エクリプスカード、Reボードにおいてそれは最高レアリティを意味する。
最高レアリティといっても1箱に1枚確実に入っているため別に入手が難しいわけではない。
毎弾エクリプスカードが来るというわけではなく、年2枚ほどしか登場しない。
まぁこれ以上のペースで刷られたらReボードはインフレにインフレを重ねてRevoltボードなんてタイトルじゃなくてエクリプスボードとでも呼ばれているだろう。それほどエクリプスカードは環境をぶっ壊す。
俺がこちらに来るまでに生まれたエクリプスカード全ては殿堂カードに指定されており、デッキには1枚しかいれられないという制限が掛かっている。
全てといった通り、なーぜかこのエクリプス君は殿堂前提で作られたような気がしてならない。この感想に至らないプレイヤーは頭とち狂っているのでぶちのめしましょう4枚も使えていいわけないだろガキが。
とまぁこの通りエクリプスカードのプレイヤーからの認識は実質殿堂カードである。
そんな殿堂カード君は4枚使える時期が存在する…そう、次の殿堂までの期間である。次の殿堂…死刑宣告までの猶予期間なのかそれまではルール上4枚も使えてしまう。
この期間の大会はいつもそのエクリプスカードのデッキが環境を支配する…まぁ2回だけおかしいシーズンがあったが外れ値だから気にしないでおこう。
ここまで長々とエクリプスカードについて復習したが…結論から言うと4枚も使えていいわけないだろクソが。
…そろそろ現実を見よう。
コタツのデッキは恐らく純古龍海、水単体で構成されており、高いパワーのドラゴンを墓地から出し続けて押し切るテーマ。
盤面には既にドラグニルエクリプスが2枚、コスト軽減ができるドラグニルジュニアに、【二回行動】のヨルム。
エクリプスを覗けば別にまだ問題ない盤面であるが…ドラグニルエクリプスが2枚あるという事実。
それはコタツのデッキにはドラグニルエクリプスが4枚入っている可能性があるということ。
デッキ枚数は60枚、1体で12枚も使うためドラグニルエクリプスがこれ以上盤面に出てくることはないだろう。
3枚目のドラグニルエクリプス…早めにくればエナジーにセットされてエナジーが3も増える、終盤に来たらRevoltにセットされてしまい2ターンの敗北回避。
「どちらにせよ動かれたら負けだな、ターン貰います」
ドローしたのはトリガートラップである<亡者の霧>、見えてないトリガーは残り4枚。
「<暴風類警報>をセットして4コスト、<
「また裏向きか!」
「その通り、【瞬発】でこのカードとドラグニルエクリプスを3ターン後のイグニッションフェイズまで裏向きにします」
「フィニッシュドローをしてターンエンド」
これで3ターンの間ドラグニルエクリプスが動くことはない。
盤面にキャラはいないが殴れるのはドラグニルジュニアとヨルムの2体のみ。
トリガーが最低1枚埋まっていると仮定するならば、ここは殴られても大丈夫。殴られなくても次の準備が出来るからヨシ。
コタツのターン、ドローした手札を加えて手札は2枚。
「<古龍海 リュウグ>をセット」
「ドラグニルエクリプスが裏向きでなければな…まぁよい、2コストで<古龍海 ジャーブ>を召喚じゃ」
「【瞬発】、山札から3枚を見て、これを加えようか。残りの2枚は墓地へ送られる」
墓地に送られたのは古龍海の切り札である<古龍海 ドラグニル>と<古龍海 ヨルム>
「ヨルムが落ちてエナジーが余ってるてことは」
「当然、2コスト<遠洋呼龍>墓地からコストを支払い<古龍海 ヨルム>を召喚じゃ」
たった6エナジーからコスト5のジャーブとコスト7のヨルムの召喚…これこそが古龍海の恐ろしい所でもあり強さでもある。
【墓地友情:古龍海】により墓地に古龍海カードが貯まるほど大型の古龍海のコストは下がり早期着地を狙える。
そして今の状況でその恐ろしさに拍車をかけるのがトラップの<遠洋呼龍>である。
古龍海キャラクターは墓地へ置かれるほどコストが軽くなるが再利用ができなくなる。
しかし<遠洋呼龍>があれば話しは変わる。
コストを支払う必要があるが、墓地のドラゴンを召喚できるという効果は手札消費の激しい古龍海にピッタリの相性。
「バトルへ移ろう」
「殴ってくるか!」
ここで落ちるエナジーが重要だ…何が落ちるか。
「<古龍海 ヨルム>で攻撃じゃ!」
「マナが6枚エナジーにセット、トリガートラップ<大団炎ハイパーキャンプファイヤー>」
「効果で3マナ回復」
これでマナは7枚…リーサルは無くなったとはいえ良くないことが一つ。
「続けて攻撃じゃ」
ヨルムによる2回目の攻撃で更にマナが減る。
「?!トリガーはなし」
エナジーに落ちたカードを見て目を見開く。
…マジか。
これは良くないどころか最悪だ。
「落ちたのは<
「これでこっちのサプライズは失敗だな」
大事故も大事故、なんせキーカードのほとんどがエナジーに埋まってしまった。
このデッキのコンセプトは大型キャラによる常在効果での盤面制圧。
過程は違えど行き着く先はこうなるだろう。
そして肝心の大型キャラ7枚中4枚がエナジーに埋まってしまった。 ついでにドラグニルエクリプスを除去出来るカードも3枚埋まり、中型キャラも全部見えた。
端的に言おう…ここから逆転できたら俺は神だ。
◆
あれから俺のターンは終わり、現在はコタツのバトルフェイズ。
マジック<古からの咆哮>により手札は全て捨てられ手札は0枚。
「<古龍海 ヨルム>で攻撃じゃ」
最後のマナが砕け散る。
まだだ、神は俺を見捨てちゃいない!
「トリガートラップ!<大団炎ハイパーキャンプファイヤー>、効果で3マナ回復」
最後の1枚で来たトリガートラップで延命を図るが。
「墓地へ送ったな、ドラグニルエクリプスの下に1枚追加じゃ」
これでドラグニルエクリプス君の下に10枚のカードが貯まる。
残りの行動可能なキャラは残りHP3のヨルムとドラグニルジュニアの2体。
「気づかぬか?お主がトリガーを発動してくれたおかげでドラグニルエクリプスの下に12枚のカードがちょうど貯まる」
「知ってるぜ、俺のライジンは【豪傑】で無敵のサンドバッグ。残りの2体で攻撃すれば自爆によりちょうど2枚分貯まってドラグニルエクリプスが動き出せる」
「ならば何故発動した、トリガーを使わずとも残りのキャラでブロックすればよいじゃろう?」
あっちから見たら当然そう思うだろうが、こちら視点では事情が違う。
ここで発動していなければ先がない…詰みの状況になるが発動すればほんの僅かではあるが勝ち筋が生まれる。
「まだ勝ちを諦めてないからだ」
「そうか、ならばその勝ちというものを見せてみよ!」
「<古龍海 ヨルム>と<古龍海 ドラグニルジュニア>でライジンに攻撃!」
ヨルムとドラグニルジュニアがバトルにより破壊される。
「そしてドラグニルエクリプスの効果発動じゃ、カードを2枚追加。そしてドラグニルエクリプスの下にカードが12枚置かれたことによりこやつは動き出す!」
ドラグニルエクリプスの下に12枚目のカードが置かれた時、何もなかった筈の空間に渦潮が現れ空に昇っていく。
渦は形を変え卵の様に収束し、中にいる生物の影が見えてくる。
渦潮の卵が動きを止め龍の目が光る。
鼓膜を破れると錯覚するほどの咆哮と共に渦の殻を破り顕現する。
「──すげぇな」
カードの姿形はどれもホログラムである。
これまでだって何枚ものキャラクターを見てきて感動したが、格が違う。
「さぁ、行けドラグニルエクリプス!」
鋭い眼光をこちらへ向け、水のブレスを放ってくる。
「【攻発】により下にある<古龍海 ドラグニル>を墓地へ送り、キャラクターであるため出すことができる。同時にカードが墓地へ送られたことでドラグニルエクリプスの下に1枚追加じゃ!」
残りのマナは3枚…トリガーが2枚埋まってくれなきゃ勝ち目はなし。
マナを1枚抜く。
1枚目<嵐の前の静けさ>──墓地からキャラクターを踏み倒す効果でこのデッキのキーパーツ。今更見えるか。
残り2枚…ここで<亡者の霧>を引けなければ負け。
2枚目<嵐の前の静けさ>──これで俺の負けは確定した。詰みである。とはいえ2枚も来るんじゃねぇ。
最後の1枚、何が来ても結果は変わらない。
3枚目<嵐の前の静けさ>
…中指はぎりぎり立てなかった。
◆
「弱いな」
「弱かったですね」
「俺は弱い」
事実である。
「店長、お主の目も狂ったのではないか?」
「まさかこんなあっけなく終わるとは思いませんでしたよ。セカイ君ももっと頑張ってくださいよ」
「頑張ってあのザマなんだよ。…もっとシンプルなデッキの方が良かったかなぁ」
ファイトが終わり、ファイトスペースのテーブルに集まり話し合う。
「神喰寝具《シングシング》もあってドラグニルエクリプス対策はできてたんだけどなぁ…2枚目が来るのは完全に想定外だった」
「どんなカードだって2枚目があるかもしれないんですから、次からは気をつけてください」
普通は殿堂カードの2枚目なんて想定してデッキを作る筈ないだろう。
<古龍海 ドラグニルエクリプス>が殿堂入りするのは後2弾先のパックだったか。
とはいえ殿堂入りの期間になったとして確実に1枚しか使えなくなるという保証はない。
「エクリプスカード4枚環境かぁ…インフレしてるなぁ」
「そう易々と出てくるわけなかろう。妾が特殊なだけじゃ」
「特殊って…もしかしてエクリプスカードってパックから出ないのか?」
「出るわけなかろう!?パックからエクリプスカードが出るのであれば今頃世界中のコレクターが買占めするじゃろうが」
「だよなぁ」
やっぱりエクリプスカードなんてこの世界じゃ手に入らないか。
エクリプスカードは各種1枚ずつは欲しい。
Revoltが使えない今パワカへの欲求が日に日に高まっているが、どれも高い。圧倒的に手が届かない値段をしている。いったいあと何か月働けば1枚買えるだろうか。
「さて、そろそろお暇するかのう」
コタツはそう言って席を立つ。
「おや、いつの間にか客が来始める時間になってますね」
気づけば時計の針はもうすぐ頂点に上ろうとしている。
コタツは去り際に口を開く。
「店長、妾は弱い者に興味はない。次はもう少しマシな相手を紹介することじゃ」
その目からはこちらへの興味を失くしたような気がした。
「言われてしまいましたね」
「…はぁ、弱いか」
「『お金が~』とか『Revoltが~』とか『感応率が~』と言い訳でも言うつもりですか」
店長の言葉にムカついて反論しようとしたがどれも図星なせいで何も言い返せない。
言い訳…お金がないのは自分のせい、Revoltが使えないのは理不尽であるが相手も同じかもしれないだろう、感応率だって結局のところ運と同じだ。
「店長」
「なんですか」
「縛りプレイって楽しいな」
「……?」
先ほどまでは言い訳について悩んでいた…が、今は違う。
今はどのデッキならこの世界に通用するのか、前の世界と違ってカードの評価はどうなるのかが気になってしまう。
今までやってきたReボードとは何もかもが違う。
「エクリプスカードはなし、URもLRもなし、相手はRevoltが使えてこちらはなし…けど」
「そんな状況で勝てたら最高だろうな」
「…それで結局のところどうするんですか?」
「ファイトをする」
「戦闘狂じゃないですか」
「ちゃんと理由もある」
「理由もってことはファイトしたいってことじゃないですか」
そりゃあもちろんそうだろ。
「理由は三つ、一つ目が経験不足」
この環境での戦い方にまだ頭が慣れていない。
今回のコタツとのファイトで嫌というほど実感した。デッキを作る時、カードを切る時、重要な判断をする時、頭の端でいつの間にかRevolt前提の考え方が存在してしまっている。
「二つ目がデッキ調整」
やはり一人回しと頭の中での想定だけじゃ限度はある。
デッキ構築が良くても実践では強くない微妙な構築なことだってなんどもある。
「最後が勝って気持ちよくなりたいから」
「理由ひどくないですか!?」
晴れるからこそ曇らせたくなる
──曇天軌 フォルティス