M22 訪問者
「クックック……ハジメさん。治安のことはご存知ですか?」
「もちろん、新聞とってるし……というか、新聞がなくとも肌感で流石にわかる。ただでさえ控えめにゴミな治安がさらにゴミになってる」
「流石に気付きますか。で、このデータをご覧ください」
「……インフラの停止している地区、搭乗兵器の不法流通率……うわっ、最近になって跳ね上がってる……」
「『先生』が来るんですよね?」
「恐らくな」
「来なかった場合は?」
「その時はその時だ……少し早瀬に連絡してみる」
モモトークの通話機能を使って、早瀬に電話をかける。
「早瀬。近頃治安が悪くなっているな」
『そうですね。今、連邦生徒会に文句に責任を問い糺しに行っている途中で……先輩がいてくれた方が良いですかね?』
「私が居たら、それはただの脅迫だ。まあ、近くには待機しておこう。いざとなったら執務室にテンペストをぶち込んでやる」
『私諸共じゃないですか』
「そういうの好きだろ?」
『全然好きじゃないです!』
「ははは、すまんすまん」
「ヘロンを出してくれ。D.U.まで向かう」
「わかりました。つまり……」
「今日がその日だ」
"ハスミは遮蔽物に隠れて狙撃を! スズミは閃光弾で目眩しをお願い!"
「了解です」
D.U.外郭地区。新しくキヴォトスに赴任した『先生』が、そこで戦闘の指揮をとっていた。指揮を受けているのはキヴォトス三大校の生徒達。たった四人とは思えないほどの奮戦ぶりで戦況を優位に押し進めている。
"ユウカ! もう少し持ち堪えて! チナツはユウカに回復を!"
「諦めないでください」
「怒りも悲しみも全部、因数分解してやるわ!」
ユウカがパーソナルシールドを展開したタイミングで、チナツが戦傷を治療する。まるで何事も無かったかのよう——正確に言えば、ホローポイント弾の弾創は少し残っているのだが——になった。
"ハスミ、奥のスナイパーライフルを持ってる子を倒せる?"
「これくらい、簡単です」
ハスミの放った大口径弾がヘルメットに突き刺さり、ヘルメットを破壊した。その間にもスズミのアサルトライフル、『セーフティー』が火を吹き続ける。
「閃光弾、投擲!」
スズミの投げた閃光弾が光を放ち、周囲の生徒達を怯ませ、それでできた隙に、チナツが治療薬を投与する。
"チナツ、スズミに治療をお願い!"
一番浮上するのは前線で囮になっているユウカとはいえ、時々投げられる閃光弾を鬱陶しく思ったのか、スズミを狙う者もいる。それを見てスズミに治療を施させる。
「そこですね」
ハスミが、後方の手榴弾を構えた生徒を排除する。爆発物は脅威なのだ。
「埒があきませんね……」
「数が多すぎます」
しかし、いくら四人が強くとも、多勢に無勢というもので、少しずつ押されていく。指揮があろうとも、装備が対大群を意識したものでは無いし、大軍団の相手は難しいというものだ。
「攻撃が私に命中する確率は……極めて低い!」
再びパーソナルシールドを展開するが、敵の人数が増えたこともあり、つい先ほどより早く破壊される。チナツの救護の手も追いつかない。
「まだ先輩は来ないんですか……」
"先輩?"
「はい、ミレニアムサイエンススクール三年生で……」
『先生、このエリアに向かうヘリがあります。敵が味方かわかりません。どうかご注意を』
『安心しろ。後輩の援護に来ただけだ』
空中からミサイルが降り注ぐ。発射元はEDFの誇る武装ヘリ、ヘロンYG10Eだ。
『こちら早瀬の先輩。先生、加勢に来てやったぞ』
機関砲によって不良達を失神させ、外れた弾はコンクリートを耕す。
「ハジメ先輩! 遅いですよ!」
『これでも飛ばしてきたんだが……』
ミサイルは一度避けた者をも誘導し、確実に爆破する。飛んでいるヘリに弾丸を当てるのは至難の業のようで、不良達の多くは狙い撃とうとするも、当たらないままハスミに失神させられる。
「そのまま上空で囮になってください」
『構わないが、そろそろミサイルが切れる。その後は機銃のみでの援護になるぞ』
爆発物を持つ不良を優先目標にしながら、機銃とミサイルで不良達を排除する。不良達がヘリを狙っている間に、チナツがユウカ達に治療を加える。
『すまない、弾丸より先に燃料が切れた! 直下に降下する! 気をつけろ!』
パラシュートもなく、ヘリコプターから飛び降りる。不良達はその隙を狙おうとするが、スズミの閃光弾に阻まれる。
「感謝する! 前線は私に任せろ!」
「ハジメさんですね。治療は任せてください」
火薬の発破音でなく、キヴォトスではあまり聞かない音と共にスケバン達が倒れていく。降下した少女は独特な形のアサルトライフルを持っていて、それから発射された光線がスケバン達を倒しているのだ。
「新型の銃だ! 強いぞ!」
その雑な紹介に違わず、アサルトライフルを向けられた生徒のヘルメットをすぐさま破壊していく。
「ブレイザー⁉︎ そんなもの持ち出してきたんですか⁉︎」
「ああ、再充填には時間がかかるが強いからな」
放たれたロケット弾をローリングで避け、返しにブレイザーでランチャーを融解させる。ユウカと二人で前線を張っている影響で、つい先程までと比べてユウカのシールドが削れるペースが遅くなっている。
「手榴弾を使う!」
MG30という名の手榴弾が敵陣に投下されて、爆ぜる。スズミの投げる
「ポイント、クリア」
"ありがとう、君は?"
「嵐山ハジメ、ミレニアムサイエンススクール三年生だ。役職はなし。強いて言うならエンジニア部員兼トレーニング部員。君の護衛に参加しよう」
ハジメは取り出したスマートフォンで何者かに電話をかける。
「ヘロンの燃料が切れたからレッカー車かなんかで回収してくれ。私は民間人の護衛をする」
言いたいことを言って、すぐに電話を切った。
「民間人、目的地はどこだ? そこまで護衛しよう」
"外郭地区のビルで……"
『先生、この暴動を率いた生徒がわかりました。狐坂ワカモ、つい先日矯正局から脱走した生徒で、ビルに運び込まれたモノを狙っているようです』
先生が右を見ると、少し顔を青ざめたハジメが見える。
"どうしたの?"
「いや、少し面倒くさい相手だっただけだ。予想はしていた」
一行が歩いていると、再び不良達が多くいるところにたどり着く。まだこちらには気付いてないようだが、つい先ほどより少し多い。ヘリも無いので、つい先ほどと同じ戦術では厳しいだろう。
「ここも敵陣地か……」
「先輩、敵があんなにいっぱいいます」
「そうだな……。よし、大群相手には、サブハンドの武器を使う」
アサルトライフル——ブレイザー——をしまい、懐からまた別の武器を取り出す。複数の発射口があって……ロケットランチャーのようにも見える。
"それは?"
「ME4エロメ……んん、エメロード。最大八つの標的を同時にロックオンできるミサイルランチャーだ。再装填の時間も短いから、対大群にはコレってな逸品だぞ。ちょうど今の私はE3レーダー支援システムをつけているしな——先生、君が襲撃の合図をかけろ。私はそれに従ってミサイルを発射する」
"じゃあ、行くよ!"
先生が指示を出したタイミングで、八発のミサイルが発射される。放ったすぐそばから、またカチカチというロックオンの音が聞こえて、また発射される。
「早瀬、すまないが君一人で前線を張ってくれ! エメロードは前線を張るのに向かない!」
「わかりました!」
「私が少し前に出ます」
"頼むよ! スズミ!"
まるで空爆のように上からミサイルが降り注ぐ。火力不足か、一度では気絶しないものの、二度目ではほとんどの生徒が気絶する。
「攻撃します」
レーダーから逃れた遠くの敵をハスミが狙撃し、ヘルメットを破壊する。
「勝利を、証明するわ」
ユウカは再びパーソナルシールドを展開し、戦況を優位に進める。
『先生、戦車が二台接近しています。気をつけてください』
"戦車……"
「片方は私がブレイザーで破壊する」
「では、もう片方は私が」
エメロードからミサイルを次々と発射しながら、そう取り決めをした。不良達の数が半分ほどまでに減ってきた時、戦車とそれに搭乗してきた不良達が増援でやってくる。
「タンクデサントか……」
「いえ、それよりあれは……」
「トリニティの制式戦車のクルセイダーだろう? 君のところはどうなっている?」
「わかりません!」
タンクデサント……つまり、戦車の搭乗室ではなく、車体に直接乗っている状態の不良と戦車に向けて、一度エメロードを放つ。戦車にはほとんど影響はなかったが、生徒達の方はミサイル数発分のエネルギーを一挙に喰らい、全員失神した。
「照準よし、撃ち抜くっ!」
「EDF! EDF!」
ハスミのスナイパーライフルが戦車の装甲を貫通し、ハジメのブレイザーが戦車を融解させる。
「装甲が融解してる!」
「もう戦車が保たない! うわぁっ!」
不良達は全員倒れ、先生達は一息つく。
「計算通り。完璧〜」
「危険なエリアを抜けられた。安心していい。この先は安全だ」
"ありがとう"
「お疲れ様でした、先生。先生の活躍はすぐに広まるでしょう」
「近いうちに是非、トリニティ総合学園に立ち寄ってください」
「民間人、君にこれを渡そう」
レシーバーがハジメから先生に手渡される。
"……これは?"
「レシーバー……つまり受信機だ。空軍や砲兵隊に支援要請をするとき、その範囲内に君がいたら困るからな。そこから音声が聞こえたらダッシュで逃げろ」
「先輩⁉︎」
「なんだ、早瀬。空軍に支援要請をするな、というのは到底無理な話だぞ」
「それはそうですけど……」
「時間があればミレニアムに来るといい。面白いものが沢山ある」
「ただいま、黒服」
「お帰りなさい。収穫はどうでしたか?」
「なかなかだな。先生もカスでは無さそうだし……むしろ、あれが銀鏡の足をベロベロに舐め尽くしたり、空崎の髪の毛に頭を突っ込んだり、その他諸々えとせとらするとは信じがたいいな」
「受信機は渡せましたか?」
「ああ。……あとあれ発信機——というかGPSもついてるぞ」
「……ストーカーですか?」
「俺を音瀬と一緒にするな。単純に行動を予測するためだ」
「……本当ですか?」
「本当だよ。大体、俺にそう言う変態チックな趣味はない」
「こと火力においては十分変態でしょう」
「それはそうだな。口減しにテンペストを打ち込むとしよう」
「やめてください」
「……そうだ。ヘロンの回収はしてくれたか?」
「もちろんです。ゴリアテに回収させましたよ」
筆者は先生男派です。
『訪問者』だから『ばかな、ばかな、ばかな。』を期待してた人はごめんなさいね
好きな兵科
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レンジャー
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ウイングダイバー
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エアレイダー
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フェンサー
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EDFやってないからよくわかんないよ