「いや、その、なんかすみません」
「いいえ、気にしないでください。シア婆が言ったとおり今は休憩中ですから、荷物持ちくらいお安い御用です」
ユリル・フォンツ・カミンスキー。
ユーリさんの腕に抱えられた黒い包みを見て、なんだか居た堪れずに言葉を告げてみれば、にっこりとした笑顔で応対してくれた。
営業スマイルか非営業スマイルなのかは定かじゃないけど、なにぶん美人とはどんな姿も姿勢も綺麗に見えるのだから反則だ。
それは共に寮に住んでいる二人の同居人やバイト先のご令嬢といった前例もあるので間違いないだろう。そして俺が言うところのバイト先のご令嬢であるルヴィアさんを含めた俺たち三人の姿は今現在、蒸気機関車の待機するプラットホーム内にある。
こんなデカイものを抱えているグループなんてそうそう居ない……なんて思ったりもしてたが、存外ここに住んでいる、または来訪した人達はやけに大荷物を抱えているか、カートに載せているかしている。ユーリさんの抱える荷物もそこへ載せようかと提案したが、ルヴィアさんの荷物は貴重物でもあるのでガタガタと揺れるカートに載せるのは論外とのことだ。
というか電車まであるのか、ここは。
まあ確かにルヴィアさんの言っているとおりなら、この広々とした空間を徒歩でのみ移動、もしくは馬車でも使っていそうだが、それだけで交通網が成り立っているとは思えない。
人々の足として電車があるのは常識的に考えても必須と思える。ひょっとするとだけど、ここも実質的なあの映画のモデルになった場所なんだろうか?
そして第一に気になってるのはーー。
「ここって地下なのに、蒸気機関車とか大丈夫なんですかね?」
上を見上げながらそう呟くと。
「排気ガス等のことなら問題ありませんよ。天井部分はカモフラージュ用のガラス張りの天蓋なのでそこの要所要所からダクトが地上まで伸びています。一定のところまで煙などが上昇すると上に吐き出される仕組みを作ってありますし、言い方がアレですけど公害の心配とかはありませんので」
「それは、もしかしなくても魔術ですか?」
「私もシア婆から聞いた話なので、詳しいところはよく知らないんですけど、多分そうだと思います。ここが協会の管轄地なのはご存知ですか?」
「はい、さっきルヴィアさんから」
「協力から派遣された魔術師達も協力して、ここの建造に手を貸したらしいので、安全面については大丈夫だと思いますよ」
知れば知るほど知らなかった事が増える。
遠坂には時計塔周辺の情報は仕入れといた方がいいとは前に言われたけど、色々あって疎か気味だったからな。
「お二人とも! 乗り込みますわよ!」
少し離れた場所にいたルヴィアさんから声がかかる。まずい、すっかり任せっきりにしていた。せめて手順だけでも見ておくべきだった。上と一緒ならいいんだけど、なにせ地上とは別世界。その辺りの
入り口と通路がユーリさんの抱える荷物が通るほどの空間があって助かった。乗車し、ルヴィアさんの案内のもとコンパートメントに入室し左側にユーリさんとその傍らに荷物を置き、右側が俺とルヴィアさん。発車まではあと幾らか余裕があるんだろう。ガタガタと人の歩みで揺れるその感覚がなんだか心地良い。正直この状況を楽しんでいる俺がいるのも事実だ。
今度セイバーも連れてきてあげたいな。
いつもいつも荒事や我が家の家計で苦い思いをさせているからな。新鮮な場所に来て、少しは気を紛らわすことになればいいんだが。
「今更ですがいいんですの? ミス・ユリル。こんなところまで私たちについて来てしまって」
「ああ、いいんですいいんです。はっきり言ってしまうとシア婆が休憩なんて言えば、もうあとは飲んで酔っ払ってくるかで、実質今日はあれで閉店みたいなものですから」
初対面な自分が言うのもなんだが、それでいいのだろうか? でもルヴィアさんが仕事を頼むってことはやっぱりかなり腕の良い人なんだろうということは分かる。
そこで不意に、あの人がルヴィアさんに言っていた言葉が蘇ってきた。
「そういえば、前払いだったんですか?」
「そうでないと仕事を受け付けないんですのよ。それなりに名の知れた方ですし受け持ちの顧客を幾人も抱えているみたいですわよ。もっとも名の知れたと言っても良い意味でも悪い意味でもですけど」
「ああ、シア婆はお客さんを選ぶので、断る時はすっぱり断りますから、その辺りの対応の事も世間には有名で」
つまりかなりドギツい発言を口にしているんだろう。聞けばそれでトラブルも数件あったとか。それでも仕事を受けてくれる人にとっては欠かせない職人であるので、って、待てよ。
そもそも、あの人何屋さんなんだ?
そんな肝心なところを知らずにいた。
疑問に思ったので対面に座っているユーリさんに伺ってみたところーー。
「あー、なんて言えばいいんですかねぇ……」
と、何やら意味深な反応を示した。
困ったような顔だけど、もしかして俺なんかまずい事を聞いてしまったのだろうか?
「あーいえいえ! 別に人に言えないようなことじゃないんですよ。ただ色々と手広くやっているので、決まった職柄を把握してないといいますか、正直私もシア婆が何屋さんなのかは知らないんです。ただ、武器や
「ほうそう?」
知らない単語が出た。
そんな俺の様子を見ていたルヴィアさんが解説をしてくれる。
「霊装が概念的付与を可能にした武器というなら宝装は宝石類を利用した擬似的に霊装へと直結させるコンダクターとでもいいましょうか。要は霊装紛いの力を振るう為、宝石を利用して一時的に同等の力を出す為の装置ですわね。当然事前に宝石へと溜め込んでいた分の魔力量に応じて消費されていきますから、それが尽きれば力を振るえなくなってしまいますの」
言い換えてしまうと、宝石の力をブーストさせる為の補助装備といったところだろうか。当然急激な力の上昇につき消費される魔力量は段違いだし、基本的には戦闘向きではなく主に魔術の研究に利用したりするらしい。
そうして椅子上に横たわっている黒い包みもその類なのかとルヴィアさんに聞いてみれば、その通りだとあっさりと肯定してくれた。こんなでかいものをどんな研究に使うんだろう。
そしてこんなモノのメンテナンスはどんな風に行なっているんだろう。
ちょっと、いや結構気になるな。
今度行く機会があったら話をしてみたい。
そんな会話を繰り広げていれば、汽笛の音が車内に響き渡り、列車はゆっくりとその速度を上げながら出発した。
車窓に映り込む景色は何処か普通の都会じみていて、ここが結界で覆われた魔術師達の秘密基地めいていることを忘れてしまいそうだ。
大規模な面積を有すこの場所は、大きく六つの区画に分かれているらしい。
エオリア。
クルズス。
ビュルザム。
クオント。
シュベントアナ。
ヴィザスン。
さっきまで俺たちがいた場所、基本的な商売関係やユーリさん達の店があるのがクオント。
今こうして列車に乗り込み向かっているのがエオリアらしい。
そこには何があるかといえばーーー。
「ん?」
エオリアに近づくにつれ、やけに目立っている大塔が視界に入る。
上のビックベンほどではないにしろそれなりに高いように見受けられる。
「あの建物って…?」
「オークションを取り仕切っている会場ですわ。私も何度かあちらへ行くことがありますわよ」
貴族関係者の出入りが激しいエオリア。
聞けばあそこにオークション会場が出来たのも、時計塔に属するこの地下に出来た街にたいして寛容な貴族達からの後押しがあったかららしい。なのでその周辺には高級品を扱う店が立ち並んでいるようだ。
「別に貴族だけが入れるわけではありませんわ。実際鉱石科で扱うことになっている大半の石はここの請け負いでもあるので、生徒もよく出入りしていますもの。ミス・トオサカもここのことはご存知の筈ですけれど?」
話題に出た事はないな。
ウチの金欠状態を考慮すれば、こんなところに遠坂が来るとは思えないのだが。
「ここ以外には、宝石を扱う会場なんかはないんですか?」
「あるにはありますが、曰く付きの品が立ち並ぶ事もザラにありますから、比較的安全に入手するというならやはりあそこでの売買が妥当ですわね」
あるにはある、か。
帰ったら遠坂に聞いてみるのも手かな?
俺やセイバーにも無関係の話じゃないし。
そうしている内に列車は停車駅に到着し、三人で降りれば、自分たち以外にも降車する人が多い。エオリアは場所的に最も治安が良いのでやはりここで降りる人間はかなりのものらしい。そうして街へと出てみればクオントよりも整った服装で身を包む人で溢れている。
あっちは観光地兼工場地帯めいていて活気が凄い。こっちの活気がないわけじゃないけど、やはり街の雰囲気全体があちらとは異なるように感じた。荷物を抱えたユーリさんと横並びで先頭を行くルヴィアさんに付き従って歩く。
またエスカレーターか何かで上に行くのかと思っていると、どうも違うようだ。
ルヴィアさんが立ち止まったのは一軒の店の前だった。また何か買い物をするのかと思っていれば扉を開いて中へと進むルヴィアさんについていく。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
と、礼儀正しい言葉を掛けてきたのは地上で別れたオーギュストさんだった。
「え? あれ?」
「エミヤ殿も、お疲れ様でした」
「ああ、いえ。俺はなにも」
実際なにもしていない。
ただひたすらにルヴィアさんに付き従って歩き、荷物にしたってユーリさんに任せっきりだ。正直恥ずかしい…。
「オーギュスト、荷物を任せますわ」
かしこまりました、と言ってユーリさんに感謝を述べながら抱えていた黒い包みを受け取るオーギュストさんの姿を見ていれば、スッとルヴィアさんがこちらを振り向いて。
「シェロ、書庫に向かうにはまだ時間がありますわよね? もう少し付き合って貰っても?」
「もちろん」
今日も今日とて、首に引っ提げた呪刻に従い旧書庫へあの子に会いに行かないとまずい。俺の責任もあるし、なにせ破れば死ぬ。
そうなったら遠坂やセイバーになんて詫びればいいのかわからない。いや、詫びる前に死人に口無し状態になってしまうけれども。
「けっこう。ミス・ユリル、貴女はどうされますか?」
「お付き合いしますよ」
今日は暇ですし、と言って朗らかに笑うユーリさん。荷物をオーギュストさんに任せ俺たちは来た道を戻り店を後にする。ちらりと振り返ってあの建物を凝視する。特に変わったところは見受けられない。
あそこはエーデルフェルト家所有の物件だったのだろうか。そうじゃなきゃオーギュストさんが待ち構えているわけないものな。
「不思議そうな顔をされてますわね、シェロ」
「ああ、いや…その……」
いや不思議といえば不思議だ。
一階を丸ごと貸し切り。
ロンドンにはあんな立派な豪邸を構える。
そんな人があんなこじんまりした家を持つものなのだろうか。
そこに何か特別な意味があれば別だが。
ーーーーあとでお話しますわーーー
「え?」
いま、一瞬……。
俺の前を行くルヴィアさんの背中は何も語らない。でも、確かにルヴィアさんの声が聞こえたような気がする。
「ミス・ルヴィアゼリッタ。それで、これから何処に向かうんですか?」
俺の思惑から外れたところで、ユーリさんの問いがルヴィアさんに投げ掛けられる。
ルヴィアさんは口元を綻ばせーーー。
「ーーーー
Fate/extra days
ーーー第七話・下ーーー
オーギュストさんに荷物を預け、俺は先ほど目にした高層の建築物の前に来ていた。
近づけば近づくほど人の数は増え、その人混みを抜けながらルヴィアさんに付き添い、ユーリさんも伴って内部に足を踏み入れる。
内部は広大なわりには薄暗く、明らかに灯りが足りない気がする。この地下空洞において、ここは本当に地下を感じさせる陰鬱とした空気を放っている。上へと伸びているこの場所だが、下への階層もかなりあるらしく、ルヴィアさんの背を追ってエレベーターに一緒に乗り込み、地下六階まで降りた。
ここもここで薄暗いを通り越して本当に暗い。灯りは真正面で照らされた二つの光だけ。それがまるで道標のようで自然と足はそちらへ向かう。大きな扉の前、そこを塞ぐように佇む警護と思わしき人、……ではなくゴーレムか?
ルヴィアさんに手で制され、足が止まる。そのまま二体のゴーレムに歩み寄りーーー。
右手を宙に浮かべ、人差し指で何かの印をきっているように見えた。
声を発さず、遠坂やルヴィアさん得意の宝石魔術を行使する素振りも見せない。じっと見つめていると、ーーーギッ、と、反応を示すことの無かったゴーレム達がゆっくりと起動した。そのまま左右対称に扉の前から離れ、俺たちに道を譲るように横に並ぶ。
ルヴィアさんは背後にいた俺たちに目配せをしてから、自らの手で扉を開けた。
その途端ーーー。
聞こえてきた多数の人声。
騒がしいというわけではないのだろうが、この無音な場所からすれば、これだけでも十分に騒音だ。扉を潜れば、部屋の内部が視界に収まってくる。まず感じたのは多くの人の気配。扉のあちら側とは対極のようなこの雰囲気。まるで劇場のようで、もしくは議会場のようでもあるように感じたのは、階段式に下へと向かって伸びる道の先にある舞台に光が集まり、そこを囲むような円形の客席。
それにしても広い。反対側の客席は俺の視界をしてもあんなにも遠く感じる。客席といっても、一定の間隔で席が隣同士並んでいるわけではなく、小さな箱のように其々区分されている。その中に入ることで一つのグループの形式を取っているんだろう。
と、そこに一人のスーツ姿の男性がルヴィアさんの元へ寄りーーー。
「エーデルフェルト様、お待ちしておりました」
「私どもの匣は?」
「こちらへ。ご案内致します」
扉の前から離れ、その男性の後を追えば、俺たちが入ってきた場所を正面とするなら、あそこから左斜めに逸れた位置が俺たちの席となった。六人分の椅子が用意されており、ルヴィアさんの言葉で俺、ルヴィアさん、ユーリさんと横一列に並んで腰を下ろした。
そうしている間も何かの出品の落札が終了したらしく、会場内は静かなムードに包まれていた。そもそもがそこまでの賑わいというわけでもない。皆、静かに出品物を品定めしているのだろう。その空気の中でユーリさんがはぁ…と息を吐いたのが映った。
「私、ここに来たの初めてです」
慣れないことに緊張しているのと、新鮮な事への好奇心等が混ざり合って、少しばかり抑えた声で彼女はそう言った。
「そうですわね。ミス・ユリルはどちらかといえば上層の方ではないかしら」
「はい。アーセナルの方なら何度か。でもあそこはオークションというより、ただの保管庫みたいなものなので」
「名前の通り、武器庫ですもの。それでも週に一回は執り行っているのでしょう?」
ーーー武器庫と聞いて少しばかり心が躍る。
「ここ、そんなところもあるんですか?」
「はい、二階にあります。私やシア婆も時々行ったりしてます。掘り出し物があるかもしれませんしね。まあ、お婆ちゃんは基本、新しいものがあったらとりあえず貶しに行くだけなんですけど」
あはは…と苦笑をするユーリさん。
聞けばそうすることで、自身の意欲向上を行なっているんだとか。仕事に活かすというのは職人気質のある良い部分、だと言いたいが貶される方としてはたまったものではない。
もっとも、それで相手の方も次は負けんと対抗意識を燃やしてやる気に満ちたりするらしいので、結果オーライということなんだろうか。
それにしても、武器庫か……。
「シェロ、目が輝いてますわよ」
「え?」
「行きたいなら、今度案内しますよ?」
怒涛の勢いで二人から放たれる。
俺、目…輝いてるのかな?
「いや、えっと、俺、そんな顔してますか?」
「してますよ」
「してますわね」
即答だった。
まあ興味がないわけではない。
むしろ興味津々だ。
その辺りの話をユーリさんと取り付けていると、少しだけ会場がざわついた。
なんだろうかと見ていると、どうやら次のオークションが始まるようだ。
そうだ、まだここに来た理由を聞いてない。
「ルヴィアさんも、何か買うんですか?」
小声でそう尋ねれば、
「いいえ、今日は特に予定はありません。先ほど申し上げたように、ただの調べものですわ」
「調べものって、何か曰く付きの品でも?」
「ええ、ウチの者に調べさせていたところ、おそらく今行なっているモノの次の品がーーー」
そうしてルヴィアさんの話をしている内に、今の出品のオークションが進んでいく。
この会場では一つのグループにつき一人のサポートが付くらしく、後ろを向いてみればさっき自分達を案内してくれた男性が控えていた。このグループでいえばルヴィアさんが彼に指示を出して出品物への入札を指示するらしい。
ルヴィアさんがユーリさんと話をしている間もオークションは滞りなく進み、
『それではこちらの品、82で落札とさせていただきます』
静かな、それでいて会場に響き渡るオークショニアの声に再び会場が沈黙する。
それにしても『82』というのはどれぐらいの数字なんだろう。ルヴィアさんの聞いてみようか。いや、なんだか無性に嫌な予感がするからやめようか。ただでさえ資金の無い身分でここの基本相場やらを知ってしまったら地上に上がれないような気がする。うん、そうしよう。
無駄な気持ちを抱いていれば、次の品が会場へと運ばれてくる。今しがたのルヴィアさんの発言からすれば、これがお目当ての調べものってことになる。横を向けばルヴィアさんもユーリさんとの会話を打ち止め、白い衣に隠された品を凝視している。
そしてーーー。
静かに布が払われ。
ーーードッと、会場が揺れた。
地震が発生したわけでも無い。
何かこの地下空洞の天井に突如大穴が空いたわけでもないだろう。揺れているのは間違いなくこの会場だけだ。それほどまでに場内にいる人間は沸き立っていた。先ほどまでとは比べものにならないざわめきが会場を覆う。
そして、その様子に気を取られていた俺は皆が一様に見つめている視線の先のモノを視界に映してはいなかった。なんだろうかとその濁流に飛び込むような思いでその一点を注視する。
ーーー何かが、視界を過ぎった。
「ーーーー、っーーー」
直後に起こった、閃光。
瞳が燃える。
目蓋が裂ける。
頭の中がシェイクされ、思考が停止。
頭蓋から沸騰した血が垂れ落ちる。
このまま、焦がれる。焼け落ちる。
ーーー溶け落ちる。
「シェロ‼︎」
「ーーーはっ……」
揺さぶられた肩。そうだ、肩はある。
意識もある。その肩に乗せられた手の温かさも、その手の形もこの目に映せる。
眼球は裂けていない。溶けてすらない。
衛宮士郎は衛宮士郎のまま。
人の姿を保っている。
「ーーーあれ? オレ…?」
「急に頭を抱えて震え出したんですよ?」
覚えてませんか?というユーリさんの言葉に首をかしげる。俺が? いったいどうして。皆の様子がおかしくなって、それで出品されたものを見ようとして……。ーーーそうだ、出品物は。
「見ない方がいいですわ」
ルヴィアさんの手が視界を遮る。
「え?」
「シェロ、あなた…何が
そう俺に問うルヴィアさんの声は酷く固い。
いや、冷たさすらも含んだその声色に俺は何も言えなくなってしまう。それは問いかけなんてモノではなく、命令だった。
それも主が従者に対して行なうモノでもなく、それはまるで敵対者に向けて放つような冷めた声音だと思えた。
俺を見る彼女の鋭い目が俺を捉える。明らかに警戒心。そんな目をルヴィアさんから向けられていることに驚いてしまって、俺は返す言葉を無くしてしまった。そもそもが俺はルヴィアさんになんて言えばいいのか。
俺はなにを見た?
わからない。
目が合った瞬間に、唐突に意識が。
ーーーん?
ーーー
いったいナニと。
固まる俺に痺れを切らしたのか、ルヴィアさんは俺に向けていた目線を照らされた舞台上へと移す。依然としてルヴィアさんの手は俺の眼前に残ったまま動く気配はない。
見せまいと心配してくれてる……のは確かだと思うんだけど、いかんせん今の眼光は目蓋に焼き付いている。敵意、いや異物を見るような畏怖と警戒に満ちた眼差しに震える。
『さて今回皆様にお見せ致しますは、数ヶ月前に発見されたばかりの「キビシスの
俺のそんな意思とは異なる意味で震える会場に、舞台上に佇む男性の声が木霊する。その言葉にまたしても沸き立つ場内で、ルヴィアさんは一人、冷静にその出品物を見つめていた。
その隣にいるユーリさんも驚き、いや困惑めいた表情を浮かべている。
「聖遺物クラスの出品なんて……オークションでそんな物の取引を?」
聖遺物。
遠坂から聞いた。
聖杯戦争において、特定の
もっとも、その結果出てきたのはアイツだったということになるが。
聖遺物となると、それこそ家柄の力や家長の徳が試される。ユーリさんの姿からすると、こんな風にオークションに出品されるという事はありえないのか?
「キビシスって……たしか…」
神話に登場する堕ちた女神、怪物ゴルゴーンの首を収めた袋の名前…だったような。
「ミス・ルヴィアゼリッタ。これって…」
「ええ、法陣を敷いて外界とは隔絶してあるつもりなのでしょうけど、
臭気、ルヴィアさんはそう言っているけど特に臭いといったものは感じない。
「感覚的なモノではありませんわシェロ。貴方は全体像をご覧になっていないから判らないでしょうけど、膨れ上がった毒が結界を飽和させかけていますもの」
「それって、かなりマズイんじゃ!」
「ええ。ーーーですから」
ルヴィアさんがスッと片手を上げたのが見えた。それに呼応して控えていた男性が静かに近づく。ルヴィアさんが耳元で何かを囁き男性が一礼してから去っていく。
『かの怪物ゴルゴーンから垂れ堕ちた血流によって、キビシスはひとつの世界を構築しました。保有していた魔眼の効力も血に塗れた袋はいつしか、怪物と同等の次元へと昇華し、そしてその断片をこの度此方へと出品する運びと相成りました』
観客を盛り上げるかの如く、男の声は高まる。そしてそれにつられて行く買手たち。
その中で一人の女性がそのオークショニアに寄り、ぼそりと言葉を投げ、ここからでも男の口元がニヤついたのが見えた。
『さて、では始めましょう。高揚とされたお客様がいらっしゃるようですので。ーーーではこちらの品、「500」から始めさせていただきましょう‼︎‼︎』
その宣言に場内が荒れる。
さっきの80台からいきなりの桁上がり。
しかもそこからの競りのスタートとなると手を出し辛いのかなかなか次の一声が来ない。
そしていきなり500という数字を叩き出したのは、ゆったりと腰を下ろしたルヴィアさんなのだろう。俺にも座るように促した。一応前方を見ないように顔を伏せておこう。
500というのがどれほどの桁なのかは不明だけど、ルヴィアさんに次ぐ者が現れないのを見ると、かなり相場をつりあげたのだろう。
するとーーー。
斜め右後方からのどよめき。
何かと振り向けば、先ほどのルヴィアさんのように手を上げてその後ろに待機していた男性を呼び寄せている女性が一人。
何かを囁いたのちに男性は歩き去っていき。
ーーー数刻の間を挟み。
『550‼︎ 550‼︎ 誰か、おられませんか⁉︎』
ルヴィアさんに並び、そして上を行く人物が現れた。おそらくあの後ろの人だろう。
ーーーチッと。
舌打ちらしき音を耳が拾った。
ルヴィアさんだ。見れば男性を呼び、同じように何かを告げていた。
『600‼︎ 600が出ました‼︎』
湧く会場。その中でルヴィアさんはじっと正面を見据えていた。今まで見たことがないその落ち着いた横顔に視線が引き寄せられる。
そこで不意に視線を感じた。
何かと思ってそちらを見遣れば、先ほどの女性がこっちを鋭い眼差しで見据えている。
慌てて視線を下げたが、間違いなく目が合った。そしてその直後、またしても金額が跳ね上がるコールが響く。
ほぼ間違いなくあの女性だろう。
そこからは、いや。もう最初からルヴィアさんとあの女性の一騎打ちだった。
ルヴィアさんの手は上がることをやめず、冷静な表情でサポートを呼んではレートをつりあげる。そしてそれに対抗する女性。
相場はあっという間に1000を超えーーー。
『2100‼︎ 2100です‼︎ 他にいませんか⁉︎』
会場内は静謐な空気に包まれている。
ここにいる人間が皆、ルヴィアさん達の一挙手一投足に集中し固唾を呑んで見守っている。
提示された数字はルヴィアさんの一手。
一様に、次の一手を待っている。
それ以前に次の一手が伸びるのかどうか。
視線があの人へ流れていくのがここからでもわかる。ルヴィアさんは変わらず前方を見据えたまま微動だにしない。
動いたら負けだと定義しているかのように。
そしてーーー。
「ーーー、はっーー」
溢れた吐息が会場に溶け込む。
誰かが席を立つのを理解した。
コツコツとヒールの足音が異様なまでに耳に届く。誰一人として声を出さず、その耳と目で事の終わりを待っている。
ーーーガチャリと。
扉の開閉音と同時にその足音は完全に聞こえなくなった。
『ーーーでは』
甲高く響く木槌の音が終わりを奏でる。
『2100‼︎ 2100での落札とさせていただきます‼︎』
その瞬間、ぐらりと揺れたルヴィアさんの体が背凭れに倒れ込む。
「ーーーーはあぁぁ〜〜……………」
抑えていた緊張の糸が切れたのか、大きく息を吐いたルヴィアさんの顔には疲労の色が濃く出ていた。ずっと我慢していたのだろう。
それこそやはり、動いたら負けだーーーなんて、俺の魔術の師匠みたいなことを考えて。
「お疲れ様、ルヴィアさん」
「まったくですわ。あの方、意固地にもほどがあるでしょうに」
「…? もしかしてあの女の人こと知ってるのか?」
「ええ、まあそれなりには。それよりも」
椅子から立ち上がったルヴィアさんは勝者の笑みを浮かべ。
「ひとまず、報酬を受け取りにいきましょう」
そこからが一苦労。
出品物である『キビシスの蠱』なるものを受け取るために手続きを済ませ、エーデルフェルト家の莫大な資金力を見せつけられたのち、ではさっそくと御目当てのモノをと意気込んだもののーーー。
「もー、衛宮くんたら、急に呼びつけるなんて、そんなに私に会いたかったのかしら?」
…………。
………いや。
なんで遠坂がここに?
ルヴィアさんにオーギュストさんへ連絡してもらい、オーギュストさん経由でセイバーに事情を説明してこっちに来てもらって、この地下空間に入るのにルヴィアさんの手を借りようと思っていたら、遠坂を伴って向こうからここにやってきたという流れである。
そんな俺の疑問が顔に出ていたのだろう。その満面な笑みを見せる遠坂の表情は一変、いつもの悪魔モードへと転身した。
「セイバーだけ呼びつけてマスターである私はお払い箱なんて冗談じゃないわよ。当然ついていくに決まってるじゃない」
「すみませんシロウ。無理でした」
ぺこりと頭をさげるセイバーに顔を上げるようにと説得してから、ルヴィアさんの方へ目を向ける。頭痛でもするのか手を額に当てて苦悶しているような姿勢のルヴィアさん。
隣にいるユーリさんは、何かを悟ったのか苦笑するばかりのようだが。
「で、士郎、あの人…誰?」
またか、またなのかと言いたげな目線だが、大いに誤解だ。それにユーリさんとは今日初めてあったんだぞ。変なことなんかがあるわけないだろ。
「書庫の一件があったじゃない」
「…………………すみませんでした」
いや、あれはな?
俺もなんでか未だに分からないんだぞ?
どうしてあんなに好かれているのかまったく解明されてないんだ。というか解明される時が来るのだろうか。
まあとにかく、セイバーを応援として呼んだのは俺の提案だ。なにせ御目当てのブツは相当危険な代物だというのだ。しかもそんなものを出品しているとかどうかしている。
ルヴィアさんがオークション会場の関係者に問いつめて絞り出した話によると、どうやら出品の売り込みがあったらしい。
その人物は男性のようで、名前は告げず、いかにも胡散臭かったので御引き取り願おうとしたらしいのだが、その持ってきた物を見てオークションを取り仕切る上役がほぼ強引に出品を決めたらしい。それはもはや強奪に近かったらしいのだが、一応礼金も払ったので、向こうも納得してそのまま帰っていったらしい。
はっきり言おう。
大丈夫か、ここ?
もう二度と来たくなくなりつつある。
上層の武器庫ってとこは行ってみたいけど。
「暗示、でしょうか」
「或いは魔眼持ちか…ね」
と、遠坂とルヴィアさんは真剣な顔つきで何やら話し込んでいる。
「どちらにしてもやり手ね。かけた方にも周りにも違和感を掴ませないなんて」
「まあ、ここの方々がへっぽこだったという可能性もありますけれど」
「それもそっか。それでまんまと出品しちゃうあたりどうしようもないわね。私としては使い手もへっぽこだったってことの方が後々楽そうだし」
「まったくですわ」
こっちはこっちで言いたい放題である。
このお二方、こういう部分では同調するんだけどなぁ……。そう考えていれば自然とセイバーと目が合い、同じようなことを頭の隅で考えていたんだろう。二人同時に溜め息を吐いてしまったほどだ。
「それでシロウ、こちらの方は?」
「え? ああ、そうだった」
セイバーに手で促され、ユーリさんの方へ顔を向ければ、今のセイバーの言葉を聞いていたらしいユーリさんがスッとお辞儀をして。
「はじめまして、ユリル・フォンツ・カミンスキーと申します。グラリウス工房でお手伝いなんかをさせてもらっています」
「これはご丁寧に。セイバーと申します。以後お見知り置きを」
こちらは二人して礼儀正しく挨拶を済ませる。なんかあっちと比べてしまうと心穏やかでいられるのは錯覚じゃないだろう。
「衛宮くん、何か言った?」
「いえ、滅相もございません」
す、鋭い。
ルヴィアさんもルヴィアさんで俺のことをじっとりとした目で見てるし…。
「って、グラリウス工房‼︎ うそ、あのバカ高いところのっ‼︎」
「お、おい遠坂‼︎ 失礼だろう‼︎」
とは言いつつ、そうか、やっぱりバカ高いのかと納得してしまう。あのルヴィアさんが仕事を依頼するくらいだからな。
そうはいっても口にして良いことと悪いことがある。勤め先をそんな風に言われたら心中穏やかではいられないだろう。
と思いきや、ユーリさんは遠坂の言葉にうんうんと頷いている。
「あー…ですよね。シア婆、結構お金にはうるさいし大好きなので、結構ぼったくるんですよねー」
なんて肯定していた。
「確かに高額ですが腕に関しては折り紙付きですもの。仕事に見合う報酬を支払うのは当然でしてよ。ミス・トオサカ?」
「えーえー、そうでしょうね。まあもっとも使い手の力量に素材が釣り合わなければ無駄遣い以外の何物でもないでしょうけどね〜」
おほほほ、と笑いそうな声音で競い合う二人。ええい、これじゃあ話が一向に進まん。
「凛、ミス・ルヴィアゼリッタ。お二人ともそこまでにしていただきたい。それで私達が呼ばれた理由ですがーーー」
「うん。ーーーこれ、なんだけど」
ここはあの建物内部。
許可を取った上でここで対応する旨を伝えたのちに、一定の距離での人払いは向こうの人たちに任せ俺たちは同じ階層の隅にあった一室に身を寄せていた。
そして部屋の中央のテーブルに置かれたソレがルヴィアさんが競り落とした問題のブツであり、今現在は俺への事を考慮し、結界の上から布で覆い隠している。
「確かに漏れてるわね。半端な術式で塞いでるけど、コレって、初めからこうだったの?」
「おそらくそうでしょうね。最初から、意図してこのような方式を取ったのでしょう。それでいて知恵の無い魔術師にはバレないようにと幾らか網も施してある。もっとも今は意味を成していませんが」
「守護が完全に喰われてるもの。外へと押し出す勢いが逆に増してるから、かえって危険よ」
「つまり、初めから漏れ出すことを前提に術式を組んであったと?」
遠坂とルヴィアさんの会話に、ユーリさんが答えを投げかける。それに呆れたように頷き返す二人の様子からその通りなんだろう。
「それにしても、アンタ幾ら貢いだのよ。ーーーいや、やっぱりいいわ。結構聞きたくないから、ていうか言わないで、ゼッタイ」
「今更あなたの貧相な考えなどどうでもいいですわ。別に人助けだけが目的ではなくてよ。調整した後にいくらでも研究材料として使えますもの。ただ今は時間も準備も足りないので、セイバーさんの御力を借りようと思ったのですけどーーー」
ああ、だめだ。
またさっきの二の舞になる。
何としても流れを変えなければ。
「で、でも遠坂、人助けって?」
「士郎はわからない?
視界に過る、交差した女性の瞳。
「ーーーって、ことはだ。あの人の命を狙ってた奴がいるってことか!」
そうでしょうね、と遠坂は肯定する。
だとしたら大変だ。今すぐあの人を追いかけて事情を説明しないと。コレを使った殺しが失敗したとすれば次の策を練ってもおかしくない。それこそ物理的に直接的に命を奪いに来る可能性だって充分にある。
「それについては、ミス・ユリル。お願い出来ますか?」
「はい、構いませんよ。もしかしたらですけど私が
にっこりと微笑みを浮かべてから、ユーリさんは部屋を出て行った。知っている人かもしれませんって、どういう……。
「士郎、今はこっちに集中なさい。ーーーールヴィア」
遠坂の声色が低いものに変わった。
全員の目がテーブルの上に集まる。
よく見ると、青布の裾が変色している。
白、灰色、ーーー違う。
変色じゃない、アレは、石化?
その部分がパラパラとテーブルの上に粉となって降り積もり、次第にその箇所が全体へと拡散していく。
ーーー皆の足が数歩後退した。
風が吹き荒れ、私服で身を包んでいたセイバーの姿が凛々しい甲冑を纏う。
「シェロ、貴方は目を伏せていなさい」
「いや、だめだ」
「シェロ‼︎」
ルヴィアさんからの声には僅かな苛立ち。
でも、それも俺のことを想ってのものだ。
ありがとう。
でもごめん。
俺だけ何もしないってわけにはいかない。
遠坂達にだけ危険な真似をさせるわけにはいかないからさ。
「衛宮くん」
遠坂の声がかかる。
その目はテーブルへ向けられたままーーー、
「いざとなったらだけど、限度があるわよ」
「了解」
目を使え。
そう言ってるんだろう。
以前、あの夢の中であの魔術師さんの手を借りて解析を施した。あの時の感覚は体に、俺の回路に焼き付いている。見ることで何かの手かがりを掴めないか。俺の構造把握能力を最大限利用して、いざという時の一手を提示出来ないか。大丈夫だ、今度は大丈夫。
問題ない。何かあったとしても俺が耐えればいいだけの話なんだからな。
「ルヴィア、出し惜しみ無しよ。下手するとこの建物ごとヤバイことになりそうだし」
「言われるまでもありませんわ」
ルヴィアさんの足が動く。テーブルを囲むように四方に等間隔で石を配置していく。遠坂も石を取り出し詠唱を唱え始めた。
俺は遠坂の背後に付く。遠坂が行なっているのは防護結界の組み上げだろう。自身の足場を淵としてそこから内側をぐるりと円で囲み、ルヴィアさんはその内部でさらに結界を敷く二重の構えだ。俺の眼のスキルに対する備えでもあるんだろう。外側に位置するは俺とセイバー。
何かあればセイバーが中に入りこむことが出来るようにとセイバーにはあらかじめ呪を籠めた符を保たせている。
「ミス・トオサカ、発動にタイミングは?」
「初手の一発で決めるのは難しいでしょうね。こっちから先に仕掛けるから、後追いでありったけの負荷をかけて」
「リバウンドは無視ですの?呆れましたわ、やっぱり野蛮ではないですの」
ルヴィアさん達は言葉を交わしながらもテキパキと準備を進め、セイバーも剣を構えていざという時に備えている。
そしてーーー。
かすかに、空気が揺れた。
二重の結界が何かに反応している。
テーブルの上に置かれたソレに被さっていた布はもはや意味をなさず、鮮やかな青を漂白されて崩れ落ちる。
その隙間から、瞬きがひとつ。
ゾクリと、心臓が跳ね上がる。
施されていた封が解かれた。
こじ開けられた。
ーーー直後、突風が舞う。
「うわっーーー‼︎」
「きゃっ‼︎‼︎」
結界を吹き飛ばしかねないほどの急激な魔力の上昇。思わず瞑ってしまった目蓋を開き眼前を見据える。大丈夫、結界は生きてる。
「ルヴィアゼリッタ‼︎ 強化までどれくらい⁉︎」
「20秒‼︎」
「オーケー‼︎ こっちで稼ぐ‼︎」
漏れ出た濃霧がテーブルを伝って床を這い、結界に衝突したのちに大気中へ舞い上がる。
ーーーあれは毒だ。
充満していくそれは、人が触れてはいけないものだ。アレに触れれば体が己のモノではなくなる。忽ち砕け、塵となる。
ーーーイケる。
ーーー見える。
さっきとは違い干渉を受けることもない。
そこで気づいた。
結界の一部に感じるその差異に。
「ルヴィアさん、上だ‼︎」
「え?」
だめだ!
間に合わないっーーー‼︎
小さな金属音。擦れあうそれが暴風となって俺の視界を遮って駆け抜ける。
結界へと踏み込んだセイバーの手がルヴィアさんの肩を掴みそのまま横に飛び込み、直後に押し寄せた黒紫の煙が、先ほどまでルヴィアさんの居た場所に降りかかった。
「セイバー、そのままルヴィアを抱えてこっちまで来て‼︎」
遠坂の指示に従い、セイバーはルヴィアを抱いたまま遠坂の隣へと馳せ参じる。その間に懐から出した小石をばら撒き、即席の結界を張る準備をし、セイバー達が来たと同時に展開。
なんとか煙を遮ったもののーーー。
「いきなり絶望的じゃないのよ、これ…」
「こんな簡単に破られるなんて想定外、いえ、想像以上ですわね」
「破ったというよりは、結界を形作るのに使っていた魔力をごっそり持ってかれたわね。石化だけでも面倒なのに、魔力喰いまでするとは、随分手の込んだ殺し方ですこと」
「ミス・トオサカ。私と貴女で繋いでいたラインの感覚は?」
「あるけど、そっちは無いんでしょ。無駄の無い吸収力ね。とりあえずもう一度繋ぐから、この結界を保つのに集中して。私はもう一度探ってみる」
ルヴィアさんの構築した結界は破壊。遠坂の張ったこの結界もいつアレに壊されるかわからない。正直時間の問題かもしれない。
「ーーーーーー」
正面を向く。
遠坂達の背中越しにアレへと目を向ける。
拡大していく濃霧の中。
その中心点。
僅かに、ーーー何かが輝いた。
「遠坂。遠坂にはアレが何かわかるか?」
「アレってどれのことよ。いや、もしかして士郎…見えるの?」
紅い、光芒の煌めき。
見える。
それだけじゃない。
ーーーわかる。
アレが、この煙の基点。
零から一を作り、一からまた零へ到る穴底。
それに、ほんの少しだけど。
この魔力には憶えがある。
何処だっただろうか。
この一瞬にして意識を持って行かれる、魂に干渉してくるようなあの肌触り。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
問題は、アレはどうにかすること。どうにか出来さえすれば、きっとこの状況を覆せる。
「ーーー
撃鉄を起こす。
なにか、なにかあるはずだ。
遠坂にも、ルヴィアさんにも、セイバーにも。三人ではなく、俺だからこそ出来ることが。
「ーーーーーーよし。」
これだ。これしかない。
「セイバー、頼みがある」
「シロウ?」
「一瞬でいい。セイバーの剣で、あのテーブルまでの道をこじ開けることは出来るか?」
「それがシロウの望みだというなら、お任せを」
ーーーありがとう、セイバー。
「ちょっ、ちょっと士郎、何する気よ」
「遠坂も、一瞬でいい。外側の結界を解いてくれ。遠坂とルヴィアさんはそのまま二人で結界を維持しててくれると助かる」
獲物はどうするか。
アイツは洋弓を使ってたな。
対抗するわけじゃないけど、それならこっちは和弓でいこう。
「ーーー同調、開始」
無限の剣製。
あの世界に貯蔵された武器。
その中から
相手がゴルゴーンだというのなら、ちょうどいいものが
「ーーー基本骨子、解明」
けれど、これを弓で射るというならばーーー。
「ーーー構成材質、解明」
基本骨子、変更。
構成材質、補強。
最適な形に
「ーーーっ、ぐっーーー」
内側が荒れ狂い、乱舞する。
お前には早い。
荷が重い。
諦めろと、ーーーダレカガ囁ク。
うるさい、黙ってろ。
俺がやると決めたんだ。
オマエは引っ込んでろ。
基本を正し、構成を見つめ直し。
存在を固定しーーー。
「ーーー
ーーー解き放つ。
眼前の闇は存在を増して、立ちはだかる。
それがまるで誰かの背中のようだ。
褪せることのない記憶を隅に。
手に抱いた
外すことは赦されない。
的は単純、意識は正常。
ならば、外す余地など無し。
一瞬の間をくれるというなら、それだけで俺は正確に標的を射る。
そして、セイバーがいるのならその心配も皆無だ。なぜならーーー。
「ーーー風よ」
彼女は、あの遠坂凛の相棒なんだから。
「ーーー荒れ狂え!」
言霊と共に、聖剣から溢れ出る光風が闇を切り裂く。その剣に振り払えぬモノなど無し。
晴れた視界。その先にある瞬きと交差する。
ヤツは俺を、俺はヤツを捉える。
「今だ、遠坂!」
掛け声の直後、結界が解ける。
ぷつりと途絶えた守りの加護、役目を果たしてくれたセイバーと共に簡易の防護陣を形成しその枠の中に収まっている。
さて、俺の番だな。
弓を射るのは久しぶりだ。
けれど何も変わっていない。
「ーーー
キビシス。
怪物ゴルゴーンを倒すというならーーー。
「ーーー
手から離れた不死殺しが飛翔する。
それは幻想。
それは偽り。
世界によって葬り去られる類のまやかし。
あらゆる生を刈り取るカマイタチ。
石化へと繋がる霧を避け、ソレに激突する間際、光の奔流が一帯を包み込む。
ーーー
その衝撃に体が押し負け、足が地を離れる。
疲弊した肉体でそれに抗えるはずもなく、ふわりと浮かんだ俺は激流にただ流されるのみ。
背中が壁に激突し、意識を失いながらも、駆け寄ってくる三人の足元がかすかに視界をかすめた。セイバーがいたんだ。遠坂達に何かあるはずもない。
ーーーああ、三人が無事でよかったと。
安心して意識を奪われた。
★★
ーーー失敗だ。
ーーーどうやら失敗したようだ。
ーーーそれなりの額で取引を持ちかけるようにと幾らかの
ーーーそれにしてもあの女をいいように殺す算段をしてはみたものの、この結末はいただけない。瑣末な復讐譚に過ぎないと言ってもこれでは幕としては余りにも陳腐ではなかろうか。
ーーーーそう男は呟いた。
地下空洞の街はずれ、路地裏に隠れ潜んでいた男は、あらかたの仕掛けを済ませると溜め息をひとつ吐いてから立ち上がった。
事の発端は明快。
貴族の家柄であった件の女性は、時計塔の一員である前に表社会ではそれなりに名を馳せる実業家の一人娘であり、時間を重ねた結果、父親からの推薦などで一定のポストでの役職をこなすに至っていた。二つの世界を行き来する従来の魔術師は表社会での繋がりも持ち、彼がその会社に席を置いたのは家からの後押しもあったからだ。
そうして、訪れた滅びは彼を襲う。
内部からのリークだった。
不当な売買のネタを押し付けられ、社内で晒し者にされた挙句、何もかもを喪った。
そう、今回の事件の経緯はこれだけ。
それだけで男には十分だった。
彼女への殺意を抱くのに、人の思いとはそれだけで十分だったのだ。
そして今へと繋がり。
結果は失敗に終わったのだ。
「ーーーさて、決行は」
どんな手段を使うのか。
失敗した時の次策は用意してある。
呪殺は失敗。
ならば次はとーーー。
しかし、しかしだ。
ここで重要なのは。
重要だったのは。
彼の中には自らの手で女を殺めるという手段がなかったことのだ。
ーーーナイフさえあれば人は殺せる。
生あるモノの刺殺など、人類が神代から離れ魔術を認識するに到る以前から、世界には存在していた摂理である。
その単純な方式に、男は気づかなかった。
彼はどうしようもなく魔術師だったのだ。
もっとも今この時においては、彼には根源への到達など頭の隅にも置いてはいなかっただろうが。
そして大きな、些細な足の掛け間違いが。
「ーーーーーーー」
その時を生んだ。
パシュッーーー、と。
何かがかすめた。
通り過ぎた何かが反対側の路面へと到達し、路面ごと砕け散った。
「ーーーーーーは、ーー」
奇跡だ。
この瞬間、声を出せたのは奇跡だろう。
そのーーーぽっかりと穴の空いた
ドサリと、体がよれ、呆気なく倒れた。
地を伝う血流が男の最後を物語る。
彼の復讐譚は、何もなさず。何も生まず。
こうして終わりを迎えた。
「ーーーーーーーーふう」
そして、その屍を遠くから。
高台から見据える女が一人。
スコープ越しに覗いたソレはもう動かない。
反動を予測し、術式の展開の有無も確認したが未だ気配を見せず。対象は沈黙。
「ーーーーーーお仕事、終了。ほんっと、なんにも気付かなかったですね。少しは警戒したほうがいいのに。狙撃による襲撃なんて魔術界でも日常茶飯事でしょう?」
腕に抱えたライフルを撫でる。
今日もご苦労様と、呟きが漏れた。
風に青い髪が靡く。
その瞳は紅く塗れている。
「今夜はいい感じに血も収まってるし、ターゲットも大したことなかったし、ラッキー。いざとなったら飲まなきゃいけないしねー」
くすりと笑って、彼女は。
「チェックリストには入れてたけど、術者本人は大したことなかったなー。まあでも、ミス・ルヴィアゼリッタ達が事を大きくしてくれたおかげで、協会から幾らか貰えそうだし」
今日も今日とて、殺し屋稼業は絶好調。
「あ、そうだ。エミヤくん…彼をいつ案内するかちゃんと予定を決めないと」
ユリル・フォンツ・カミンスキーは、こうしてまたひとつ夜を越えていく。
☆
「シロウ、起きましたか」
「ーーーーーーセイバー?」
ふわりと、不意に感じた温もりがスッと離れていく。天井から察するにここは俺の自室だ。椅子を用意して座っているセイバー以外に人気は無い。遠坂やルヴィアさん達はどこに行ったんだろうか。
身体を起こそうと腕に力を入れれば、腹部の辺りに強烈な痛みを覚え、顔を歪ませる。
「ーーーーーっー」
「動いてはいけません。凛からしっかり見張っているようにと言付かっていますので」
眉根を寄せてこちらを見遣るセイバーに痛み紛れに苦笑を浮かべつつ、おとなしく再び横になる。あれから丸一日が経っているらしい。遠坂とルヴィアさんは会場の関係者に処理の方の根回しをしているようだ。なんだかんだ言って結構やらかしちまったからな。
また賠償請求されでもしたらどうしよう。
そんな俺の考えが顔に出ていたのか、セイバーが柔らかく微笑んで「心配ありません」と口にしていたが、なんだか今はその笑みがひどく恐ろしいモノに見えてしまった。
いかんな。こういった部分が遠坂の影響を受けつつある。あの赤い悪魔の遺伝子を受け継ぎ覚醒してしまう前に手を打たないと。
それに重要なことがひとつ。
あの女性を狙っていた奴を
よかった。これで一段落だな。
「セイバー、怪我とかしてないよな?」
「はい。私も凛も、ミス・ルヴィアゼリッタも健康体そのものです」
そっか、そりゃよかった。
「ーーーーーー」
「……ん? セイバー?」
一安心していれば、セイバーがじっとこちらを見つめたまま固まっている。
「ーーーーーーいえ、やはりこれは、凛から言わなければいけないのでしょう。…少し悔しいところではありますが」
何のことだろうかと首を捻っていると、室外から扉を開くような音がひとつ。続いて「ただいまー」という遠坂の声が聞こえてくる。どうやら帰ってきたようだ。立ち上がったセイバーが扉を開き、俺が起きた事を伝える。
そうして現れた遠坂を見てーーー。
「遠坂、お前、寝てないのか」
目元のくまがひどい。
いつも気を遣っている黒髪も所々がぴょんと跳ねていたりと、普段から想像も…って。いや案外そうでもないかもしれないな。日本でも時たまこんな様子を見た事があったし。
「セイバーもお疲れ様。ちょっと休んでていいわよ」
「はい。ではあとは
そうして部屋から去っていくセイバーの背を見送ったあと、遠坂は軽い足取りで近づいてくるとセイバーの座っていた椅子にそっくりそのまま腰を下ろした。
そのまま、数秒ーーー沈黙が続く。
なんだろうかと、考えて。
ふと、思いついた。
「ーーーー遠坂、もしかして……怒ってるのか?」
ピクッと、頬が引き攣り、眉が跳ねた。
あ、やっぱりな。
それが引き金だったんだろう。
遠坂の顔つきが変化する。
「ふ、ふふふ。今さら疑問形で問いちゃうあたりが士郎らしいわよね、ええ本当に。ーーーーーーーーーこのっ、バカ‼︎」
「………………」
ああ、本当、怒ってるんだな。
でも多分、俺が遠坂の立場で、遠坂やセイバーが無茶をしたらきっと猛烈に怒りが湧くに違いない。きっと今の遠坂と同じかそれ以上に。
「アンタの限度っていうのは一日中眠りこけるところまでが許容範囲なの⁉︎ それで怪我ひとつないこっちの身にもなれっての!」
「そんなこと言ったって仕方なかっただろ?」
「うっーーー、そ、それはそれよ。ルヴィアだって憎たらしいほどに心配してたんだから。あとでちゃんと謝りに行くこと!」
「うん。わかった」
そっか、ルヴィアさんも心配してくれたのか。かっこ悪いところを見せちゃったな。しかも今は雇い主だし、雇用した直後にこのザマでクビになったりしないだろうか。
遠坂は俺を見て深い溜め息をひとつ。
「ーーーほんと、変わんないんだから」
「うん。変わんないな、俺」
けど、それでいい。
俺は俺のまま。偽物のままであり続ける。
後悔はしないと、あの時。
あの背中に、俺は告げたのだ。
ーーー正義の味方になると。
「でも、遠坂がいるからな」
そう、遠坂がいる。
いつ愛想をつかされるかわからないけど、でもきっと遠坂なら何処だろうとその逞しさで駆けつけちゃうんだろうなと思う。
「なっ、ま…まあそうだけど。でもそれとこれとは話が別よ。とにかく加減を覚えること。アレだってもう少しコントロール下におけるようにならないと。衛宮くん、貴方一発打つ度にそんな風になるおつもり?」
「…む。そんなことはない、ーーーようにしていかないとな。うん、課題は山積みだな」
「時計塔の勉強も怠っちゃダメだからね」
「あ、そっか。いけね、危うく忘れるところだった」
そんな俺を見てくすっと笑う遠坂。
その笑顔があまりにも可愛く見えて、思わず見惚れてしまった。
「ーーー士郎?」
「え、あ…なんでもない」
いかんいかん、またからかわれるところだ。
丸一日も休んでいたんだから、さすがに危うい。掘らなくていい墓穴を掘る羽目になりそうだ。今こうして動けない身だと尚更に。
………………ん?
丸一日、休んで……?
「ーーーーあ」
やばい。やばいぞ。
「書庫に行くの………忘れてた」
俺に首には書庫に行くことを義務付けられた
こ、このままだと、俺の首がもげてデッドエンドるのは確実だ!ーーーって、待てよ。
丸一日経ってるのになんでまだ生きてるんだ?
「ああ、そういえばそうね。でも大丈夫よ」
「なんでさ、今この瞬間は大丈夫かもしれないけど、このままだと」
俺に首が吹っ飛ぶ瞬間を遠坂に目撃されることになるかもしれない。そんなものを遠坂には見てほしくない。
「だってほら、そこ」
ーーーえ?
ずっと、セイバーや遠坂に向けていた首を反対側へと動かす。
……枕元に何かいた。
シーツの上の隅っこに眠っているらしきソレ。ベッドから落ちてしまわないかと不安になるが、その間に視線に気づきでもしたのだろうか、小さなその体をモゾモゾと動かし、ゆっくりと目を開いた。
「………お。はよ、う…」
間違いない。
あの子だ。
書庫にいるはずのあの子がいた。
ていうかちっさい。背丈に関してはセイバーとほぼほぼ同じくらいだったはずなのに。いつの間にかこんなに小さく。
「後始末がいくらか片付いてから私が書庫の方に行ったのよ。この子ったら士郎が来たと思って顔を出して、いざ私を見たらあからさまに落ち込むから、ほんとどうしてくれようかと思ったわよ」
「さりげなく怖いこと言わないでくれ。それでこうなった理由って、遠坂は分かるのか?」
「コレはあくまでも分体、オリジナルは今も書庫の方にいるわ。士郎のことを話したらいつの間にかこうなってたのよ。詳しいところは本体から聞きなさい、ていうか私も詳しく聞きたいところなんだけど」
遠坂の話が進む間、小さくなった妖精さんは俺の肌をペチペチと叩く。それがこっちを見ろと言っているようで気になるが、今は遠坂の話に集中したい。
「士郎の首の契約はきちんと正当な方法で制約を受けてる以上、強引に解呪しようとすればヘタするとこっちが手痛い目に遭うし、だからこの子はこうして契約を継続させてくれるのよ」
そっか、つまり俺のためにこうまでして。
「行けなくてごめんな。それと、ありがとう」
そう告げてみれば、こくりと頷いてくれる。
なんで懐かれているのかは未だに不明だが、それでも嬉しいもんだ。
「まだ、話してくれてないの? その子、もう結構喋れるんでしょう?」
遠坂の言う通り、時間が経つにつれ次第に口数が多くなっているのは確かだ。それでもまだ拙い様子ではあるのだが。分体のこの子はあっちの彼女よりも口数は少なめなようだし。
「まあ、もう起きても大丈夫になったら会いに行くからな」
人差し指をスッと差し出すと、それを小さな両手で握りしめてくれる。嬉しそうに顔を綻ばせたのがわかった。
「ーーーふーん…」
「遠坂?」
目を細めて俺とこの子を見つめる遠坂。
意味深な呟きはなんなのか。
「別に。優しいのね衛宮くん」
「そりゃあ、無下にできないだろう?」
こんなに懐いてくれてるんだし。
ーーーいや、正直ギアスについてはもうそろそろ勘弁してほしいところではあるが。
「ふん。なによなによ、ルヴィアやその子ばっかりカマちゃって、私も眠いから寝よっとー」
「そっか、じゃあーーーーって」
あの、遠坂さん?
何故、体を寄せてくるんですか?
ベッドに上がり、寄り添うように体を横にした遠坂の顔が間近に迫る。ち、近い近い。
「と、遠坂、あのさ…えっと、」
「部屋に戻るのが面倒だし、私もここで寝るから」
「い、一応怪我人なんですが…」
「………じゃあーーー」
遠坂の唇が耳元に寄り。
「ーーーーーーーーー」
……………う。
「わ、わかった。了解、ラジャー」
「ふ、ふーん、そっか。まあいいけど?」
結果的に両名とも頬が真っ赤に。
いつまで経ってもこんな調子。
俺も遠坂も、恋愛ごとになるとどうにも上手く立ち振る舞えない。
「遠坂」
「なに?」
「その、ありがとな」
「……………………………………………………………………………………………………………えっち」
ーーーいや。
決してそういう繋がりで言ったわけでなく。