ようこそ伝説の超生徒がいる教室へ   作:シュユ

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第2話

――綾小路清隆視点

 

 ホームルームの最後に、茶柱先生は最低限の注意事項だけを淡々と告げた。寮の部屋はすでに割り振られていること、校内施設は基本的にプライベートポイントで利用できること、必要なものがあれば売店やスーパーで揃えればいいこと。生徒たちは十万ポイントという言葉の余韻がまだ抜けていないらしく、説明を聞きながらも、どこで何を買うかという話題で小さく盛り上がっていた。

 

「今日の連絡は以上だ。明日からは通常通り授業を行う。遅刻はするな」

 

「先生、校内ってどこまで自由に見て回っていいんすか?」

 

 池が手を上げて聞いた。

 

「立ち入り禁止区域以外なら好きにしろ」

 

「おお、マジか」

 

「ただし、問題を起こせば当然記録される。浮かれるのは勝手だが、自分の行動には責任を持て」

 

「記録って、何をですか?」

 

「必要なことは説明した」

 

 茶柱先生はそれ以上答えず、出席簿を手に教室を出ていった。最後まで余計なことは言わない教師だった。

 

「よっしゃ! じゃあ早速どっか行こうぜ!」

 

「俺、まずケヤキモール行きたい!」

 

「いや食堂だろ。腹減ったし」

 

「早速食いに出かける!後に続け!」

 

 教室のあちこちで声が上がる。十万ポイントを手にした新入生たちは、自由な学校生活という言葉をそのまま受け取っているようだった。オレも必要な物を揃える必要がある。寮の部屋に最低限のものはあるらしいが、日用品まですべて揃っているわけではない。特に買いたいものがあるわけでもないが、校内施設の確認を兼ねて、スーパーかコンビニを見ておくのは悪くない。

 

「綾小路くんはどこか行くの?」

 

 櫛田がこちらに声をかけてきた。

 

「生活用品を少し見に行くつもりだ」

 

「そっか。私もあとで行こうかな!みんなで食堂に行くって話も出てるんだけど」

 

「初日から忙しそうだな」

 

「せっかくだし、いろいろ見ておきたいからね。堀北さんも一緒にどうかな?」

 

 櫛田は少し離れた席にいる堀北にも声をかけた。堀北は鞄に手をかけたまま、わずかに視線を上げる。

 

「私は一人で行動するわ」

 

「そっか……。必要なもの買いに行くの?」

 

「ええ」

 

「じゃあ途中まで一緒に――」

 

「必要ないわ」

 

「あ、うん。分かった」

 

 櫛田は笑顔のまま引いた。普通なら少し気まずくなりそうなものだが、櫛田は空気を壊さないのがうまい。

 

「綾小路くん、堀北さんと同じ方向かもね」

 

「たまたまだ」

 

「うん、たまたまでもいいと思うよ」

 

 何がいいのかは分からないが、櫛田はそう言って池たちの方へ戻っていった。

 

 教室を出ると、廊下は新入生でかなり騒がしくなっていた。校内地図を見ながら食堂へ向かう者、売店へ向かう者、寮の場所を確認する者。それぞれが初日らしく浮かれている。オレは案内板を確認し、スーパーとコンビニがある区画へ向かうことにした。すると少し先に、堀北の姿があった。

 

「またあなたなのね」

 

「こっちの台詞でもある」

 

「私は必要なものを買いに行くだけよ。誰かと行動するつもりはないわ」

 

「オレも同じだ。生活用品を買うだけだ」

 

「そう。なら、目的地が同じだけということね」

 

「そういうことにしておこう」

 

 別に一緒に行動するつもりはなかったが、歩く方向が同じなら仕方がない。堀北も無理に離れようとはしなかった。お互いに会話を続ける必要はないが、無言で並んで歩くのも少し不自然だった。

 

「十万ポイント、どう思う?」

 

 先に口を開いたのは堀北だった。

 

「便利だとは思う」

 

「それだけ?」

 

「高校生に毎月十万円相当のポイントが支給される。普通に考えれば好待遇だろ」

 

「普通に考えれば、ね」

 

「普通じゃないと?」

 

「入学初日からバスと並走する生徒がいる学校よ。普通という言葉は慎重に使った方がいいわ」

 

「そこを基準にされると、ほとんどのものが普通じゃなくなる」

 

「事実でしょう」

 

 否定はできなかった。

 

 スーパーは校内施設の一角にあった。校内とは思えないほど品揃えがよく、食品、飲み物、日用品、文具、衣類の一部まで並んでいる。生徒たちはさっそく買い物を始めていた。高そうな菓子をいくつもカゴに入れる者、飲み物をまとめ買いする者、必要かどうか分からない雑貨を手に取る者。十万ポイントという数字は、初日からかなりの安心感を与えているらしい。

 

「思ったより普通のスーパーだな」

 

「そうね。品揃えだけ見れば、校内施設とは思えないわ」

 

「値段も普通か?」

 

 近くの商品棚を見ると、極端に高いというわけではなさそうだった。一般的な価格に近い。ポイントが現金と同じ価値を持つという説明に合わせているのだろう。

 

「あなたは何を買うつもり?」

 

「歯ブラシとシャンプーくらいだな。あと飲み物」

 

「必要最低限ね」

 

「初日から無駄に使う理由もない」

 

「そこは同意するわ」

 

 堀北は商品を手に取りながら、値段を確認していた。必要なものだけを買うつもりらしい。浮かれている他の生徒とは違い、かなり慎重だった。

 

「なんだか、思ったより堅実だな」

 

「あなたにそう言われる筋合いはないわ」

 

「褒めたつもりだったんだが」

 

「褒め言葉には聞こえなかったわ」

 

 堀北はそう言って、歯ブラシを一つカゴに入れた。

 

 その時、店内の入口付近がざわついた。何か大きなものが通路をふさいだような気配がある。振り向くと、ブロリーが立っていた。制服姿のまま、売店の匂いに誘われたように店内を見渡している。偶然と言うには存在感が強すぎた。

 

「……どうして彼までここにいるのかしら」

 

「オレに聞かれても困る。たぶん、食べ物の気配を追ってきたんじゃないか」

 

「野生動物みたいに言うのはやめなさい」

 

「違うのか?」

 

「少なくとも生徒として入学している以上、そう扱うべきでしょう」

 

 堀北はそう言いながらも、明らかに警戒していた。ブロリーは店内の棚を見回し、食品コーナーの方へ足を向けかける。その途中で、別の棚の前に立ち止まった。

 

「なんなんだぁ?これは……」

 

「……彼、何に反応したの?」

 

「さあ」

 

 ブロリーの視線の先には、店内の一角にある小さなコーナーがあった。そこには大きく『無料商品コーナー』と書かれている。箱が潰れた日用品、歯ブラシ、髭剃り、シャンプー、石鹸、賞味期限の近い食品などがまとめて置かれていた。棚には『一人につき月五点まで』という注意書きもある。

 

「無料……?」

 

 堀北の声が低くなる。

 

「校内に無料商品があるんだな」

 

「おかしいわね」

 

「またか」

 

「ええ。またよ」

 

 堀北は無料コーナーの棚に近づき、注意書きを確認した。オレも隣で見る。商品は新品ではあるが、外箱が潰れていたり、賞味期限が近かったり、通常販売には向かないものが多い。それでも、生活する分には十分に使えるものだった。

 

「全員に十万ポイントが支給されているのなら、無料の商品を置く意味が分からないわ」

 

「ポイントを使いたくない生徒向けじゃないか?」

 

「それだけなら、ここまで種類を揃える必要はないでしょう。それに、一人につき月五点までという制限がある。学校側が管理している証拠よ」

 

「無料品の取り合いを防ぐためかもしれない」

 

「それもあるでしょうね。でも、そもそも取り合いになる前提があること自体が妙だわ」

 

 堀北の言うことは分かる。初月に十万ポイントが支給されるなら、歯ブラシや石鹸を無料で受け取る必要性は低い。だが、学校側が無意味なものを置くとも思えない。ポイントが尽きる生徒が出ることを想定しているのか。あるいは、来月以降も同じ額が支給されるとは限らないのか。どちらにせよ、この無料コーナーは単なる親切ではないように見えた。

 

「イェイ!」

 

 ブロリーが無料コーナーに手を伸ばしかけた。棚ごと持ち上げそうな角度だった。

 

「ちょっと待ちなさい」

 

 堀北が反射的に止める。

 

「なんだぁ…」

 

「一人につき月五点までと書いてあるでしょう。文字が読めないわけではないわよね」

 

「何ィ!?すまなかったヨ」

 

「思ったより素直なのね……」

 

「堀北、よく止めたな」

 

「止めなければ棚ごと消えそうだったもの」

 

「消えるという表現は大げさじゃないか?」

 

「本気でそう思う?」

 

「……分からない」

 

 ブロリーは注意書きを見つめたあと、ゆっくりと商品を選び始めた。力加減が難しいのか、歯ブラシをつまむだけで袋が少し変形している。近くにいた店員が、声をかけるべきかどうか迷っているようだった。

 

「彼、無料という言葉に反応しているのかしら」

 

「食べ物だけじゃないのかもしれない」

 

「無料に引き寄せられる新入生。言葉だけなら珍しくないけれど、実物を見ると圧が違うわね」

 

「偶然にしては圧が強すぎるな」

 

 堀北は無料コーナーから歯ブラシと石鹸を一つずつ手に取った。

 

「使うのか?」

 

「確認よ。制度としてあるなら、一度利用してみる価値はあるわ」

 

「堅実だな」

 

「あなたも確認した方がいいわ。こういう仕組みは、後で意味を持つ可能性がある」

 

「ポイントを節約したいだけじゃないのか?」

 

「それもあるわ」

 

 否定しないところが堀北らしい。オレも無料コーナーから歯ブラシを一つ取った。買う予定だったものが無料で手に入るなら、それを断る理由はない。だが、この便利さにはどこか引っかかりが残る。

 

 会計を済ませたあと、オレたちは店を出た。ブロリーも、いくつかの商品を手にして後ろからついてくる。ついてくるというより、同じ方向に進んでいるだけかもしれない。だが、後ろにいるだけで気配がかなり強い。正直少しばかりの恐怖を感じる。

 

「なぜ自然に合流しているのかしら」

 

「オレに聞かれても困る」

 

「あなた、さっきからそればかりね」

 

「本当に困っているからな」

 

「何処へ行くんだぁ?腹が減ったヨ」

 

「今のは、食堂に行きたいという意味でいいのかしら」

 

「たぶんな」

 

「あなた、彼の言葉を理解できるの?」

 

「理解というより、状況から判断しているだけだ」

 

「通訳みたいになっているわよ」

 

「やめてくれ。荷が重い」

 

 流れで食堂へ向かうことになった。オレは施設確認のつもりだったし、堀北も食堂の仕組みを見ておきたいらしい。ブロリーは単純に食べ物の方へ進んでいるだけに見えた。

 

 食堂は想像以上に広かった。昼食の時間帯ということもあり、すでに多くの新入生でにぎわっている。券売機のような端末が並び、メニューにはカレー、定食、麺類、丼ものなどが表示されていた。価格は安いものから高いものまである。高いメニューを見て盛り上がっている生徒もいれば、安いメニューで済ませようとしている生徒もいた。

 

「かなり種類があるな」

 

「そうね。値段にも差があるわ」

 

「十万ポイントがあるなら、しばらく食費には困らなさそうだ」

 

「そう考える生徒が多いでしょうね」

 

 堀北はメニュー表を見て、ある場所で目を止めた。

 

「また無料ね」

 

 そこには『無料山菜定食』と表示されていた。価格はゼロポイント。写真を見る限り、白米、味噌汁、山菜の小鉢、簡単な漬物がついている。豪華ではないが、食事としては成立していた。

 

「無料の食事まであるのか」

 

「無料商品に続いて無料定食。さすがに偶然ではないわね」

 

「ポイントがなくても最低限の生活はできるようになっているのかもしれない」

 

「逆に言えば、ポイントがなくなる生徒が出ることを想定しているということよ」

 

 堀北は端末の前で腕を組んだ。無料の日用品がある。無料の食事もある。寮も用意されている。つまり、ポイントがなくなっても最低限の衣食住は保たれる設計になっている。十万ポイントは生活を保証するためのものではなく、それ以上の自由を与えるためのものかもしれない。あるいは、何らかの評価によって変動するものなのかもしれない。

 

「どうする? 山菜定食にするのか?」

 

「確認のために選ぶのはありね」

 

「堀北は徹底しているな」

 

「無駄遣いを避けているだけよ。あなたは?」

 

「同じでいい」

 

「意外ね。もう少し普通のものを選ぶかと思ったわ」

 

「普通のものはいつでも食べられる。無料のものは一度確認しておきたい」

 

「そういうところは、少しだけ話が合うわね」

 

「少しだけか」

 

「多く見積もっても少しよ」

 

 堀北は容赦がない。

 

「ん"ん"ん"ん"ん"!!ん"ん"ーーッ!!!!」

 

 ブロリーがメニュー端末の前で止まり、もの凄い唸り声を上げている。視線は山菜定食と、肉が多く乗った有料メニューの間を行き来している。

 

「迷っているのかしら」

 

「たぶん、無料と肉で揺れている」

 

「ずいぶん分かりやすい葛藤ね」

 

「これだぁ!!」

 

「今のは何を選んだの?」

 

「無料の山菜定食じゃないか?」

 

「本当に?」

 

 端末から出てきた食券を見る限り、ブロリーは無料山菜定食を選んだらしい。校則かポイントの節約か、あるいは単に無料という言葉に負けたのかは分からない。

 

 食堂の一角に座ると、すぐに周囲の騒がしさが耳に入ってきた。特に目立っている席がある。そこには悟空がいた。彼の前には、すでに大量の皿が積まれている。カレー、ラーメン、唐揚げ定食、丼もの、さらにデザートらしきものまである。食堂の職員が、明らかに困惑した表情で追加の料理を運んでいた。

 

「……初日からすごいな」

 

「すごいというより、異常ね」

 

 堀北が冷静に言った。

 

「どれだけ食うんだよ、あいつ!」

 

 池が声を上げる。

 

「いや、見てて気持ちいいくらい食うけどさ!」

 

「気持ちいい量を超えてるだろ!」

 

 山内も隣で叫んでいる。須藤も腕を組んでその様子を見ていた。

 

「マジかよ。あれ、全部自分で頼んだのか?」

 

「たぶんそうだろ」

 

「ポイント一気に減るぞ」

 

「でも十万あるし、余裕じゃね?」

 

「いや、毎日あれなら終わるだろ」

 

 その近くでは、ベジータが悟空を見て対抗心を燃やしているようだった。だが、積まれた皿の数を見て、少しずつ表情が変わっていく。

 

「バカが…お前にはサイヤ人の誇りが無いらしいな」

 

「今、明らかに張り合おうとしてやめたわね」

 

 堀北が言った。

 

「賢明な判断だな」

 

「あなた、あの人たちの観察に慣れてきていない?」

 

「慣れたくはない」

 

 悟空は悪びれる様子もなく、次々と料理を食べている。悪意があるわけではない。ただ、食欲の基準がこちらと違うだけに見えた。それが一番困る。

 

「オラ腹減っちまって☆おかわりどんどん持ってきやがれー!!」

 

「今の発言、食堂の職員が聞いたら泣くんじゃないか?」

 

「すでに泣きそうな顔をしているわ」

 

 堀北の視線の先で、食堂の職員が追加注文の端末を確認しながら固まっていた。「サイヤ人なんて宇宙の悪魔さ!」なんて罵倒もキッチン奥から聞こえてくる。

 

「初日から十万ポイントを食費で削る人間がいるとは思わなかった」

 

「彼、本当に来月まで生活できるのかしら」

 

「無料山菜定食がある」

 

「それで足りると思う?」

 

「無理だろうな」

 

 堀北は小さく息を吐いた。

 

 その時、紫髪の男子生徒が何か言おうと立ち上がった。第一話の自己紹介でも流されていた生徒だ。おそらく悟空に何か注意するつもりなのだろう。

 

「悟空さん!闇雲にポイントを使うのは危険です!もっと情報を集めてからでも…!」

 

「おい、悟空! 次それ一口くれよ!」

 

「ダメだ!オラ腹ぺこなんだモグモグ」

 

「山内くん、今誰か話してなかった?」

 

「え?」

 

「たぶん、していたね」

 

「誰が?」

 

「さあ」

 

「ハァッ☆」

 

 紫髪の男子生徒は再び座った。トランクス、と言った気がするが、周囲の会話に完全に流されていた。気の毒ではあるが、この食堂では悟空の皿の数の方が注目度が高い。

 

 ブロリーは悟空の席をじっと見ていた。食事に反応しているのか、悟空本人に反応しているのかは分からない。だが、食堂の空気が少しだけ張り詰める。

 

「カカロットォ……」

 

「……今のは、どういう意味かしら」

 

「分からない」

 

「分からないのに、あなたは平然としているのね」

 

「平然としているように見えるだけだ」

 

「便利な顔ね」

 

「今日二回目だな、それ」

 

 ブロリーが悟空の方へ一歩進みかけた瞬間、近くの生徒たちが一斉に静かになった。悟空は相変わらず食べている。池と山内は笑っていいのか逃げた方がいいのか判断できずに固まっている。ベジータはなぜか椅子に座り直した。

 

「彼、止めなくていいの?」

 

 堀北がこちらを見る。

 

「オレが止められると思うか?」

 

「思わないわ」

 

「なら聞かないでくれ」

 

「確認よ」

 

 ブロリーはしばらく悟空を見ていたが、やがて自分の山菜定食へ視線を戻した。そして静かに席へ座る。食堂の空気が少しだけ緩んだ。食堂の外を見ると、パラガス校長がこちらに向かって右手を突き出している。奇行が多い校長だ。

 

「今、何かの危機を回避した気がする」

 

「気のせいではないでしょうね」

 

 堀北は山菜定食の小鉢を見ながら言った。

 

「無料の商品、無料の食事。最低限の生活はできるようになっている。その一方で、十万ポイントを与えられた生徒たちは早速使い始めている」

 

「この学校は、使わせたいのか、節約させたいのか分からないな」

 

「どちらでもいいのではないかしら。使うか節約するかも、評価の対象になる可能性がある」

 

「茶柱先生はそこまで言っていない」

 

「言わないだけでしょう」

 

 堀北は山菜を一口食べ、少しだけ表情を変えた。

 

「どうだ?」

 

「普通ね」

 

「無料なら十分じゃないか?」

 

「ええ。だからこそ妙なのよ。最低限は無料で済む。けれど、ポイントがあればより良いものを選べる。差が出る仕組みとしては分かりやすいわ」

 

「生活の中で自然に差がつく、か」

 

「そして、何も考えない生徒ほど早く消費する」

 

 堀北の視線の先で、悟空の前にさらに皿が追加された。

 

「増えたな」

 

「増えたわね」

 

「このクラス、本当に大丈夫なのかしら」

 

「さあな。少なくとも、食費の心配をした方がよさそうな奴はいる」

 

 その直後、悟空の席にまた新しい皿が置かれた。池が叫び、山内が笑い、須藤が呆れ、ベジータが何か言いたげに固まり、トランクスはまた何か言おうとして誰にも拾われていない。ブロリーは低く反応し、食堂の空気が一瞬だけ妙に張り詰める。

 

「山菜、不味いです…」

 

 ブロリーが呟く。オレは山菜定食の味噌汁を飲みながら、周囲を見た。十万ポイントに浮かれる生徒たち。無料の商品と無料の食事。妙に説明を避ける学校側。そして、普通の基準から少し外れたクラスメイトたち。普通の学校生活を送るには、思っていたよりも観察することが多そうだった。

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