実は、ミレニアムにセーフハウスがある。気づいてないかもしれないが、こちらにいる方が長い。ただ、別に見せるものもないのだ。毎日フリージャーで登校するのはだるい。
ただ、改めて見返してみると俺の生活は黒服に依存し過ぎである。家は黒服の持ち家、服は黒服がくれたユニセックス、食材は黒服が田舎の母さんのように送ってきたもの、研究資金は黒服が送金したもの……。
もしかして俺、黒服のヒモなのでは?
嫌だ。全国のヒモの方々には申し訳ないが、俺はもともと会社員で、一人暮らしだったのだ。せめて美女のヒモならいいが、人とも人外ともつかないおっさんのヒモはヤダ。
「バイト……は、できる……できるが……」
パワードスケルトンの研究時間が取れないのは不味い。こっちは感情論抜きにまずい。対G訓練とか、しなきゃいけないことはあるのだ。盾フェンだけじゃ対処できないことはいっぱいある——気がする。
「まあ、いいや。どうでも」
パフェリフさえあればすべてなんとかなる、ビーム以外。つまり、パフェリフとブラホの……槍と盾の王道騎士スタイルで戦えばいいのだ。
だが! 私には一つ、やらなければならないことがある。ウイングダイバーを使うことだ。今のままだと俺のウイングダイバー経歴は家で着てみて『うわっ! 何この服。ドエッッロッッッ!』って叫んだことだけになってしまう!
ただ、ウイングダイバーの装備は主にビーム兵器やパルス兵器だ。それは黒服の担当である。普通に俺には物理的な物以外作れない。
え、バルガ? それは黒服の担当だよ。
え、N6? それも黒服の担当だよ。
君たちに、何が俺の担当かを教えよう。パワードスケルトン、コンバットフレーム、レンジャーの一部実弾武器、フェンサーの一部武器、エアレイダーの一部車両、終わり!
あと、エイレンはコンバットフレームだけどビーム兵器がメインだから基礎構造だけ共有して黒服の担当。
やっぱり俺、黒服のヒモなのでは?
「というわけだ、白石」
「わからないが」
「さすがに、完全にヒモなのは屈辱だなって話だ」
「そうか……今君は何を作っているんだい?」
「パワードスケルトンの関節パーツを調整して、下半身を完成させようとしている」
「……パワードスーツかい?」
「ああ、トラック程度なら片手で持ち上げられる出力を理想としている」
軍用の物しか作る気は無いので、安全性は知らない。バルガとは違うのだ! バルガとは! 安全性を求めたけどうまくいかなかったバルガとは! ぜーんぜん! 違うのだ!
「スケルトンにつける武装はいくつかできたから、完成したらすぐさま戦えるようにはなるんだがな」
「へえ、どんなのがあるんだい?」
「一つ、スパインドライバー。刃のついたハンマーを射出する装置。
一つ、ブラストホールスピア。槍を射出する装置。
一つ、ブラストツインスピア。槍を射出する装置。
一つ、フラッシングスピア。槍を射出する————」
「待て待て待て待て! どれだけ槍を射出したいんだ!」
「…………?」
「なんだいその『俺なんか変なこと言ってるかな? 白石頭いかれちゃったかな?』みたいな顔は。おかしいのは君だ」
「おか……しい? 俺が?」
「そうだとも!」
「……どこが?」
「槍をそんなに射出したがるところ」
「ああ、別に槍だけではないよ。マグマだとか、火炎だとか、弾丸だとか、毒ガスだとか、爆弾だとか、軍曹だとか」
まあ、確かに近接-突の武器を作りすぎたかもしれないが、普通に他の武器も作っている。軽機関銃に迫撃砲、ヴィヴロハンマーも作っている。
「待ってくれ、今軍曹って言った?」
「あれは間違いだ」
「良かった、人を射出するわけないしな……」
「今は大尉だった」
「そういう問題じゃない!」
「たしかに曹長も赤ヘルも飛ばすが……」
「赤ヘル⁉︎ 階級は?」
「さあ? 興味ない。あいつらは赤ヘル。それで十分」
スパナを使って、パワードスケルトンの締めすぎたボルトを開く。
「よし、これでレッグスケルトンは一応完成……」
装着して、足を動かしてみる。遅くはない、そう、遅くはない。早くはならない! しかし、そういう物なのだ。アームスケルトンの重量に耐えるための物なのだ。レッグは。
それゆえに、ゲイルスケルトンだとかタイガースケルトンだとかをつけてない限り、足はそこまで早くならないのだ。
「レッグってことは、残りはボディかい?」
「ボディにもつけるが、メインはアームだ。だからアームスケルトンだ」
レッグスケルトンは動きにくい。なんというのかな。速度は十分あるのだが、小回りが効かない。小回りは重要だ。なんてったってコンバットフレームの扱いで最初発狂したのだ。
「コンバットフレーム……おのれ黒服。あんなのうまく扱えるわけないだろう」
「その割には、ついさっき随分上手に使っていたじゃないか」
「グラビスではなく、シミュレーションの奴だ。セイバーエイレンと言ってな」
「へえ」
「残弾管理が苦手」
「全然関係ないじゃないか!」
「もっとパワーダイン打ちたい」
「要望を出したのは君だろ?」
「ああ。もっとパワーダイン打ちたい」
「その……パワーダインっていうのは?」
「黒服謹製、高出力ビーム砲。パワードスケルトンだとか、コンバットフレームに直接マウントしてぶっ放せる。ただ、リロードができない」
「それはまた……どうして」
「手持ちバッテリーだとうまく充電できない。プラズマコアでいけると思ったんだが」
「へえ。充電できないっていうのは……」
「そんな持って戦闘できるレベルのバッテリーで戦闘中にリロードする分には遅すぎる。大型の充電器は持って戦闘できない」
「なるほど……」
「まあ、そもそもパワーダインを使う機会があまり無い方がいい‥‥これはN6含めた全てに共通してそうなのだが」
「君の話によく出てくる……その……N6っていうのはなんなんだ? 全然詳しく話してくれないからわからないんだが……」
「破壊力においてものごっつ凄いミサイル」
「原理は?」
「ミサイルだぞ。弾頭に化学反応を起こして大規模な破壊を引き起こす。そういう物なんだが……ミサイルとは、ほとんどそういう物だろ?」
「大型なのかい?」
「ああ」
白石、お前は純粋なままでいてくれ。お前は
ダメだ、なんとか総司令部の弁護をしようとしたが、ここだけよくわからない。……むしろ俺が批判するべきなのは戦略情報部だな。
「戦略情報部のクソッタレ!」
腹に力を込めて全力で叫ぶ。
「常々君のことはおかしい奴だと思っていたが、まさかここまでとは。辛いことがあるなら聞くよ」
「俺をなんだと思ってやがる! ただのそこらへんの通行人BKだわ!」
「Excelじゃないんだぞ」
「BAKAのことだ!」
「馬鹿じゃないか!」
「馬鹿だよ! 火力厨だよ!」
「火力……ちなみに、一番最近に完成したそういう類のものは?」
「レーダー照射地点に超大型ミサイルを飛ばす、テンペスト」
「N6とは?」
「全然違う。確かに、テンペストも出力を弄れば戦略兵器にできるが、N6はそもそもが戦略兵器だ」
あと、バルジレーザーもできたが、それを伝えると絶対めんどくさいことになる。ああ、そうそう一つ変更点ができたのだ。
スプライトフォールは俺が作る。理由は単純だ、俺が作らないと、『この衛星を造ったのは私。つまり、私が神!』だとか、『この兵器を造った者は天才に違いないわ』って言えないからだな。
基礎構造はバルジをパクれば良い。バルジというか、サテライトW1。
「ああ、黒服さんの調子はどうだい?」
「中々だな。一番の悩みの種であるEMCだけは中々に完成しないが……まあ、他のは続々と完成している。最近はバル……クローズレーザーができたぞ」
「なるほど……バル……なんだい?」
「クローズレーザーができたんだぞ」
「明らかにバルなんたらを言おうとしてキャンセルした」
「バルガのプログラム」
「バルガってなんだい?」
「それは後でのお楽しみだ。安心しろ、きっと大好きだと思うぞ」
「じゃあ、大人しく諦めようか。ただ、卒業するまでには見せてもらうぞ」
「完成したらな。EMCより少し難航してるんだぞ。特にE1合金とか」
「合金……私も専門分野じゃないからな……」
「そう、これは黒服の担当」
「黒服さんに過重労働させすぎじゃないか?」
「地球を守るためだ。黒服一人の犠牲は、仕方のないことだと思え」
「カス雇用主だ!」
黒服のヒモである事への打開策は見つからず————学生は、ヒモにはならないのでは?
そうだ! 俺はあいつの扶養下なのだ! であれば俺がヒモとなる道理などない。このまま、研究を続けよう。
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