「っと、これでもう買い出しは終わりだな。ったく、なんでミレニアムに無いんだか……まあ、エンジニア部の連中にこんなとこに来させるわけにはいかないが……」
ブラックマーケットの一角、スローターとターミガン、二つの銃を持った少女が非売品片手に道を歩く。もっとも、スローターは懐に納めていて外からは見えないのだが。
「……おいおい、そんなとこから見なくても、とっくにバレてるから安心しろ。災厄の狐」
「……そうでしたか、嵐山ハジメ」
「ウチのパトロン制作の生体レーダーを舐めないでもらおうか。なんと敵対生物か味方か見分けられる機能付きだ」
「そんなことは聞いていません」
「ああ、そう? ……暴れるにしても場所を変えないかい? 流石にマーケットガードの相手しながらお前をぶちのめすのはいくらか疲れる」
「……なるほど、舐められたのものですね。しかし、貴方の言うこともまた事実……では、どこに?」
「うーん……ああ、なら……」
D.U地区、子ウサギ公園。
「ここなら大丈夫だろう。いくつか地雷があったが」
「そうですね。では、始めましょうか」
ワカモの放つ真紅の災厄が、ハジメのバックパックを弾き飛ばす。ターミガンHA2がワカモの右腕に突き刺さり、返しの一撃となる。
「喰らいなさい」
ワカモから投げられた手榴弾をスローターE23DAで撃ち落とし、スローターをもう一度ワカモに放つ。
「明らかに……体積がおかしいでしょう! どうなっているのですか!」
「おいおい、野暮ってもんだよ。まあ、軽く三行で解説するとな。
無名の司祭の、
スーパーハイパー、
テクノロジーだ。
プライマーの技術を応用したテレポーションとかじゃないから安心しろ」
「ええい!」
ワカモの放つRPG-7のロケット弾をターミガンで弾き飛ばし、距離を詰めスローターを向けた。それを足で退かし、手榴弾を投げつける。
「複数種類の武器をそう扱うだなんて、EDF隊員の才能あるぜ。特殊遊撃班FOXとかどうだ?」
爆風をローリングで避け、スローターを放った。散弾のほとんどは外れたが、ごくわずかな数は命中し、少しの隙を作る。
その隙に弾かれたバックパックの下に向かい、中身のテルミット弾M3を投げつける。それはひらりと避けられ、公園の芝を燃やした。
「ふふふ、冗談もそこまでに」
「こういうのはお気に召さなかったか?」
「ええ、とても」
ターミガンでワカモを威嚇しながら後退し続ける。どこからか二人に飛んできたミサイルを躱し、ワカモが接近した。
「この距離であれば、ショットガンに持ち替えられはしませんね」
「——チッ! 味なマネを」
ワカモの蹴りを足で受け、頭突きをかます。取り外された銃剣の突き刺しを避けて、懐に納めていたサバイバルナイフで首筋を狙う。しかし、サバイバルナイフ程度でワカモを倒せるわけもなく、再びワカモがひらりと躱す。
「あー、ちっ! 避けないでくれるか?」
「貴方の攻撃をまともに喰らったら、こちらがやられてしまうでしょう?」
「負け知らずなのでな、黒星をつけたくないんだ」
「ならば、私が貴方の初めての負けを生み出しましょう」
ワカモの頭にターミガンを向け、その仮面を弾き飛ばす。
「あらあら……」
「大体、何で執拗に私を狙うかね。お前と私が関わったことなど、せいぜい片手で数えられる程度だろ?」
「ふふふ、やけに先生のことを気にしているじゃありませんか。つまり、恋敵——ということでしょう?」
「ぶち殺すぞテメェなんで俺g——」
レーダーに赤色の反応が映る。空を切る音と共に、狙撃銃の弾がハジメの腹に突き刺さる。
「——ぐっ!」
「……邪魔立てが入りましたか。しかし、貴方が恋敵でないということなら」
軽やかなステップで遠くに逃げるワカモを尻目に、レーダーの指す方向向けてターミガンHA2を何度も放つ。
「み、ミヤコちゃん! こっちに向けて撃ってきてるよ!」
「……EDF、何度も
「クヒヒ、どうする? ミサイルも避けられたし」
「教本によれば、こういう時は数の力を活かして……」
「そのような単純な手段で勝てる相手ではありません。そのような相手でしたらもうとっくにSRTはEDFを鎮圧できています」
元SRT RABBIT小隊の面々が、ターミガンを放つ嵐山ハジメから身を隠しながら、双眼鏡で眺める。
「……連邦生徒会非認可組織、要注意団体。『全地球防衛機構軍・EDF』。現在キヴォトス上では流通していない技術や兵器を使い紛争を鎮圧する組織、か」
「ええ。たとえ諍いを鎮圧していても、適切な手続きを踏まず、市民を空爆に巻き込み、その力のみで支配する。そのような悪を許すことはできません」
サキが26式機関銃の手入れを終え立ち上がり、ミヤコが31式短機関銃の弾を装填する。
「RABBIT小隊。戦闘を開始します。RABBIT2はポイントマンとして前方に、RABBIT3はオペレートを、RABBIT4は狙撃で援護してください」
「……なるほど、すっかり忘れていた。ここはRABBIT小隊がキャンプ地としていたな……」
「私たちのことを知って……」
「RABBIT1、気にすることじゃない。相手はEDFだ。どんな方法で情報を入手しているか知れたことじゃない」
「…………普通に新聞だぞ?」
ターミガンをスローターに持ち替えて、そのショットガンをミヤコに向けて構える。
「警告しよう。君たちが銃を向けている相手は君達のセンパイ、FOX小隊が束となって抑えた存在である狐坂ワカモと互角に張り合える——一度は一対多、私が一側で撃退に追い込んだことさえある——存在だ。あと今日オフだから早くエンジニア部行きたい」
「では、こちらも警告です。手早く銃を下ろし、投降してください」
「……残念だ」
散弾がミヤコに向けて放たれる。その大多数はアーマーに弾かれるが、衝撃は吸収しきれず、大きく怯む。サキがその隙をカバーしようとするが、テルミット弾を投げつけられ、炎上した。
「私の敵は君達ではない。正義も、悪も、所詮は共通観念という幻想の上のみで成り立つ代物であり、そう振り回していい物ではない」
「ですが、貴方が何の許可も得ず力を振り回していることもまた事実」
「その言葉、そっくりそのままお返ししよう。SRTの解散によって君達は何者でも無くなった。連邦生徒会長の私兵でもなく、
ミヤコの短機関銃がハジメを狙い火を吹くが、ローリングによって避けられる。サキが手榴弾を投げつけるが、ターミガンの銃身によって弾き飛ばされた。
「他者に資格を求めるなら、まず自らが持つべきだろう」
「RABBIT4!」
狙撃銃の弾がハジメに向かって飛んでいくが、つい先とは違い、アッサリ躱される。返しにスナイパーライフルを連射するが、それはミユには届かない。
「——射程外だったか。RABBIT1、狙撃手に命令する時は無線を使うべきだ。相手にタイミングがバレていれば、何の妨害にもならない。特に、狙撃手の位置がバレている時はな」
残ったターミガンの弾をサキの頭蓋に向けて何度も放つ。
「RABBIT4、と言ったな。いい腕をしている。ブルージャケットに欲しいくらいだ」
「ミユは渡しません」
「……そういう話をしているのではなくてな。単純に褒めているんだ。さすが
ミヤコがハジメに接近して、肘打ちを撃とうとする。その肘打ちをスローターの銃身で受け止めて、テルミット弾をミヤコにぶつけ、ローリングで距離を取った。
「……なあ、RABBIT1」
「なんですか? RABBIT2」
「……あいつ、地面を転がりすぎじゃないか?」
「そういう戦い方なのは対策会議で話されていたはずですが」
「それにしても、あんな転がり続けるとは思わないだろ」
「陸戦兵から受け継がれるEDF伝統のローリングだ。ノリでやったとしても大概の攻撃を避けれるからオススメだぞ」
「近——」
ハジメの銃床がサキの鉄帽に打撃を加える。怯んだ隙に今度は散弾を打ち込む。
「鉄帽越しでもなかなかの威力だろう?」
「ぐっ……」
ミヤコの短機関銃による反撃から離れるため、サキを解放し、回れ右で移動しようとしたところに、ミユからの狙撃による支援がそれを妨害する。
「やはり中々凄まじい腕前をしている……が、所詮は対人ライフル。ライサンダーには遠く及ばんさ」
「……これがEDF……」
「何度もミユの弾丸に直撃しているのに……」
「普通に痛いぞ」
ミヤコの投げたグレネードをスローターで吹き飛ばし、クレイモアをターミガンで誤作動させる。
「インパルス程度で私の動きが止められると?」
「クレイモアですよ?」
「……EDFの似た形の兵器の名前はインパルスだ」
「知りませんが」
「RABBIT1! 上だ! 気をつけろ!」
サキの怒号によって後ろに大きく飛び退き、上から降ってきたテルミット弾を回避する。
「すみません、RABBIT2」
「おうおう、若い子同士の協力とか、見せられるとお姉さん感動しちゃうよ……」
その口先だけのセリフとは裏腹に、ターミガンをミヤコの頭に向けて何度も発射する。全弾回避とはいかないがSRT、弾を何回も避け、攻撃の態勢を作り上げる。
「……エウロスは到着しないか。バルチャーさえあれば簡単に処理が……」
「くひひ、全弾発射〜!」
宙に浮かぶSRT所有のヘリコプターが、ハジメに向けて何発も、何十発もミサイルを発射する。爆炎がハジメの体を覆い隠し、ナパームが芝生を燃やし続ける。
「あちあちあちあちあちあちあちちちちちち!」
そして、その中から尻に火がついた*1少女が現れる。そしてその勢いのままにミヤコに飛びかかり、スローターを何発も頭に打ち込む。
再度ミサイルが発射されそうになっているのを見つけて、回れ右して逃げ出して、体を反転させて何発もターミガンをヘリに発射し撃墜する。
「なっ……」
「熱い! 熱い!」
まだ体が燃えているハジメめがけてミユの弾丸が放たれるが、小刻みに体を動かしているため空を切り、大型グレネードをマッハで投げられる剛腕によって投げられた瓦礫によって失神する。
「……んんっ、これで君たちに勝ち目はもうない。帰らせてくれ」
「RABBIT1……」
「悔しいですが……撤退を許すしかないでしょう」
「……ハジメ先輩、なんでズボンが黒焦げなんですか?」
「
「それは比喩的表現で……」
「文字通り、
次回!
vol2突入!
章の名前がまだ決まらないけど──!