アビドス高校、正門前。青いバイクがそこを駆ける。そのバイクにまたがる男はトランクとブレイザーを背負っていた。
——まあ、俺だが。
「駐車場、駐車場……。ま、いいや。駐輪場に停めよ」
朝早くなので、砂狼だとかはいないだろうが——。
「うへ〜、ハジメちゃん。早いねぇ〜」
「ああ、小鳥遊」
「何の用かな〜?」
「アビドスをEDFの
「へぇ〜?」
「——と言う冗談はさておき、二つ要件がある」
「笑えない冗談はやめてほしいな〜。で、要件の方は?」
「一つ、金だ」
「ん?」
「二億円だそうだ。迷惑料だと」
「……誰から?」
「全身真っ黒のまっくろくろすけみたいな面したスーツ男」
「……理由って聞いてる?」
「ん、いや? まったく、なんで私に渡すんかね……横領だって考えるべきだろうに……」
少し微妙な顔をした後、トランクを受けとる。
「うへ、そうか〜。うん、受け取っておくよ」
「そうか、ありがとう。二億円程度動かせない金額ではないが、流石にこうやって持ってるのは気が引ける」
「うへ、お金持ちアピール?」
「EMCを十六台持ってるぞ」
「十六億ドル⁉︎ すごいねえ。おじさんには想像もつかないや」
「火力は高いが、いかんせん整備性と金額が劣悪だな。動かない相手なら絶対に……この話キャンセルで」
「え〜。おじさんに教えてくれないの〜?」
「軍事機密だ。もし漏らしちゃったら消すことになる」
「消すって……」
「アビドスごと地図から消滅させる」
「うへ⁉︎ それはちょっとおじさん困っちゃうな!」
「安心しろ。カイザーも消えるからな」
「そっちだけにしてほしいな〜。……こんな校庭でずっと話してるのもなんだし、教室いこっか〜」
「じゃあ、ありがたく」
小鳥遊に連れられて、教室の中に入る。
「うへ、えっと……なんていう組織に入ってるんだっけ?」
「全地球防衛機構軍EDF。活動内容は地球防衛だ」
「そんなことしてるんだ。大丈夫なの? その……ワークライフバランスとか?」
「無論、問題はない。ワークは地球防。ライフは身体健全、趣味充実、家庭円満、老後安泰、学力向上、気分爽快、金運向上、良縁成就、除災sy——」
「うへ⁉︎ それって、ブラック企業なんじゃない⁉︎ ……あー、やあ、お賃金とかはどうなの?」
「日毎によって変わるが、基本は現物支給で」
「うーん……?」
「日当どんぐり三つだ」
「ダメダメダメダメダメダメ!」
「冗談に決まってるだろ?」
「うへ、そっか、そうだよね。おじさんびっくりしちゃったな。真顔でそんなボケするだなんて」
「ふふふっ、笑いながら言ったらばれてしまうだろう?」
「それもそうだね。で、本当はいくらくらいなの?……」
「私の給金はこのくらいには高いが、私は指揮官待遇だからな。あまり参考にはならないぞ」
「そっかー、残念。もしお給料が高いならおじさんも入隊しようと思ったんだけど」
「やめとけやめとけ。高いのは給金だけで、基本はやめといた方がいい職業だからな」
「そっかー……」
「二億円もあれば中々借金を返せると思うが」
「うへ、そうだね」
「ん、おはよう……ハジメ先輩」
「ああ、おはよう。調子はどうか?」
「まあ、そこそこだね。先輩は?」
「私もその程度だな。悪くも良くもない。どっちかというなら左足が痛い」
「ん、平気そうだね」
「まあ、そうだがな……」
「ハジメ先輩。アビドスの席に座るなら、やるべきことがある」
「……なんだ? まあ、基本は先人に従うのが私の主義だから……」
「それならちょうどいい。これを着て」
アビドスの制服を手渡される。
「……流石に、誰ともわからぬ制服を着るのは……」
「ん、くどい」
「一回目だが⁉︎ 待て!」
砂狼が俺のシャツに手をかける。
「待て、待つんだ砂狼! いや、いや! 普通に考えて! それは無しだろ! ひゃん!」
「ん、先輩の事情は知らない。今からでもアビドス三年生になるべき」
「冷静になれ! この作品にR18タグが付いちゃうだろう!」
「メタネタは駄目」
「鬼! 悪魔!
「脱がされた——! もうお嫁に行けない!」
「行く気あったの?」
「無かったが」
「なら問題ないね」
「無いがぁ! 小鳥遊!」
「うへ〜。眼福だったよー」
「おじさんみたいなこと言って!」
「おじさんだからねぇー」
「ん、案外似合ってるね」
「美少女だからな。EDFのアーマーでも、ミレニアムの制服でも、スーツでもフルフェイスでも似合うのは当然の理だろう」
「……フルフェイスに美少女って関係あるかな?」
「次に、書くべきものがある」
二枚以上の紙が重ねられた入校許可証が手渡される。
「コレ、入学届だろう」
「ん⁉︎ なんでバレたの⁉︎」
「君の考えそうなことだ」
「ん——。なら、仕方ない。——書類、書いて?」
「やめろやめろ。上目遣いは私に効くぞ? まあ、書かないが」
「ん——!」
「書かないって言っているだろう。大体。まだミレニアムを辞める気はない。もし何校も兼ねれるなら話は変わってきたがな」
「よし、ホシノ先輩」
「殴り込み? おじさん疲れちゃうなー。————あ! ハジメちゃん、二つ目の要件ってなんなの?」
「ああ——近況を、聞きたくてな」
「なんだ、そんなことかー。先生はいなくなっちゃったけど、後輩達もいるし、利子も下がったし、問題は無いねぇ」
「それはよかった。若い子がずっと借金返済など、私たちの望むところでは無いからな」
「うへぇー。そしたら、お金欲しいなー」
「君達自身の力で壁を乗り越えなければ、君達が救われたとは言えない。違うか?」
「うへ⁉︎ よく覚えてるね!」
「これでも記憶力には自信がある方でな」
じゃなかったらEDFの兵器のスペック書き出せんしな。
「ん……あ! 私もハジメちゃんに聞きたいことがあるんだった!」
「何だ? 軍事機密に抵触しない程度なら教えてやろう」
「最近、兵器が盗まれたって話を聞かない? 重戦車タイタンとか。榴弾砲とか?」
「ソレ、本当にあったとしても隠蔽するからな。——だが、知らないな。タイタン……? あれ、型番にもよるがキヴォトス人殺せるような奴もあるから厳重な警備をしてるはずだし……。うーん……私とて知らないところは多いからな。パンドラの建造とかセイレーンの建造とか……バルガの進捗とか? だから、そこらへんの可能性も……」
「そっかぁ……」
「なんかあったか?」
「ついこの間レクイエム砲に撃たれちゃってさー」
「はぁ……? テロとかしてたか?」
「してないよ⁉︎」
「してないか? なら、爆破はされないはずだが……まあ、一応調べてみよう。何も出なくても文句言うなよ——キッチンはあるか?」
「ん、一応調理室がまだ……」
「なら、少し借りるぞ。食材は持参している」
「おじさんの分も頼むよ〜」
「むしろ、君たちのために作るんだ。突然押しかけてしまったからな」
調理室で持ってきた豚肉、タマネギ、じゃがいも、にんじんを展開する。これだけ出してもカレーかシチューか特定できないのは、どう考えてもお前らが悪い。
カレーだ。
俺は付き合ってはいけない男の3Kの中の一つ、カレーをスパイスで作る男ではないので、もちろんルーを持ってきている。
あと、ネットで見たごぼうの唐揚げも作る。
「青い地球を守るため〜♩ EDFの出動だ〜♪ ひらめけ勝利の稲光〜♪ 宇宙人ども撃滅だ! 緑の地球が危ないぞ〜♪ EDFの出動だ〜♪ 地球を守護する戦士達〜♪ 宇宙人どもやっつけろ!」
歌いながら、鍋をいじる。
「おはようございます〜☆ 手伝いに来ましたよ!」
「……大した仕事はないが……鍋をくるくるかき混ぜてくれるか? ごぼうを切りたい」
「わかりました☆」
「て、手伝いに来たわよ」
「……じゃあ……まな板洗い……いや、女の子に水仕事はあれだな。なら……油を見ててくれるか?」
「手伝いに来ました」
「……本当にもう仕事がない」
「ん、つまみ食いに来た」
「ごぼうを食べるな」
「ん、美味しい」
「うへ〜。つまみ食いに来たよー」
「つまみ食いでカレーの方食べるか? フツウ」
「おいしいね〜、これ」
「まあ、褒められるのは悪い気がしないがな。許さないぞ」
用意した皿を並べる。ごぼうは大皿。
「いただきます」
「うへ〜、いただきま〜す」
「ん、いただきます」
「いただきます☆」
「いただきます」
「いただきます」
「美味しいですね〜☆」
「ん、私は知ってた」
「つまみ食いしてたからな」
「カレーも美味しいですね。スパイスとかから?」
「普通にルーだ」
「うへ、おじさんはわかってたよー」
「つまみ食いしてたからな」
「……じゃあ、私は帰る。二億円は有効に活用しろよ」
「わかったよー」
「ハジメ先輩、ライフル忘れてない?」
『嵐山ハジメ』
主人公。vol1を無事に終えられて浮かれ気味。この後ブレイザーを忘れた事に気づき全力疾走で戻ってくる。
『ブレイザー』
EMCを小型化したライフル。ハジメに置いて行かれた。多分ブルアカ的には分解属性。