連邦生徒会連邦捜査部シャーレのオフィス。そこにミレニアムの制服を纏った状態で、コンコンとドアを叩く。返事が来たもので、思いっきり扉を開いた。
「やあ、先生。先日はお疲れ様」
"おはよう、ハジメ。今日は本当に良かったの?"
「……というと?」
"わざわざ手伝ってもらうなんて……"
「ふふん、打算ありきのことだからな。ここで恩を作っておくことで、いつか私たちの味方をしてもらおうかと」
"それ言っていいの?"
「君は腹の底に一物抱えた者と共に仕事をしたいか?」
"それもそうだね"
「ああ、あと。お近づきの印とでも言おうか。茶菓子だ」
"そんなの平気なのに……"
「生徒への贈り物にでも使え。早瀬とか、羽川とか、甘いのが好きな生徒は多いぞ」
"じゃあ、はい"
「……ん? どうした?」
"一緒に食べよう"
「私は君の生徒では……まあ、折角だ。いただくとしよう」
"おいしいね。これ"
「トリニティの有名店のクッキーだ。同居人に『折角なら何か渡した方がいいんじゃないですか?』と言われた物でな」
"そうなんだ……"
「紅茶と一緒に食べると美味いらしい。そちらは持ち合わせていないが」
先生から一部の書類を受け取り、それの数値を電卓に打ち込んで、解をパソコンに移す。現在、シャーレに届いている業務は連邦生徒会からの委託しかない。
「先生、私が書類手伝いに来たんだから、もちろん私に渡すことは構わないが、いつかは色々な学校から書類が回ってくるだろう。その時はしっかりと回す相手を考えろよ」
"私は生徒のことを信じてるよ"
「信じるという事と、盲目は違うものさ。あ、この書類は君のハンコが必要だ」
"わかったよ"
「それは前者かな? 後者かな?」
"後者"
「そうか……。まあ、いい。私も人にどうこう言えるほどできた人間じゃないからな。ただの軽口だと思ってくれ」
クッキーを口に運びながら、変わらず表計算ソフトにデータを打ち込む。仄かな甘みを感じながら、ペットボトルの麦茶を飲んで、乾いた口内を潤す。
「ん、全然関係ないレシートが……。メタルビ○ドのプラモデルか……」
"それは……"
「私は文句など言わないさ。君の金は君が好きに使えばいい。早瀬でもあるまいし……ああ、ただ流石に餓死などはしてくれるなよ」
"さすがに……"
「餓死と言っても腹を空かす事だけを指してるわけじゃない。栄養バランスに気をつけろ、と言う事だ」
"気をつけるよ"
「多分だが、君が言えば料理を作ってくれる生徒などきっといっぱいいる。恋慕にせよ政略にせよ君にはそれだけの価値がある」
"買い被りだと思うな"
「今の君の状況を端的に表そうか。『失踪した連邦生徒会長が設立した超強権組織の、これまた連邦生徒会長が選んだ謎のリーダー』だ。わかるな?」
"圧が……"
「んん、失敬。これでも君の身を案じている」
餓死や過労などくだらない理由で死んでもらっては困るという思惑あってのことだが。
纏めた書類を先生の方に回し、次の書類をまた先生から受け取る。
「あと。今回は私が来たが、私とて忙しい。この後忙殺されるほどの書類が来る羽目になるだろうが、毎回手伝うわけにもいかん。そこでの超法規的権限だ。有効に使ってみせろよ」
"使わなきゃならない事態にならなきゃいいけど……"
「ならなきゃいいがなぁ……」
"えーと……残りの書類は……"
「もう無いぞ、中々にシゴデキじゃないか。先生」
"いやー。ハジメが手伝ってくれたからだよ"
「先生、私は謙遜を美徳とする一派には属していないんだ」
"じゃあ、私たち二人の成果だね"
「……はぁ……。ま、それで今回は引くとしよう」
執務室から談話室に移動し、ソファに全体重を預ける。
「で、先生。結局ここに運び込まれた物とはなんだったんだ?」
"これだよ"
「タブレット……か」
青髪の少女が映し出された画面を見て、もう一度麦茶を口に含む。
「……コレが連邦生徒会長の遺産なのか?」
"死んでないからね!"
「ああ、そうだったか」
"……そんな淡白な……"
「彼女の代わりに君が来たんだろう。代役くらいは務めてみせろよ」
"期待が重いな……"
照れ臭そうに笑う先生、きっとこういうところが人を惹くのだろうと、そう思いながら、紛らわしにタブレットの清涼菓子を口の中に投げ入れる。
"今日持ってる武器は前持ってたのとは違うんだね"
「エメロードか? 対大群相手の予定は無かったからな。それよりショットガン……特にスローターの方がいい」
"そっちじゃなくて……あの、ビームライフル?"
「ああ、ブレイザーか。火力も出るし、精度も良いが、いかんせん再起動までの時間が長い。そういう意味ではストークの方が都合がいい——まあ、ブレイザーのかっこよさは認めるがな」
"だよね……って、
「反応が遅いな……私が名前をつけた訳じゃない。名前をつけたのは全地球防衛機構軍EDFだ」
"EDFって……あの時叫んでた?"
「悪癖だな。まあ、私の魂はEDFにあるが故だ。気にするな」
"スローターだなんて……まともな組織なの?"
「同輩にも言われた、まともな組織だぞ。火力支援は十分だ。空爆誘導兵さえ居ればな」
"いないと?"
「『エアレイダー、空爆の要請をしろ!』と、言われ続ける」
"ダメじゃん!"
「まあ、こと現場兵士のやる事で、私にできない事はほとんどないから」
心配そうな顔をする先生の額に指弾きを喰らわせる。あっけに取られた様子で俺を見る。
「心配は無用だ。私は君に心配されるような人間じゃない」
"君も私の生徒だよ"
「いいや、違うな。ミレニアムに籍こそ置いていれども、私は君の生徒じゃない。それに——」
"それに?"
「きっと、私のことを知ったら君は幻滅するさ」
"そんなことはないよ"
「あと、私より気にするべき相手が片手じゃ足りないほどいるだろう。心配でも警戒でも、そのどちらでもな」
"…………"
「…………イタチごっこになるだけだ。もうどうこう言わないが……」
"なら……"
「今日はそんな話をしに来た訳じゃない。
……早瀬から聞いたが、浪費して食事が疎かになっているそうじゃないか」
"……げ……"
「そこに直れ、根性を叩き直してやる」
"待って! 話し合おう! 交渉を!"
「君に死なれたら困るからな、君のその性根を修正してやる。安心しろ。近頃はMPが厳しくてな、拳での修正は勘弁するから……」
"そうじゃなくて……!"
「栄養バランスという物を君は知っているな? コンビニ弁当のみを食べたとしよう。この場合、ビタミン、ミネラル、食物繊維が不足する。こうなると、風邪をひきやすくなったり、不整脈になったり、便秘になったりする。もちろん、私は君の母ではないから、これを食えこれを飲めなどと、口煩くいちいち口出しなどはしないが、それでも栄養バランスは気にする物だ。近頃は宅配サービスなども発展しているから、栄養素を考えた食事を提供するサービスなどもあるし、君が作れと言ったらやってくれる生徒もたくさんいるだろう」
"わ、わかったから……"
「まあ、最終手段にはなるが、私でもいい。最終手段だが。人は一人で生きていく事などできないのだから、困ったらすぐ人に頼る事。わかったな?」
"う、うん……"
「ならいい。ああ、あと、早瀬はいい女だぞ」
"ついさっきからユウカのことやけに推すね!"
「まあな。嫁にしたい女ランキング堂々の一位だ、私調べだがな」
"へぇ……ハジメは何位なの?"
「安定のランク外だ。まあ、こんな奴を好きになる酔狂なやつも中々いないだろうから問題ないが」
"そうかな? 私はいいと思うけど"
「……はぁ……そのセリフ、私以外に吐くんじゃないぞ。後ろから刺されても知らないからな」
"え⁉︎"
「正気かい? 君」
"正気だけど……"
「なら余計にタチが悪い。いっぺん腹の辺りを刺されてみたらどうだ?」
"そこまで言うこと⁉︎"
「言う事だ。私は君の身を案じていると言っただろう」
"け、けど君だってユウカに心配されてたよ!"
「ふむ、なんと?」
"たった一人でそこら中の暴動を治めてて心配だって"
「現場にいるのが私だけなだけで、KM6だってDE-202だってフォボスだってノーブルだってウェスタだって空を飛んでいる」
"多い多い多い!"
「そうでもないぞ。無線機が無きゃ何もしてくれないからな」
"ええ……"
「それで外したら爆薬と弾薬の無駄だろう。わざわざビルを崩す為だけに空爆を要請する気か?」
"いや……"
「だろう?」
鞄を机の上に置いて、その中の書類を取り出す。
「これが投下する爆薬などの値段……」
ペラリと全然違う紙が飛び出る。
"コンバットフレーム……エイレンⅢ?"
「おおっと、それ全然関係ない!」
"人型二足歩行ロボット!"
「ああ、その通りだが、その通りだが関係ない!」
"かっこいいね"
「かっこいいとも……だが、今見せたかったのは会計書類でな……」
"じゃあ、見せて……すごい値段!"
「おほん、その通りだ。いくら爆薬がキヴォトスだと安めだからと言って、そう適当に空爆を要請していると素寒貧になってしまう。——そんなにコンバットフレームが気になるか?」
"うん!"
「……特別だぞ。誰にも言うなよ」
自前のタブレットをポチポチといじって、コンバットフレームエイレンⅡの稼働している映像を映し出す。腕部に搭載した電磁レーザー砲と背部に搭載したミラージュポッドを活用して、的を破壊している映像だ。
"かっこいい……!"
「キヴォトスにはゴリアテというまた別の二足歩行ロボットがあるが、それと違ってコンバットフレームは戦闘特化だ」
"なるほど……!"
「もちろん、一概にどちらが優れているというのではない。私みたいな一歩兵に過ぎないものからしたら、より戦闘能力の高いコンバットフレームの方がありがたいが、陣地などを形成するには汎用性の高いゴリアテの方が良い」
"なるほど……?"
「まあ、コンバットフレームは民間に流通していないから、基本は二足のロボットを使おうと思ったらゴリアテ一択なんだが」
"なるほど"
タブレットを仕舞って、またまたカバンから物を取り出す。
「プレゼントだ」
"貰ってばっかりだね……"
「必要な物しか渡してないし、渡さないさ」
"そう……? お土産とかいらなかったよ?"
「あれは同居人の意向だ。今君に渡すのはもっと必需品だ」
俺の手によって机に置かれたそれは鈍色の光を放っている。
「拳銃」
"え?"
「本当に一丁ぐらい持っていた方がいい。銃を持つというのは、対抗手段があるというのを示す物だ。本当に撃つ意思があるかどうかはさておきな」
"けど……"
「持て」
"わ、わかったから……"
「撃ち方は他の奴に教われ。私は拳銃は使えん」
"そうなの⁉︎"
「拳銃以外の銃器はほぼ使えるがな。拳銃だけはダメだ」
「じゃあ私は帰る。夜更かしなどはしないようにな」
"わかってるよ"
「なあ、黒服黒服。シッテムのOS……つまりアロナが見えたんだが」
「……なんででしょうね?」
"ねえ、アロナ"
『なんですか、先生』
"EDFって知ってる?"
『知りませんね。ですが、ご安心あれ! このスーパーアロナちゃんが検索を……あれ? 一件もヒットしません。EDだとか、EDR*1だとかの記事がヒットしますね……』
"……全地球防衛機構軍は?"
『こちらはほとんど何もヒットしません……本当にあるんですか?』
"生徒の言う事だし……私は信じたい"
ハジメが先生を気にかける理由の主な物は、計画通りに事を進めるためです。
好きな兵科
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レンジャー
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ウイングダイバー
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エアレイダー
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フェンサー
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EDFやってないからよくわかんないよ