ウイングダイバーの装備に戻して、エンジニア部室に窓から侵入する。無論、窓を割ったりなどはしない。基本窓のどこかが空いているので、そこから入るのだ。
ウイングダイバーの装備とは言ったが、持っている装備はつい先とは違く、レイピア、フェンリル、ルミナス・シールドの三つ。無論勿論もはや戦闘する気は無いが、キヴォトスではら戦闘が無闇矢鱈に起こるものなので、自衛はしておかなければならない。
まあ、とにかく。さっさとエンジニア部に帰って寝よう。体が痛い。
「アリス——いや、勇者よ。手にした力を今一度振るうといい。あそこに、EDF謹製の的があるから……」
ゲーム開発部が『廃墟』から連れ帰った少女、天童アリスが手にした
元々、(予算不足で計画が凍結した)宇宙戦艦の主砲となる予定だったモノであるため、一射放つのみでほとんどのキヴォトス人を動かなくさせる火力を持つが、その代わりとしてほとんどのキヴォトス人では使えない反動を持つ。
使えるものといえば、パワードスケルトンをつけた者と、コンバットフレーム————それとこの少女、天童アリスくらいなものである。
「魔力充填、100%! 天童アリス、行きます————!」
真白な砲身から放たれた、青色に光る弾丸が的に向かう。
「ただいまー。いや〜。ロクでもないブリキ野郎と出会してさ——は?」
——しかし、その的と弾丸の間に、傷ついた嵐山ハジメが現れた。
水面の様な結界が弾を吸い込み、弾丸は勢いなく地面に落ちる。
"…………"
「…………ハジメは魔王だよ」
「全くもってわからんがキレていいよな?」
「そうだよ。ハジメ先輩はどちらかと言うと
「
「うっそだぁ!」
"酷い傷だけど、平気?"
「よくあることだ。歓喜のミメシスと戦った時も、預言者と戦った時も、自然発生したユスティナと戦った時も、この程度の傷はつく。——まあ、ツバつけて寝たら治る、というやつだ」
そして、左手の人差し指を空中でクルクルしながら、天童アリスを見据える。
「で、そこなる少女は誰だ? 『主砲』を直で持っている、というところからまともな生命でないのはわかるが」
「…………そうなんですか?」
「私でさえスーパーノヴァは持てないんだぞ。それを持てるのはおかしいだろう」
"私でさえ……?"
「私はキヴォトスでも屈指の怪力だぞ。流石に七囚人の様にはいかないがな」
「否定はしないが、それを自分で言うのはどうなんだい?」
「シャーロック・ホームズとか読まないクチか? 『謙遜を美徳のひとつに数える一派に与しないんだ』……という奴だ。——————で?」
「はい、アリスはアリスです!」
「……ん。アリス、アリス…………生徒にそういうのいたか?」
「ハジメ先輩、全員覚えてるの?」
「そんなわけないだろう。ただ……」
「ただ?」
「流石にこういう類の化け物——訂正しよう、プリティーガールを見逃すわけがないな、と」
「そうか……」
「まあ、ここで気にしたところでどうしようもない。後で調べておこう」
「うげっ……ハジメ先輩にバレちゃうよ……」
"な、なんとかしておくよ……"
「アリス……と、言ったか。フルネームは?」
「天童アリスです!」
「なるほど。全地球防衛機構軍EDF隊員、親愛なる君たちの友人、嵐山ハジメだ。これからよろしく頼むぞ、天童」
「……なるほど! ハジメ先輩は戦士ですね!」
「ああ、その認識で構わない。騒ぎを起こしたら喧嘩両成敗するのが仕事だ。ゲーム開発部にいるからって、他の部活の襲撃したりしたら、容赦なく、慈悲なく、殴らせてもらうからな」
「わかりました! これから、よろしくお願いします!」
片手を掲げたアリスの手を反対側の手で叩き、頭をくしゃくしゃと撫でる。にこやかに笑うアリスにつられ、ハジメも口角を緩ませる。
「天童。私からもプレゼントをやろう」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「ああ。あと、この事は内緒だぞ。パトロンにバレるとケチつけられちまう」
ハジメはアリスを連れて、倉庫へと向かう。
「ふふっ、天童。私はコレ持てないから、コレを一度あちらに運んでくれ」
「わかりました」
倉庫から現れたアリスが、背丈以上の赤い剣を持って来た。
「ダイナモブレードM2。EDFの誇る歩兵用携行兵器だ。フェンサーの装備で、ジャンルは近接-打だな」
「……これを……?」
「ああ、光の剣と被ってるかもしれないが、剣だ」
「……ハジメ、光の剣と同時に持つには大きすぎないかい?」
「
「……なら問題ないか」
どこから持って来たのか、いつの間にか着ていたパワードスケルトンで似た形の剣を持ち上げる。そして思い切り地面に叩きつける。飛ぶ斬撃は的にぶつかり、叩き割る。
「天童、お前にも振れるはずだ」
「はい。——いきます!」
アリスが剣を振り上げる。一段階貯まる、二段階貯まる。そして、一気に剣を振り下ろす。
「エクス……カリバー!」
アリスの振るうダイナモブレードが、的を叩き伏せる。的は衝撃に倒れ、そして戻る。
「————これが……勇者の力……!」
「まあ、その認識で構わない。後でスペックを渡すから目を通してくれ」
アリスとハジメがやいのやいの、話しているとモモイがハジメに話しかける。
「……それより、ハジメ先輩の使ってる武器、アリスのより強くない?」
「試作型のダイナ・フォースブレードだ。ストームチームが使っても壊れないような、堅牢で高火力にしようと思ってる」
"ストームチーム……?"
「精鋭を集めた独立遊撃部隊……まァ、君たちは知らなくていい」
"あ、剣にヒビが……"
「……折れたか。やっぱり強度が足りないな……E1合金を使えば……いや、あれ作るのめんどくさいんだよな……」
「ダイナ・フォースブレードはそこまで数も作らないだろう?」
「いや、バルガを作るのに中々合金の数が必要でな。どこかを段ボールにしようモノなら、『安全第一』の原則が四散してしまう」
「……バルガが何かは教えてもらってないが、安全性の問題でゲヘナの地下で建造してなかったか?」
「ふふふ、バレたか。しかし今はベース235だ。明星にバレてしまったのでな」
「……バレた、か」
「ああ。いかんせん洒落にならないくらいには危険でな。人も殺せる、建物も木っ端にできる、戦車などゴミ屑同然……ま、瓦礫を作るのも片付けるの一級品だ。ガソリンと整備代と輸送代だけ寄越してくれれば動かしてやるぞ。な、先生」
"……ちなみに、いくらくらい?"
「う〜む……カイザーPMCの、半年分の予算くらいか? 私もしっかりとしたデータを持っているわけではないから、わからないが」
"………ははは、ご遠慮しておくよ……"
「必要になったら、呼んでくれよ」
「ハジメ先輩、もう一本ありますか? 貸して欲しいです!」
「……旧型だが、ダイナモブレードだ。それを使えば、二刀一対の真髄を見せつけることができる」
ダイナモブレードをブンブンと振るうアリスをパワードスケルトン越しに引いた目で見つめ、アリスの目の前の的を起動したりする。
「じゃあ、私たちは帰るね!」
帰るモモイ達を見送り、近くのトレーニングベンチに腰掛けて、話しかける。
「白石。人間ってあそこまでイかれた命になれるモノだったか?」
「ハジメ。金属のフェンスを徒手で破壊できる君も随分化け物だよ。もしかしたら、君は自覚していなかったかもしれないが」
「うーむ……」
「ハジメ先輩、軽自動車を自分一人で動かせるんだから諦めた方がいいよ」
「うーむ……」
「解説しましょう! 軽自動車を体当たりで弾き飛ばすために必要なエネルギー量は…………」
「わかったから。わかったから。俺が化け物だと言うことは認めるから」
「とことん怪力だよね……」
「そんなことはない。七囚人が一人、栗浜アケミと比べてみろ」
「それってただの怪獣大決戦だよね?」
「ちーがーいーまーすー。見ろよこの愛らしいフェイス、フット、ファング」
「
「——く、口説いてるのか⁉︎ その程度で堕ちるほど安い女じゃないぞ! もっと火力とパンチが……」
「——そもそも、口説いてないよ」
ダイナモブレード! ダイナモブレードM2! ダイナ・フォースブレード! ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!
【ダイナモブレード】
返却された。
【ダイナモブレードM2】
振動属性。主人公のその場のノリによってアリスに渡された。
【ダイナ・フォースブレード】
ストームチーム用に設計されたはずなのに、プレイヤーによってはストームチームの誰も使わないことでおなじみ。筆者は扱うのが下手。
書いてたらいつの間にかハジメが渡してた……。アリスはフェンサーの装備も素手で持てるからすごいね……。あと光の剣スーパーノヴァって、アイアンレインの武器じゃない……?