ミレニアムも治安は悪い。他の地域と比べるとマシとはいえど、やはりキヴォトス。立てこもりも強盗も通り魔も起こる。ちなみに、キヴォトスの犯罪件数のうち、窃盗と強盗とだと強盗の件数の方が多い。恐らく、わざわざ相手の隙を見計らうより力でぶんどった方が速いからだろう。話は戻って、ミレニアムでも別に銃撃戦は起こる。つまり……。
「弾は私には当たらない」
絶賛巻き込まれ中だ。ただいつもとは違う。いつもは私から首を突っ込んで紛争解決してるが、今回は普通に巻き込まれた。理由はトンカツにつけるソースだったか、唐揚げにつける調味料だったか……。まあどちらでもいい。
「大丈夫か。お前達は民間人だな、来い。地球を救うついでに、お前達のことも守ってやる」
才羽姉妹……才羽モモイと才羽ミドリだな。もちろんナイフなど持っていないし、左右から弾も射出されない。No fatality……を少し後ろに下がらせて、銃撃戦から守る。
今日は建物の中で一日中実験する予定だったもので、大群用の武器を持ってきていない。具体的に言うとブリーチャーとファングだ。特殊装備もリキッドアーマー。
「アサルトライフルを貸してくれないか?」
普通にブリーチャーでこの数の相手はできん。バックパックもエリアルリバーサーだし、ファングでできるわけもなく……単発で処理はできん。スナイパーでいうなら、せめてドゥンケルを寄越せ。
才羽姉の方からアサルトライフルを借りて……名前なんだっけ……まあ、いいや。それを放つ。いつも使っているhard帯の武器と比べるとキヴォトスの武器の火力は低い、normalって感じ。
「そこっ!」
才羽姉にブリーチャーを貸し、アサルトライフルで不良達を射抜く。使い勝手はいい。少なくともセミオートのアサルトライフル、G&Mの腱鞘炎まっしぐらコースより良い。キヴォトスでも何回か腱鞘炎になっている。痛かった。
「ファング!」
いつものスナイパーライフルを放って、爆発物持ちを処理する。始めたばかりの頃は擲弾兵に苦戦したものだ。というかアンドロイド全般が苦手だった。EDFのザコ敵はやはり蟻とドローンであるべきだ。
「民間人、まだ生きているな?」
「この程度じゃ死なないよ!」
キヴォトス人がこの程度じゃ死なないのは知っているが、いつか先生の護衛とかするかもしれない、その時の練習だ。やっぱり先生ラヴァーズに護衛してほしいものではあるが。序盤とかまだ先生好き好きチュッチュ勢ができていないだろう。いや、早瀬に賭けれるか?
「掃討完了、口ほどにもなかったな」
「あの数をたった一人で……」
「ありえない……」
「私はそこまで強くない。君たちの使ってる品が高品質なだけだよ」
実際、グロームXより遥かに精度がいい。おのれ本部、あんなクソ武器渡してくるなよ。あれは火力こそ高いが……。いくら火力厨の俺と言えど、アレはたまったものじゃない。せめて武器をくれ。なんだよ精度Zって。
「お礼ってことで、私たちの作ったゲームやっていかない?」
「おお、いいね。ありがたく……」
————ん、待て。ゲーム開発部、作った……。まさか、テイルズサガクロニクルか? 名前の三音節全てが物語で構成されていることでお馴染みのあのTSCか?
しくじった。一介のゲーマーとしてあんなのやりたくないんだが。しかも詰みポイントも覚えてない。
「これが、私たちゲーム開発部の作品! テイルズ・サガ・クロニクル!」
やはりしくじっていた。俺はクソゲー愛好家でもなければ、インディーゲームを鼻から吸うタイプの狂人でもない。こんなゲーム、やりたくなんてない……世界のブレで神ゲーになっている確率に賭け……ると、王女の情操教育がうまくいかない。クソゲーなのはこの世界だったか……。
「グラフィックは良いな……」
レトロゲー的なそれを感じる。全然そういうのも好きだ。一番好きなのは3DのTPSゲームだが、これに言及するとただのEDF語りになってしまうため自重する。
画面の指示通りBボタンを押して、装備を装着す……る?
「……死んだ?」
おかしくないか? え、何? バグ?
「ああ……ここはAボタンを」
「Aボタン? ここにBボタンって書いてあるけど……」
あ、進めた。えー……つまり、何?
スライムと会敵した。いくらクソゲーといえど、この程度……!
「ほへ? チャカ……?」
「植物人間……? 植物人間って喋れるものだったか……?」
何このクソゲー。心が悲鳴を上げる音がする。
「難易度を落とすことを推奨します」
「このゲーム、難易度の機能ありません」
「私に適した難易度はイージーです」
「だから難易度の機能ないって」
「このレベルはクリアできないように設定されています」
「クリアできるから!」
「先ほどの情報はフェイクです」
「それは……すみません」
——死ね、クソが。
————二十二時間後。
「私は管理AIマリス。クソゲー根絶のため、プライマーの視点に立ち……」
「お姉ちゃん! ハジメ先輩がバグった!」
「ハジメ先輩! 絶対そんな大仰なものじゃないでしょ!」
「人類抹殺のシミュレーションを行います」
「なんかやばいこと言ってるよ!」
「このゲームのクリアは推奨されていません。本機の目的は、理不尽を体感することで、極限状態での精神的抵抗力を高めることです」
「違うよ! 普通にゲームとして作ってるよ!」
「はっ……私は一体何を……」
「管理AIマリスとか言ってました」
「誰が?」
「先輩が」
「まっさか。……本当かい?」
「本当だよ」
「……人類抹殺のシミュレーションするとか言ってた?」
「言ってました」
「私としたことが……すまない。あまりのストレスが故に……」
聞いているか! マリス! お前の作ったどのミッションよりこれが苦痛だぞ! 高所狙撃も! サイレンコールも! 黄金船団も! ハイブラッシュも! ラストアタックも! ザ・リングも! 貴様の作ったミッションは全てテイルズ・サガ・クロニクル以下だ! 全部全部ぜーんぶ! テイルズサガクロニクル以下なんだよ!
「あー……これはサイバーテロの道具として作ったか? ならばなかなかに上等だと思うが……」
「ゲームだよ!」
「ゲームか……。うん、情熱は感じたぞ、理性は感じられなかったが」
まだサイバーテロと言って欲しかった。このようなものがゲームだなんて……一介のゲーマーとして許せない……。
いやなに、初めから完璧を求めているわけではない。求めているわけではないが……ッ!
「いささか難易度が高すぎるな。もちろん、高難易度ゲーも魅力はあるものだ。だからこそフ○ムゲーが人気を博しているわけだし。にしても爽快感と苦痛が釣り合っていない」
「うぐっ……」
「私は批評家ではないから、この程度にとどめておくが」
「……」
「嘘だ。もう一つ言いたいことがある」
「はい……」
「導入で即死ギミックを組むのはやめた方がいい」
一応クリアはした。二度としたくない。二度目のこれと泥水を啜るのだったら喜んで泥水の中に顔を突っ込むぐらいしたくない。
「まあ、ただ本当に情熱は感じた。まだ荒削り……うん、荒削りではあるが、これからも作り続けていけばいいものが作れると思うぞ……多分」
「そこは確証を持ってよ!」
「断言はしたくないんだ……」
EDFは兵士の精神トレーニングのためにテイルズサガクロニクルを導入するべきだ。いや、マジで……。
「すまんが……帰らせてもらう。徹ゲーは……久しぶりなんだ……」
テイルズサガクロニクルはクソゲーだった。次回作に賭けよう。2はある程度面白いことが確認されているのだ。
そうだ、初代は2の礎となったのだ。きっとそうだ。そうでないと初代の無念が晴らされない。
帰ると言ったな? あれは嘘だ。
元々の予定はエンジニア部での作業だ。ようやくブレイザーの最終調整に入れたのだから、ここでしっかり調整しない手はない。
「ジェネレータの出力が高すぎるな……」
「だったら、そこのパーツをこうして……」
「ああ、なるほど……豊見! ペンチ持ってきてくれ! ジェネレータの出力が高すぎて手を離したらデーモンコアみたいになりそうだ!」
「わかりました!」
「にしても、何で君今日遅れたんだい?」
「ゲーム開発部に巻き込まれてな。二十二時間も遅れてしまった。……ん、ありがとう、豊見」
ペンチでジェネレータを弄る。
「やはり再充填は7.4秒が限界か……」
「そうだね……これ以上出力を高めるとフレームが融解してしまうね……」
「……仕方ない、苦肉の策だ。元々の着地予定はここだったんだ。大人しく諦める」
「そうか……」
「それに、私は常に武器を二つ以上持っている。ブレイザーの充電中は他の武器で戦うさ」
タクティカルリロードというやつだ。ほとんどのEDF隊員はタクティカルリロードとタクティカルファイアを学習している。もちろん、俺も含めてだ。作中EDF隊員は武器を一丁しか持っていないからできないが。
「というわけで、ブレイザーが完成した。これで、実質フュージョンブラスターは脱却した」
リロードができないなら、二丁持てばいいじゃない。かのマリーアントワネットもそう言ったとされる。元ネタの方も別にマリーアントワネットは言ってないというツッコミは厳禁として。
なんと、フュージョンブラスターZDを二丁撃つだけで、エルギヌスを倒せてしまうのだ。4.1の激突のやつ。オメガチーム全員に一丁支給しよう。
残念なことに、EDF5から二丁持ちは廃止されてしまったが。
「……眠い」
「何時間寝てない?」
「三十二時間」
「……寝たら?」
「寝るわ」
仮眠室に行って、寝る。
『まずはBボタンを押して、目の前の装備を装着してみてください』
『銃は剣より強し……』
『私は植物人間なので……』
「はっ、はっ、はっ……」
もしかして、私は……テイルズサガクロニクルがトラウマになっているのか……?
だんだん文字数が少なくなっていく……。
次回のタイトルは『訪問者』の予定です。
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