潜水母艦エピメテウス、プライマーの襲来に期して作られた人類の希望。内部には植物の種子や多種の弾薬、ミサイルなどが格納されていて、まさに『ノアの方舟』だ。もちろん、生塩の方のノアではない。
「……調月、パトロンの技術力が足りないんだがどうしたらいいと思う?」
「知らないわ……というか、貴方のパトロンは中々技術力高いでしょう?」
「そうなんだよな……。サテライトW1とか俺じゃ作れないからな……」
「サテライトW1……ああ、バルジレーザー……で合ってる?」
「そう」
「……貴方の兵器って、全体的に大きくない?」
「……スケールの話か? まあ、それなりにはでかいが」
「テンペスト……あれも確か歩兵が調整しやすいように速度と威力を下げてるんでしょう?」
「そうだな、本当なら超音速は普通に出せる。いくらエアレイダーとはいえ反応できないからな」
「……そういうのあるのね」
「普通にあるが⁉︎ 人類だぞ!」
クルールが弾を受け止めるのとかよくわからないもの。あれはどういう動体視力でどういう反射神経でどういう身体能力でやってるの?
「まったく……君は私のことをなんだと……まあ、いい。流石のEDF隊員といえど超音速を見極められるものはいない……と思う。もしかしたら、私が知らないだけでいるかもしれないがな。軍曹とか……?」
「多分いないと思うわ」
「じゃあいないということにしよう。いるかもしれない化け物に怯えるのはアホらしい」
ただしプライマーと色彩は除く。あそこらへんはあれだ、少しで致命になるから。リングとかやばい。先手でオペレーションオメガして……。人類の代表者だれだ?
「難しい顔してるわね。大丈夫?」
「ああ。ただもしかしたらの脅威を気にしてただけだ。人と話している時に気にすることではなかったな」
「なら……よくはないわね」
「なぁに、多分平気だ。対策は私とパトロンが行っているし、攻略法もわかっている」
「……大丈夫なの?」
「ああ、とりあえずの悩みのタネさえ完成したらな」
「……何を作ってるのかしら?」
「潜水母艦エピメテウス、パンドラ、セイレーン」
「……潜水母艦……?」
「潜水母艦っていっても、正しい意味の潜水母艦じゃないぞ。潜水艦の母艦じゃなくて潜水する母艦だ」
「……作れるの?」
「まだ全然。いや、正確にいうと大枠はできてるけど大枠以外はできてない」
「搭載してる武器とか?」
「そうだな。巡航ミサイルとか」
「……貴方の装備、ミサイル多くない?」
「そこまでだろ。N6、テンペスト、N6巡航ミサイル、ライオニック45……」
「N6二回言ってるわよ」
「それは別のやつだ。N6巡航ミサイルは潜水母艦から巡航ミサイルを飛ばすのだ。N6はベース235から飛ばすのだ」
キヴォトスだと大規模基地をそんな作れないからバレンランドに集約してあるのだ。ベース251ぐらいのやつは各所にあるが。
「なんでそんなめんどくさい名前にしたの?」
「……………ふむ、なんでだろうな……?」
「わかってないのね」
「まあ、そこまで気にすることでもあるまい。235の方のN6は使わないことを理想としているし……」
「……ミサイルなのに?」
「君まで火力厨になったか?」
「そうじゃなくて、貴方がミサイルを使わないなんてことあるの?」
「土壌汚染がひどいんだよ。235のN6は」
「ああ……N6……土壌汚染……? ! ちょっと待ってちょうだい‼︎ それってもしかしなくても……!」
「お察しの通りだと思うぜ」
「なんでそんなもの……」
「それは火力が必要だからだな。…………俺の性癖じゃないぞ」
「わかってるわ……。それだけの火力が必要になる相手なの?」
「……ん、まあ。ただしだな。それが確実に来るわけではないし……よく外れる私の推測に過ぎないから……。君は君のやりたいことをやりたいようにやれ。マトモなことをしようとしたなら尻くらいなら拭いてやる……尻ってえっちな意味じゃないぞ」
「はあ……」
「えっちな意味の方が良かったか?」
「その口を閉じて」
「調月、そういう雑な暴言は私の専売特許のはずだろう」
まったく……自らのキャラを考えて欲しい……。ちなみに私のキャラはミステリアス系面白美少女だ。
——今ミステリアスと面白は両立しないと思った奴は壇上に名乗り出ろ。未完成品だがメナス自走レールガンM2で吹き飛ばしてやる。
「ほらほら笑って笑って。にぃ〜〜」
「小学生じゃないんだから……」
「いやいや……口角を上げるとセロトニン*1が分泌されるというのが科学的に証明されているからな。合理的でいいだろ?」
「……たし、かに?」
「そうだそうだ」
「……けれど、顔をいきなり触るのはやめてくれない?」
「…………正論すぎて反論できないからその主張で攻めないでくれるか?」
「じゃあこの主張を使い続けるわ」
「酷いぞ調月」
「妥当だと思うわ」
失望しました♡
「まあ、話は戻るが……。潜水母艦を作りたいんだ」
「航続可能距離は?」
「今の設計だと二年くらい」
「…………? 二年?」
「二年」
「…………どういうこと?」
「パトロンを労働させまくった結果だ。見習うなよ」
「それをさせられる人がいないから、安心しなさい」
十六連勤で黒服が遠い目をしていたよ……。あいつの目ってどこだ? あれ? ずいぶん長い間共同生活してるのに……!
「貴方は今何を書いているの?」
「設計図だ、つまらないぞ。プラネット・キャノンと言ってな」
「プラネット……どういう武器?」
「語っていいのか! 俺の火力厨の血が疼いちゃうぞ!」
「いいわ」
「プラネット・キャノンはだな、砲身3メートルを超える巨大な火砲だ。歩兵が携行できる火砲としては最大級で、パワードスケルトンなしでは数ミリも持ち上げられないという重量を持つ。当然、その分、火力は高く、4.1でヴァラクをお払い箱にしたエルギヌスさえ何十発か撃てば倒してしまうほどの火力がある。無論その分反動は大きいが、その分反動軽減装置を積めば反動は小さくできる、砲塔の方はな。足腰にかかる負担は軽減できないから撃ちまくると腰が痛くなるがな。加えてサイドスラスターをも搭載しているから、最低限の機動力も確保している。つまり魅力はなんといっても火力だ。火力こそが正義だ。火力がなければどんな物も倒せず守れず自らの身が朽ちるのみだ。ということはその火力を持つプラネット・キャノン——ひいては、それ以上の火力を持つプラネットバスター・キャノンは最高ということだ! おーけー?」
「——————お、おーけー」
調月ったら、俺の滑舌に呑まれて変な顔をしている。火力ガタリを許したのは君だろう。最後まで付き合え。
「——どうだ? 使いたくないか?」
「……いえ、そもそも私はパワードスケルトンを使えないから……」
「…………まさか、筋力不足か?」
「……ええ」
「俺ほどじゃなくても……ヘイロー付きならある程度……まあ、ほとんど研究室に引きこもってる黒服より少し運動してれば……」
「…………」
「あ」
「……」
「……一緒にランニングするか? 運動不足は生活習慣病を起こす可能性があるからな……。ああ,いや。もちろん強制じゃないぞ」
「……じゃあ、少し」
「もう終わりか?」
「……はぁ……はぁ…………」
「ほら、ポ○リ。一気に飲むと咽せるから気をつけろよ」
「あり……がとう……」
「無駄に喋らなくていい」
「……まさか、君が一キロも走れないだなんて、予想だにしていなかったよ」
「ごめんなさい……その……」
「別に批判しているわけじゃない。ただ、少しくらいは運動した方がいいな。ついさっきも言ったが生活習慣病を患う可能性と、老後のロコモティブシンドローム*2にかかる可能性が高まる」
「そうね……」
「もちろん、私のようになれとは言っていない。私は単騎で敵旗艦を堕とせることを目標としているからな」
「……単騎? 正気?」
「正気だよ。むしろ私が正気じゃなかったら誰が正気だと言うんだ?」
「……ヒマリとか?」
「そうだな。明星は実に正常だ」
「貴方と違って変なものを作らないものね」
「何が変だって言いたいんだ」
「バーナー」
「……あれは溶接用のバーナーだぞ」
「溶接でアレなら火傷をする人が大量に出るわよ」
「キヴォトス人なら平気だろ」
「キヴォトス人でも兵器よ」
「そうか?」
「そうよ」
「そういうものなのか」
「そういうものなのよ」
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