「いたたたた……すまない。平気かい?」
「ああ、私は平気だ」
目の前の少女からカバンを受け取り、中身を確認する。タイタンの設計図、EMCの設計図、よーし。んん? グラビスの設計図は?
「すまない。設計図を見なかったかい?」
「……ん、これか?」
「ああ、そうそう」
手渡された設計図とともに、少女の顔を見る。紫色の髪、紫色の目、端正な容姿、あるともないとも……いや、衣装によってはとても大きかった胸……。
白石ウタハじゃん! 一番グラビスの設計図見られたくない相手に見られた!
「ふむ、ヘビーコンバットフレーム……グラビス。ゴリアテとは……なるほど、そもそも根本的な構造が違うな」
「き、君?」
「背部ブースター、出力は……これだけでグラビスを浮かせられるじゃないか! 最低限の機動力はこれで担保してるのか。……装甲が厚いな、ほとんどの攻撃は弾けそうだ」
「すまないが……」
「整備性も悪くない。良くはないが、性能の割には良い」
「そろそろ返してくれ……」
「腕部武装も強いな。戦車砲並だし。グレネードポッド、これは何故時限式のを?」
「接近された時に使えるようにだな」
「なるほど、撃って逃げようってことか。……どこにあるんだい?」
「家。悪いが君に見せるわけには……」
「そうか、わかった。じゃあ、家に連れて行ってくれ」
「は? ……話を聞いていたか?」
「ああ、これは家にあるんだろう? 見せてほしい」
「いや、待て。そもそも私は君の名前を聞いていないし……」
「白石ウタハだ」
「ああ、そういう話ではなく……」
「どういう話だというんだ」
「ほら、家には同居人が居てだな」
ピコン!
『小鳥遊ホシノに接触します。家には居ません』
「……ちょうど居なくなったが、それでもだな」
「なら良いじゃないか。それとも、君はまさか人を轢くだけ轢いて、なんの対価も無しに逃げる気かい?」
「仕方ないな。ほら、フリージャーに乗れ。アクセルを踏むからな」
俺の背中にしっかりとひっつく白石の豊満な装甲が、俺の運転を妨害してくる。やめてくれ、俺は美少女に弱い。
「私は嵐山ハジメだ。エンジニア部とトレーニング部の兼部をしている」
「そうか、君もエンジニア部だったか。実は私もエンジニア部なんだ。君は何を作る気なんだい?」
「はぁ……そういう時は、まず自分から…………コンバットフレーム、ニクス型。もう少し歩行システムに注力して、装甲を薄くしたい」
「機動力を上げるのか。私はだな……。ふーむ、さまざまな物を作りたいと思っているが……宇宙戦艦、これは作りたいな!」
「ええい、動くな。事故っても知らんぞ」
「もう一度事故ってるからな」
「ハァ……着いたぞ」
バイクから降りて、家の鍵を開く。
「中にあるから、別に入っても良いが余計なものは見ないでくれよ。人には見せれないミサイルとかあるから」
「人には見せれないミサイル⁉︎ 見せてくれ!」
「ダメ。見せれないってんだろ」
家の資料室を突っ切って、白石を実験室に連れて行く。その間、白石の目を覆う。許してくれ、君に見せたらめんどくさいことになりそうなんだ。イプシロン自走レールガンとか辛い。
「うん、これだ。ヘビーコンバットフレーム・グラビス。機動力こそないが、火力と装甲はニクス型以上だ。操作性も悪くない」
グラビスに乗って、的にリボルバーカノンを放ったり、飛んだり跳ねたりしてみたりして、その性能を見せつける。
「主砲の火力はブラッカーE9と同じだ、それが二門。中々だと思わないか?」
「そうだね。整備はあれかい? パーツ丸ごと変えられるかい?」
「そうだな。細かい調整は必要ない」
ジャンプと背部スラスターを起動するのを繰り返す動きをする。
「これが最速の移動手段。バッタ機動だ。コンバットフレームは足がそこまで上がらないから、それよりジャンプで移動したほうが速い」
「なるほど……」
そうこう話していると、白石が突然変な事を言った。
「これ、エンジニア部にくれないかい?」
「それは無理だ。輸送機ノーブルにいざという時乗せれないと困る」
「だったらその輸送機ノーブルを……」
「八機しか作ってない」
「……わかった」
「改造はダメだが、見たり操縦したりするくらいなら構わない。改造はダメだがな。決してBluetoothだとか、自爆機構だとかをつけるんじゃないぞ」
「わかっているとも」
「なら、そうだな。ニクス型ができたら、グラビス型を貸与という形で渡してやる」
「……良いのかい?」
「良いと言っているのが聞こえないか?」
「ありがとう! ちなみに、リバースエンジニアリングは……」
「流石にダメだが⁉︎ なぜ行けると思った⁉︎」
「無理か」
「無理だよ!」
そうこう騒いでいると、ガチャリという音が部屋に響く。
「クックック、こっぴどく振られてしまいましたよ。……そちらの方は……ご友人ですか」
「そうだ。紹介するよ、こいつは黒服。私の同居人にしてパトロンだ」
「パトロン……大人……もしかしてパパk……」
「やめろやめろやめろやめろ! コンプラ! こいつと俺はそういう関係じゃないから! こいつとそういうのになったって考えたってだけで吐き気がする! 俺にそっちのケはない!」
「……ん?」
「なんだい?」
「いま、俺って言ったかい?」
「私だが?」
「絶対俺って言ったよね」
「私だが?」
「言いましたよ」
「黒服ゥ!」
「嘘はよくないでしょう」
「くっそ、黒服のくせに正論言いやがって」
「私は白石ウタハだ」
「改めまして、私は黒服です」
「私も名乗っておこう。嵐山ハジメだ」
「「知ってる」ますよ」
「ひどい」
「このバカのことは置いておいて、コンバットフレーム・グラビスについての話なんですが自爆機構だとかBluetoothはつけないでくださいね」
「君たち揃ってエンジニア部の事をなんだと思ってるんだい?」
「頭のいいバカ」
「私はとくになんとも。しかし、隣にいるのがこの人なので……あ、そうです。M4レイヴンの解析が終わりました」
「ああ、返してくれ。あと、利用はできそうか?」
「えーとですね。レイヴンシリーズには使えそうですが、それ以外にはさっぱり。オーキッドにも、ブレイザーにも使えそうにありません」
「そもそもブレイザーはEMCだろう」
「EMCの作り方はもっと分かりません」
「この設計図は?」
「サイズと形だけ作ったものです。あとキャタピラ。そこにいかに原子光線砲を仕込むか……」
「待ってくれ、EMC? なんの略だ?」
「Electromagnetic Material Collapserだ」
「──なんて?」
「Electromagnetic Material Collapser」
「よし、EMCでいい」
「電磁式の物体崩壊機です」
「ああ、なんとなくわかった。なんで作ろうと?」
「作りたいから」
「君もエンジニア部だ!」
「やっぱり頭のいいバカじゃないか!」
三人で、EMCの設計について話した。まだ全然未完成だが、どこかに一歩踏み出せたような気がする。
「もう夜も更けた。送っていく。乗れ」
「ありがとう。感謝するよ」
「君、作りたいのはニクスなんだろう? あのEMCは……?」
「作りたいものなんていくらあってもいいだろう。エピメテウスも作りたいし、N6も作りたい。スプライトフォールだって、プロテウスだって……」
「多いな……」
「ああ、やりたいことはいっぱいあるよ。けど、そんなものだ! 人間、強欲な位が丁度いい! そう思わないか?」
「その神経は尊敬したいな……」
「ひどいな。肯定してくれよ」
「いや、一度に何個もやって良く破綻しないなって」
「黒服がいるからな。そのおかげで俺はパワードスケルトンとコンバットフレームに集中できる」
「パワードスケルトンっていうのは?」
「パワードスーツだ」
「君たち、すっごく面白い研究してるじゃないか! 完成したら私にも見せてくれ」
「いいぞ」
「ここの角を右だ」
「わかった」
「今日は楽しかった。すまないな、無理を言ったりして」
「俺の方も楽しかった。EMCのガス抜きにもなったし」
「やっぱり俺って!」
「それじゃ」
フリージャーを反転させて、家に帰る。今度は事故らないようにしよう。今度は事故らないようにしよう。
夜のミレニアムを駆ける。白石の豊満な装甲に意識が妨害されることもなく、爆発音に気を取られることもなく、多くの建物を通り過ぎていく。
「ただいまー」
「おかえりなさい。完成しましたよ」
「ん、何が? N6?」
「それを作るのは反対なのですが……バレンランドとテンペストです」
「え、マジぃ⁉︎ 嬉しい! 超嬉しい! 名前をテンペスト山一に改名したいぐらい嬉しい!」
「どれだけ改名したいんですか……いえ、意味一ミリも変わってませんね⁉︎」
ありがてぇ! 嬉しすぎて早く投稿したくなっちまったよ……! 毎回投稿してる人達一体なに……。感想ください(乞食