「嵐山ハジメ、君は一体、何者なんだい?」
なぜ俺は横乳丸出しFOXに詰められているのか……。困った……。
七月△日。珍しく、ポストに手紙が入っていた。なんなのだろうか。
学友ならば直接、空崎ならモモトーク、ゲマトリアなら黒服経由であるはずだ。
わざわざ、ミレニアムの家に手紙を入れるなど……。
「うわっ、高そっ」
とても高そうな封筒に、明らかに高級品の蝋が押されている。転売したら高値で売れないかな?
「……ああ……トリニティ? まだ一回も行ってないんだけど……」
こんな良さげなものを使うだなんて、恐らくお嬢様。そしてキヴォトスでお嬢様といえばトリニティだ。
「仕方ない、読むか」
封筒を破って、これまた高そうな便箋に書かれた内容を見る。
『君に興味がある。トリニティのこの庭園で話そう。怪しいものではない』
「怪しいわボケ! なぁんで俺は変な奴ばっかりに興味持たれんだよ!」
黒服、明星、ベアトリーチェ……。
「f**k you!」
怒りのままに罵声を放つ。家の中だからこそできることだ。家の外だったら流石に俺の美少女が崩れてしまう。
「……一応行くか」
テーマパークに来たみたいだぜ、テンション上がるなぁ〜。
「で、場所は〜」
指定された庭園にたどり着くと、獣耳……おそらく狐……を持った、横乳丸出しFOXがいた。百合園セイアだな。
「君のことを待っていたよ。嵐山ハジメ」
「……百合園セイア」
「私も有名人になってしまったかな?」
「それは私のセリフだ。なぜ私の住所を知っている」
「では、まず私の情報から話そうか」
「頼む」
「百合園セイア、トリニティ総合学園一年生、サンクトゥス派。そして、生まれた時から予知夢のような力を持っている」
「ああ、なるほど。それで私の名を」
「……白々しい演技はやめたらどうだい?」
「へ?」
「私が君のことを一方的に知っているように、君も私のことを一方的に知っているはずだ」
百合園は真剣な瞳で俺の事を見つめる。
「なんのことだか」
「……まあ、今はそれでいいとしよう」
「私はただのミレニアムサイエンススクール一般生徒だぞ」
「……そうだ、客人になんのもてなしもしないのもあれだと思ってね。アイスを調達してきた。好きだろう?」
「ああ、よく知ってるな」
「すまないが、酒は調達できなかった」
「私は未成年だぞ?」
セイアから手渡された白いアイスに木のスプーンを差し込む。
「中々うまいな、コレ」
「ああ、そうだろう? それはだな一個……」
話を聞きながら、さらにスプーンを口に運ぶ。
「八十八万円」
「……ッ⁉︎ は、は、はは、は八十八万円? 八十八円の間違いじゃなくて?」
「八十八万円だ」
「いま俺の胃の中俺のとっておき日本酒より高いの? 使ってたバイクより高いの?」
「まぁ、待て君はまだ全然食べ終わっていない。割合的に考えると十万円くらいじゃないか?」
「プレステ買えるぞ……?」
「私はゲームをそこまでしない。もっといい例えは無いのか?」
「サ○ゼ八八〇回行ける」
「……? どこだい?」
「お嬢様かよ……」
爽やかな風が吹き抜ける中で、アイスを頬張る。
「味がしなくなった」
「緊張かい? もっと気楽にしてくれてもいいんだが……」
「だったら値段伝えるなよ……。庶民の金銭感覚を舐めるな。数千円のご飯で『高いな〜』ってなるんだぞ」
「そうなのか……。まあ、食べながらで構わない。話そうじゃないか」
「ああ」
「早速本題に。嵐山ハジメ、年齢16歳、女」
「ついこの間誕生日だったからな」
「ミレニアムサイエンススクール一年生」
「そも、着ている服から考えてわかることだ」
「エンジニア部とトレーニング部を兼部、三週間ほど前にトレーニング部の活動として三日間のトレッキングを行ったが、どうしたのか学校を欠席することが伝わっていなく騒ぎとなった」
「もしかしてストーカーか? あまり褒められたことじゃないぞ」
「その際、キヴォトスではブラックマーケットでしか売られていない10年ものの白ワインを飲酒、その後片付けとして、瓶を原型が無くなるまで粉々にした」
あそこの周りに人はいなかったはずだ。ワインはテントの中で注ぎ、それで月見酒をしたはず。そも、あそこは薮の中だ、見通しも悪くあそこに登るのはよっぽどの腕前だぞ。
冷や汗をかく俺とは対照的に、余裕綽々と言った様子で、百合園は話し続ける。
「全地球防衛機構軍EDFに属しているという体で、ベース235と言う名前で運用している秘密基地、バレンランドに足繁く通っている」
「……」
「と、言うのは表の話」
「十分裏だった気がするが」
「……本名も
「————は?」
「出身は千葉県、幼少期は父親の転勤について行き全国を回って、最終的に千葉に戻りしばらくの間上京して東京にいた」
平静とした顔で俺の……嵐山一としてのパーソナルデータを語り続ける。このキヴォトスでは黒服しか知らないはずの。
「東京では中規模の会社でサラリーマンをしていた。評価としては良くもなく悪くもなく、と言った様子だった」
アイスを一度置き、ティーカップの中の紅茶を飲む。そして呼吸を整えて、冷静さを維持する。
「人生で最も死を覚悟した瞬間は練行峰でツキノワグマと遭遇した時。なんとか熊スプレーを使う事によって命からがら逃げ出すことに成功した」
俺の人生最悪の瞬間まで抑えてるだと……。動揺を露わにしないように、意味ありげにティーカップを呷る。
「家族構成は両親、弟の四人家族。幼い頃は犬を飼っていたが寿命で他界した」
黒服に言った覚えさえないんだが。酒キメたときに漏らしたか?
「好きな兵科はレンジャー。好きな兵器はフォボスZプラン4」
「………………未来視じゃなかったか? お前の能力?」
「予知夢というだけだ。今のことでも見える。たまたま君と黒服が共に話しているところだとかを目撃してね」
「ああ、なるほど……」
「君も予知者だろう? 私について話しているのが見えた」
「まあ、否定はしない。否定は……しないが……」
反応に困っていると、百合園が先に口を開く。
「……手法は私と異なる、と」
「まあ、そうだな。詳しくは……」
「知らないね。私はこれ以上の手札を持ち合わせていないから」
「……ほんとか?」
「本当だとも」
「……うっわ、駆け引き苦手なんだよな……。火力で解決しちゃダメ?」
「ショットガンを構えるのをやめてくれ。病弱なんだ」
「なら尚更だな! このD55ブリーチャーのサビにしてくれる!」
「やめてくれ」
「なら、このDNGで……」
「どうして君はそう武力で解決したがるのかなっ!」
「……キヴォトスってそう言う土地柄だろ?」
「…………まあ、確かに」
「…………。よし、やはりこのブリーチャーで……」
「暴力反対、正義実現委員会を呼ぶよ」
電話を取り出して、黒服につなげる。
「はぁい、黒服。逃走経路の用意」
『何する気ですか』
「記憶を消して逃げる」
『やめなさい』
「なんでぇ」
『なんでもかんでもないです。と、いうか実際人を叩いて記憶を消すのは難しいですよ。それで、どうしたんですか?』
「あ、話していい? 百合園」
「別に構わない」
「つまりな……
……と、言うわけだ」
『……バレンランドの位置は?』
「バレンランドの位置知ってる?」
「知らない」
『ハジメさん、スピーカーにしてください。漏らす気は?』
「ない」
『……別にいいでしょう。貴方の計画にも関わってくるでしょう?』
「まあ、な。正味処理したらにっちもさんちもいかなくなる」
『あと、人を殺す覚悟あるんですか?』
「……多のためならやる。その覚悟ぐらいはある……まあ、今回は該当しないが」
『ああ、そう言う人でしたね……』
「怖いんだが?」
「怖くない怖くない。ただN6打つ用意してるだけでヘーキヘーキ」
「碌でもない、核ミサイルだろう。それ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ百合園に向けて、対応をする。
「……まあ、そうだな。うん、ミサイルだぞ」
「まあってなんだい?」
「まあはまあだよ」
「まあまあうるさいんだが……」
「お前が返したんだろ!」
「まともに話すつもりないだろう、君……」
「無いっちゃ無いぞ」
「絶対無いだろう。この前の話とか酷かったぞ……」
「…………どれだ?」
「どれだって……なんだい?」
「いや、マトモに返してない会話が多すぎて……」
「マトモに返してないと言うと?」
「…………えーと、取り敢えず情報量で殴って相手の思考を遅らせてみたり……」
「…………」
「会話にツッコミどころを作ってそっちに思考を向けさせてみたり……」
「……」
「火力の話にそらしてみたり……」
「……やっぱり碌でもないな、君」
「そうですー。碌でもないですー!」
「成人男性がこんなことしてて親に顔向けできるのかい?」
「…………できないけど?」
「……」
「できるわけないだろ? 普通に考えて」
「……できないのか……」
「そりゃそうだ。キヴォトスに来てからしてること兵器製作、火力評価、話のちょろまかし、だる絡みの四つだけだぞ!」
「最悪だね」
『極悪人ですよ』
「まったく、黒服君には負けるよ」
「私は君の方が悪人に見えるけど……」
「……そろそろ泣くぞ?」
「君に情報量で殴られた全被害者に謝ってからの方がいいと思うな」
「えーと、白石、調月、明星、美甘、黒服、空崎、お隣さん、お向かいさん……ああ、百合園。お前は含めた方がいいか?」
「このカスを罰する法律はないのかい?」
『私の知る限りではありませんよ』
「現実は非情だね……。で、話は戻るが。
嵐山ハジメ、君は一体、何者なんだい?」
「知りたい?」
「ああ、話を傍聴しているのと全く合わない! 君は自らのことを26‥…もう27の中肉中背の男、と称するが、その見た目はどう考えてもただの16の女の子だ」
「俺もびっくりした」
「EDFなんて組織はどこを探しても見つからない」
「このキヴォトスにはないからな」
「…………で、どういうことだい?」
仕方ない。
「なあ、百合園。異世界って信じるか?」
「——俄には信じがたいね」
「まあ、このタイミングで話を切り出したってことはそういうことだ。つっても剣と魔法のファンタジー的なそれじゃあない」
「EDFが地球を守護している歴史だと?」
「いやそれゲーム」
「…………待っていろ。私の知り合いに腕のいい医師がいるんだ。性格はいささか直情的だが、腕と信念は信頼における。きっと良くしてくれるさ」
「やめろやめろやめろ。俺はマトモ、I'm正常」
「異常者はこぞってそういうんだ」
「I'm正常って?」
「そうじゃない……ツッコミどころを作るってこれか?」
「そうだ……黒服、過去を話していいか?」
『アレはダメです。アレじゃなければ』
「よし、お達しが来た。話してやろう……
……つまり、私は異世界人で擬似EDF隊員ということだ。どぅーゆーあんだすたん?」
「その状況から一切この世界の未来視ができる理由がわからないんだが……」
「わからないか? 俺は少しわかる」
「なら教えてくれよ……」
「ああ、いやねー。ほら? あるじゃん、悪の組織が大概持ってる犯罪計画。アレが崩れるとねー」
「知る限りはないが?」
「君は善人だからだよ。ほら……俺とか……黒服とか……俺とか……」
「犯罪計画の例が少なすぎないかい?」
「俺はオーバーグラウンドの人間だったんですー」
「火力至上主義なのに矯正局とか入らなかったのかい⁉︎」
「こっちだと刑務所だ。まあな」
「なんでだ……? 戦車砲とかぶっ放して……」
「こっちの人、戦車砲は余波で死ぬからな! というか戦車とか手に入れられないし」
「余波で……死ぬ?」
「そうだよ!」
「おかしいな。一般人でも戦車砲くらいなら耐えれるだろう……、私が気を失うで済むのだから……」
「お前はヘイローをなんだと思ってんだよ! それのダメカ倍率クソ高いんだぞ!」
「……嘘だぁ」
「マジだよ」
「……弾丸だと?」
「死ぬけど?」
「ええ……」
「なんなら拳で死ぬ奴もいるからな! かの武術家李書文は牽制の一撃で対峙した奴全てを殺すことから『二の打ち要らず』と言われたんだぞ!(要出典)」
「それはその李書文がおかしいだけなんじゃ……というか、今、要出典って言ったかい?」
「言ったが?」
「ソースを用意してくれないかな」
「キヴォトスにあっちの世界のモンぜんっぜんねえんだよ!」
「あったら困るだろう。ソレ」
「……確かに、地球防衛軍5と6が流れ着いてきたら困る」
「即刻医者行きじゃないか。医者は嫌かい?」
「嫌だよ。そりゃ」
「まあ、そう言うものか。私は慣れてしまったが」
「…………俺、病人に対して何喋ればいいのかわからないんだが」
「安心してくれ、君の喋りは病人以外にも通じない」
「安心できるか!」
「…………直そうとする気あったのかい?」
「……無いわけじゃない。ただ、徹夜とか酒とかやってると……」
「口を滑らせて」
「補強するために適当こいて」
「さらにそこでも口滑らせて……」
「ソレを補強して……ッ」
「虚言癖の挙動じゃないか!」
「流石の俺でも傷つくぞ!」
「うーん、もういっそのこと周りに広めてみたらどうだい? 異世界人だって。で、さも自分がそこにいたように……」
「口を滑らせるぞ」
「……悪癖がすぎるな」
「……わかってはいる。わかってはいるんだ……」
「仕事は平気だったのかい?」
「……そりゃ。仕事だぞ?」
「…………。どうしようか」
「この後ミレニアムには絶対記憶のやつが来るからできるだけ失言は無くしたいんだが」
「……そうだね…………。取り敢えずは、発言を一回咀嚼してみたらどうだい?」
「……小学生みたいだが……。大事だなぁ」
「それか、外にいる時全て仕事のスイッチにするとか」
「全て敬語……まあ、虚言癖よりマシか?」
『ハジメさん』
「どうした、黒服」
『酒飲むのやめたらどうです?』
「……」
『私が貴方にドローンをつけているのは知っていると思いますが、失言のほとんどが酒を飲んだ日かその次の日……徹夜はまあ仕方ないと思いますが』
「……やめろよ! 正論言うの!」
「正論だと思ってるなら実行したらどうだい?」
「いやー」
「君、外面は16歳だろう?」
「あ」
「禁酒、だな」
「…………おのれ黒服!」
『なんで私なんですか⁉︎』
次回は番外編です。
ふとした興味です。みなさま、EDFとブルアカやってます?
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どっちもやってる
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地球防衛軍だけ
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ブルアカだけ
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EDF? ブルアカ? なにそれ美味しいの?