逆転なんて許さない   作:続(ツヅ)

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第1話『リバースカードセットは自分のターン中いつでも行える』

「というわけだが理解できたか」

 

「あぁ、なんとなくだが分かった気がする。」

 

 あれからいろいろ話を聞いて頭も冴えてきた。

 

 つまり俺は、カードゲーム『Reバース』が社会を支配している世界に転移してしまったというわけか。

 

 目の前のロリっ子…【U】の話では、いつも通り闇のカードを集めていたところ、闇のカードから闇が広がって、俺…読辻 堺が落ちてきたらしい。

 

 そして、この世界はどうやら元居た世界にもあったカードゲーム『Reバース』が日常になっているらしい。

 生まれた時からカードに触れて育ち、学校ではReバース学なるものがあり、困りごとがあったらファイトで解決する、はるか昔から存在するカードには特別な力が宿ると言われている。

 

「それで、貴様は別世界から来たと言ったな」

 

「あぁ」

 

「行く当てはあるのか?」

 

「あ~…ないな」

 

 現状を考えて答える。元の世界に変えられる保証はない、金なし、家無し、職もなし、知人など誰もいない世界で一人で生きていく自信はあまりない。

 サバイバルしろと言われたらできるが、そんな生活はしたくない。せっかくReバースが日常の世界に来たんだからいい生活がしたい。

 

「ならば、ついてくるがいい!」

 

 有無を言わせずに【U】は歩き出す。

 

 今はついていくしかないか…さっきの名乗り的に悪の組織っぽいけど大丈夫か?

 

 

 

 

 廃墟となったビルを出て【U】の後ろをついていく。

 

 街並みは東京のような夜でも眩しいビル街、通り過ぎる人々は日本と同じようにサラリーマンと思わしき人々や、大学生と思わしき集団。

 しかし、違和感も感じる。見慣れない広告に、見慣れない街並み、通りゆく人の腕には時々謎の装置がついている。カードについて議論しているテレビ番組。

 

 本当に別世界に転移したんだな。カードの新弾なんかあんな大々的に広告なんて出さねぇし、デュエルディスクっぽい物もあるし…なんか落ち着かねぇな。

 

 

 手持無沙汰になりポケットに手を入れると、何かが入っていた。

 

 

 これは、デッキか?

 中身は…ぱっと見、純構築の<フレンドール>だが内容はこれいつのやつだ?強化前の初期構築?

 にしては切り札は入ってねぇし。キーカードは1、2枚しかないせいで動きづれぇ、手札交換(ルーター)もすくねぇ、コンボできそうなカードはあるが引きがよくなきゃ動きづれぇな。

 しかし初動とかはしっかり揃ってるしトリガートラップも案外ある。まぁ一応戦えるのか?

 

 

 

 

 

 

 前を歩いていた【U】の足が止まる。

 どうやらデッキの中身を確認してたらいつの間にか目的地についていたらしい。

 

「ついたぞ。ここが我がシャドウリバースの秘密のアジトだ!」

 

 顔を上げた先には、廃墟にしか見えない朽ち果てたビルしかない。

 

「こんなおんぼろビルがアジトなのか?」

 

「ウッ、我らの資源だって限られているのだ。それに大事なのは外見よりも中身だろう。世界を支配する我は外見なんて気にしないのだ…」

 

 絶対気にしてるな。

 動きがいちいち大げさなリアクションを取ってくれるからわかりやすい。

 

「そんなことは置いといて中に入るぞ。まずはセツナに貴様のことについて調べてもらう」

 

「さっき色々聞かなかったか?」

 

「調べるのは貴様の身体についてだ。闇のカードから現れたんだから、目には見えない部分で異常があってもおかしくはないのだ」

 

 【U】はそう言いながら中へ入っていく。俺もすぐについていった。

 

 

 

 

「ただいまー!!」

 

「おかえり総督~」「おかえりやで~」

 

 二階へ上がるとリビングと思わしき空間に二人の人物が待っていた。

 

「またわけわからんことになってて草やな総督w」

 

 伊達メガネをかけて白衣を着た細い男がこちらを見て笑う。

 

「わけのわからないこととはなんだセツナ!こんなこと日常茶飯事だろ!」「わけのわからないことが日常茶飯事になったらダメやろ!!そもそも闇のカードなんだからちゃんと制御しないと大…」「あー説教なんか聞きたくない」「人の話はちゃんと聞くんや!!」

 

 あーあ、喧嘩しちゃってるよ。

 二人が言い争っているのを無視して、もう一人の少女が近づいてくる。

 

「あなたが総督の言ってた別世界の人?」

 

 眠たげな雰囲気を纏い、大きなぬいぐるみを抱いた少女が問う。

 別世界かぁ、異世界転移?された実感がわいてくるなぁその言葉。

 果たして変えることはできるのだろうか…ソシャゲとかだったら帰れそうだが、どうだろうか。

 

「人かどうかは怪しい出来事もあったが…うん、俺はれっきとした人間だぞ」

 

「なにそれ?」

 

「なんかトラック止められた」

 

「…人間じゃないでしょあなた」

 

 なんかすごく引かれた気がするが、俺も人間なのか怪しいよ。

 

 

 

「それはそうと…お前らいい加減喧嘩はやめろ!!」

 

 二人の首根っこをつかんで言い争いを止める。

 

「放せーセツナには資金を変な機械に使ってる日頃の恨みが!」

「放すんや!総督には皆のおやつを食べた日頃の恨みが!」

 

 二人は暴れるが、力がないのかまったく振りほどけそうにない。

 俺の腕だって微動だにしていない。

 

「明日やれ!お前に関しては金を勝手に使うな!【U】は一言言ってから食べろよ!」

 

 ちゃんとしたご飯食べてるのかこいつら?

 驚くほど力が弱い。

 

「そんなことより俺の身体を調べるんだろ、さっさと終わらせるぞ」

 

 本来の目的を伝えてようやく二人は動きを止める。

 

「ふんっ、こいつに免じて見逃してやる」

 

「それはワイのセリフやで」

 

「はいはい喧嘩は終わりだ」

 

 手を離すとしぶしぶといった感じで、セツナはどこかの部屋へと向かう。

 

 もう片方の方はまだぷんぷんして地団駄してる。

 う~ん、やっぱりさっきから子どもにしか見えないなぁ。

 最初出会ったときはもっとカリスマみたいなのがあったのに。

 

 

 

「こっちは準備できたでー!」

 

 奥の部屋からセツナの声が聞こえる。

 

 部屋の中に入ると何の用途で使うのか見当もつかない機械であふれていた。

 地面には配線が適当に引かれ、ボルトやネジ、レンチなどの工具も落ちている、まさに汚部屋。

 

「それじゃ服を脱いでこの電極パッチをつけるんやで」

 

「了解っと」

 

 着ていた服を脱いでスペースが空いてる場所に畳んでおく。

 気づいていなかったが、服もいつの間にか寝間着から外出用の私服に変わっていた。

 ご丁寧に靴まで一緒に履かせてくれたのか。

 

「そんじゃ始めるで~。まずはそこの機械に座るんやで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私…夢梨(ゆめなし) メアは彼が気になっていた。

 

 初めて見た時から胸が痛い…決して恋などではないはず。

 でも、なんかモヤモヤしてザワザワする。

 

 セツナが調べてる間、暇だったから総督と一緒に覗きに来ていた。

 別世界から来たという人物…サカイは、本人が言ってたように人間じゃないかもしれない。

 

「すっごい筋肉だな」

 

「だね」

 

 服の下には一目でわかる鍛え抜かれた肉体が隠されていた。

 私は筋トレとかそういう類のものは何にも知らないけど、確実にすごいとわかる。

 

「まるで女みたいな力出してるな」

 

「だね」

 

 男なのにあんなに力がすごいなんて初めて見た。

 普通の男性はどうやっても女性には敵わない力関係なのに…サカイはそれに匹敵するかもしれない。

 

 あっ、計測機械ぶっ壊れた。

 やはりサカイは人間じゃないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~」

 

「これで一通り終わりやで」

 

 終わったらしいので電極パッチを外して服を着る。

 

「いや~それにしても異常な結果やな」

 

「どんな結果だったんだ?我にも見せろ!」

「私も見たい」

 

 二人が興味津々といった感じでパソコンを覗く。

 数秒ほど眺めて口を開く。

 

「「やっぱりゴリラじゃん」」

 

「人をゴリラとか言うな!」

 

 

 そこまで力はなかったはずなんだけどなぁ。

 普通にジムに通って筋トレして、デュエ筋魂を布教されてただけなんだけどなぁ。

 俺の周りには俺よりすごい人が何人もいたんだけどなぁ。

 

「まぁ聞くまでもないけど、結果はどうだったんだ?」

 

「まぁ、はっきり言って異常やな」

 

「見たところ鍛えた成人男性というわけで標準と比べてみたんやが、男性にしては異常な筋力をしとるでお前」

 

 おかしなことを言うなぁ。

「鍛えた成人男性ならこんなもんだろ?」

 

「いいや、普通だったら女の方が力を大幅に上回って、男は力が弱いはずなんやが…お前に関しては男どころか女も超えるほどの力があるやで」

 

 この世界の男性は弱すぎないかそれ。

 いや…もしかしたらこの世界の女性が強いのかもしれないな。

 

 

 

「あぁ、あと一つだけおかしな点があったやで」

 

 忘れていたように頭をかかいながら告げる。

 

「それは…いったい?」

 

「感応率が0%どころかマイナスに振り切ってるんや」

 

「なんだそれ?」なんだそれ?

 

 後ろの二人も目を見開いてこちらを見てるが…そんなにやばいのか感応率マイナス。

 しかもマイナスかぁ…普通あり得ないよな。人体を調べてマイナスの値なんて聞いたことねぇよ。

 

 

 

「感応率…カードとの繋がり…絆の強さ

 

 

 

強いファイターは総じて感応率が高いやで」

 

 

 

「実力無き者はカードの真の力を引き出せない

 

 

 

 三人が口をそろえて言う。

 

 

 

「……マジかよ」

 

 

 

 カードゲームが支配する世界じゃそれって……終わりじゃね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 リビングのソファを貸してもらい、俺は上を見上げて嘆いていた。

 

「あ~~~これからどうしよっかな~~」

 

 元の世界には帰れない、この世界では重要な感応率がまさかのマイナス、職もなし、家もなし、財布もスマホも身分証もなし、縁のある人は誰もいない。

 

 憧れの夢は異世界転移で強制終了。

 

 手元にあるのはストラク程度のデッキが一つ。

 

 

 とりあえず日雇いバイトでも探すか…ここに居座るのは悪いしホームレス生活かぁ…この世界の植生は同じかなぁ…

 

 

 

「おい貴様、いいやサカイと呼ぶか」

 

 嘆いている俺に【U】が声をかけてくる。

 

 

 

「サカイ…シャドウリバースに入らないか」

 

 

 

 

「元の世界に帰れる保証もない」

 

「この世界のことなんかも全くわからない」

 

「行く当てなんかどこにもない」

 

 

「そう思ってないか?」

 

 

 力強い目で訴えかけてくる。

 

 

「我らが元の世界に帰してやる」

 

「この世界のことも教えてやろう」

 

「行く当てがない?ならばシャドウリバースにくればいい」

 

 

 

 

 【U】…総督が手を差し伸べてくる。

 

 

 

 

「さぁ、我が手を取れ読辻 堺(よみつじ サカイ)

 

 不思議とその言葉が嘘ではない…本気で言ってるように見えた。

 

 懐かしさを覚えた。

 

 これはカードゲーム(シャドウリバース)に誘われた時と同じような…そんな人生が変わるような懐かしさ。

 

 

 

 そして俺は…その手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逆転なんて許さない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伝え忘れたけど実力を確認したいから、後でそこのメアとファイトしろ」

 

 ぬいぐるみを抱いた少女がピースしている。

 

 …マジかよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




健全な魂は健全な肉体に宿る
健全な肉体は健全な魂が作る

──完全無欠(パーフェクトボディ)
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