『ハジメ先輩、聞いて』
「移動しながらでいいか?」
『うん。——ホシノ先輩が攫われた』
「そんな事の報告の為だけに、私を呼んだのか?」
『……手伝ってほしい』
「アビドス高校から北に四キロ、東に二キロ地点にEDFのベースがある。その中の無線機を取って行け。管理コードは36-24-36だ」
飛行しながら、資料を砂狼に送る。あまりに高い物だから、スマホを落としたら危険だが……流石にそんなヘマはしない。戦闘中にも一回もセイバーを落としたことはないんだ。
「いくつか要請コードを送る。砲兵とガンシップ、攻撃機が要請に応じるはずだ」
『ありがとう』
「ああ、あと——」
「へいへーい、到着。風紀委員棟の上なんて、誰も気づかないだろ」
「風紀委員長に会いたい? ゲヘナの風紀委員長にそんな簡単に会えるわけ……」
銀鏡だ。ミニスカ美少女……あれ、足がスースーしないのだろうか。いっつもあんなの履いてて……ズボンじゃダメなのかよ……。寒くない?
「そんなに会いたいなら足でも舐めたら————ひゃん!」
うわ、躊躇いなく行った。うわ、うわ、うわ……うわ……。うわぁ……。仮にも成人だぜ? 仮にも教職者だぜ? 正気か……? うわぁ……。えぇ……? えぇ……? まじぃ? 危ない危ない。マグブラスターを撃つところだった……。
ええ……? 確かに、俺もスベスベしていそうで足触りたいなって思ったことはあるが……。ええ? いや、画面越しに知らん大人の奇行見るのとは違って中々に……率直に言うとキモい。
「……ハジメ、人の後輩が足を舐められてるのを上から見るのは趣味が悪いと思わない?」
「うーん……ちっとも。なんせ私は着替えシーンまでドローンで監視されてるものでな」
「それ、大丈夫?」
「ん、まあ。で、だが……いくら強権を持っているとはいえ女生徒の足を舐めるなど……
"ハジメ、君にも協力してほしい"
「話をだな……まあ、いいが……グラビス二機とニクス六機ぐらいなら追加で持って来れるか……」
「ハジメ、なんでゲヘナにいるの?」
「いつもならそこまで変な話でもないが……。ま、今回は違う。重機をベース235に運ぶ。今からノーブルに重機をくくりつけなきゃならん。スーパー美少女のヒナちゃんは手伝ってくれるか?」
「悪いけど、ついさっきできた仕事があるから」
「手伝ってほしいことがあったら言えよ。気が向いたら手伝ってやる」
「なるほど、その情報が真実とすると、このまま聞き流すわけには行かなさそうですね……しかし、例の条約もありますし……下手に動くわけには…………ただ、そのPMCが我が校の生徒に悪影響を与えるのもまた事実……今回はちょっとした例外という事で、何か案を考えた方が……」
「あ、ありがとうございます……」
「そうですね、確かちょうど牽引式榴弾砲を扱う屋外授業があったはずです。折角ですし、ピクニックなどいかがでしょう」
「という事は……」
「愛は巡り巡って帰るもの、ヒフミさんから愛が返って来る日を、楽しみにしてますね」
「あ、あう……」
「それに、シャーレの先生には貸しを作っておいた方が良さそうですし……」
「ん、セリカ、もう少し左に」
「え、わかったけど……」
『要請? 民間人からだと?』
バギーに乗せられた無線機からそう音声が流れた。すると、つい先までセリカがいたところに砲弾が降り注ぐ。
『聞かない声だな。お前、誰だ?』
「シロコ先輩、これって……」
「ハジメ先輩に貸してもらった。いつも使ってる
シロコがアサルトライフルで牽制しながら、ビーコンを戦車に貼り付ける。
『民間人、その場から退避しろ』
戦車に向かってバルカン砲が降り注ぐ。
『このタイプの攻撃要請コードは初めてだ。一体、誰だ?』
「大丈夫なんですか? シロコちゃん」
「責任は私じゃなくて私に貸したハジメにある。私にはなんら非はない」
「そうですか〜☆」
『民間人、その場から退避しろ』
『民間人、褒めてやる』
DE-202がAFVにロケット砲を叩き込み、木っ端微塵に破壊したのと、ほぼ同タイミングで戦闘攻撃機カムイが通過し、地上に爆弾を投下する。
『お前は民間人か。なぜ空爆要請コードを知っている?』
『お前軍人じゃないのか⁉︎ それは軍の空爆要請コードだぞ⁉︎』
『さっきの民間人の方、敵の位置が分かりますか?』
「ん、うるさい」
発煙筒を投げ、無線端末で空爆を要請する。砲弾が辺りを抉る。爆薬が土煙を引き起こす。
「まだまだいくよ」
「南部から少数の部隊が接近。空爆が降り注いでいるのでメイル1だと思われます」
「なるほど……」
「北部から三人。これは……ゲヘナ風紀委員会です!」
「西部から大軍勢です! AFV多数、戦車多数、コンバットフレーム多数! 武装ヘリも来ます!」
「何⁉︎」
「……まだです! 砲兵の攻撃が来ます!」
「シールド、構え! シールドがない歩兵は、ゴリアテの陰に隠れろ!」
「イオリ、チナツ、後が詰まってるから手早く終わらせるよ」
「わかった」
「わかりました」
ヒナのデストロイヤーがPMC社員たちを貫いていく。無論PMC社員たちも反撃はするが、有効打は与えられず、無様に一掃される。
イオリもただ見ているだけというわけではなく、スナイパーライフルを連射して、一人ずつ処理していく。
回復役のチナツに仕事はない。
「こちらイオタ1。コンバットフレーム隊、戦闘を開始する」
コンバットフレームニクスが八機、グラビスが四機、ブラッカー八台、バリアス六台、グレイプが四台、タイタン二台が進軍する。
そして、ハジメが搭乗しているエイレンⅢが一台。
「粒子ビームキャノン砲スタンバイ、照準よし」
エイレンの肩に接続されたパワーダインのような物から、ビームが放たれる。そのビームによって、ゴリアテが大破し、ついでに腕の電磁レーザーによって兵士たちが薙ぎ倒される。
『重戦車の力、見せてやるぜぇ!』
『ゴーン2、マスターアームオン。ミサイルを叩き込んでやる』
「こう見えてもベテランなのでな。格の違いというものを見せつけてやろう」
コンバットフレームニクスの内、四台の肩部に搭載されたミサイルポッドから多数のミサイルが放出される。放出されたミサイルは空中で角度を変え、それぞれの指定された地点へと向かっていく。
「シールドがあろうが無かろうが、君達は私に勝てないさ。もっとも、今回私が請け負っているのは殲滅ではなく陽動だがね」
「ん、いくらなんでも多すぎる」
『シロコ先輩、空爆要請はしないんですか?』
「功績ポイントが足りなくなった」
「ええ⁉︎」
「ん……どうしようもない」
ヒュッという音の直後に、ドゴンという爆破音が響き渡る。
「……これは……?」
『L118牽引式榴弾砲! トリニティの有する支援兵器です! けれど、なぜこんなところに……』
『あぅ……、わ、私です」
「あ! ヒフ……」
『ファウストです! ヒフミではなく、覆面水着団のファウストです!』
「自分で名前を言っちゃいましたが、そこはご愛嬌ということで☆」
『あと、このL118牽引式榴弾砲は、トリニティの物ですが、ティーパーティーとは無関係ですから! こんなことしかできなくてすみません!』
「いや、助かった」
一行が前進すると、再び敵の大群に遭遇する。
『こちら嵐山ハジメ、デカグラマトン大隊に阻まれて接近できん。援軍としてプロテウス——駆除チームに援軍を要請したが、到着には時間がかかる。そちらにケブラーとネグリング、ガンワゴン、コンバットワゴンを向かわせた。少し待ってろ』
「多くないですか?」
「多分ネグリングが一台、ガンワゴンが二台、ケブラーが二台にコンバットワゴンが一台」
『ネグリング自走ミサイルが到着しました』
『戦闘車両が到着しました』
『燃料を無駄にするな、しっかり狙え』
『もっと速度を上げろ! アクセルを踏め!』
シロコの発言通りに、KG6ケブラーFが二台、ネグリング自走ミサイルD1が一台、ガンワゴンが二台にコンバットワゴンが一台やってきて、弾丸と火薬をばら撒き始める。
コンバットワゴン肩部に装着されたギガランチャーによって通信設備が破壊され、カイザーの無線機はもはやお荷物となった。
『車両との接合部がおかしい! あとで見てくれ!』
『落ちなければ良い! 今は撃て!』
『振動が激しい! 整備不良だ!』
『もたせろ!』
武装ヘリをケブラーが撃ち落とし、地面に立っている歩兵をネグリングの誘導ミサイルによって吹き飛ばす。また別のヘリをガンワゴンが細切れにして、遠くに立つゴリアテをコンバットワゴンが吹き飛ばす。
「大丈夫なの……?」
「ハジメさんの援軍なら、きっと平気ですよ☆」
「ん、腕は確か……な、はず」
「はずって……」
「コンバットワゴンとは一緒に戦ったことがない」
「そんな……」
「けど、ネグリングは強いよ。ハジメ先輩がベタ褒めしてた」
ネグリング自走ミサイルがミサイルを発射する。発射されたミサイルはある程度一直線に飛翔したのち、空中で弾道を変え兵士たちに直撃した。
コンバットワゴンが右腕のバーナーをゴリアテに向け、装甲がドロドロになるまで融解させる。
「熱い! 熱い!」
「装甲が融解してる!」
「奴ら、無駄を楽しむ心の余裕がない!」
『撃て!』
『ハンティングを楽しめ!』
ガンワゴンに固定された自動砲座が照準を動かし、次々と武装ヘリコプターを撃墜する。すぐ隣のケブラーも負けじと、大型のヘリに狙いを定め、次々と爆散させていく。
ガンワゴンがヘリを墜落させている間に、バギーの無線機からハジメの声が聞こえてきた。
『一台だけだが、重戦車タイタンがそちらに到着した。主砲の威力は中々に強烈だぞ』
黄土色の車体をした、巨大な戦車がシロコたちの前に出る。
『シールドがない歩兵は、タイタンの後ろに隠れろ!』
レクイエム砲が放たれる。放物線を描いたその砲弾は、歩兵も、ゴリアテも、戦車も、AFVも、大地も、全てを吹き飛ばし相手の戦列を崩壊させる。
「あんなものを人に向けるのかよ!」
「やばいぞ!」
『ゴリアテでもあれは防げない!』
『助けてくれーーっ!』
そうして一行と車両は前に向かう。そして、廃校舎にたどり着く。
『目標の地点に到達、きっとここにホシノ先輩が……』
「ここは……廃校舎?」
「その通りだ。ここは本来のアビドス高等学校の本校舎」
「あんたは……!」
黒い洋服に身を纏ったロボットがその姿を表す。隣に護衛を連れ……否、その奥に軍を連れてノソノソと現れる。
「よくぞここまで来たものだ」
『敵の増援多数……この数、おそらく敵の全勢力が集結しています……』
「砂漠化が進行し、捨て去られた街……元々は、ここがキヴォトスで最も栄えた場所だった……。ゲマトリアは、ここに実験室を作ることを要求した」
「何をごちゃごちゃと……」
「そんなことより、ホシノ先輩はどこですか!」
「副会長は今、実験室にいる。もっともすでに実験は始まっているかもしれないがね」
「彼女のもとに行きたいなら、私たちを振り切れば良い。できるならの話だがな」
「ここは私とEDFで……」
再び爆発音が鳴り響く。その土煙が晴れると、見慣れた姿が四人。
「便利屋……68……」
「このタイミングでここに来たって事は……」
「ええ、言わなくてもわかるでしょう? あとは任せてちょうだい」
コンテナと共に、二機のコンバットフレームが落下してくる。
『こちらブラッド1。俺たちにもやらせてもらおう』
「べ、別にお礼とかは言わないから。でも、全部終わったら、その時は一緒にラーメンでも食べに行くわよ!」
「はい、このご恩は必ず!」
「ん、ありがと」
少女たちは、小鳥遊ホシノの待つ校舎たちに向かって飛び出して行った。便利屋と、コンバットフレームはそれを見送る。
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