そんなことはさておき、今回からアニメ本編に突入です。
第4話『ターン開始時、キャラクターとエナジーをイグニッションする』
開放感のある窓から吹く冷たい風で目が覚める。
俺の部屋じゃねぇ知らない天井。ボロボロの家具は何度も修繕した跡が見て取れる。
他の奴らを確認しに行くと、未だすやすや寝ている。
現在時刻は恐らく朝4時、慣れない環境でいつもより早く起きてしまった。朝ごはんでも用意しておくか。
リビングへ降りて、キッチンを確認する。
冷蔵庫を開ける…冷凍食品が数個だけか。起きたばかりでは辛そうだからパス。
棚を漁るとカップラーメンとお菓子といくつかの菓子パンしか出てこない。よくよく見ると調理器具も全くない。フライパンと包丁、やかんはある。
「仕方ねぇな、サバイバル飯でも作るか」
アジトに生えている植物を観察する。昔の記憶を頼りに、確実に食べられる野草を採取していく。植生に関しては前世界と変わってなくて助かった。
次は屋上から見える山にでも行くか。
食べやすくて見た目もいい虫とかザリガニとか見つからないかなぁ。
◆
「おーい、起きろー」
すやすや眠っていたら変な声が耳に入ってくる気がした。
「朝だぞー」
昨夜は本当に久しぶりに敗北してしまい、私の儚く脆いガラスのハートは粉々になっているんだ。
「お前らが最後だぞー」
あと2時間寝かせてぇ。隣の総督も多分同じことを思ってるだろうから。
「そろそろ強硬手段に出るぞー」
Zzz…Zzz…
「朝飯が冷めるぞー」
「ご飯か!!」
総督五月蠅い!
布団も吹っ飛ばさないで!寒い!
「メアもいい加減起きろ。目が覚めてるのはバレてるんだぞ」
…バレてた。
「ヤダー動きたくな〜い。めんどくさいよ~」
「早く起きて顔でも洗ってこい」
「え~、そんなこと言うならサカイがやってよ。めんどくさい」
サカイはため息を吐くと、メアを担ぎ上げる。
本当にやってくれるんだ。
「朝ごはんは適当に煮物でも作っといたぞ」
煮物かぁ、久しぶりに食べるなぁ…あれっ?最後に食べたのっていつだっけ?
洗面台の前に運ばれたけど、まだ力が出ない。
「おい、あとは一人でできるだろ?」
「任せたぁ…」
「はぁ、仕方ねぇな」
サカイは文句を垂れながらも、暖かいタオルで顔を拭いてくれる。
うん、楽だ。楽というのはやはり良いことだ。
それにこの暖かさ、顔を洗うのがこんなにも極楽なことだなんて知らなかった。明日も頼もうかな。
「ほら、朝ごはんだぞ」
「うむ、ご苦労である」
「いや何様やねんお前」
何様だっていいでしょ。
それよりも、なんだかおいしい匂いがする。
「サカイおかわり!」
総督はもう食べ終わったのか、早いなぁ。
いただきます。
見たことない野菜だけどうまいのかなぁ…
…美味しい。
◆
「「「「ごちそうさまでした」」」」
朝ごはんも食べ終わり、洗い物をしていると…
「おいサカイ、今いいか?」
「【U】か、洗い物しながらでもいいか?」
ぺりぺり財布を持った総督【U】は、ぺりぺり音を立てながら財布を開いてこう言う。
「これは入団祝い金だ。お前のデッキはまだまだ本領を発揮できていないんだろう?」
手渡されたのは一万円札が2枚。
前世界と変わらない一万円札に書かれた顔を見て少し安心する。
それはそれとして、2万円もあれば結構何でも組めるんじゃないか?
今のフレンドールなんてほぼ全部ストレージで買えるカードで攻勢されてたし、この2万円は本当に助かる。
「サカイだけいいなー。総督…私の時は肉を食べさせてやるとか言って、牛丼屋に連れて行ったじゃん」
「は、ははは…ごめん、メア」
リビングのソファでぐったりしているメアが文句を垂れる。
「それはそうと、メアにも話があるんだが」
「んー、何なの総督?」
「お前、今日からサカイとコンビを組め」
「嫌だ!めんどくさい!」
ソファから起き上がってまで抗議する。
そこまでめんどくさいの嫌なの?
「昨日のファイトを見て分かった。メア…お前はファイトの腕が落ちている!」
「…認めたくない」
「対してサカイはファイトの腕がメアよりも良かった。だからサカイの側でファイトの腕を磨き直せ!」
「めんどくさいよ総督」
「めんどくさいってお前…朝もサカイに全部やってもらっただろう」
やれやれといった表情で、落ち着く。
「仕方ない…分かったよ総督。それじゃあサカイ、カドショへ行くよ」
「うん、俺の意見は?」
「「入団したての下っ端にそんなものはない」」
そこだけ意見一致するなよ。
「…洗い物が終わったら行くか」
「行くときはおんぶしてね、サカイ」
「ほんと図々しいな?!」
◆
「サカイ~、疲れた~」
ずっと背中で休んでるのに疲れたとは何だ。
「仕方ない、そこらの公園で休憩するか」
「ジュース買ってきて~」
「分かった分かった」
ジュースか、適当に炭酸ジュース…飲んでる途中に炭酸が抜けるな。だったら他のジュース
それにしても、あそこまで疲れるなんて体力なさすぎるなぁ。
今度一緒にトレーニングでもさせるか?
いや、いきなりはまずいか。最初はちょっとずつ始めさせないと。
カタカタカタ
「あ?」
今、デッキが震えなかったか?
カタカタカタ
何かあるのか?そう考え辺りを見渡す。
辺りを見渡し、目線が止まった先は横断歩道…横断歩道かぁ。
横断歩道…先日、というか前世界で最後に印象深かった出来事。
あの時と同じく、ちょうど赤信号に変わる。
人影は少なく、車の数も少ない。
赤信号で止まっているのは、1枚のカードを見てニマニマしている少女だけ。
嫌な予感がする…一応近くにいとくか。
信号が青に変わり、横断歩道を渡ろうとした時…嫌な予感が的中した。
信号無視のトラックがこちらに向かって突っ込んできている。
少女はカードに夢中で気づいていない。
「危ねえ!!」
大声で呼びかけてようやく気付くが、驚いてしまい尻もちをつく。
前とは違って、自ら考えて身を乗り出した。
トラックの前に立ち、全力で力を込めて受け止める。
「っ!」ドンッ
思った通りトラックは止まった。
「おい、大丈夫か?」
黒髪の少女に話しかける。
「ピャイ..ダイ..ョウブ..ス」
◆
「あの…先ほどは助けていただきありがとうございマス」
退院してから数日、初めて一人での外出に気分が上がりすぎちゃった。
私の大事な友だち…といってもカードだけど、フレンを眺めてたらトラックに気付かなかった。
「次からは気をつけろよ」
目の前の男性は、周りの人に比べてデカい…トラックを受け止めたのに傷一つ付いてない。普通の人はトラックも止められるんだろうか?
「アノッ、あああなたの名前は何ですカ」
さっきから喋り慣れなさ過ぎて言葉がうまく出ない/////////
チャットだったらたくさん喋れたのに/////
「俺の名前か…」
なんか言い渋ってる…やっぱり噛み噛みだったせいかなぁ。
それとも私から根暗なオーラでも出してるのかなぁ。
嫌われてないかなぁ。
「俺の名前は…セカイだ」
セカイさんか、友だちになれるかな。
友だち…あれ?
友だちってどうやったらなれるんだろう?!そもそもここから何を話せばいいんだろう?!とりあえず天気の話でもすればいいのかな?!そもそも友だちって何をするんだろう?!いきなり初対面の人に友だちになろうなんておこがましいかもしれないし?!今までチャット以外だとお母さんとお父さんとぬいぐるみとお医者さん以外喋ったことないよぉ?!Reボードだったら話せるかな?いやいやもしかしたらReボードやってないかもしれないし、いきなりこの人何言ってんだとか思われたらどうしよう。お金でも渡したら友だちになってくれるかなぁ?でもこのお金は
……あれ?そういえば
「アッあれ?カードが、フレンがいない!」
ずっと一緒に過ごしてきた友だちがいなくなった。
長い闘病生活の中、私の孤独を埋めてくれた大事な大事な友だちがいない。
お母さんからの贈り物が…初めて貰った誕生日プレゼントが…いない。
絶対に失くしちゃいけないものを失くした。
「失くしたのはこれか?尻もち着いたときに落としてたぞ」
セカイさんの手には大事なカードがあった。
「あっありがとうございます!!」
フレンを受け取り、今度は離さないようしっかりと持つ。
「気にすんな。それよりもそのカード…
「いいえ、フレンはその…なんていうか…」
言えない。
昨日の夜ぬいぐるみ達が光って<親友人形 フレン>が出てきたなんて、言っても信じてもらえないだろう。
「運よく手に入れたというか…両親からの贈り物なんです」
「ふーん、そうか。なら友人形のデッキはあるのか?」
「いえ、これから買おうかと思ってカードショップに向かっていたんです」
そう答えるとセカイさんは頭を捻らせる。
「よし、君にこのデッキを譲ろう」
「え?」
セカイさんは懐から一つのデッキを取り出す。
「これも友人形デッキなんだが、あいにくACEのフレンがなくて少し動きづらかったんだ」
「いいん…ですか?」
「あぁ、君になら、このデッキをあげてもいい気がする 」
デッキを受け取る。フレンも喜んでる気がする。
デッキの中身はたしかに友人形の構築だ。しかもSRのカードも何枚か揃っている。換算したら6桁は確実にいく値段のデッキだ。
たしかにこのデッキにフレンを入れたら確実に強くなる。デッキの回りもよくなるし、一枚ずつしか入ってない5コス帯のカードもアクセスしやすくなる。少しだけ1枚採用されてるカードや、使う場面があまりないカードが入っているのが安定感を少し下げてるが、十分動ける構築だ。
「ありがとうございます、セカイさん」
「いいってことよ、次からは相手の名前を聞く前に自分から名前を名乗った方がいいぞ。それじゃ、さようならだ」
セカイさんはそう言ってこの場を後にする。
「そっか、私から名前を言えばよかったのか」
◆
あーよかった。いきなりデッキがカタカタカタ震えだして何事かと思ったぜ。
本名もシャドウリヴォルトに入ってる以上、偽名を使わなくちゃいけなかったし。
あの子にデッキをあげようとしてから震えは止まったから多分正解なんだろうな。
カードの意思か…俺のデッキたちはどう思ってたんだろうな。
まぁ、感応率がマイナスらしいし嫌われてたんだろう。引きに関しては他の奴らと変わらなかったんだけどなぁ。
いや、今はそんなことさっさと切り替えるか。
そもそも、今日出かけた目的は新たなデッキを買うため。
『ドリーム』なんていう最新テーマ(多分)があるんだったら友人形よりも強いデッキなんていくらでもあるはずだ。
「ここがラビリンスか…何か忘れてる気がする後でいいか」
カードショップ『ラビリンス』、総督に紹介されたカードショップ。
小さな個人経営のお店だが、品ぞろえがよくて、来るもの拒まず、誰であろうと受け入れる店、と聞いた。
一つだけ問題点があるとすれば、カードが異常に探しにくいらしい。
この世界の環境がどうなっているのかワクワクしながら店の中へ入る。
「いらっしゃいませ」
カウンターに居た女性が挨拶をしてくる。
店を見渡した感じ、店員は彼女一人だけらしい。
奥の方にファイトスペースも見えるが、平日の真っ昼間には対戦しているような人はいない。
「カードを見てもいいか?」
「はい、あちらがショーケースです。何かご購入したいカードが見つかったらお呼びください。反対のあちら側はファイトスペースとストレージがあります」
「あぁ、ありがとう」
そう言って、ショーケースをざっと見る。
5万、2万、3万、7万、4千、1万6千、8千、3千、3千…あれ?
ショーケースに飾られたカードの値段が嫌でも目に付く。
どれも高い…前世界と比べてありえないぐらい高い。
俺の所持金は1万円…ショーケースのカードが数枚買えるか買えないか程度。
しかも…ショーケースの中のカードが全体的に弱い。
弱くはないが、現代環境では使えない、もしくは完全上位互換が存在するカードたち。
より詳しく言えば、数年前のパックのカードたち。
しかも、ただのRカードでも千数百円かかる。
…もしかして
まだだ、まだ
「デッキ…ですか?申し訳ありませんがデッキは売っていません。他の店でもデッキを売っている所は数少ないかと…」
「もしデッキが欲しいならカード道場や塾に入門するのをおすすめしますよ」
駄目だこりゃ、ストレージでデッキを組むしかねぇや。
未来では食べ物は捨てるほど余っているのか
よし、食べ物はいらないな!
──原始の預言者