"まだ戦いは終わってないみたいだね"
「けど、もう終わるはず。戦う理由は……」
「そうだな。もう『カイザーと』戦う理由はない」
"ハジメ! それに、その口ぶりだと、他の何かと……"
「放っておいた方がいい。帰って昼寝でもしたらどうだ?」
生身のハジメが右に大きく飛び退くと、元々いたところを橙色の光線が削っていく。さらに追撃として飛んできたミサイルの一部をブレイザーで撃ち落とし、撃墜しきれなったミサイルをローリングで避けた。
"これは……"
「違いを痛感する静観の理解者——デカグラマトン第三の預言者、ビナーだ。私のエイレンをも破壊するだけの火力を持つ。ろくな戦力なしで勝てる相手じゃない。君達は逃げろ」
「ん、ハジメ先輩だって想定してないはず」
シロコがドローンから爆撃を放ち、ビナーを怯ませる。
「だったら、私が一人で逃げる道理はない。先輩達は先に帰ってていいよ」
「砂狼、感謝する。無線はまだ持っているな?」
「もちろん。あ、本体はバギーに置いてあるよ」
建物に手榴弾を投げつけ、破壊し、その瓦礫で機関砲から身を守る。再びビナーの口が開き、光が収束する。それが放たれてハジメに向かった。
「——っ! 受けるか。調月、データの更新を……」
光が、ハジメの前で弾かれる。盾を持った桃色の髪の少女——小鳥遊ホシノが、ハジメの前に立っていた。
「うへ、シロコちゃんが戦うなら、私もね」
「全く……そう軽いノリで戦う相手ではないんだが……。まあ、思いきり頼りにさせてもらおう、覆面水着団。調月、データの送信を」
自らの後ろに飛ぶ白色のドローンに、そう話しかけると、アヤネの持つ端末と、シッテムの箱にデータが送信される。それはこの戦闘の中で蓄積されたデータであるため、足りないデータはあるだろう。
『わかったわ』
「調月……セミナーの会長ですか⁉︎」
「まあ、そうとも言う」
『……いえ、今の私はアバンギャルド仮面よ』
「トチ狂ったか?」
『セミナーが弱小校の援助をしているとなったら傀儡にしようとしているのを真っ先に疑われるでしょう?』
「正論なのが余計……。すまんな、君たち。帰りたくなったら帰ってくれて構わない」
『一さん。機関砲から射撃です』
近くを飛ぶもう一つのドローンからの指示を受けて、左方向に大きく飛び退く。紙一重で回避したハジメには傷がついていないが、地面には深く弾丸が突き刺さった。
「んん、今の状況を確認しておこう。任せた」
『はあ……。どうも、一さんのパトロンです』
ハジメの周りを飛んでいた黒いドローンがアヤネの傍に移動しながら、スピーカーの音量を上げる。
ハジメに向かって放たれたミサイルをセリカとシロコが撃墜し、その瓦礫をノノミが吹き飛ばす。
『まず、敵対しているのはデカグラマトン第三の預言者、ビナー……まあ、ここは聞いていますね。それに対抗している勢力はEDF、ゲヘナ風紀委員会、便利屋68、トリニティ、ミレニアム……んん、アバンギャルド仮面、カイザーです』
「……カイザー?」
セリカが問い返すと、ドローンからの音声は調子を変えないまま返答する。
ビナーがハジメに機関砲を連射している隙に、ノノミが機関銃を、シロコがドローンから爆弾を発射する。
『ここはカイザーの基地ですから』
「ああ、それもそうね」
『ククククッ、一さん。このドローンが撃ち落とされるので守ってください』
「了解だ(定型文)」
飛んできたミサイルを光線が焼き切り、ドローンにぶつかる前に破壊する。さらに飛んでくるミサイルを同じく光線で撃ち落とし、ドローンを防衛する。
「まだオメガはできてないのか?」
『知ってますよね? まだ開発は難航しています。ブレイザーが作れたのも……』
「御託はいい。さっさと作れ」
『無茶苦茶な……』
再び校舎の瓦礫に身を隠して、ビナーの口から吐かれる光線——アツィルトの光から身を防ぎながらブレイザーのリロードをする。EMCを防ぐように完全なシャットダウンとはいかないが、それでも全身を丸出しにするよりよっぽどマシだ。
『ハジメさん。大丈夫ですか?』
ゲヘナの制服を着た青髪の少女——天雨アコが、ハジメの持つ端末に通信をかける。放たれたミサイルを各々撃墜するが、アヤネは落とせず、しかし、その分をホシノが撃ち落とす。
「ああ問題ない。この程度、グラウコスの熱線と比べたら……ああ、いや、同じぐらいの熱量な気もするがな……」
『よく分かりませんが分かりました。イオリ、援護射撃を』
「射程距離に入った、行くぞ!」
ビナーの横っ面を大口径弾三発が叩く。もちろんハジメも見ているだけな訳はなく、ライサンダーをビナーに向けて放つ。
しかし、その体に一切の損傷は見られない。
「嘘だろ……まるで効いてない……!」
「ハジメ先輩、どうする?」
「タイタン! 前進しろ! レクイエム砲をぶちかませ!」
「……レクイエム砲?」
『EDFの所有する重戦車、タイタンの主砲よ。それがどうかしたの?』
「うへ、いや。なにも」
『そう。なら——ハジメ!』
「わかってる。私ばかり……なぜ狙われるんだ!」
怒号と共に右にローリングすると、つい先までいた地点にミサイルが降り注ぐ。
『一さんが一番高火力の兵器を持っているからでしょう』
「たかだかEMCの12%だろう」
"EMC? ごめん、略語は覚えられないんだ。何の略?"
「Electromagnetic Material Collapserだ」
『Electromagnetic Material Collapserよ』
『Electromagnetic Material Collapserです』
"うん、EMCでいいや"
再びビナーの横っ面に大口径弾が突き刺さる。
「ごめんなさい! ようやく追いついたわ!」
「陸八魔!」
「……誰かしら? なんで私の名前を……」
「……それなりには有名人だと自負していたが、まだまだだったか。全地球防衛機構軍EDFの嵐山ハジメだ」
(な、な……なんですってー!)
「ほんとうに有名人じゃーん。どうする? アルちゃん」
「ア、アル様の敵なら……」
「待て待て待て、オフ……というわけではないが、それでも優先順位というものはある。あの蛇が先だ」
「そうだよね……」
ムツキの爆弾が、ハルカのショットガンが、カヨコの拳銃が、アルのスナイパーライフルがビナーの気を引く。
「レクイエム砲、発射!」
その隙にレクイエム砲がビナーに直撃し、爆ぜる。しかし、その装甲には一切の損傷が見られなかった。
「レクイエム砲が、効かないぞ……」
『主砲が効かない!』
『馬鹿な……ビルを吹き飛ばす威力だぞ!』
突風と共に、ビナーの顔面に蹴りが突き刺さる。
「ごめん、遅れた」
その蹴りを放ったのは空崎ヒナ。残弾が切れた砲兵の撤退を支援していたのが終わり、援軍に飛び出してきたのだ。
「あわわ! アビドスの皆さん! 平気ですか!」
同じく援軍として、ヒフミがアサルトライフルを放ちながら援軍に向かう。
「うへ、ハジメちゃん。避けて」
「了解」
ホシノの射線から外れて、ショットガンを避ける。ビナーの装甲に傷はつかないが、怯ませることはできた。
「ハジメ、右に」
「了解だ(定型文)」
ヒナのマシンガンを避けるために右側に向けて全速力で走る。ハジメの後ろ側を弾丸が掠めていった。一発当たった。
「はあ……はあ……」
「ハジメさん☆ 避けてくださいね☆」
「なにか……おかしい!」
「うへ、後ろに行かないからだと思うな」
「EDFは敵に背中を見せない。そうだろ?」
「知らないわ」
「空崎ぃ……いつからそんな薄情な子に……」
「……あなたの代わりに私が前に出るわ」
「いや、空崎には……」
「安心して、私はあなたに負けないから」
「……すまない。ブレイザーで援護する」
息を整えながら、後方に下がりつつブレイザーを放つ。イオリが退却するのを援護するように狙撃銃を三連射する。アルもそれに合わせてスナイパーライフルを放つ。
「射程距離内に入ったぞ!」
「片手でも命中させられるわ」
アコがイオリとアルにデータを送信し、援護していた。
「ハジメ先輩、動かないでください」
「火宮? いや、問題は……あだだだ!」
「少し治療しますから」
「おい、リバーサー!」
『クックックッ……無理です』
「待て! ひみ……あああああ! 消毒液がああ!」
「少し静かに」
ハジメの口内に指を突っ込んで静かにさせる。そうしながらもハジメの火傷や弾創を治療している。アツィルトの光でできた傷を冷やし、軽く治療した。
『ハジメさん、リバーサーです』
「すまん。これで治療する」
「……後で来てくださいね。しっかり治療します」
「すまないな」
再びブレイザーを握って、ビナーに向けて発射する。
「間に合いましたね」
アヤネがセリカやイオリ、シロコに向けて救援物資を投下して回復する。
「ペロロ様! お願いします!」
囮として踊るペロロを投げる。ビナーはそちらを狙い、アツィルトの光さえ放ってしまう。
『そこに死角があるとでも?』
リオからハジメに向けて大量のデータを送信する。未完成、不適当なデータとはいえ、使えないわけはない。ブレイザーがビナーに向かう。
「こちらカイザーPMC第三大隊! EDF、援護する!」
「……諸君らの奮戦に感謝する! 死ぬなよ!」
クルセイダーの砲弾がビナーに突き刺さる。レクイエム砲も効かないのだから、当然大した損害にはならない。が、怯ませるには十分だ。
シロコのアサルトライフルが、社員のロケットランチャーが、カヨコのハンドガンが、イオリのスナイパーライフルが、ハジメのブレイザーがビナーに集中する。
コンバットフレームも、クルセイダーも、タイタンも、ゴリアテも、全てが団結してビナーに立ち向かう。
「シールド、構え!」
「みんな、私の後ろに隠れて〜」
「タイタン、歩兵の壁になれ!」
ミサイルが爆ぜる。機関砲が突き刺さる。アツィルトの光が輝く。
「俺たちはまだ戦えるぞ!」
「死んで下さい死んで下さい死んで下さい!」
「うへ、おじさんにはキッツイな〜」
「タイタン、中破!」
集中砲火をモロに受けても、いまだにビナーは倒れない。再び口元に光が収束する。アツィルトの光が、ホシノを焼く。しかし、まだ耐えた。
——ハジメの持つ端末、先生の持つ受信機、シロコの活用する無線機、黒色のドローンに同時に通信が入電する。
『潜水母艦、支援可能領域に到達』
「……砂狼、切り札を使うぞ。レーザー照射は君に任せた。くれぐれも私に向けるなよ」
「ん、わかってる」
「空崎、小鳥遊。砂狼の射線を遮らないように援護してくれ。遮ったら上半身と下半身がバイバイさよならだ」
「……うへ? シロコちゃんに何渡したの?」
「……お楽しみってことで」
『耐圧壁、開け! これより安全装置を解除する』
数分後、大型ミサイルが五発も飛来する。——戦略兵器、潜水母艦エピメテウスから巡航ミサイルが発射された。ミサイルのうち一発が機関砲に撃墜されるが、その他の全てがビナーに激突する。
爆音が鳴り響く。爆風が砂塵を撒き散らす。
「……うへ、まだ倒れないの?」
「ブチ切れそうだ」
『いえ、さすがにそろそろ撤退するはずです』
「……わかった。なら、最後の一押しと行こうか。総員、戦闘再開!」
コンバットフレームの榴弾砲がビナーに直撃し、ゴリアテの機関砲がビナーの隙間を狙って攻撃する。ホシノが盾を使ってアツィルトの光を防ぎ、ヒナがマシンガンでビナーを怯ませた。
チナツとアヤネが治療をし、リオ、アコ、黒服が各種データを用いて支援を行う。
ヒフミのペロロ人形が囮となって、アツィルトの光を受ける。ムツキもカバンを投げ、ビナーを怯ませる。
『戦闘車両が到着しました。一さん、搭乗してください』
「私はプロテウスは使えないぞ?」
『EMCです』
「了解」
ハルカが前に出て、アルが後ろからワインレッド・アドマイアーを放ち、ハジメが特殊車両EMCに搭乗する隙を作る。
「EMCは一台一億ドルだ! 援護しろ!」
「ん、それを売る」
「許可できない(定型文)」
カヨコのデモンズロアによる威圧と、ノノミとセリカの交差した弾幕がビナーを怯ませる。
指揮官の命令によって、同時にロケットランチャーが口元向けて放たれる。
ビナーが口元に光を溜める。
EMCから光線が発射される。
アツィルトの光と原子光線砲が真っ向からぶつかり合う。力比べとはよく言ったもので、押されては出力を上げ、押されては出力を上げを互いに繰り返す。
「ん、援護する」
ビナーに向けて、シロコの爆撃ドローンが放たれた。イオリがスナイパーライフルを三連射する。
「EMCを倒したいなら、怪生物級でも連れて来い──ッ!」
苦い顔をしながら、出力を上げる。
「……押し切れた……か?」
ビナーが地中に潜航する。そして、レーダーから消えていった。
"……逃げて、いった?"
「やったぞ! EDF! EDF!」
「うおおお!」
「俺たちは勝ったんだ!」
「ん、よかった」
「駆除チーム、あいつらの出番は無かったな!」
「あはは……」
「うへ〜、おじさんにはキッツイな〜」
「調月も、感謝する」
『アバンギャルド仮面よ』
「ハジメ先輩、傷を治します」
『待ってちょうだい! 一度帰投してくれる? 聞きたい話が……』
「私ったらモテモテだな。……それより事後処理は……」
「それはこちらでする」
「ああ、理事」
「この程度の損害で済んだのは貴様らのおかげだ。腹は立つがな」
「じゃあ、私は帰る」
「待ってください」
「嫌だぞ、火宮。私は今回のレポートを……!」
「怪我はちゃんと治療しないと跡になります。そこに直ってください」
「阿慈谷、
「あはは……嫌です」
ビナーがここまで強いのは多分今回だけです。
感想と高評価欲しい。欲望が抑えらないんです。