「……改めて、全地球防衛機構軍EDF所属。ウイングダイバーの嵐山ハジメだ」
"……この前はエアレイダーって言ってなかった?"
「言っただろう。こと歩兵の行うことにおいて、私にできない事はほとんどないと。
しきりにレーダーを確認しながら、先生に語りかける。その装備は素人目には万全とは言い難いもので、先生は心配そうな目でハジメを見つめる。
「……言っておくが、降下翼兵の布量の少なさは仕方ないことだからな。少しでも重量を少なくするために弾薬すら持ってないんだから」
"けど……"
「ええい、うるさい。何か言いたいなら私より強くなってから物を言え……敵、まだ来るぞ」
レーダーに大量の赤い点が現れる。前を見ると、大量の機械兵が蛆のように湧いていた。
「……先生、才羽姉、才羽妹、構えろ」
「ウイングダイバーは他兵科との団体行動で動く兵科ではない。私が囮となるから、その間に全員殺せ。いいな?」
"え?"
「そっち側の指揮は君に任せたぞ、先生。——フライト、開始」
フライトユニットから光が噴き出る。無論、故障だとか、オーバーヒートだとかではない。飛び立ったのである、ウイングダイバーの最大の特徴であるソレは他の兵科を寄せ付けぬ速度と機動力を持ち、空中からの一方的な攻撃を可能とする。
"モモイ! 右から来るよ!"
「わかったよ!」
"ミドリもそっち側を抑えて!"
「わかりました」
多くの機械兵はハジメを狙おうとするが、ブーストや上昇を活かした立体機動によって、攻撃を当てることができず、ほとんどの弾がただ空中を切る。
「楽勝だな!(定型文) クリアできそうだ!(定型文) イヒヒ(定型文)」
サンダーボウガンは機械兵にぶつかり、また反射してぶつかるを繰り返し、多くの機械兵に損傷を与えながら、建物と建物の間を飛び回る。
「オイオイオイオイオイ、ちょっとエイム弱すぎるんじゃあないの?」
「ハジメ先輩が煽ってるよ!」
「少しぐらい救援を……」
「私が八割くらい誘導してるだろ!」
軽口を叩きながら機械兵に電撃を加える。一発だけでは、機械兵たちは倒れないが、二発目を打ち込んだ瞬間、バッタバッタと倒れていく。
「このクソブリキどもが、私に本気で勝つ気があるなら怪生物と言わずともキュクロプス——超大型アンドロイドくらいは持ってくるもんなんじゃないの? それも三体くらい」
ブーストを絡めて宙を飛び回る。フライトユニットがオーバーヒートする前にビルに着地してエネルギーをリチャージし、その間に光球を適当に投げる。
「EXグレイプニールだ! 頭上に気をつけろ!」
"モモイ、ミドリ! 当たる前に避けて!"
「そんな無茶苦茶な!」
ハジメの思考に同調し、光の槍がオートマタを貫いていく。一発で仕留められるような火力ではないし、一発でやられるような装甲はしていないが、それでも、怯ませることはできる。
「いけっ! グレイプニール!」
モモイやミドリを狙う敵を優先的に槍で怯ませ、その隙にモモイやミドリが武器を掃射する。
「アイス奢らなきゃいけなくなったじゃん! あなたたちのせいだよー!」
「恨みはないけど、覚悟して」
怯んだオートマタ達に銃弾が突き刺さる。光輪の影響か、はたまたサンダーボウガンで削りを入れていた影響か、銃弾の一発で次々と倒れていく。
「才羽姉、殲滅力が低いぞ」
「EDFと一緒にしないでよ!」
「こんなことならプラズマ・グレートキャノンを持ってくるんだったな……」
「あのバカみたいな兵器⁉︎」
「やめろよ。バカみたいな兵器のことプラズマ・グレートキャノンって呼ぶの」
"プラズマ・グレートキャノン?"
「EDFの有する兵器の内の一つだ。絶望的なEN効率の代わりに、圧倒的な破壊力、爆破範囲、なかなかの弾速を誇っている」
「過去の話にはなりますが、一射でヘルメット団を壊滅させたという噂も……」
「それは嘘だ。本当に嘘だ。一射でヘルメット団を壊滅させたモノなんて……テンペストぐらいしかない」
雑談をしながら、相変わらず囮となってサンダーボウガンを上から放つ。上に気を取られたオートマタ達はら背後から飛んでくる弾丸に気が付かず、わずか数発で倒れ伏す。
「強めの
フライトユニットを停止し、自由落下しながらドラグーンランスをチャージする。降下しながらとは言え、数も減っているので周囲のオートマタの狙いきれず、弾を外してしまう。
「——その心臓、貰い受ける!」
ドラグーンランスから発射される光の槍がオートマタの頭に突き刺さる。ランスの直撃を喰らったオートマタが無事でいられるわけもなく、頭部と胴体とを繋ぐ動線が見事に破断され、二度と動かなくなってしまった。
「お姉ちゃん、ハジメ先輩間違いなく『
「言ってた言ってた」
「貫いたの胸じゃなくて頭じゃない?」
「……さあ?」
「駄弁ってる場合じゃないぞ、増援が来る!」
"え⁉︎"
「……たったの十二台だが」
ドラグーンランスが二体をまとめて突き刺し、グレイプニールが怯ませ、サンダーボウガンが一人ずつ処理した。
戦いが終わったことを確認すると、ずっと怪訝な顔をしていた先生が、ハジメに向かって問いかける。
"ハジメはなんでここに来たの?"
「任務——まあ、そういう話じゃないよな。パトロンから廃墟の地図制作を頼まれていてな。それだけならドローンでも良かったんだが——というか一度はそうしたんだが——敵性物体を大量に確認してな。訓練も兼ねて探索に来た、というわけだ」
モモイは目を丸く見開いて、口を大きく開け、まるでお手本かのような驚きの表情を見せる。
「え⁉︎ ハジメ先輩、まだ強くなるつもりなの⁉︎」
「そうだが。EDFたるもの、軍事訓練は欠かせないからな」
"ハジメってそんな強いの?"
「ああ、強いぞ。『スランピア』に潜り込んで、生きて帰って来れるくらいには強い」
"……どこ?"
「D.U.郊外の古びた遊園地だな」
「へえ、知りませんでした。今度お姉ちゃんと……」
「今は廃墟だが」
「不法侵入者じゃん!」
「……その、『スランピア』というのはよくわかりませんでしたが、ハジメ先輩はミレニアムの中では最強と呼ばれるまでに強いです。もっとも、C&Cの人と
「美甘な。いくら近距離戦とはいえ私とやり合えるとは……遠距離戦なら私の方が有利だがな!」
ハジメがそう言い終わると、モモイがハジメの脇をつつきながら、話しかける。
「前は酷い目にあったよ〜」
「……前? いつだ?」
「ほら、あの……二人してゲーム開発部を狙ってきた時の!」
「ああ、あれか。あれは君たちが悪いだろう。騒ぎを起こしたなら鎮圧せねばならん」
「にしたってあんなミサイル撃ってくることないじゃーん!」
「むしろ、ブラッドストームで済んで良かったと思え。あの時の私は、ガリア重キャノン砲も持っていたんだからな」
『廃墟』の中を堂々と歩く一行。つい先の戦闘でほとんどの敵を釣ってしまったのだろうか、ハジメ達を襲おうと動くオートマタはほとんど現れず、大きな建物前に着く。
「たしか……ここの、はず」
「最後に『G.bible』が起動した座標か?」
「うん」
「なるほど……。閉所戦闘はウイングダイバーの……というか、電撃武器の華だ。もちろん君たちにも援護はしてもらうが、存分に頼ってくれ」
「最初っから頼りにしてるよ」
建物の中に入る。すると、レーダーに赤い点が映り始めた。
「なるほど、外とは違って、中にはまだ全然敵がいる。下手をこかないよう、気をつけろよ」
"わかったよ"
「了解!」
曲がり角に差し当たると、ちょうど敵と出くわす。
「パンを咥えてって流れじゃあなかっただろう!」
ドラグーンランスを構え、半ば程度のチャージで心臓を突き刺す。
「存在がバレた! まだ来るぞ!」
サンダーボウガンを狭い通路に向かって乱射する。多少雑な狙いだろうと、電撃は壁で反射し、複数の機械兵の足を止める。
"モモイとミドリはハジメと横並びになって食い止めて!"
「ファランクス、ということか……せっかくだし、ドラグーンランスじゃなくてファランクスを持ってくれば良かったな」
"どれだけ武器持ってるの……"
「まあ、少なくとも両手両足では数えられんよ」
電撃が幾度も跳ね返り、モモイやミドリに当たる。
「あだっ!」
「痛っ!」
「……そうか。サンダーボウガンは壁に跳ね返るモノな。耐えろ」
「無茶な!」
「別に不可能というわけでもあるまい。何せ、君の頭にはヘイローがついているのだからな」
「先生に当たったらどうするのさ!」
「『シッテムの箱』があるのだから、そこまで気にすることでも……」
「なんて言いましたか?」
「気にすることでもない、と言った」
「その前に何か——」
「気のせいだ。いいな?」
「わ、わかった」
「ならいい」
閉所戦闘はウイングダイバーの華、という発言に違わず、何一つ近づけることなく押し込める。サンダーボウガンをチャージして、放つ。チャージして、放つ。この繰り返しではあるが、さすがの技術、ほとんどの敵はなされるがままにやられて行った。
「おほん、予定外の戦闘が挟まってしまったが、ここの近くに……」
「うん、あるはず……」
一行が探索を続けていると、謎の少し広い部屋に繋がる。
「おっと、多分ここに何かが……」
『身元を確認します』
「え?」
『才羽モモイ、資格がありません』
「なに?」
『才羽ミドリ、資格がありません』
「ブリキ風情が、お前は人の資格云々を確認できる立場なのかよ……」
『……身元不明』
「うん?」
"え?"
『『先生』、資格が確認できました。同行の生徒二人にも資格を与えます。なお、身元不明の生徒には与えられません』
「ハブられたな。よくわからんが不愉快だ」
先生達の立つところの床がパカリと開く。反射でフライトユニットを起動するが、ハジメの立つところの床は別に開いていない。
「連絡するか」
見捨てて、探索を続行する旨をモモトークに送る。
「まあ、どうせアリスと出会うだけだろう。頭にMがつかないといいがな」
【嵐山ハジメ】
当小説の主人公。モモイやミドリと違って通らせてもらえなかった。得意な武器はアサルトライフルとスナイパーライフル(特にライサンダー)。
【美甘ネル】
今回の話には登場せず。近接戦なら武器の関係でハジメより強い。遠距離戦では武器の関係で基本ハジメの方が強い。
【頭にMがついたアリス】
本来、人名としてのアリスのスペルは"Alice"。つまり、そういうことである。
活動報告に書かせていただきましたが、EDF6.2の情報は、本編には取り込みません。
あと、感想ください。次回は本当に来週の投稿になります。