先生と才羽姉妹と別れてから、つい先までとは違い、空を飛び回って地図を作る。歩兵のやることは大抵できるなどと威勢を張ってはいるが、当然専門外のこともある。交通誘導や車両整備さえできることではあるが、正確な距離、方角の測定、緯度経度の把握など──要点をかいつまむと、地図は作れない。
それなのにどのように作るのかというと、黒服特製の補助アイテムだ。腰につけた装飾から超音波を四方八方に撒き散らし、そして音波が帰ってきた時間を計測し、その時間から距離や構造を把握する──蝙蝠やイルカなどが行う、エコーロケーションの事である。プラズマコアにはその分負担がかかるが、それでも6のダイバー程度に落ち着く。
「見たことない敵やってくる♪ だーけど本部は何もしーない〜♪ 援護がなくても戦うぞ♪ 死んだらごめんな先に行く♪」
近くのビルの上によじ登り、そこからサンダーボウガンを何発も放った。オートマタに電撃が直撃し、電撃はそこから反射して、別なオートマタの横っ面を叩く。オートマタ達ももちろん黙っているばかりではなく、アサルトライフルを向ける。
——まあ、ダイバーの機動力にかかればこの程度弾幕、クラーケンのアレと比べれば屁でもない。
ブーストでビルの上を反復横跳びし、上から攻撃する。アサルトライフル程度の射撃はキヴォトス最強のダイバーにかかればたいしたものではないが、ショットガンの射撃は少しばかり堪える。
「鳥撃ちするにしても……パンドガンじゃないだけまだマシかねぇ!」
コロニストやコスモノーツのソレと比べると、弱く感じてしまうが、それで言うのなら自分自身ストーム1ほど強くない。それを元に考えると、まあ、圧倒的に強いくらいで、月とスッポンほどの差はないだろう。
「はっはっはっ、見たかー!」
それに同調するロボソラス君などはいないもので、言葉は無惨に散る。
「……『廃墟』広くね?」
ここまで来て一つの問題に当たるもので、ため息を漏らす。何度か分割して仕事をするのは面倒臭いが、『広さ』は『辛さ』とでも言おうか、仕事を分割するのは面倒臭いがこの広さを一日で片付けるのも面倒くさいと言おうか——まあ、とにかくめんどっちいのだ。
「誰だよー。無人ドローンじゃなくて人間にやらせようなんて適当こいた阿呆ー。俺だよー。アホだよー」
一方的に攻撃を食らわせながら、少しずつ処理していく。EXグレイプニールのリチャージが終わったので、光球を空に投げた。空中で分裂した光の槍が、オートマタ達に向かって飛んでいく。
「蜂の巣にしたるわ!」
一帯の掃除が終わり、また『廃墟』の中を鳥のように飛び回る。ここまで多くの敵と戦うのならば、サンダーボウガンでなく、プラズマ・キャノンにしたらよかった、と後悔しながらも、空を飛び回って先に進む。
街の雰囲気が変わる。ビル街だったところが、西洋風の朽ちた建築へと。しかし、橋などはしっかり鋼鉄とコンクリートでできた、そんな街中に変貌した。
「こんなのあったか……? あー、いや、あった気も……」
もうここ数年『ブルーアーカイブ』をプレイしておらず、それに後発のプレイヤー……先生のため、プレイしていた時間もそこまで長くない。そうなると、覚えてないこともそれなりには出てくる——というか、本筋以外ほとんど覚えていない。
「……まあ、場所が変わったってことは、敵もまだまだいるっつーことで………」
レーダーに一瞬赤い点が浮かび上がるが、すぐに消え去る。赤い点が、ではない。レーダーの機能が
「……レーダーの電子防御を貫通する?」
何かに気づいて、撤退しようと飛行を始めたが、何事においても手遅れというものはあるもので。
純白の躯体が空を舞い、侵入者を無慈悲に排除する。
頭上には光輪を有し、その神秘を誇示しながら迫る。
鋼鉄の頭蓋にいくつもの砲台を有した、第一の
「預言者……! ドラグーンランスで戦う相手じゃないぞ!」
独立作動装備は現在使用不可。エコーロケーション装置の電源を切り、少しでもプラズマコアの負荷を小さくする。頭の中で必死に
機関砲に蜂の巣にされ、
「……時間稼ぎ……だな」
ならば、逃げるより戦い、救難信号を受け取ったものが助けに来るのを待つ。
そう決めたのなら、もう迷っては居られない。自らに放たれた弾丸の雨霰をブーストで回避し、エコーロケーション装置を投げつける。少しでも軽く、少しでも速く、少しでも強く。
再び放たれた機関砲の射撃をブーストで避け、サンダーボウガンを放つ。つい先まで自らが立っていたところの地面が蜂の巣という表現さえ生ぬるいほどの状態になっているのを見て、顔を青ざめさせた。
ミサイルが放たれた。フライトユニットを全速力で動かして、上空に飛び上がって避ける。本来戦闘で跳ぶというのは、自らの動きを容易に予測させる、愚かな行為なのだが、それさえも
反対側の手でサンダーボウガンを持ち、チャージして撃った。本来両手で撃つべき物を片手で撃ったのだから、
エネルギー対パワーという意味での燃費は良くとも、一撃に使うエネルギーがあまりにも多いためドラグーンランスは撃てず、相手の攻撃を避けながら少しずつ電撃を放っていくしかない。
つい先避けたミサイルは未だ生きている。赤い息を吐きながら、その命を懸けて——あるいは賭けて、
であればと、ドラグーンランスのトリガーを指で弾く。EN効率を無視した、ただ今を凌ぐためだけのあまりに非効率な攻撃。本来であれば、
なんとかミサイルは破壊できたが、その反動は異様に強く、大きな隙を作り出す。
「ブーストッ……!」
着地寸前にブーストを行おうとするが、一歩遅れ足がもつれる。ほとんどの生徒相手なら、ほとんどの兵士相手なら隙にもならないが、相手は冷酷無比な
「ガッ………」
空気が漏れる。腹から叩きつけられた衝撃は並大抵の物ではなく、戦車に撥ねられてもビクともしなかった体が、悲鳴を上げ始める。
横隔膜が強打された。目も衝撃で眩む。しかし、
それはケテルが想像よりも
「ウォエ……」
再び鋼鉄の脚を振り下ろそうと、脚を持ち上げた隙を見計らって、飛び上がり脱出する。まだ痛みの引かない腹を押さえて、ケテルから少しでも離れる。
太腿に巻き付けたホルダーからアンプルを取り出し、手首の静脈に打ち込んだ。アドレナリンなどの神経伝達物質を合成した特殊な薬剤で、例え死ぬ前でも打ち込めば、どんな重症でも再び立ち上がらせる。
「はぁ……ふーっ……」
自らの太腿を強く叩いて、気を引き締める。
目の前の敵を見据え、ドラグーンランスを構える。
ケテルの機関砲の掃射から、第二ラウンドとも呼ぶべきものが始まる。
まずはブーストで避ける。青白い光が背部のユニットから放出され、人一人加速させるだけの……正確には、それには少し過剰なエネルギーを消費する。その勢いのままカーブミラーを捥ぎ取り、後ろに投げつけた。
無論決定打にはなりはしないが、相手の
再びミサイルが発射された。地面ギリギリまで降下し、背面にブーストする。ほとんどのミサイルが地面に当たって爆発し、残った僅かも二回目のブーストによって壁に激突する。
「ドラグーンランス……行けっ!」
刺突、単純で原始的なそれを、高度科学の象徴なるパルスで放つ。預言者の右前足に光の槍が突き刺さった。大きな衝撃を与えた。それこそ、普通の戦車であれば転倒まで持ち込めたかもしれないが、多脚の優位性とはそこにあり。地に接続されたような巨躯はビクともせずに、機関砲を撃ち続ける。
再びドラグーンランスのチャージを始めた。キュルルルルルと鳴くドラグーンランスを抑え、照準を合わせる。
ケテルから機関砲が放たれる。前に突っ込んで距離を縮め、ケテルの頭上に乗り、その頭を掴む。
「この距離なら、ミサイルは撃てないな!」
「EDFッッ! EDFッッ‼︎」
雄叫びと共に放たれたドラグーンランスは、至近距離のため確実に着弾した。ケテルに表情が見えたのなら、それは苦悶に呻いていただろう。
また、二人は睨み合う。かたや時代錯誤な槍を構えて、かたや時代に沿った機関砲を構えて。
それと、加えて。
「お助けに参りました」
それは美しい鳥の囀りのようで、無感情な機械のような凛と通った声で。
「飛鳥馬——トキ」
『廃墟』にもう一人として現れた
C&Cの隠されたコールサイン。
少女の名は飛鳥馬トキ。
コールサイン00に、ブルリーダーに匹敵する、無機質な彼女がやってきた。
【アンプル】
矛と盾のガードマンが持ってるアレのノリ。
【説明】
三話ずっと同じ武器だから書くことがない。
感想ください。欠乏症で死にます。