一緒に書き上げませんか?
「あ、そうだお母様に、この紙を届けないと!」
青色の瞳が目立つ少女が、未だ舗装もされぬ荒削りな丘を駆け降りていく。彼女が持つ一枚の羊皮紙には「帝立テルゴー学園合格証明書」と記載されている。少女の心の中には興奮と、感動、喜びが溢れんばかりに咲き誇っていた。早く、速く、疾く、母に自慢したい、その想いが彼女を満たしていた。
「ただいま!」
静かな、侘しさすら感じる家を切り裂く一声。
「あら、おかえり、その紙はどうしたの?」
優しく、いつもと変わりなく、微笑む母の笑顔に少女は満面の笑みを浮かべる。
「私ね!私ね!テルゴーに行けることになったんだよ!」
その言葉、その感情に、母は愛に、哀に満ちた涙を浮かべる
「やったわね、さすがラクシャね、母は貴方を愛してるわ、深く深くなによりも」
ラクシャは、母の涙に首を傾げながらも、母の涙を慰めんと、抱きついて囁く
「お母様はなんで泣いてるの?あいって何?あのね、あのね!よくわからないけどね!私もお母さんが大好きだよ!」
その囁きに、母を慰めるには事足りた
「ありがとう、母もラクシャがだーいすきよ」
その儚くも、母子の陽だまりに満ちた空間を澱ませるような、穢れが、ヨゴレが、現れる。愛を告げた母の肉体は浅黒く染まり、瞳は濁った黄金に光り輝く、そして…極光を放つ。
「あがぁ…コードプログラム第三羅列導入、ふん、む?なんだ?そこで何を震えてるんだよ」
柔な母の喉から響き渡る、どこか狂気に満ちた、しかし、愛に満ちた男の声。
「…おか、お、お母様?……だれ?」
震えながら、しかし必死に思考を巡らせる
「ふーん、やっぱか、なぁ女、本当の愛を見たいか?」
彼女は…彼は自ら腹に手刀を突き立てる。
グチャ、プチュ、ヌチュ、ドロォ
「な、なにを?やめて!お母様を傷つけないで!!」
ラクシャは自らの喉を顧みることなく、必死に叫ぶ、喉が張り裂けるほどに
「なぁ、よぉーく見ろよ、綺麗だ、実に美しい、これが血だ、これが狂気だ、これを肯定しろ。それこそが愛だろう?」
しかし、男はまるで飽きたように、空虚な瞳でラクシャを見つめる
「お前…やっぱり…いや…だからか…ふん、お母様とやらは返してやるよ、せいぜい俺の与えた愛に咽び泣きな」
母の体が自律を失い、崩れ落ちる。息はなく、まるで魂が感じられず、その肉体には何も残っていなかった。ただ腹からは、臓物と血が溢れていた。
「アァァァァァァアァァァァァァ」
ラクシャは…ただの少女は声が枯れんばかりに泣き叫び、静かなされど、暖かさに満ちていた家を悲嘆で飾り、閑散とした村を動揺で彩る。ひらりと小さな手からこぼれ落ちた栄光への切符を、母の命のカケラが紅く染め上げる。
この小さな村の小さな悲しみが起きたのは改生歴0158年のことだった。
どうも