東の海から仕事の依頼も来るようになっていた。
広場に設置された壇上へ父が上がる。
島民たちの視線が集まった。
「皆、今日は集まってくれてありがとう」
静まり返る広場。
父はゆっくりと周囲を見渡した。
「レイン工房は今日、新たな組織へ生まれ変わる」
ざわめきが広がる。
島民たちも何か大きな発表があることは察していた。
しかし内容までは知らない。
父は隣に立つレインへ視線を向けた。
「レイン」
「はい」
レインが一歩前へ出る。
そして大きく息を吸った。
「本日をもってレイン工房は――」
一瞬の静寂。
「造船技術会社レイン商会になります」
歓声が爆発した。
「おおおおおお!」
「ついに商会か!」
「すげぇ!」
「いや、今まで工房だったのが不思議なくらいだ!」
島民たちは大盛り上がりだった。
レインが十歳で始めた小さな工房。
それがたった二年で島最大の企業へ成長したのだ。
父は笑みを浮かべながら続ける。
「そしてもう一つ発表がある」
再び広場が静まる。
「本日をもって私は社長を退任する」
ざわめきが起こる。
「えっ?」
「退任?」
「どういうことだ?」
父はレインの肩を軽く叩いた。
「新社長はレインだ」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、さらに大きな歓声が上がった。
「そうなると思ってた!」
「むしろ今まで違ったのか!」
「全部レインが考えてたじゃねぇか!」
父は苦笑する。
実際その通りだった。
設計も営業も経営方針もほとんどレインが決めていた。
今までは未成年という理由で父が代表を務めていただけだ。
「私は会長として支える」
「これからはレインがレイン商会を率いていく」
レインは島民たちを見渡した。
皆が期待に満ちた目で見ている。
責任は重い。
だが不思議と恐怖はなかった。
前世で会社経営をしていた経験がある。
やるべきことは分かっている。
「これからも島の発展のために頑張ります」
その言葉に大きな拍手が沸き起こった。
こうしてレインは十二歳にして社長となった。
その数日後、東の海全域へ一枚の新聞が広がる。
『東の海に現れた天才発明家』
『十二歳で商会社長就任』
『造船技術会社レイン商会設立』
『世界最年少社長誕生』
革新的な滑車技術。
効率的な採掘設備。
新しい造船技術。
そして十二歳という若さ。
新聞記者たちはこぞって記事を書いた。
話題は東の海だけに留まらない。
珍しいニュースは海を越え、グランドラインにも伝わっていく。
そしてその新聞を見ていた男がいた。
ウォーターセブン。
世界有数の造船都市。
一人の魚人が新聞を読みながら目を丸くしていた。
「ほう……」
トムは記事を読み進める。
やがて大きな口が笑みを浮かべた。
「ガハハハハハハ!」
豪快な笑い声が工房に響く。
「やりおったか!」
「やりおったぞレイン!」
数年前に出会った東の海の少年。
船の話を始めると止まらない変わり者。
だがその知識と発想力は本物だった。
その少年が今や商会の社長になったという。
しかも十二歳。
普通なら信じられない話だった。
しかしトムには分かる。
あいつならやる。
むしろ当然だ。
「ガハハハハ!」
「友達が出世すると嬉しいもんじゃ!」
トムは立ち上がった。
壁に掛けられていた工具箱を手に取る。
そして迷うことなく荷物をまとめ始めた。
「よし!」
誰に言うでもなく呟く。
「祝いに行くか!」
友達の門出だ。
祝わない理由などない。
数日後、一隻の船がウォーターセブンを出航する。
その行き先は東の海。
造船技術会社レイン商会。
そしてトムはまだ知らない。
再会した少年が、自分の想像を遥かに超える成長を遂げていることを――。