「飛鳥馬……トキ……」
「やはりご存知でしたか」
自らの隣に降り立った少女を一瞥し、再び目の前に聳える鋼の塊を見据える。
「アレは何ですか?」
「デカグラマトン第一の預言者、ケテルだ」
「……先輩がそこまで重症になると考えると、なかなかの手合ですね。撤退ですか? 撃退ですか?」
「どっちでもいい。そっちにも事情があるだろ?」
ハジメがそう返すと、隣の少女は少しばかり逡巡し、目を預言者の方に向ける。
「……なら、少しだけ戦ってみましょう。私も——リオ様もデータを欲しているので」
トキが、服の余分を外す。手首までを覆う可憐な袖を、ふくらはぎまでを隠す優美な裾を大地に落とす。
「……装備の軽量化か?」
「それもありますが、一番はリミッターカットです」
「なるほど。悪いが少し前線を張ってくれないか?」
「元よりそのつもりです」
通信機を取り出す。それに答える声は、ハジメにとってはお馴染みの声で。トキにとっては
『何ですか? ああ、帰るんですね?』
「追加物資だ。
『……何があったんですか?』
「預言者と接触した」
『データはくださいね』
通信を閉じ、ドラグーンランスにエネルギーを回し始める。前でトキがミサイルを撃ち落とし、機関砲の掃射をステップで避けた。
「飛鳥馬、右に跳べ!」
「わかりました」
トキが動くのを信じて、少し早めにドラグーンランスを放つ。
「確かに、中々の機械ですね」
「あの脚に踏まれると死にかけたから気をつけろよ」
「わかっております」
ケテルの射撃を避けながら、アサルトライフルを撃ちながら、ハジメの忠言に返答する。隙を見てドラグーンランスを放ち、ケテルを一瞬怯ませる。
ハジメに向かって飛ぶミサイルをトキが墜とし、トキに向かってケテルがその鋼鉄の体を振るおうとした時、ハジメが怯ませた。
「もっとすごい火力の武器は無いんですか?」
「いま要請した。待てば来る」
「
「パワードスケルトンだ」
少し落胆したような溜め息をつくトキを少し睨みつけ、しかし直ぐにケテルの方を向き直し、次の動きを警戒する。
「アレはヤバいぞ!」
「見たらわかります」
一度、ケテルが塔から橋に飛び降り、コンクリートをその脚で削り、歪め、その勢いのままもう一度塔に
「すみません」
「コレで借りは返した。気に病む暇があるなら鉛玉を打て」
ケテルがその勢いのまま反対側の塔にワイヤーを射出し、再び竜巻のように回転し始める。つい先より速度を増して、エネルギーを増して。
「速さは重さ、重さは力だ! ついさっきよりヤバいぞ!」
「忠告、感謝します」
ケテルが一度体を下に落とし、大きく空中に飛び上がる。
「パイルドライバーだ!」
再びトキを抱え上げ、ケテルの動きを見極める。ケテルがハジメの上空に移動し、加速しながら落下する。
「悪いな、こっちの方が安全だったモンで」
「……別に構いません」
「乙女チックな願望があるなら言ってもらって構わないが……」
「そんなもの、戦闘には関係ありません……私も『武装』を要請しますね」
トキを放り投げ、今度は自らが前線を張る。機関砲を二回のブーストで避け、ミサイルをサンダーボウガンで撃墜した。EXグレイプニールを宙に投げ、光の槍でミサイルを撃ち落とし、ケテルを穿つ。
「リオ様、聞こえますか?」
『……ええ。ハジメの救出に成功した?』
「いえ、現在預言者と交戦中です」
『……なるほど、データはいただくけれど。貴女がそんな事だけで連絡してくるとは思えないわ』
「『アビ・エシュフ』の使用許可を」
『……了解したわ』
「先輩、『武装』の許可が降りました」
「おおぉぉぉーーーーーっ!(定型文)」
雄叫びを上げながら、グレイプニールを操作する。サイオニックリンクで操作しながら、フライトユニットの操作、エネルギー管理を行なっているため、動きにキレは無いがその分、堅実な動きをしている。
そして、『廃墟』の隙間を縫うようにコンテナを積んだ輸送機が飛び回る。
『コンテナ、切り離せ』
灰色のコンテナを投下する。地面にぶつかるとコンテナが開き、緑色の装甲が晒される。
「少し任せよう。三十秒で着替える」
「パーフェクトメイドにお任せください」
ケテルをトキが相手している間に、パワードスケルトンを装着する。速着替えとも言えるそれを行使して、アーマーを装備した。
「こちらフェンサー。突入する」
スラスターで接近しながらブースターで飛び、右腕についたスパインドライバーを射出する。刃のついたハンマーはケテルに向かって直進し、怯ませた。
「なるはど、
「少しばかり大味で、
ケテルの機関砲を高機動で避けながら、デクスター散弾機関砲でミサイルを撃ち落とす。撃ち落とされたミサイルは爆ぜて、消えた。
「では、私の『武装』もあるので、少し待ってくださいね」
トキが自らの服を脱ぎ捨てる。僅かな丈が残ったスカート、袖のないメイド服、その下に隠された下着さえも。そして黒色のアンダースーツのみが露わとなる。
『廃墟』の空を青白い流星が駆ける。要塞都市エリドゥから射出されたそれはトキの位置を探し出すまで空中で待機し、地面に激突した。
着替える訳ではなく上から装着するため、パワードスケルトンより素早く装着し終わる。
ケテルの機関砲を避け、スパインドライバーを放つ。その動きは安定していて、大した打撃は食らわないが、その分大きな衝撃も与えられず、チマチマと攻撃していくことしかできない。
そうしているところに、無数の弾幕がぶちまけられる。
「装着が終わりました。パワードスーツ、『アビ・エシュフ』です」
「お前も
「残念でしたね。私は二刀ではありません、四刀です。先輩の二倍強いです」
肩部に懸架していた砲門を持ち上げ、ケテルに向けた。光が収束し放たれる。
「ビーム砲か……! 浪漫じゃないか!」
「ふふ、流石リオ様でしょう?」
「こんな面白いモン作ってんなら一口噛ませてもらいたいモンだったな……」
散弾砲が、機関砲がケテルに向けて何度も放たれる。ケテルが放った反撃のミサイルのほとんどを撃ち落とす。
「先輩、コレを落とすの苦手でしょう?」
「舐められたモンだな。ま、事実だが」
「その分火力は任せました。EDFの各種兵装は火力が馬鹿げているのを知っていますので」
フェンサーが装備を入れ替えた。機関砲を盾にスパインドライバーを散弾砲に。盾を構えて、放つ。
「……キャノンショットですか」
「調月からどこまで聞いてる?」
「混み合った話は、四人で致しましょうか」
「……調月と、私と、君と……誰だ?」
「かわいそうではありませんか」
「ああ、明星か……」
ミサイルを全てトキのアビ・エシュフが撃ち落とし、機関砲をそれぞれ避けるか受けるかする。
「キャノンショット、もう一発いくぞ。死にたくなかったら避けな」
火砲から幾つもの弾が放たれる。ケテルが危険を察知して逃げようとするが、一歩遅れ大ダメージを受ける。
「追撃します」
トキが機関砲をぶっ放して、追撃する。
ケテルが再起動して、ワイヤーを橋に放つ。
「地面を擦って加速するぞ!」
十分な機動力を持つトキは回避できるが、盾とキャノンショットという重武装を持つハジメは避けきれない。
自らが突進を回避できないことを察し、盾を構える。——到底、ディフレクション・シールド程度でなんとかなる攻撃でないことを分かりながら。
「では、今度はこちらが」
ハジメの体がグイと持ち上げられる。
「軽いですね。しっかり食べてますか?」
「どっちもパワードスーツ着た状態で比較するんじゃない」
お姫様抱っこの体勢でケーブルを滑り、ケテルの突進を避ける。
「ここからキャノンショットを放つぞ」
アビ・エシュフの性能を信じて、そこからキャノンショットをケテル目掛けて放つ。散弾を喰らってはタダではいられないようで、大きく怯んだ。しかしそれも直ぐに終わり、ミサイルを大量に放つ。
「ミサイルが来ました。貴女を抱えながらだと処理できないので……」
「わかってる!」
装備を入れ替えようとしたが、アビエシュフの腕に引っかかってできなかったのでキャノンショットでなんとか破壊する。
「しがみついてください」
トキが片手のみでハジメを支え、もう片手の機関砲で攻撃する。飛んでくる機関砲をハジメが盾で防ぎ、ほとんどの弾丸は無力に地面へと落ちた。
「ここで終わらせよう。飛鳥馬、レーザー砲を用意しろ」
「分かりました」
ケーブルから飛んで、ケテルの上に飛び移る。
「キャノンショットの力、見せてやるぜぇ!」
「ファイアー!」
二人の攻撃がケテルに突き刺さる。散弾もビームも、どちらも強力な攻撃であり、その二つを同時に食らったケテルは火を噴きながら撤退した。
「もう少し探索してから帰るが……」
「リオ様から連れて帰るように言われているので、同行します」
トキがアビ・エシュフを脱いで、ソレを帰還させる。
「あ、もう使わないのか」
「ええ、バッテリーの問題がありますから」
「まあ、それもそうだな」
トキがつい先程アビ・エシュフが到着した場所について、あたりを探す。
「どうした?」
「メイド服を探しているのですが……」
近くの瓦礫をひっくり返すと、そこから白い服の切れっ端が現れた。それをつまんで、おそるおそるトキに見せる。
「……もしかして……」
「……恐らく、私の物ですね」
「……か、替えの服とか持ってない?」
「持っていると思いますか?」
「持ってないと思います……!」
「大正解です。トキちゃんポイントを差し上げましょう」
【パワードスケルトン】
フェンサーの標準装備。実質アビ・エシュフ。
【アビ・エシュフ】
リオ会長制作の装備。実質パワードスケルトン。
【ケテル】
ヤバいやつ二人に倒されたデカいデプスクロウラー+プロールライダー。
感想ください。