もしも雲明世代でエイリア編がまた始まったら   作:こころにいつも中二病

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というわけでチラシの裏に書いてた雲明編における妄想エイリア編です。

とはいいつつも、しばらくはオリジナルキャラクターと原作キャラクターが会話してるだけのシーンが続きますが……。

それでもよければどうぞ。




プロローグ
プロローグ:おわって、またはじまり。


 

 

 

 

 

 

 

 かち、かち、かち、と時計は音を立てて時を刻む。

 絶えず動いて、まわって、あの場にいた全ての人々の望みに逆らって、終着点へと向かっていく。

 

 

 細い針が、また一つ動いた。

 

 

 それが合図となって、フィールド中に高く、長く、遠い音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 ピィ──────ッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その音に、誰もが現実を見失い、声を失った。

 

 

 

 そんな中、ただ1人。

 高い位置で全てを見下ろしていた男が叫ぶ。

 

 

 

 

『ここで、笛────ッ!!』

 

 

 

 

 この瞬間、歴史に刻まれるであろう激闘は、割れんばかりの歓声に包まれながら一つの終わりを迎えた。

 

 

 


 観客たちは誰もが頬を紅潮させ、目の前で繰り広げられた熱戦の余韻を噛み締めるように語り合っている。つい先ほどまで敵として死力を尽くした選手たちが、互いの実力を、今日までの努力を、そしてこの瞬間の健闘を称え合うように、抱きしめ、笑い、言葉を交わす。


 それはまさしく、険しい“栄光の道”を歩んだ者だけが辿り着ける、てっぺんの景色だった。そこには敗北の悔しささえも飲み込むほどの、輝かしい未来を分かち合う美しい光景が広がっている。

 

 彼らが立つ青々としたフィールドには、空を覆っていた雲はとうに晴れ、祝福するかのように暖かな太陽の光が差し込んでいた。

 

 

 そして、その中心に立つのは。

 誰からも讃えられ、望まれ、歓喜に沸く英雄たち。

 

 

 そんな彼らの眩しく、純粋で、希望に満ちた幼い笑みは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──次の瞬間、無慈悲に振り下ろされた鉄パイプの一振りによって、いとも容易く粉々に砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 がっしゃーん、と耳を劈くような硬い破壊音が鳴る。液晶の向こうで無垢に笑っていた顔に無数のヒビが入り、破片という名の白い砂利が埋め込まれる。

 

 

 そんな惨状を、ひとりの少年がただ色のない瞳で見下ろしていた。


 

 

 衝撃で内部の基盤がいかれてしまったのか、ジジジ……とおかしな音を立てるそれ。それでもなお、画面の奥では時折ノイズで歪みながらも、彼らの笑顔が消えることはない。


 それに苛立ったのか、もう一度少年は手を上げる。そして勢いよく、手にした鉄の塊を振り下ろした。

 

 

 

 

 がしゃーん、どしゃ、がしゃん、ごしゃ、ぴっしゃーん

 

 

 

 

 耳障りな音が狭い空間に反響している。

 

 照明ひとつない薄暗い部屋に、ちかちかと狂ったように点滅する白光り。しかし、最後に甲高い衝撃音を鳴らした後、一瞬だけ不自然に虹色に光ったかと思えば──ふっ、と黒く染まって。

 そうして、二度と光を放つことはなくなった。

 

 

 再び、重い暗闇だけが空間を支配する。

 

 


 静寂に包まれた空間に落ちているのは、ふーっ、ふーっ、という、酸素を無理やり肺に押し込んでいるかのような獣の如くひどく苦しそうな息遣いだけだった。

 

 

「ふ……」

 

 

 やがて、そんなノイズのような息遣いすら聞こえなくなった後、肺から空気が漏れたような微かな声が響いた。それを合図にしたかのように、ふふふ、ふふふふふ、というくぐもった音が部屋にこだまする。

 

 

「あは、あはは、あははははははははっ」

 

 

 初めは一音だけだった声は、とうとう抑えきれない笑い声へと変わった。
 ブリキの人形のように酷く錆び付いていた、それでいて油のように泥々しくぬらついた声。

 

 

 

 

「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

 

 

 

 

 腹の底から溢れ出るような、終わりのない反響。
 そこにあったのは、歓喜か、興奮か、快感か、あるいは安堵か、幸福か、羨望か、はたまた嫉妬か、怒りか…………

 

 

 …………それとも底知れぬ憎悪か。

 

 

 

 気がつけば、暗く沈んだ夜は終わりの時間を迎えようとしている。
 ガラス越しに見える遠くの空では、太陽と共に染められていく波色の壁に、雲が高く登りつつあった。

 

「もうすぐ……もうすぐだ」

 

 カーテンの隙間から漏れ出た薄明が、薄暗い部屋を切り裂き、少年の口元だけをスポットライトのように冷酷に照らし出す。

 

「あと少しで、ぜんぶが終わる……ううん」

 

 返り血のように赤い朝焼けを浴びて。
 その薄くあどけない唇が、確かに、三日月のような不気味な弧を描いた。

 

 

 

 

「やっと……はじまるんだ……」

 

 

 

 

 ごん、と重たい音を立てて、鉄パイプが床に転がる。もはや光を失った部屋の中で、その音だけがやけに大きく反響し、そして静かに消えていく。

 

 少年は、もはやがらくたとなったそれに背を向けると、漆黒の闇の中へと溶け込むように歩き出す。

 

 

 

 空がとう白み、朝日の長い帯が道を作るように差し込んでいた。

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

『もしもし? もう起きた?』

 

 

 

 

 

 デスクの上に置かれたスマートフォンからノイズに混じって響いてきたのは、若い男の声だった。

 画面には通話アプリのホーム画面と、受信中を示す緑色のランプが小さく点灯している。

 

 まだ真新しい匂いのする、小綺麗なアパートの一室。未開封の段ボール箱がいくつも壁際に積まれた殺風景なリビングで、シワひとつないブレザーに袖を通していた少年は、その無機質な光に顔を向けた。

 

 

「……おはよう。起きてるよ」

『おはよう。早いね。今日から学校だっけ』

 

 スピーカー越しにくぐもった男の声が響く。穏やかで、どこか包み込むような温かさと気遣いに包まれた大人の声。しかし、少年の手は止まることなく、ただ淡々と、着替えの合間に言葉を返した。

 

「うん、今準備してるところ」

『そっか。……そっちはどう? 慣れたかな』

「んー……どうだろう。昨日着いたばかりだし。まだ、何も」

 

 考え込むような間を置きながら、少年はデスクの傍らに置かれた眼鏡を手に取る。知的な印象を与えるフレームの奥で、海と同じ色をした瞳が、殺風景な部屋の景色をそのまま映し出していた。

 

 そんな時、ふと、スマートフォン越しの声が暗く沈み、『ごめんね』と短い謝罪を落とした。

 

 

「……え?」

『仕事の関係とはいえ、初日に付き添ってやれなくて』

 

 

 心底案じているからこそ、申し訳なさそうに暗くなる声。少年はそれに

なんでもないように返答する。

 

「謝らないでよ。仕事なら仕方ないと思うし。……去年までずっと、忙しかったんだから」

 

 少年の言葉に、電話の向こうの男は一瞬、言葉を詰まらせた。微かな吐息の音が、静かな部屋に響く。

 

 

 

 

 

 

『……敦士』

 

 

 

 

 

 

 籠った声が、少年の名を呼んだ。少年の手が、ネクタイに添えられたままピタリと止まる。

 わずかな沈黙が流れる。しかし、すぐに優しく諭すような声がスピーカーを通して聞こえてきた。

 

 

『……今回は色々あったとは思うけど、焦らなくていいと思うんだ。時間はたくさんあるんだし……これを機に色々と考えて……』

「……大丈夫だよ、父さん」

 

 

 少年は、電話越しの労りの言葉を、静かに、しかし明瞭な響きで断ち切った。その声に思わず男の方も言葉を止め、部屋の静寂が一瞬だけ色濃くなる。

 しかし、それもたった数秒の出来事だった。少年は再び指先を動かし、ゆっくりと襟元を直し始めると、何事もなかったように言葉を続ける。

 

「心配しないでよ、それなりにうまくやれると思うし。こういうことだって初めてじゃないし……大丈夫」

 

 声は穏やかなままだ。ただ、その温度だけがほんのわずかに下がっていた。それ以上は踏み込まないでほしいと、見えない線を引くような響きだった。

 

『……そっか』

 

 遠回しの拒絶の言葉に、男はこれ以上何かを追及する気はないようだった。彼もまた、少年の声に混ざった微かなサインに気づいていたのだろう。それでも、彼の意思を尊重し、何も告げないことを選んだ。

 

 それから少しの間が空いた後、男は努めて平静な声で話題を切り替える。

 

『……それじゃあ、そろそろ仕事の時間だから行くね。何かあったら、いつでも連絡して』


「わかった。……じゃあね」

 

 父親らしい物言いに、少年も朗らかな声で応える。その会話を最後に、短い電子音が鳴り、通話が切れた。

 

 

「…………」

 

 


 少年は、暗転したスマートフォンの画面を見つめたまま、無言で俯く。黒いガラス面には、目を伏せたままの少年の顔が反射していた。

 しばらくすると、少年は顔を上げて手に持っていたスマートフォンをポケットにしまう。そして、ゆっくりと立ち上がると、のろのろと窓際へ歩み寄った。

 

 数センチほど浮いたカーテンの端から、そこから朝の陽光が、遠慮がちに差し込んでいる。

 

 少年は無言でカーテンに手を伸ばした。指先が冷たい布地に触れる感触に、ほんの一瞬躊躇いを見せる。しかしすぐに思い直したように強く握りしめると、勢いに任せるようにそれを引っ張った。

 

 シャッ、という乾いた音と共に、カーテンが横に滑る。

 遮るものがなくなった眩い朝日が直接瞳孔を射抜くように降り注ぎ、少年思わず瞼を細めた。

 

 

 網膜に焼き付いた白い残像が徐々に晴れていく。真白に塗られた視界を、少しずつ慣らすように目を開ける。

 

 

 

 

 

 

 ──そこには。

 

 彼にとってまだ見慣れない、南雲原という街の景色が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 入り組んだ斜面に沿って立ち並ぶ家々。幾重にも重なる急な坂道。そして、空から降り注ぐ光を乱反射して白く輝く紺碧の海。

 太陽はすでに高く、この街並みを鮮烈に包み込んでいる。

 

 そんな焼きつくような熱を帯びた南雲原の街並みを、少年はただ、硝子細工のような瞳で瞬きもせずに見下していた。

 

 その視線はとうに街そのものから外れ、少し離れた位置にある高台の校舎にのみ向けられている。

 

 

 その、学校の名は──。

 

 

 

 

「南雲原……中学校……」

 

 

 

 

 少年は誰に宛てるでもなく呟くと、眩しそうに目を細めた。

 わずかな隙間から吹き込んでくる海風が、柔らかな銀の髪を僅かに揺らす。その風の音に紛れて、少年の耳に遠くから聞こえる子供たちの笑い声やちょっとした喧騒が、日常が始まりを迎える活気を添えて届いていく。

 

 

 それでも彼は、不意に漏れた言葉を最後に静かに踵を返した。背後の窓からの光は、もう振り返らない。

 

「……行かなくちゃ」

 

 そして彼は、足早に玄関へと向かいドアノブに手を掛けた。

 

 ガチャリと開け放たれた扉の向こうでは、夏の日差しが地面を照りつけ始めている。

 まだ馴染みきっていない制服の裾が、朝の光の中で蜃気楼のように淡く滲んだ。

 光に包まれたその道に向かって、ゆっくりと、重みを含んではじめの一歩を踏み出す。

 

 

 空は、一日の始まりを告げるような澄み切った青の色に彩られ、どこまでも広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──夏がやってくる。

 ── 抗おうと決めた。

 

 

 暑くて、眩しくて、痛くて、

 痛くても、苦しても、誰に望まれていなくても、

 

 そして、ひとも、故郷も、愛するものも、全て焼きつくしてしまうような。

 僕の手で、僕らの意思を、存在意義を、証明しようと誓った。

 

 

 そんな苛烈で、鮮やかな夏が──

 たとえ、誰かを裏 切る結果になったとしても構わない。

 

 

 ──すぐそこまでに迫ってきていた。

 ──それが、僕がいま、生きている意味なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イナズマイレブン

英雄たちのヴィクトリーロード

 

 

エイリアの再来編

 

 

 

 

 






再来、という名の通り、本作の世界では過去にエイリア編が起こっている扱いとなります。アレオリとは完全に別時空。
後半の電話の人物は想像の通りの人です。まああらすじ見ればすぐにわかるね。


登場してほしいセレクトキャラは?

  • 幕下照
  • 弁天九郎丸
  • 伊勢谷要
  • 頂挑夢
  • 雨道未理科
  • 井馬里陽愛
  • 古手打七南
  • 判目才人
  • 牛島突五郎
  • 妖士乃銀郎
  • 濱南暁海
  • 福良むすび
  • 鉄野ケルビン
  • 黒原玲文
  • 星美哉
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