M1 本日の予定
地球防衛軍——あるいはEDF——という作品をプレイしたことがあるだろうか。宇宙からの侵略者を撃退するというストーリーのミッションクリア型
1,2,3,4,5,6とあと少し、外伝作品が発売されているが、そのどれもに共通するのが、『地球を守る超国家的な軍事組織が存在し、主人公はそれに属している、あるいは途中から属す』ということだ。
そして、多種多様な銃火器や搭乗兵器を操り、宇宙人やそれの扱う巨大生物を薙ぎ倒す、という単純明快なゲーム性ながら、多くの敵生物やマップ、まるで異なる四兵科の扱いなどもあり、人気を博しているシリーズだ。
そして、皆さんはブルーアーカイブをご存知です。何気ない日常で、ほんの少しの奇跡を見つける物語であり、学園×青春×物語RPG……と、銘打っているスマホ向けソーシャルゲームだ。
ソシャゲとは元来そういうモノで、少しばかり
シナリオはというと、複数の学園によって形成される学園都市『キヴォトス』に赴任した主人公、『先生』が様々な生徒の悩みに寄り添い、解決するよう手助けをすると言ったモノ……ではある。この『先生』自体、狂人と言って差し支えないような存在だが。
私はこの二つの作品を楽しんでいた者でいて、特にEDFの方は特にやりこんでいた。しかし、しかしだな。現在私の前に広がる光景は一切想定していない。ああ、どのような景色かというと……。
ビル街と、その上に広がる白い輪だ。私の目には散々スマホ越しで見てきたキヴォトスのように見えるが、きっと気のせいだろう。そういうことにしておく(定型文)。
このあとどうするか考えながら、ふと喫茶店のガラスを見ると、俺が映っていない。違う、俺の位置に俺でないものが映っている。中肉中背の二十六歳男性ではない、十五歳くらいの美少女が写っている。
「……えぇ?」
理解の範疇を超えた物に驚愕ではなく、困惑が勝つ。念のため、右腕を挙げる。ガラスの中の美少女も右腕を挙げる。股に手を突っ込む。相棒がいない。相棒が消えた。バカな、バカな、バカな。
困惑があまりに強い物で、どうしたらいいかわからなくなる。しかし、股に手をずっと突っ込んでるのもアレなので、手を抜いて腰に当てようとすると、硬い物にぶつかる。
その硬い物——金属的な硬さで、なかなかに重量がある——を持ち上げると、アサルトライフル……レイヴン系の何かが目に入る。間違いなくレイヴンだ。俺は隊員だから間違えない。
「つまり、俺今地球防衛軍の装備でキヴォトスにいるの?」
いくら歴戦の隊員といえどこのようなミッションは体験したことがない。情報を探そう、そうだ、俺は美少女なのだ。もしかしたら神秘があるのではないか。再度カフェのガラスを使って、今度は頭の上を確認する。
青色の物体が浮かんでいる。六角形の中心に円形の物体、そしてその円形の周りに羽を模したような模様。特徴的な文字列こそないが、確実にこれはEDFだ。俺の神秘『全地球防衛機構軍』なの?
次に重要なポイントは何か。EDFどれか、である。しかしこれは簡単だ。レイヴンはEDF5.6にしか存在しない。そしてEDFは二作品ごとに世界観リセットなのでここに区別をつける必要はない。決して戦いたくはないが、もし戦うとしたらおそらくプライマーとなる。
プライマー——2ndPV時点では、イミグラントという名前だった——はEDF屈指の強さを誇る敵集団である、何故かを端的に表すと、奴らはタイムトラベルができる。細かい説明は除くが、その影響で主人公——ストーム1とその相棒、プロフェッサーは非常に苦しめられた。
もし奴らが来るとしたら、十全な対策が必要になる。ただ一つだけではない。コンバットフレームにイプシロン自走レールガン、潜水母艦セイレーン、パンドラ、エピメテウス、チラン爆雷、ギガンティックアンローダーバルガ……。
俺のことも重要だが、先にキヴォトスのことだ。かといって、証拠がない情報を適当に流布するわけにはいかない。
欲しいのは、その『もし』を警戒して、技術提供と出資をしてくれるような人間だ。ブルアカでいうと、誰だ。黒服、リオ会長、先生……。
つまり、本日の予定はどうにかしてこの中の誰かに会うこと、決まった。この中で会いやすそうなのは先生だが、多分今の私なら黒服も同程度に会いやすい。
一度市街地を出よう。
人通りの多い市街地を出て、郊外に行く。そして、黒服の研究成果の一つを大声で叫ぶ! 研究者ならば、絶対にここにくるはずだ。
「
「クックック。そんなの叫ばなくても、貴方のことはずっと見ていましたよ。突然極大のエネルギー反応が発生したかと思ったら、さもずっとそこにいたように立っていたのですから」
振り返ると、黒い靄が人の形を成したような物が立っていた。
「ああ、君だよ君。少し用があってね、絶対に人が来ないところへ案内してくれないかい」
「私も貴方に聞きたい話があるので。是非」
黒服に連れられた場所……ただの家に入る。
「で、だな。まずは自己紹介から、俺は
「おっさんではないでしょう。私は黒服、そう呼んでください」
「ああ。そう呼ぶとしよう。
はじめに一つ言っておこう。俺は異世界人だ。元々は中肉中背の男だったのだが、目が覚めたらこのような姿になっていた」
「なるほど、生徒の姿に」
「その通りだ。理解が早くて助かる。そして、俺の元いた世界では、君達はゲームの中の存在として扱われていた」
「…………。そうですか、理解はできました。納得はできませんけど」
「だから、話を聞いて今がどのあたりか聞いていいか?」
「ええ」
「色彩はやってきたか?」
「いいえ」
「エデン条約は破談になったか?」
「なんですかそれ」
「君は小鳥遊ホシノを誘拐したか?」
「まだです」
「S.C.H.A.L.Eに先生はやってきたか?」
「誰です?」
「小鳥遊ホシノは何年生だ?」
「中学三年生です。まあ、そろそろ卒業しますけど」
本編開始前。なら十分に交渉ができる。
「少し話は変わるが、こちら側に『地球防衛軍』というゲームシリーズがある」
「ほう」
「今の私はそのゲームに登場する武器を持ち、ヘイローはそのゲームのエンブレムの形をしている。おそらく私がここに来たのと何らかの紐付きがあるのではないかと思っている」
「確かに」
「もしかしたら、多少突飛に思えるやもしれんが、宇宙人が襲ってくるかもしれん」
「……続きを」
「俺の持つ情報と、ある程度なら俺自体を研究に使っても構わん。お前の技術と金をよこせ」
「それは対宇宙人用に?」
「ああ」
少し考えるそぶりを見せ、そして口を開く。
「わかりました。協力しましょう。どのようなものが欲しいのですか?」
「山ほどある。後でリストアップして渡そう」
「……制作、手伝ってくださいね」
「わかっている」
貰った手帳とボールペンを使って、欲しい物……EDF5,6に登場する全兵器を書き込む。歩兵が使える物のみではない、チラン爆雷やフーリガン砲もだ。当然だが、パワードスケルトンやウインクユニットも用意したい。潜水母艦三種も用意したい。
「ああ、せっかく生徒の姿をしているのだからミレニアムにでも入ったらどうです。そちらの方が武装の用意もしやすいでしょうし」
「ん、いいのか?」
「いいのか、と言いますと?」
「お前のことだから、『アビドスに入って、暁のホルスを籠絡するのです……』とか言うと思ってた」
「私を何だと思ってるんですか。しかし、そうですね。打算はありますよ。そちらの技術も把握して、より楽に作りたいと言う打算が」
メモを書き終わったので、それを渡しながら黒服と会話をする。黒服はパソコンで俺の戸籍を偽造しているようで、どこの学校にでも入れるようにしてくれている。
「ああ、ではミレニアムに。……もしかしたら、全然エンジニア部に入らないかもしれないぞ」
「別にいいですよ。その場合は貴方を肉体労働に付き合わせるだけなので」
「おっと、それは困った。ところで、入るのは転入か?」
「いいえ。来年のつもりでしたが……今から入れた方がいいですか?」
「いいや、いい。勉強もしたいし、何よりレイヴン一つで戦闘に出向きたくない……。少し連射していいか? 連射速度で何だか見分けたい」
「構いませんよ」
地面に向けて、レイヴンを乱射する。この
「M4レイヴンか。hardest帯の武器だからそれなり。近接戦用アサルトライフルだな」
「……なるほど?」
「強いぞ。オーキッドとかの方が俺は好きだが」
「そうですか」
「M9は大好きだ。何てったって弾が速くて強いからな」
「はあ、そのM4レイヴンって本当にアサルトライフルなんですか? レート高すぎません?」
「秒間60発」
「私そのレベルの兵器を量産させられるんですか?」
「お願い頼むぜ。壊さなきゃM4レイヴン解析していいから」
「そうさせてもらいます……。ん、なんですか? このバルジレーザーっていうの」
俺の渡した手帳の、『バルジレーザー※必須♡』と書かれているところを指さして質問してくる。
「衛星に支援要請をして、そこからレーザーを放出する攻撃だ。
「まあ。そうですかね」
俺科学技術とか詳しくないけど。
「ああ、そうです。教本渡しますから、勉強してくださいね」
「……それは、ミレニアムの?」
「ええ」
「…………マジか」
「マジです」
仕方ない。ほとんど提供してもらってるんだ。やってやる。EDFの誇りにかけて(定型文)。
楽しんでいただけたのなら幸いです。