「これが仕事なのでな。少しテロをするとしよう」
『エアレイダー、見えているぞ』
上空に浮かぶDE-202がロケット砲を放ち、建物を破壊する。もちろん騒ぎになるのでマーケットガードがうじゃうじゃと湧いてくる。
「まあ……一時間も必要ないだろう」
ハジメの両側に向かってコンバットフレームが前進する。ハジメはそれに合わせて後退して、前線をコンバットフレームに任せた。
「またあの女だオラァ! あの女おかしいぞ!」
「また女だ! また女だ!」
「おい女ァァアァァ!」
「おかしいのは自覚しているがね、あまり言うものじゃないぞ」
ドローンが軍勢の方へと飛んでいく。指定された位置に到着すると、下に向けて弾丸を乱射して、戦車を破壊した。
「やっぱり、デカブツ相手には機関砲ドローンだな。まあ、市街地だから使わないだけで本当はKM6が使いたいがな」
コンバットフレームのリボルバーカノンが兵士を吹き飛ばし、吹き飛ばされた兵士がさらにドローンの弾幕に巻き込まれる。
「せっかくだ、片方のコンバットフレームに乗り込もう」
コンバットフレームに乗り込んで、マスターアーム*1をオンに変える。
「メインシステム、戦闘モードきど——げふんげふん、イオタ1起動した。コンバットフレーム隊、戦闘を開始する」
コンバットバーナーで牽制して、リボルバーカノンでゴリアテを怯ませる。怯んだ隙にショルダーハウィツァーを放ち、コナゴナに粉砕した。
誰も乗っていない方のコンバットフレームがミサイルを発射して、歩兵を眠らせる。さらに狙撃兵をリボルバーカノンで狙撃し返し、接近してきていた戦車をショルダーハウィツァーで破壊した。
「ダメだ! 抑えられん!」
「うわぁぁぁ!」
ドローンが兵士を倒し、コンバットフレームがリボルバーカノンで戦車を吹き飛ばし、ハジメがショルダーハウィツァーでゴリアテを粉砕する。
「……ダメだ、欲望が抑えられん。建物を壊そう。空爆万歳だ」
『ターゲットは確認した』
『要請、受諾』
『エアレイダー、見えているぞ』
上空の重爆撃機フォボスとDE-202が爆弾を投下する。周囲の建物は瓦礫と化し、歩いていた一般人は地面に倒れ伏す。
「よし、戦いやすくなったな」
再度、フォボスが戦闘エリアに突入する。
「ミサイルはもう外れない、空爆からの逃げ場もない」
「うわあぁあ!」
「まるで空爆だ!」
(まるで?)
「逃げ場がないぞぉ!」
「助けてくれ!」
ただのマーケットガードは吹き飛ばされ、戦車やゴリアテだけがその場に佇む。残った戦車やゴリアテも少しずつリボルバーカノンとショルダーハウィツァーに吹き飛ばされていく。
「こちらの戦線は安定しているな……。負けることはないだろう。銀行強盗は成功しているだろうか……」
「アル様。すみませんが、お客様へのご融資は難しいですね」
「えっ、えーっ!」
「まずは安定した仕事から始めてみたらどうでしょうか。短期バイトや、期間工などから……」
(……ううっ、むかつく……。もう大暴れして、銀行のお金を持ち出しちゃおうかしら……。いや、それはダメね。銀行からお金を持ち出せても、マーケットガードがいるし……でも、もしかすると私たち四人で……いや、ブラックマーケットを敵に回す勇気なんてないわ。情けない……キヴォトス一のアウトローになるって決めたのに……)
突如、銀行の照明が落ちる。すると、銃撃音と人が倒れ伏す音が聞こえた。
「うわああああ!」
「助けてくれーーっ!」
「一寸先は闇ってことか……」
そして、電気がつく。
「ん、銃を置いて、手を挙げて」
「従わないと、撃っちゃいますよ〜☆」
「あはは……痛い目に会いたくないなら、従ってくださいね」
五人組の少女の内、先頭の紙袋を被った少女が、穏やかに、しかして冷ややかにそう告げる。その銃口は確実にセキュリティに向かっていて、いつでも撃てるという覚悟を醸し出している。
「ぎ、銀行強盗⁉︎」
「き、緊急事態発生! 緊急事態発生! 直ちに応援を……は⁉︎ マーケットガードがたった二人に抑えられてる⁉︎」
「うへ、無駄だよ。無駄無駄」
「ほら! そこ、伏せて! 早く伏せないと地獄行きだよ!」
「みなさん、お願いだからジッとしててください……」
「ここまでは計画通り、じゃあこの後はリーダーのファウストさん、指示を願う!」
「えっ、私がですか! 私がリーダー⁉︎ 私が⁉︎」
「はい! リーダーです☆ 因みに私は……
覆面水着団のクリスティーナだお☆」
「うわっ」
「あ、あれ。アビドスの子達じゃない?」
「そ、そうですね……やりますか?」
「いや、狙いは私たちじゃないみたい」
「まったく……アルちゃんは何を……」
「監視カメラの死角、警備員のどうせ——」
『エアレイダー、見えているぞ』
「警備員の動線、銀行内のこう——」
『フォボスの恐ろしさがわかったか!』
「銀行内の構造、全てわかって——」
『全機、攻撃せよ!』
「ん、うるさい。貴方たちのことはなんでもわかってる。大人しく従うこと」
「わ、わかりました! なんでも差し上げます! 現金でも! 債券でも! 金塊でも!」
「なら、ついさっき来た現金輸送車の集金記録を」
「どどどうぞ! ありったけ詰めました!」
「あ……う、うーん……」
(な、なんてかっこいいの……)
「シロ……ブルー先輩、例のブツは手に入った?」
「うん」
「じゃあ逃げるよ!」
少女たちが脱兎のように逃げ出していく。
「一人も逃すな! 道路を封鎖しろ! マーケットガードは……動けないか!」
「なるほど、撤退したか。なら俺も引くとしよう。ナパームの壁を越えられるかな?」
『こちらボマー、作戦エリアに投入する』
「Hasta la vista baby」
コンバットフレームの中で親指を上げながら少しずつ撤退する。
『封鎖地点を突破、この先は安全です』
「はあ、ようやく追いついた。4のエアレイダーは暑いのよな……」
「あ、先輩」
「目当てのものは手に入れられたか?」
「うん、この中に……」
「おお、札束じゃないか」
「違う、目当ての書類はしっかりとある。職員が勝手に勘違いして入れただけで……」
「やったぁ! 何ぼーっとしてるの! 運ぶわよ!」
「…………」
「ちょ、ちょっと待ってください! そのお金を使うつもりですか⁉︎」
「は、犯罪だから何⁉︎ そもそもこのお金は私たちが汗水垂らして稼いだお金なんだよ⁉︎ それに、このままにしていたら兵器とか武器になってたかもしれない! 悪人のお金を盗んで、何が悪いの⁉︎」
「…………」
「私はセリカちゃんの意見に賛成です。これさえあれば、学校の借金をだいぶ減らせますから……」
「んむ……それはそうなんだけど……シロコちゃんはどう思う?」
「私が言うまでもない、私が反対しなくても、先輩がどうせ反対するから」
「うへ、シロコちゃん流石。私ことよくわかってるね。私たちに必要なのは書類だけ、お金じゃない。今回は悪人のお金だからいいけど、次はどうするの? そしたら、またこの先、仕方ないよねって言いながら、同じことをすると思う。
おじさんからしたら、可愛い後輩がそうなっちゃうのはやだなぁ……。それにそもそも、こんな方法を使うくらいなら、最初っからノノミちゃんのゴールドカードに頼ってたはず……
ヒフミちゃんと、ハジメちゃんはどう思う?」
「私はアビドスの事情はよく知りませんが……このお金を持っていると、よくないことに巻き込まれる気がします。災いの種……のようなものでしょうか……」
「ハジメちゃん……か……。私は卑怯なのも人並みには好きだし、正直なところ使ってもいいと思うが……ああ、マネーロンダリングは……」
「ハジメ先輩、カット」
「てひどい」
「じゃあ、このお金は……」
「この川にでも捨てておけばいいだろう。この先にたいした施設はなかったはずだ」
「わかりました☆ それじゃあ……」
『待ってください! 何者かが接近しています!』
「……! 新手のマーケットガード⁉︎」
ハジメが柵を飛び越えて川に飛び込む。
「ダイナミック入水自殺⁉︎」
「ハジメ先輩の事は放っておいていい。それより……」
『いえ、敵対勢力ではないようですが……』
「ま、待ってちょうだい!」
「ん、何?」
「感動したわ! ブラックマーケットを襲撃する度胸、そしてあの鮮やかな手口! 貴方たちのアウトローっぷりには……!
正直、衝撃的だったと言うか、このご時世にあんな大胆なことができるだなんて……。わ、私も頑張るわ! 法や規則に縛られない、本当の意味で自由な魂! そんなアウトローになりたいから!」
「一体……」
「だ、だから……名前を教えて!」
「名前?」
「その、組織名とか、チーム名とか。正式なものじゃなくていいから、私が今日のことをしっかり覚えていられるように……」
「はい、おっしゃることは、よーくわかりました☆ 私たちは人呼んで……
……覆面水着団!」
「…………ふ、覆面水着団⁉︎ 超クールだわ!」
「うへ〜、本当は覆面にスクール水着が正装なんだけど、今日は少しばかし急だったもんで、覆面だけなんだけどね」
「そうなんです! 昼間はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の怪盗に変身するのです!」
「うへ、目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く。これが私らのモットーだよ!」
「それじゃあこの辺で! アディオース☆」
「行こう! 夕陽に向かって!」
「夕陽、まだですけど……」
「あれ? 現金のバッグ置いてきちゃいました」
「うへ、いいんじゃない? どうせ捨てる予定だったし」
「うん、きっと誰かに拾われるでしょ」
「あはは……あのお金で誰かのお腹が膨れると思えば……」
「そうだな」
「………どこから?」
「上から。ほら、上にヘリがあるだろ?」
「……随分上にありますけど……」
「あの程度なら」
「服着替えたんだね」
「一番どうでもいいところを……」
「カイザーローンがヘルメット団に融資……」
「……ハジメ先輩。知ってた?」
「………実は?」
"ハジメ"
「真実には己で辿り着いてこそ意味がある、と言うものだろ? 答えのわかった問題集ほどつまらないものもない」
「では、この件はティーパーティに報告しておきます」
「まあ、動くとは考えづらいけどね」
「え、どうしてですか?」
「世の中そんなに甘くはない、と言うことだ。採算の取れないことはしない方がいい……まあ、私たちは少し話が変わってくるがな」
「軍人だからね……」
「悪いが、遅くなる前に帰らせてもらう。同居人が夕食を作っていてな。用があったらメールで頼むぞ」
ハジメが飛び込んだ理由は一つ、覆面水着団と一緒にされたくなかったからです。