はぐれ死神部隊のAC6   作:葱鴨 草餅

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時系列的には壁越え直後ぐらい。621が帰ってラスティが辺りの片付けをしているって感じです。


第一話

 

 

-----自分は、死んだのか。

奴...レイヴンとか言ったか。あいつは、本物だ。きっと、いつか人間を....

 

…….。

 

 

….なんだ。これは。....紅い、光。コジマとは違う、でも、しかし....。

 

 

 

『あ■■は....私■声が...■■■..』

 

 

頭に、なにか......

 

 

 

 

 

 

 

 

//////////////////////////////////////////////////////////

 

 

 

 気がつけば、私は雪の上に一人倒れていた。

失ったはずの肉体、消え失せたはずの感情、ありとあらゆるすべてが私に戻っている。...感情については、奴との戦いで取り戻しつつあったか。まあ、そこはいい。

 

 現在最も優先すべきは、自身の安全確保だ。雪があるということは寒冷地なのだろう。そこに裸のまま倒れていれば数分で凍死しかねん。

 周りを見渡せば、真っ白な雪原に遠くに見える山脈...いや、あれは人工物だな。砦か?...そして間近に見えるボロボロのAC…のようなもの。

 見たところ中量二脚のやけに安っぽい見た目のフレームで、見たことはないが...。

 ひとまず、あのACが生きているなら、空調機能があるはずだ。私は震える身体を引きずりなんとかACのコックピットに乗り込んだ。

 

 コックピットのエアロックはすでに開いており、簡単に開いた。血痕...逃げ出したのだろうか。内部は若干形式は違うが、企業ごとの誤差だろうか。まあ、ほぼ私の知っているACと同じでよかった。

 

 

「COM、スキャンモード起動。エアロックを封鎖。空調機能を起動。」

 

『メインシステム、スキャンモード起動。エアロック封鎖、空調起動。』

 

 

 よし。音声認識も生きているな。ひとまずこれで生命の危機は脱したか。

 

 

「COM。コンソールを出せ。」

 

 

 命令(コマンド)を言うと、コックピットの横からディスプレイとキーボードが出現する。ふむ、システムOSは...基礎は同じだが、少し違うな。だが、基礎が同じということは同じ世界...所謂異世界というわけではないようだ。ただシステムの性能があまりに進化している。なにかしらが起きて私の意識がない間にかなり時間が経っている可能性が出てきたな。

 

 次に座標だ。地球上であるのなら知り合いと合流できる可能性もある。

座標を表示...ISB-2262「ルビコン3」、べリウス地方中部?聞いたことがない。それに、このルビコン3...星の名前なのか。つまりここは地球では、ない?

 しばらく調べると、それを裏付ける証拠がいくつも出てくる。...そうか。人類は宇宙に出ることが出来たのか。...少し、思う所はあるが。まあ、受け入れよう。それも人類の可能性だ。

 

 

『機体反応を検出。北東に一機。』

 

「っ...ACか。COM、システム、戦闘モードに移行。」

 

『了解。システム、戦闘モード、起動。コンソールを格納します。』

 

 

 ...敵か、それともこの機体の持ち主の味方か。後者ならまだ交渉の余地はあるな。武装は、右腕の小型バズーカ(Little Jem)が数発と...ち、故障か。ならパージすべきだな。...左手は素手、右肩に4連のミサイル、左肩はなし。

 なかなかに厳しいが、やるしかないだろう。

 

 

「『こちらV.IV、ラスティ。機体反応の復活を確認。どうする、第二隊長。』」

 

『ふむ、解放戦線の捕虜は壁越えで十分に捕りました。排除しなさい。』

 

「...『了解。』」

 

 

 砦らしき建物の方向から、高速で近づいてくる機影。しかしオーバード・ブーストにしては遅いな。小さめの体躯からして軽量機のはずなんだが。

 

 

「『そこのAC乗り。悪いが仕事でね。恨んでくれるなよ。』」

 

 

 相手がオープンチャンネルでこちらに話しかけてくる。...そうだな、たまには対話をするのも悪くない、か。

 

 

「こちら、N。そちらに、対話する意思があれば、こちらは武装を解除しよう。しかし、それを拒否するのなら...。死を覚悟してくるがいい。」

 

「『...なるほど。なら、全力で戦わせてもらおうか...!』」

 

 

 ……..ふーむ。対話、失敗というやつか?

 敵ACが距離を詰めつつ右手のバーストサブマシンガンと左肩から換装したライフルを撃ってきた。

さて、まずはブースト点火。横に吹かして避ける...つもりだったが、思ったよりブースト性能が低く2発程度当たってしまった。APは...残り2割か。元々ボロボロだったのも含め、あまり被弾は許されんな。

 

「COM、右肩ミサイルの残弾は。」

 

『右肩武器残弾、32発。』

 

「十分だ。」

 

 

 FCSもどうやら低性能らしいが、最低限は働いてくれるようだ。誘導された4発のミサイルが敵ACに向けて飛んでいく。...ただ、容易く避けられたが。

 こうなると、取れる選択肢は少ない。相手は少なくとも粗製ではなく、こちらと違い装備も万全...勝ち目は正直言ってないに等しいだろうな。

 しかし、奴に負けたとはいえ私も死神部隊の一員。木っ端にやられるわけにはいかない。...と、そんなことを息巻いていると、アラーム音がコックピットに鳴り響いた。

 しかし、敵ACに動く気配はない。となれば...上か。咄嗟にクイック・ブーストで今までブーストをしていた方向とは逆に避ける。思ったよりGが掛かるが、まあ電脳の時の感覚と一緒にしてはいけないだろう。ここは耐えだ。元居た場所をチラリと見れば、ミサイルが地面に突き刺さり、紫電が嵐のように散っていた。

 

 

「垂直プラズマミサイル、といったところか。厄介だな。」

 

「『.....。(このAC乗り、なかなかやる。しかし、まるで未知の武装を相手取るかのような...。それに、ここまでの腕ならランカーでもおかしくない気がするが...。)』」

 

 

 相手は近接武器も持っているようだが、こちらが怯むまではあまり使う気がないようだ。

なら、勝負を決めるなら今のうちか。

 右手の小型バズーカを敢えて敵機の手前の地面に撃ち、爆発を起こす。それは周囲の雪、土を巻き上げ、一時的な煙幕となる。そこにミサイルを撃ち込み音を誤魔化しながらオーバード・ブーストを起動し突撃。そして....奥の手を使う。

 

 

「....COM。神経接続。脳波操作へ移行。」

 

『神経接続は、推奨されません。』

 

「御託はいい。やれ。」

 

『了解。神経接続。ACの脳波操作が可能になります。』

 

 

 奥の手。それは、ACの脳波操作。脳への負荷が高く、本来推奨されるものではないのだが...。そんなリスクを背負ってまでなぜ使ったかといえば、確実性のためだ。

 今、敵は私の接近は観測出来ていないだろう。そこで奇襲のチャンスが一度だけ出来る。しかし、スキャンされればそれは無効化されてしまうだろう。だが、スキャンの前に、高速でセンサーの詰まった頭部を攻撃すればそれを阻止出来る。

 

 

「....今だ。」

 

 

 オーバード・ブーストの推進力を利用し、煙幕を出ると共にハイキックを敵ACに向けて放つ。どうやら直前で接近に気づいたようで、向こうから見て左にクイック・ブーストをするのが見えた...がしかし、運のいいことに私のハイキックは右足で打っているため、クイック・ブーストの勢いも加算され凄まじい衝撃が敵AC頭部へと叩き込まれた。

 チャンスだ。衝撃が溜まったのか姿勢制御システムがダウンしている。右手のバズーカも捨て、左右交互に拳を打ち付ける。勿論狙いは関節部...特に装甲が薄い腰部分。

 

 

「『ぐっ....凄まじいな...これだけ破損しているACでこれだけ私を追い詰めるとは.......だが!』」

 

 

 無抵抗だった敵機が突如緑色の光を放ち始める。これはまさかコジマ粒子か?だとしたら...爆発させるつもりか。それはまずい。

 オーバード・ブーストと格闘攻撃でほぼ無くなっていたが、ほんの少し残っていたENでクイック・ブーストを吹かし距離を取る。それとほぼ同時に緑色の光が拡散し始め、周囲約60mが閃光で包まれた。

 

 

「......限界か。COM、神経接続解除。それと敵機のスキャンだ。」

 

『神経接続、解除しました。...スキャン完了。表示します。』

 

 

 なんとか爆破範囲から逃れ、神経接続を解除する。...ふう。この短期間でもかなりの精神負荷だな。やはりこれをAI化しているとはいえ常に出来るJは気が狂っているとしか言いようがない。

 スキャンが完了し、閃光の中に敵機が赤く強調表示される。だがそれはブーストも吹かず、ただそこに立っていた。爆発の残滓が完全に消える頃、敵機から通信が入ってきた。

 

 

「『...確か、Nと言ったか。少し、話さないか?』」

 

「...ほう?」

 

 

 ここで対話を持ち掛けるか。...こちらは右腕の武装も無くなった、応じないメリットとデメリットが釣り合わんな。

 なにを狙っているか知らんが、こうなったら最後まで乗ってやるとしよう。右肩のミサイルもパージする。これで完全に非武装になった。

 

 

「いいだろう。それで、何の用だ?一度攻撃してきたということは、ただ歓談をしようというわけではあるまい。」

 

「『まあ、そうだな。とりあえず名乗らせてもらう、私はアーキバスコーポレーション所属ヴェスパー部隊第四隊長のラスティだ。そして....私が聞きたいのは君の正体だ。解放戦線に君のような凄腕のAC乗りが居るとは聞いたことがない。それに、これほど強いのなら先の壁の防衛に駆り出されていないわけがない。思うに、その機体は落ちているのを拝借したのだろう?...もう一度聞こう。君は...何者だ?』」

 

「ふむ....。」

 

「『.....。』」

 

 

 

 会話と言いつつ、ほぼ尋問だな。まあそこはいい。ただどう説明したものか。

正直に話すならば、死んだと思えば何故か裸でここに倒れており、ボロボロのACを拝借して周辺情報を集めていれば突然襲撃され死にかけている、といったところか。しかし、こんなことを言っても気狂いの狂言としか...いや。そうだな。こうしよう。

 

 

「実のところ記憶喪失、というものでな。地球にいたはずなのだが、なぜ自分がここにいるのか分からんのだ。気づけば、この付近に裸で倒れていた。この機体はそちらの言う通り破棄されていたので拝借させてもらった...これでは不足か?」

 

「『(記憶喪失...コーラル中毒による症状か?とすれば彼はドーザー...ドーザーなら、これほどの実力を持っていながら私が知らないのも無理はないか。しかし、地球か。元はかなり裕福な人物のようだ。このルビコン3に来るまでの記憶が失われたというのなら、その教養は失われていないはず。それなら、ヴェスパー部隊にとっても有用ということをスネイルに示せる。勧誘するか...?).....ふむ、そうだな。ひとまず、事情は把握した。少し、上司に連絡を取っても?』」

 

「ああ、好きにしろ。」

 

 

 

 そう言うとラスティは通信を一度切った。...しかし、随分と考え込んでいたが、彼にとって私はどう見えているのか。...ヴェスパー部隊。その第四隊長ということは、最低でも4つの部隊を持つ組織...アーキバスが上には居るということ。彼の上司がどのような立場なのかは知らないが、彼の上司の意向次第では部隊を差し向けるまでもなくラスティに処理されるだろうな。もし生き残っても、ほぼ確実に死ぬだろう。

 運よくこうして生き残り、身体まで健康になっているのだ。もう少し生を堪能したいという気持ちが....そうか。これが、生きたいということか。.....私が殺した『候補』の者たちも、このような気持ちだったのだろうか。

 

 

「『....待たせたようだな。』」

 

「そうだな。それで、上司とやらは、なんと言っていた。」

 

「『ふっ、そう焦るな。N。.....アーキバスに、ひいてはヴェスパー部隊に来ないか?』」

 

 

....?

........。

...?

..............何故そうなった?

 

 

 







ACVDの主人公の名前については、ただの幻覚です。公式設定ではないので、お間違いのないよう。


///////////////おまけ/////////////

らすてぃ「強いドーザーを拾ったからヴェスパーに入れていいか?(要約)」

めがね「どう残党狩りをしていたらそうなるのです、というか排除と命令したはずですが?どうして和解しているんですか?あなたはいつもそうやって...(クソ長説教)」

らすてぃ「....。(面倒だな...。まあ何かあったら解放戦線に逃がせばいいか。)ぶちっ(通信を切る音)」

らすてぃ「....待たせたようだな」」

N「そうだな(10分ぐらい待たされてる)」
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